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【完結】数年前に亡くなったお祖母様が冷血侯爵との結婚を勧めてくる  作者: 秋色mai @コミカライズ企画進行中


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16. 化けて出る


【その後、私は子供を三人産んだ。産後は義父母も、何よりアーノルドがすごく世話を焼いてくれて、ゆっくり休めた。長男は気が優しく苦労性で、次男は努力家で成り上がり根性があった。末っ子の長女は妙に現実的で鋭く、なんでも卒なくこなす子だった】


 あ、まだ回想を続けるんですね。あんなにメタいこと書いたのに。

 長男というのがお父様、次男というのが隣国でバリバリに働いている叔父様、長女が遠い他国の大商人と結婚してバリバリに働いている叔母様。


【大変ではあったけど、アーノルドが良き父だったから、あまり困らなかった。愛しの旦那様が子を慈しみ育てる姿を見て、こんな父が欲しかったと思った】


 ……もう少しお父様に優しくしよう。禿げ頭に拾った抜け毛を置いたりしないで。


【そんな中で、弟の訃報を耳にした。馬車での移動中の落石事故だったという。父から、勘当を許してやるから次男を後継に寄越せとの手紙がきた。アーノルドはそれを破り捨て、怒鳴り込みに行った。アーノルドは人や家族のために怒る人だった。だからこそ、遠縁にも手を回して、公爵家が潰れるように仕向けた。父母は後継者探しに疲れ果てるように、歳にしては早めに亡くなった。私の家族はもうブランシェット家だけだったから、なんとも思わなかった】


 お祖父様は、少しベネディクト様に似ているのかもしれない。お祖母様の気持ちがわかる。


【平穏の中で、長男が結婚して孫ができた。お嫁さんはおっとりとしなやかで、初孫は女の子だった。しっかり者で現実主義者だった。この子ならさっさと婿をとっ捕まえてくるだろうと、誰も後継問題を気にしなかった。二番目の孫も女の子で、これまたしっかりしていた】


 その通りでさっさと婿をとっ捕まえてきて、我が家のボスをしているのが一番上のお姉様。


【暇になったから、働きに出た。元王妃候補の公爵令嬢だから淑女教育には打ってつけだったものの、皆怖がって誰も雇ってくれなかったから、同じく怖がって誰も勤めようとしない侯爵家で働くことにした】


 隣で一緒に読んでいるベネディクト様が妙に納得している。元々自分達より高位だった上に圧倒的年上、自分が子供の頃に貴族社会でやりたい放題していたお祖母様が怖かったわけだ。


【末の孫娘が生まれた。生まれてきた瞬間から、今までと違って大変だと分かった】


 一番距離の近かった孫になんて言い草ですか、お祖母様。足が悪くなった時に手を引いていたのは私ですよ。


【我が家はみんな美形だったけど、中でもアリスはものすごく可愛らしかった。アーノルドの童顔と私の整った顔、ブランシェット家の毒気のなさが合わさり、お姫様や妖精のようだった】


 流石の自己肯定感というか、その上で祖母の贔屓目がすぎる。なんでベネディクト様は頷いているんですか?


【歩けるように、喋れるようになった時には、大変どころじゃないと分かった。この見た目で私に似ているなんて、今後どうなるか分かったもんじゃない。実際三度は誘拐されて、三度とも自分で帰ってきた】


 全く身に覚えがない。


【誰に惚れられても、嫉妬されてもいいように、いっそ国外追放されても生きていけるように山で鍛えることにした】


 惚れ……嫉妬……国外追放。あれ、確かに。もしかして私は本当に美少女だったのだろうか。顔に興味がなかったから気づいてないだけで。


【アリスはすぐに適応して成長し、私は反対に衰えていった。孫の成長が早く感じられて嬉しい分、自分の年を実感した】


 本当にそんなこと思っていたんだろうか。すごく元気そうだったけど。年はとりつつもピンピンコロリだった気がするけど。


【王子がアリスに惚れて見合いに来たのだと知った時、ほんの少し不安に思った。私がいなくなれば、我が家に断る力はない。幸いにもアリスちゃんが自分で返したけれど、これからも高位の貴族が求婚しにくるだろう。アリスちゃんに男を見る目があるかはわからない。私も、こればっかりはアーノルドしか知らない】


 自分で返したんじゃなくて、向こうが勝手に帰ったんです。男を見る目……は、その、大変お世話になりました。


【私の大事なものはここにしまってある、というのはアリスちゃんに教えておいた。変だけど賢い子だから、きっと上手く使うと思う】


 変だけどってなんですか。変だけどって。賢いの部分に否定はしませんがね。


【その時では遅いだろうから、死後に化けて出て守れたらいいのに】


 お祖母様は、綺麗に一冊を使い終わっていた。

 本当に化けて出てきて、守って……。


「さてはお祖母様、せっかく書いたのに読んでもらえないのは勿体無いからって、ただそれだけの理由で教えてくれなかったな……」

「は?」


 しんみりとした雰囲気になるのかと思っていたらしく、用意していたハンカチを引っ込めるベネディクト様。

 別に、お祖母様に愛されていることくらい知ってますから。


「これでわかりましたね。あの王子の夢を跡形もなく壊せばいいってことです」


 だからお礼に、華々しくあの世に送り返して差し上げよう。

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