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ミチノミライ  作者: ばくー
第三話、遠い影
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10

ユナは一通りの整備を終え、アフノイドのエンジンフードを閉じた。


汗とグリースにまみれた顔を手元のタオルで拭う。


「・・・あっついなあ」


支給品の薄っぺらいシャツは汗がしみこみ、じっとりと湿っていた。


「あーあ、最悪。びしょ濡れだよ」


炎天下での作業は楽じゃない。


彼女は日陰を探して、よたよたと歩き回った。


体中がだるいし、濡れた服が気持ち悪い。


久しぶりの日差しのせいか、ひどく疲れたように感じられた。


「こんなの冗談抜きで死ぬわ・・・」


薄くなった大気を貫く光とコンクリートの大地は異常といえるほどの気温を作り出す。


彼女もついさっき、遠くで雨が降るのを目撃した。


もちろん、こんな雲一つない快晴の日にそんなことはあり得るはずがない。


人間より高いところを飛ぶ生物にとって、日光は致命的なダメージを与える。


もちろん誰も手を打とうとしなかったわけではない。


ただ、抗生物質のごとく大気中に撒かれた二酸化硫黄はもはや効力を失い、地下都市の開発で二酸化炭素を埋める場所も失った。


やがて八回目の戦争が始まり、そんなことを気にする人間はとうとういなくなった。


それだけのこと。


かつてこの世界には春というものがあったらしい。


ちょうどこの時期、冬と呼ばれるものが終わり新しい一年が始まるのだという。


日を重ねるごとに徐々に温かくなり、失われていた草木は芽吹き始める。


これまでの確執や問題にけりをつけ、とりあえず再出発する。


そんな時期らしい。


(花が咲く季節ってどんな感じなのかな)


本来ならその次に夏というものが来るらしい。


すると今度は夏至に向けてどんどん暑くなり・・・。


「やめたやめた。考えるだけ暑いよ・・・」

この場に温度計がないのが幸いだった。


真っ白なコンクリートの地面からの照り返しもあり、立っているだけでじりじりと首筋を焼かれる。

生暖かい風が流れ、腕のあたりがひりひりする。


ふと目を細め、ぎらつく太陽を仰いだ。

いやな感覚だ。


雲一つない空が憎たらしく思えた。


稜線を越えてやってくる無数の敵。

あちこちに散らばった味方の残骸。

煙を裂くように飛び交う銃弾。

機械油でまみれた装甲をぎらつかせる光。


こんな晴れた日にはいやでもあの日のことを思い出す。


普段は曇っている空は澄み渡り、やけに暑い日だった。


「やめたやめた。考えるだけ無駄だよ」


一人でいると、余計なことをついつい考えてしまう。

ユナはため息をついた。頭の中で歩き回るのは悪い癖だ。どんどんネガティブになっていく。


「お疲れ~。昼ご飯食べようよ」

後ろの方で元気なカコの声が聞こえた。


「お腹すいてない」


首筋に何やら冷たいものが当たった。


「じゃあせめて水だけでも飲まないと、倒れちゃうよ?」


お待たせしました!

いろいろあって本業の方が忙しくなり、しばらく休載させていただいておりました・・・。

次回から、毎週土曜日(時間は未定)に更新予定です。

気長に待っていてくださった方、本当にありがとうございます。

今後もどうぞよろしくお願いいたします!


感想、レビュー、ブクマ、評価、待ってます!!

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