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【完結】数年前に亡くなったお祖母様が冷血侯爵との結婚を勧めてくる  作者: 秋色mai @コミカライズ企画進行中


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15/20

15. G.Hの手記


「本邸に戻ります」

「何かあったのか」

「いえ、心当たりはないので、遺品を漁りに行きます」

「漁……」


 ベネディクト様は黙ってついてきた。

 二階の南向きの角が、お祖母様の部屋だった。あったかいから日向ぼっこに最適で、お祖母様の淹れるミルクティーがおいしくて。大昔、まだ山で暮らしていなかった頃にはよく遊びに来ていた。使われていないベッドには布がかけてあって、でもその他は全然変わらない。


「入っていいのか?」

「でなければ案内しませんよ」


 確か、お祖母様は大事なものをこの棚の右側に入れていたはず。迷わず出して、綺麗な箱を開けた。宝石類やハンカチ、それにこれは……手帳?


「G.H……知らない人のイニシャル」

「?」

「でも、この達筆はお祖母様のもの」


 随分と古い手帳はボロボロで、水濡れで波打っていた。まったく躊躇わずに開く。バリッと音がした。

 お祖母様はいつのまにか側にいないし、これが答えなのだろう。

 最初の方は見かけた面白い人や出来事しか書いてなかったのに、急に文量が増えた。


【学園の卒業パーティーで、殿下に婚約を破棄された。政略結婚でしかない私が、殿下の懇意にしている伯爵令嬢を庶子を理由にいじめたからだと宣言していた。殿下に興味がないせいで、浮気なんてまったく気づかなかった。庶子ではなく、あまりに無礼な態度を叱り脅しただけだった】


 お祖母様が……王子の婚約者だった……?

 そんなのは聞いたことがない。お祖母様の生家の話は全く……。


【とはいえ、もう仕方がないから頬を二、三発叩いて差し上げた。元はといえば王子の浮気が悪いので、罪には問われなかった。けれど父と母は酷く怒って勘当し、私は平民になった。家は弟が継ぐことになっていたし、王家との繋がりにならない私に用はなかったらしい】


 うん、お祖母様は若い頃からお祖母様だったらしい。でもなんか家族が酷い。


【大事なものとこの手帳だけ持って家を出た。まずは隣国を目指していた。ハワード家は重要な土地を持っていたわけでなく、前王朝の血筋であるだけの地位だけ公爵だったから、隣の国までは顔が割れていないと思った】


 なんでこの手帳というかネタ帳なんですか、お祖母様。そして、公爵って、はい?


【王都の屋敷から隣国までは遠かった。途中に人が入らない山があって、そこに身を潜めることにした。誤算だった。山は厳しく、屋敷で育ってきた私はすぐに死にかけた。その厳しさは王妃教育と同じかそれ以上のものだった】


 血筋については何も考えないでおこう。お祖母様にも強くない時ってあったんだ。


【どうにか一ヶ月ほどは生きた。ブラウスは茶色くなり、スカートは破けた。雨風を凌げる場所を探すのに時間がかかったせいで、毎日軽く風邪気味だった。ついには、山の麓で倒れた】


 だからって人にもやってみて死にかけたらその時、みたいな教育しないでくださいよ。


【気がつくと知らないベッドの上にいた。私を拾ってくれた人は、ブランシェット男爵家の嫡男で、幼い顔立ちのくせに三つも年上だった】


 あれ、子爵家じゃない。幼い顔立ちなのはバッチリ遺伝したから知っている。お姉様方はお祖母様似でキリッとした顔だけど。


【私が住んでいた山はブランシェット家の領地内で、彼らは長らく領主代理を務めてきたが、最近になって爵位を貰ったのだと言う。彼らは呑気に喜んでいたけれど、大貴族だった私は、彼らが王家から軽んじられているのだとすぐに気づいた。税収も報酬も、何もかもが酷かった】


 想像がつく。我が家はみんなお気楽で能天気だから。なるほど、元々庶民だから多少大変でも気づかないのか。


【アーノルドは私の事情も聞かず、ずっとここにいていいと言ってくれた。さすがに申し訳ないからと他の山で住むための訓練をしながら、恩返しとして領主の仕事の基盤を整えた】


 アーノルドというのは、私のお祖父様。つまりさっき出てきた、お祖母様を拾った嫡男。生まれる前に亡くなったけど、お祖母様とはおしどり夫婦だったのだとか。


【やっと山でも一人で暮らせるようになった頃、アーノルドからプロポーズされた。元公爵令嬢のグレースではなく、ブランシェット家の夫人として生きていくことに決めた】


 それでお祖母様はグレース・ブランシェットになったのか。


【アーノルドはいい人だ。貴族らしい腹黒さがなく、優しい。不器用なところもあるけれど、努力家だ。貴族の闇に辟易としていた私には、この自由にしていいと言わんばかりの包容力が心地良かった】


 お祖父様、自由にさせすぎだと思います。


【だから、社交界シーズンにしれっと戻って、王子をこちらから断罪し、国王を脅して無理やり陞爵させた。結果として領民の生活は楽になり、他の貴族への牽制ともなった】


 会ったこともないお祖父様の困り顔が目に浮かぶ。


【あーもう、しゅき!! 今日も旦那様がだいしゅき!!】


 手記だけに……ですか?

 もうこんな風に茶化さないと見てられないんですけど。一体どんな顔で、若かりし日のお祖母様のお祖父様への惚気、それも頭が溶けてる文を見ればいいんですか。孫は。


【なんて、年をとった今、思い出しながら書いてみた。アリスちゃんに説明するのが、ほんの少しめんどくさいものだから】

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― 新着の感想 ―
お祖母様にそんな過去が?! 元婚約者や元実家の家族はどうなったのかな?
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