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(今日もいつも通りだな)
マリンも同じことを考えていたらしい。
復旧した無線からは退屈そうなため息が聞こえてきた。
「ちぇっ。つまんないの。昨日も同じじゃん。一昨日もそうだし」
「うん…」
「ていうか、十一区ってこんなに遠いの?!燃料足りるかなぁ」
「厳密にいえば七週間ずっと移動を続けてる」
「司令部は何考えてるんだろうねー」
同じ日々。
変わらぬ毎日。
正直このほうが安心する。
ユナは内心安堵していた。
戦況に変化がない以上、まだ死ぬことはない。
(ということはまだ国境は動いてないってことだ)
この国は今、戦争をしている。
赤子でも分かっていることだ。
どうして年端もいかぬ少女を徴収することになったのかさっぱり分からないが、少なくとも、自分たちはまだ亡国の残党兵という扱いにはなっていない。
まだ国はあるということだ。だが近いうちになくなる。みんな、うすうす感じていたことだ。
そうなれば自分たちはもちろん死ぬ。
「十一区ってどんな場所かなぁ」
「さあね。あったかい場所だったらいいけど」
ユナは自分が今どこで戦っているのか知らない。
もちろんマリンも分からないだろうし、カコにノノミ、ミツキにセリたちも知らない。
どういうわけか司令部は教えてくれない。
「うーん。ここから南の方だから気温は高いんじゃない?」
「え~?汗かいたらやだなぁ。上着どうしよう…」
「でも、標高が高かったら寒いよ」
「どっち、どっち?!」
「司令部もそれくらい教えてくれたらいいのに…」
以前、皆で議論した結果、北半球のどこかということは結論付けられた。
が、それ以上は分からなかった。アフノイドの地図データは任務のたびに送られ、適宜、消去される。
位置ビーコンは爆撃誘導の為に利用され、下手にいじれば十メートルのロボットが自爆する。
そのためここがどこか知る手段は非常に限られていた。
「仕方ないよ。私たちには教えてくれやしない」
ユナは吐き捨てるように言った。
「どうせ、誰も私らのことなんか覚えてないよ」
「あ、でもさ…前にいたじゃん。ほら、輸送機のパイロット」
外界との唯一のつながりは週に一度、補給物資を届けに来るチヌークだけだ。
そして前に一度だけ、コンテナを投下したパイロットが手を振ってくれたことがあった。
「でもセリ、次の週から違う色のヘリになったし、そいつの操縦もだいぶ荒くなったよね」
(国は意地でも情報を与えないつもりらしい)