10 開幕
ロブに恐怖を植え付けられた竜輝、マカル達四天王以外にも勝てない敵が出てきてしまう
再び竜輝の炎を燃やすことは出来るのか
魔物達の住み着く真泉町の中のバーにて――
「地下通路の開通によって生贄を何人も運ぶことが出来た。今日も俺の手下が何人も持ってきたよ」
「でも俺さぁ、こうやってチマチマやるの嫌なんだよね。館長もズタズタに殺されて…もう隠れてやるのも飽きてきたわ」
退屈そうにアグルクが言う
「邪神様の準備がそれなりにできたら大胆に動けるだろ。それまでは耐えだ」
「邪神様が復活したら俺らの出番なくなるだろ。結局大して暴れることはできないってことだ」
「まぁリュウガとは楽しく戦えるから、良い具合にサンドバッグにしてやりたいけどな」
「何故リュウガが裏切ったのかは知らんが、当然の報いだ。まぁリュウガはお前に任すとして、俺はゆっくりと過ごしてたいよ」
スゥイルは自身の鋭い爪を見て言う
「これを綺麗に整えるのが俺の楽しみだから」
「これが真っ赤に染まる時は、また研がないといけないから面倒臭いもんだよ」
急にアグルクが話題を変える
「そういえば、最近ロブって奴が現れたそうじゃん。ほんとは中級魔物レベルで造ったそうだけど、俺ら並みの強さらしいじゃん。エゴロトとかは一番危ないんじゃないの?」
「何が言いたい」
「俺ら四天王から誰かが抜けるんじゃないかってこと。お前もなんか手柄取っといたほうがいいぞ」
「なんだっけ、白犬使いに負けたそうだし」
「それならここで戦え、俺は強いんだよ。どっちでもいいぞ」
スゥイルは言う
「さっきも言ったけど、俺はこの爪を整えていたいんだ。やるならアグルクとやっておけ」
「そうやって戦わない理由付けをして、ほんとは弱いんじゃないのか?!」
「くらえロックブラスト」
「ちっ、」
ザンッ!!ズザァァ!!
スゥイルは向かってくる岩を全て木っ端微塵に斬り落とした
「はぁ…無駄なことをするな」
「なんだあの手さばき、全く…見えなかった」
「お前は弱いんだから、黙ってマカルの駒になっていればいいんだよ」
「そういえば…」
スゥイルが急に立ち上がった
「スゥイルどうした?」
アグルクが気に止めるも、スゥイルは軽く反応するだけでそのままバーから抜け出していってしまう
「スゥイルの奴、どこか楽しそうな笑みを浮かべてたけど一体…」
………………
前日発生した爆発事件、倉庫内にあったガスが火に引火してしまったことで起こったものです。被害もそこまで大きくないとみられます
「なんか物騒だね」
竜輝の家に居座っている真里
「まぁそうだな…」
他人事の様に竜輝は呟く
「今日どこか遊びに行かない?遊園地とか」
「あんな事があるのに遊びに行くなんてお前…」
「実は毎日届く新聞に北崎遊園地のチケットが付いて来てたんだけど、期限がもう切れそうで」
「学校の友達と行ったらいいんじゃないか?」
「いや、竜輝と行きたいの」
「うぅんそうだな…」
ススッ…
急いでマナに近寄り、小声で耳打ちする竜輝
「どうしよう…行ってもいいかな?」
「行ってきなさい。昨日のことは忘れて、たまには息抜きも大事でしょう。まぁついでに北崎遊園地の様子でも見に行ってきてほしいけどね」
「分かった」
「うん、行こうか」
「ホントに!やった〜!」
「あっ、でもマナはどうするの?」
「マナは1人でも大丈夫だから」
マナはコクリと頷いて答える
小苗村から北に10km、閑静な山道を抜けた先に現れる北崎遊園地。
入口の大きなアーチをくぐった瞬間、真里は目を輝かせた。
「わっ!観覧車めっちゃ大きい!」
「そこまでか?……まぁ、綺麗ではあるな」
入場ゲートでチケットを渡すと、スタッフに笑顔で迎えられる。
騒がしすぎず、どこか昔ながらの素朴な雰囲気が漂っていた。
「まずは何乗ろっか?」
「お前が決めろよ」
「じゃあ〜、ジェットコースター!覚悟しなよ竜輝!」
数分後――
「うぉおおお!落ちる!ってか、マジで落ちてるぅぅ!」
絶叫の波に巻き込まれながらも、竜輝の口元は自然と笑っていた。
ひとしきり叫び楽しみ終わった後、2人はベンチに座り込んでアイスを食べた。
「やっぱり、こういうのってたまにはいいよね」
「……あぁ。なんか昔のこと思い出した。今の俺、こんな風に遊ぶ時間なんて全然なかったな」
真里は一瞬だけ竜輝を見つめ、静かに頷いた。
「竜輝はいつも何か忙しそうだけど、少しでもどこかで普通に過ごせる時間があると思うの。それって大事だと思う」
