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ミチノミライ  作者: ばくー
いつもの朝
2/59

2

切れかけたランタンを消し、ユナはうんと伸びをした。眠っている間に縮こまった体を伸ばす。

軍から支給されたパーカーは夜の寒さを凌ぐのに向いていなかった。


「はい、朝食のココアだよ~。熱いから気を付けて」


気の利いたカコが赤いマグカップを差し出す。この子は部隊内で一番明るくて気が利く。

陰湿な戦場でも彼女のおかげで全員が平静を保っていられた。


「ありがとう」


白い湯気の立ち上るカップにちょっとだけ口をつけ、中身をすする。

ほんのりと甘く、温かい液体がゆっくりと喉を通り、全身に広がっていく。


「…はあ」


他のみんなも徐々に目覚め、身支度を始めていた。どうやらユナが二番手だったらしい。


「どう?今日はよく眠れた?」


「うん…まあまあかな」


ユナはココアをすすりながら続けた。


「起こしてくれてありがとう」


「ううん、気にしないで。わたしだって早起きしたいし」


カコは嬉しそうに髪を揺らした。


「あ、でもほんとに大丈夫なの?だってユナはいつも一番遅く寝て、一番早く起きてるけど…」


「今日は二番だった」


「んも~。そういう問題じゃなくって…」


悪戯っぽく笑って見せると、カコはぶうっと頬を膨らませた。


「居眠りはダメだからね!」


「はいはい」


ユナは笑いながら、そっと自分の首筋に触れる。すると思ったとおり、冷たい汗が吹き出していた。

すぐさまばれないように袖でぬぐう。


(やっぱり。)


内心、カコには非常に感謝していた。

正確には思い出せないが、汗の量からしてまた悪夢を見ていたのだろう。


過去のトラウマは人間にとって様々な形で現れる。


夢の中に現れたり、何かをきっかけに思い出したり。

いきなり蘇るフラッシュバックなどたまったもんじゃない。


自分は暗闇がダメなのだ。


もちろん少しでも明かりがあればまだマシだ。


けれど何もない、明るさも影も色も何もない真っ暗闇は本当にダメなのだ。

その中に入り込んだ瞬間、自分を忘れ、奥に潜む何かに乗っ取られ、息が詰まりそうになり、頭がくらくらする。

異常に動悸が激しくなり、おそらく二秒と持たない。


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