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「はあ、はあ…ちょっと…待ってくださいよぉ~」
冷たい空気が肺に突き刺さる。
白い息を吐きながら、ミツキはなんとか息継ぎをする。
(なんで…こんなに…寒いのよ!)
重いものを持っているせいか、かじかんだ手が余計に痛んだ。
(実際に…体を動かすのは…あんまり…)
「おせーぞ、ミツキ!」
マリンは後ろを振り返りながら叫んだ。
「早くしないと分け前ゼロだよ~!」
(ほんとに…もう、勘弁して…)
ミツキは肩で息をしながらつぶやく。
(大体、なんで私よりちっこいのにこんなに足が速いのよ~!)
身長と運動能力は比例しないらしい。
「マリン先輩!乾パンはどうしましょうか~?」
「全部だ!積めるだけ持って行くわよ!」
マリンは後ろを振り返りながら叫んだ。
「ミツキ~?」
「は、はい!今行きますぅ…」
(も、もう無理~!死ぬ!)
ふらつく足をなんとか前へと押し出す。が…
ぐきっ。
(あっ…)
あっという間に天地が入れ替わる。
ミツキはずってーん、と盛大なモーションで転んだ。
音を聞きつけたマリンはあきれた様子で振り返る。
「はーあ。全くとろいんだからぁ」
(ごめんさい、ごめんさい、ごめんなさいぃ~!怒ってるよね?!絶っ対に怒ってる~!)
「しゅ、しゅみまへん、まひんさん」
ミツキは地面に顔面をつけたまま、もごもごと謝った。
「ええ?!大丈夫ですか?」
ノノミの声だ。ばたばたと駆け寄ってくる。
(えへへ~。やっぱり持つべきものは可愛い後輩だなぁ…。ノノミ、傷心の私をこのまま抱き起して…)
「よいしょっと」
ふっと、腕が軽くなる。
(ん、ん?)
「あ、無事でした!缶詰め、大丈夫です!」
「なーんだ、よかった。さ、次いこ!」
足音が遠ざかっていく。
冷たい床の上、ミツキはただ一人取り残された。
(…ああ、いっそこのまま凍死したい)
人は床より冷たい…。(経験者は語る)
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