最終日
そしてとうとう最終日の早朝が来た。まだ辺りが暗い頃に一団は進み始め、目的地の村はもうすぐそこだった。あと数分で日の出。日の出とともに村が姿を現したら、そこで荷物を下ろして、依頼主や行商人とはお別れ。そして今度は自分達の村に戻る。ラクレスにとってこの旅は長いようで短かった。ただ一生忘れることのない素敵な旅だったのは間違いない。
太陽が地平線から顔をだし、暗闇に包まれていた砂の海が再び白く輝きだす。その美しさに思わず皆の瞳がその光に釘付けになった。
(あぁ、すごいな…… こんな綺麗な景色がこの世界にはあるのか)
ラクレスがそう思ったとき、ラクレスの後ろで依頼主の青年が言う。
「そんな……」
そして彼は、どこまでも広がる砂漠を指差し、震えた声で続けた。
((展開変更 村滅亡ブロケードをしたんじゃない周りも滅亡したんだ、村ツアー、黄色い花を見つける、井戸汚染で絶体絶命))
「村がない」((村が〇〇だ……))
その言葉を聞いて、太陽に目を奪われていた全員が辺りを見回す。辺りはゆっくりと昇る陽の光によって影を失ってゆく。がしかし、見えるのは白く輝く砂の海だけ。人も、建造物も、湖も、なにもない。一団が目指していた村が、そこにはなかった。
その瞬間、ラクレスは心臓が潰れるような緊張を感じた。しかしそれは他のみんなもそうだった。
「なんで村がないんですか⁉︎ 予定ではもう着いているはずですよね……?」
ラクレスがか細い声で団長に尋ねた。そしてさらに怯えた表情を浮かべて続けた。
ラクレス「もしかして俺たち…… 迷ったんですか?」
そう尋ねると、団長はただ黙ったまま俯いて、小さく震えた。
ラクレスたちは迷ったのだった。ラクレスがそれを理解したとき、突然彼らの目の前に死がやってきたように感じた。この一瞬で、最高の旅の終わりは、最悪の人生の終わりになっていて、気づけば朝日と共に、死がそこに立っていた。くちづけできるほどすぐそばに。
恐怖のせいか、緊張のせいか、ラクレスの体は何も感じなかった、暑さも、眩しさも、体についた砂も。しかし、
(人生ってこんなに突然終わるんだ……)
それだけはしっかりと感じた。同じことを多くのものが感じたのだろう。ラクレスの村から来た奴らの目が涙で滲み始めた。今にも泣き出すかというそのとき、小さく震えていた団長が大声で言った。
団長「ワハハハハッ‼︎」
それにつられてラクレスの村出身じゃない本職の行商人たちも笑い出した。
「はははっ はははは‼︎ 死んだみたいな顔して、大袈裟すぎだよ」
「いい年こいた野郎どもが涙浮かべて、こりゃ傑作だな‼︎」
「行商の旅初めてじゃそう思うのも無理ないか。ははっ、にしてもあれはシリアス過ぎて笑っちまうよ」
「団長なんか笑い堪えるの必死で、震えてたもんな」
「え?」
ラクレスたちは、まさかの展開にそう言った。
ラクレス「で、でも村がないじゃないですか?」
ラクレスが団長に尋ねる。すると団長は笑い涙を拭いながら言った
団長「ワハハハッ、はぁ。すまない、言い忘れてたな。長い間行商の旅をやっていれば、こういうことはたまにあるんだよ。」
ラクレス「こういうことってなんですか?」
団長「最終日に目的地が見つからないなんてことだ。星の読み違い、地図の誤差、地形の変化とかで、少しズレた場所に到着することがある」
ラクレス「それ大丈夫なんですか? 迷ったってことでは?」
団長「いや、事実俺たちは迷ってる。だがな、目的地はそう遠くない。だからこれからゆっくり辺りを探索して、その村を見つければいい。」
団長のその言葉に、張り詰めた空気があったかく和んでゆくのを感じた。
ラクレス「なんだ……」
他の男「それを早く言ってくださいよ‼︎ 無駄に絶望しちゃったじゃないですか‼︎」
旅人「君たちの反応が初々しくてついね…… ふふっ」
結局あれはただの杞憂で、この人たちは相変わらずのイタズラ好きだった。この旅は最後までとことん愉快で、一団は笑い声と、楽しい雰囲気で満ちていた。
団長「これか四日くらいかけてゆっくり村を探していけばいいさ。だからそう絶望すんなってな!」
ラクレスはようやく胸を撫で下ろして、ちゃんとした息をついた。団内に安堵した声が広がる。
「もうやめてくださいよ団長。心臓に悪いですって……」
少し怒りを交えながらも、皆が楽しく会話していると、後ろにいた男が青ざめた表情を浮かべ、小さな声で言った。
「水がもうありません」
フィロソフィアを読んでくださりありがとうございます! 僕は高校3年生なのですが初めて小説というものに挑戦してみました。受験勉強の合間を縫って頑張って書いた小説なので、好きになってくれたら嬉しいです!
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