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アラブ首長国連邦

昔から中東ではよく争い事が起きていた。


しかし大災渦時、中東だけが唯一核弾頭が1発も落ちなかったのだ。


そして今はアラブやイラン、トルコ、インドなどが指導して中東の大規模なインフラ改善が行われ、皮肉にも“世界一安全な場所”と呼ばれるようになった。


アフリカは西側の支援が無くなり、自給自足が出来ず、殆どの民族が餓死した。


イスラエルは強力なバックアップであるアメリカが無くなったことにより一気に中東各国に追い詰められ、たった一週間で呆気なく消滅した。


北朝鮮は崩壊した韓国、ニホンに中国やロシアの残兵と攻め入ったが、ロシアの支援が無くなったため国力が弱まり、中国に吸収されてしまった。


このようにバックアップがある国は次々とその歴史に幕を下ろし、歴史の遺物と化した。


イギリスは異例だ。

彼らはどうにか政府を立て直したが、今まで輸出品に頼っていたため、物価の高騰に痺れを切らしたイギリス軍の残兵がクーデターを起こした。

結局政府は2年で陥落した。


アメリカは東西に分断され、国力を取り戻そうと石油を求めて中東に攻め込んだ。

だが世界中の企業が避難して、バックアップに付いている中東各国に彼らの旧式の兵器はかすり傷さえも付けれなかったそうだ。

最終的には返り討ちにされた。


そして一番不思議な点は“西側が崩壊してから一度たりとも中東では戦争が起きてない”のだ。


「よし、通っていいぞ。」

国境警備員がフィロ達を見た。


「放射線検査はしましたか?」

別の警備員が優しく聞いた。


「はい。」

ミゲルが答えた。ここら辺のやり取りは全部彼がやってくれる。


「どこから来たんですか?」


「大日から......。」


「ああ。あの国ですか。僕も知っていますよ。」

そう話しながら警備員はパスポートにハンコを押した。

「それでは、皆さん。アラブ首長国連邦へようこそ。」


空港から出るとムーンとした暑さがフィロ達を襲った。

しかしフィロはそんな事より呆気に取られているところがあった。


「人が.......いる!」


人が出歩いているのだ。防護服なしで!


「そりゃあ中東だからな。放射線汚染はされていない。」

ニシキ博士が自慢げに説明した。


「それにしても暑いねー。」

テンが汗を拭きながら言った。


「とにかく此処では色々な人種がいる“秩序”の世界だ。今からさっさとタクシーを拾うぞ。」


「あれ何?!」

テンがビルにくっついている巨大なテレビを指差した。


画面にはスーツを着た男と、バカ長い髪をツインテールにした女性が向かい合って座っていた。


「えー、本日はインタビューよろしくお願いいたします。」


「はい、よろしくお願いします。」


「では、軽く自己紹介を。」


「Vチューバーかつバーチャルアイドルの

ファレレでーす。よろしくね♪。」

トーンはバラバラだった。まるで合成されているように。


「あれはAIだ。存在しない。」

ミゲルが言った。

「大災渦前のニホン人も“存在しない者にペンライト振っていた”らしいがな.....。」


フィロは信じられなかった。

あの人が存在していないなんて!

あの笑顔、あの目、あの皮膚は人間が作った“産物”なのだ。


「それにしてもおっそろしい時代だぜ。

存在しない.....いわゆる幽霊を作れてしまうんだから。

しかも、それを使って情報操作で人を惑わすこともできるんだからな。

だけど結局、アイツはただのプログラムの文字列でしかない。」

ミゲルがインタビューに答えているバーチャルアイドルを見た。


「今日は何か食べましたか?」

スーツ男が質問した。


「何も食べてないですね。」

ファレレが答える。


「好きな本はありますか?」


「それは、な・い・しょ♡」


「趣味はありますか?」


「何を聞いてもノラリクラリしている。」

テンが言った。


「そりゃあアイツはあくまで“推し”を演じるための奴だからな.......。奴らにとって人間を騙すなんて朝飯前さ。

アイドルなんか、“人間をまやかす”者だ。

“目を背けたい、あるいは背けさせたい事から意図的に人の目を背け、甘い汁を飲ませる者”それがアイドルだ。」

ミゲルが静かに言った。


ニシキ博士はスマートフォンを睨んだまま止まっていた。


「このクソ野郎!機種が古すぎるとよ!!」

そう怒鳴るとニシキ博士はテンの手を引いた。

「タクシーが呼べないから、電車で移動だ!」


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