「そうだな……ありがとな真里。なんか元気貰えたわ」
「何、なんか元気なくなるようなことされたの?誰に?教えてくれたら私が懲らしめるからね」
「はは…ありがと」
その後も、射的、メリーゴーランド、お化け屋敷……
2人はまるで“子供”のようにはしゃぎ、気づけば夕日が観覧車の向こうに沈みかけていた。
竜輝と真里はベンチに腰掛ける
竜輝は、楽しそうに帰る旅行者を見てふと言った
「そういや、あぁいう風に大勢で遊びに行く友達、今まで出来たこと無いな。友は真里とマナだけだよ…」
「ふ〜ん、友ね……」
真里は笑いながら目をそらし、バッグを抱えてベンチから立ち上がった。
「ちょっとトイレ行ってくる!」
「分かった。じゃあここで待ってるわ」
竜輝は手を振って送り出した。
「まぁでも今日は楽しかったし、暗くなること無いか」
ペラッ…
すると、真里が見えなくなったタイミングで竜輝の足元に何かのカードが落ちて来る
ふと気になりそれを拾うと、笑顔だった竜輝の顔が途端にこわばる
――邪神の手に踊らされている国民の絵
すると遠くからマカルと思わしき声が…
「楽しそうに遊んでいるところ申し訳ないが、お邪魔させてもらうよ」
「おまえは、マカル…」
竜輝は気付くと後ろを振り返った。しかし遅かった
「あの女の投稿した楽しそうな写真、しっかりここの観覧車が写っていたよ」
「ふふふ…取っておきの場所を予約しておいた。今から連れてってやる。ハアッ!!」
竜輝の足元にマカルのワープホールが召喚される。足の方からどんどんと侵食していく
「やめろ…!やめろ!!」
そうして次第に全てを飲み込んでいってしまった
「やばい…殺される…」
飲み込まれていく漆黒の中で竜輝は、ロブの顔を思い出してしまう
昨日の恐怖が竜輝を襲う、震えが止まらない
トイレから戻って来た真里
「あれ、竜輝どこに行っちゃったの…?なんか驚かそうとしてるのかな…?」
急にいなくなった竜輝に不安そうな顔を浮かべる
………………
グハハ!最高の殺し合いだったぜ!あれは本当に見ものだったな!
おっと、次は……おぉ!やべぇよ次の戦い見てみろよ!
竜輝が降りて来られた場所は真泉町にある謎の闘技場だった
辺りを見上げると観客は全員魔物だと言うことが分かる。その異様な光景に緊張感が走る
やっと来たぞ主役さんが!
観客はこれでもかと大盛りあがりを見せる
主役?どうせボコボコにされるのにか?グハハ
マカルはこの闘技場のVIP席に自身をワープさせた
「私達を敵にして、なんで遊びに出たりとかしちゃうかな。そんな暇はないんだろうよ」
「ふふ…では始めろ」
さぁ!皆様お待ちかね!あの白犬使いと、最強漆黒兵器ロブとの世紀の一戦だ!!
ウオォォ!!
観客からは鳴りやまないほどの歓声が飛んでいる
だがみんなは竜輝の負け姿を見に金を払って来ているようなもの…嘲笑うような笑い声が竜輝の耳をつんざく
見せてくれ〜!白犬使いの負け姿を!
ゴクリと唾を飲み込む竜輝…
「くっそ……どこなんだよここ」
ドシン…ドシン…
大きな音を立てながら"何か"が近づいてくる
「あの時のリベンジと行こうか、今回こそは必ず殺してやるからな」
その"何か"とは、ロブだった
遠くから物凄い足音をたてながら歩いてくる
「お、お前は…」
「さぁ、お楽しみと行こうか」
そのロブの身体はひと一倍大きく見えた
………………
「竜輝、ホントにどこ行っちゃったの……なんで、なんで」
「ちょっと君、もう閉園近いよ!」
「ちょっと待って下さい!竜輝がどこかに行っちゃったんです」
「君どれくらいその人のこと探してるの?」
「もう1、2時間とかは…」
「そ、そんなにも探し続けてるのかい?」
「あぁ…残念な話になるし、考えたくはないけど、誘拐の可能性とか……いや最近多いって聞くじゃん?」
「嘘だ…私が誘ったせいで」
「いや、まだ決まったわけじゃない。私もそんなこと分かるわけがないよ。でももう夜も遅くなってるし、もし誘拐が本当だとしたら君も危ないじゃん」
遊園地のスタッフは自身のポケットをあさると財布を取り出した
そして千円札を2枚真里に向けて渡した
「はいこれ、少しでも帰りの足しにして、アーチを出た先にタクシー止まってるはずだから」
「私のせいなのにごめんなさい…」
「いやいいから、でも気を付けるんだよ。分かったね」
真里は走って遊園地内から出ていった
「こんな事したの初めてだよ。だけど、竜輝さん?て人が消えたことの解決にはなんも繋がってない。大丈夫なのかな?」




