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ふたりとひとり

ニシキ博士が出ていくとテンは物凄い勢いで食べ物に食いついた。


「助かったー!飢え死にしそうだった!」

茶碗一杯の米を5秒で食い尽くしながらテンが言った。

相変わらずあの透き通った声だったが、その様とは似合わなかった。


「うめー!!これなんていうの?」


「え....?白米だけど.......。」


「へー!白米って言うんだ!!もっとある?」


「あるけど.......。」


ここでテンはやっとフィロの違和感に気づいた。


「どった?」

唐揚げを齧りながらテンはフィロを見た。


「いや........ その......まず自己紹介しない?僕の名前はフィロ・ライヴィッチ・ヴォルフ。アスノヨゾラ哨戒班の新人。君は?」

フィロが言った。


「私はテン!」

テンは味噌汁を啜った。

「天使だよ!」


「いやいや。冗談はよしてよ。」

フィロが笑った。

「天使なら何か奇跡でも起こ.......。」

そこでハッとした。

「笑った......。僕笑えたんだ。」


「ねっ?奇跡でしょ?」

テンはクスクスとイタズラっぽく笑った。


フィロは覗き込むようにテンの顔を見つめた。

醜くも美人でもない程よいバランスがとれた顔は澄んだような美しさだった。

体のどの部分を取ってもまるで計算され尽くしたように完璧のバランスだ。

まさに“最高傑作”だった。


「何見ているの?」

テンの声がフィロを我に返らせた。


「いや.....別に.......。」

その時あの吐き気がフィロを襲った。

口をグパァと開けて吐く体制になった時、額に柔らかいものが触れた。そして身体中を温かい何かが巡った。


柔らかいものはテンの人差し指だった。

そこから温かい何かが出ているらしい。

しばらくすると徐々に温もりは身体中から抜けていった。


「これで一時的には大丈夫だよ。」

テンがまた笑った。


温もりが無くなると同時に吐き気も消えていた。

フィロは不思議そうにテンを見た。


「何者なんだ......?テン......。」


「自分が天使って事は分かるんだけど.....私にもよくわからない......。気づいたらここにいたから.......。」

テンは俯いた。


「ざっくり言うと“神っぽい何か”。」

突然後ろから声が答えた。


振り返るとニシキ博士がパソコンを抱えながら立っていた。


「もっと詳しく言うと“我々の次元の常識を超えた者”だ。」


ニシキ博士はパソコンの画面を見せた。

そこには変な文字が画面いっぱいに書かれていた。


「これは一体......。」


「大日軍がアメリカに送った文名だ。奴らの衛星の電波を友達のクラッカーに盗聴してもらった物。」


「違います。この文字は一体何語ですか?」

フィロは目を凝らした。


「これは、ニホンゴだ。」

ニシキ博士が答えた。


「ニホンゴ?」


「ああ。大災渦前に統一されていたニホン国で使われていた死語だ。」


「そしてこれは?」

テンも興味を持ったらしい。画面の左下に書かれてあるまた別の文字を指差した。


「エイゴだ。一時期は世界のほぼ全土で話されていた言語。だけどコレも死語になっている。それより内容を翻訳してあげよう。」

そう言うとニシキ博士は文を読み始めた。


<報告書。昨夜墜落したNJの航空機の積荷回収に失敗。積荷の詳細は明らかになってはいないが[WITG]の情報によると次元を超えた何かを輸送していたもよう。一方ロシア軍は積荷の一部“羽”の回収に成功した。フィクテゥスの指示を待つ。>


<Failed to collect the cargo of NJ's aircraft that crashed last night. Although the details of the cargo are not known, the WITG said they were transporting something beyond the dimensions. On the other hand, the Russian army succeeded in collecting part of the cargo's "wing". Wait for FIKUTEXUSU's instructions.>


「色々な事を聞きたいんだけど.......まずWITGって何?」

フィロが歯切れ悪そうに聞いた。


「世界情報売買グループ。まあ様々な情報を集めて売るっていう変わった民間の諜報機関で秘密結社だ。この世界は情報が大事だからな。」


「そいつらが今回の件に関与しているの?」


「さあ......今はなんとも言えない。ただ世界各国にパイプを持っているらしい。あまり関与してはいけない連中っつう事は分かるな?」


「あと羽って........。」

テンは自分の背中に手を伸ばした。

「私の羽がない!!え?!アレもしかして私の羽の話だった?!」


「そう.....だよ。気づいてなかったの?」


その時、広場からミゲルの怒鳴り声が聞こえた。

「いい加減寝ろ!!明日続きを話せ!」

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