嘘
次の日、ラクレスは父親と母親を砂漠に埋めた。昨日と同じように、埋葬のための長蛇の列ができ、鎮魂歌が捧げられた。三人の妹たちは大声で泣きじゃくった。墓石もなく、墓とも呼べないようなただの砂山の上で、空が暗くなり始めるまでずっと。
空がオレンジ色に変わり始めた頃、ラクレスがようやく口を開いて言った。
「もう帰ろう。いつまでも泣いていたらきっと二人も悲しむよ」
「でもこれからどうするの? お父さんもお母さんもいないなら、もう食べていけないよ……」
一番上の妹が不安そうに言った。
ラクレス「大丈夫だよ、お兄ちゃんが頑張って働くから‼︎ 前よりは貧しくなるけど、みんなで協力すれば、生きていける。ちゃんと真面目に働けば、食うには困らない。神様がそう言うふうに世界を作ってくれたから」
妹「でも真面目に働いたって、二人みたいに病気にかかれば、助からないよ」
泣いて赤くなった目で、妹たちはラクレスを見つめ、言った。しかしラクレスは少し黙った後、優しい笑顔を浮かべてこう答えた。
ラクレス「そんなこと言っちゃだめだ。ちゃんと毎日神様に祈って,善い行いをすれば必ず、神々は救ってくださる。それだけは絶対だから」
それはラクレスの両親が最期に残した言葉だった。ラクレスは二人が最後に託した言葉を、妹たちを励ます為に語った。
妹「本当? 本当に神様たちを信じたら大丈夫なの?」
ラクレス「本当だよ、約束したっていい。二人が残した言葉を信じるんだ。じゃなきゃきっと二人が悲しむ」
ラクレスがそう言うと、妹たちは泣くのを我慢して頷き、「そうだね」と言って笑顔を取り戻した。妹たちは両親のいない世界で、強く幸せに生きる覚悟を決めた。そして彼女たちをそうさせたのは、ラクレスが言った両親の託した言葉だった。
だがこのとき、彼は両親が残した言葉など信じていなかった。ラクレスは嘘をついた。
生前二人は信仰深く、毎日欠かさず神々へ祈りを捧げていた。そして朝から晩まで働き、常に善き行いをしようを心がける真面目で誠実な夫婦だった。しかし、それでも死んだのだ。どれだけ祈ろうとも、真面目で誠実な善人でも、疫病に侵され、最期はあっけなく死んだ。
だからラクレスは神々のことなど少しも信じていなかった。そもそもそんなもの存在しないか、いたとしても人間のことは嫌いだろう思った。
この村では、祈ろうが、善き行いをしようが、ちゃんと食事を取ろうが死ぬ。そんな環境で神を信じようが、奇跡は起こらない。しかしその現実はあまりにも残酷で耐え難い。だからラクレスは「神様を信じれば大丈夫」と妹たちに嘘をついたのだった。
その日以降、ラクレスは馬車馬のように働いた。村のだれよりも早く起きて、誰よりも遅く寝た。日中は村中の畑を耕して、夜は大量の水を運んだ。それでも常に金は無く、空腹で、冬を越せる目処は一向に立たなかった。
フィロソフィアを読んでくださりありがとうございます! 僕は高校3年生なのですが初めて小説というものに挑戦してみました。受験勉強の合間を縫って頑張って書いた小説なので、好きになってくれたら嬉しいです!
拙い物語かもしれませんが、気に入ってもらえたのなら、『ブックマーク』と
【☆☆☆☆☆】を【★★★★★】にしていただけると嬉しいです!
応援の言葉が執筆の原動力です!