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人気者の彼女を私に依存させる話  作者: 琥珀のアリス
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私の彼女は人気者です

新作始めました。

今回は共依存百合の作品なので、楽しんでいただけると嬉しいです。

よろしくお願いします。

 私の名前は雪喰六華(ゆきばみ りっか)、高校一年生である。私には、付き合って半年になる彼女がいる。

 彼女の名前は朝比奈雪音(あさひな ゆきね)、このクラスの人気者である。高校に入学すると同時に染めた明るめの茶髪。身長は158㎝程で、私より10㎝ほど低い。   

 とても明るい性格で、男女問わず分け隔てなく接する彼女は、多くの人から人気がある。容姿も非常に整っており、そのためか、高校に入学してから数カ月で告白された数はかなり多いと言っていた。

 

 そんな彼女と私が付き合うことになったのは、私が中学の卒業式の日に雪音に告白したからだ。


◇ ◇ ◇ ◇ ◇


 彼女に私が恋をしたのは中学一年の時だった。当時違うクラスだった私と彼女は、当然接点もなく、話したことすらなかった。

 しかし、私が放課後に図書室で勉強をしていた時、彼女が落とした本を私が拾ってあげたのが彼女との出会いだった。

 その時私は、本を返す時に目に映った彼女に一目ぼれをした。一目ぼれなんて、漫画や小説の世界だけだと思っていた私だが、実際に一目ぼれしてしまったのだから、それらを馬鹿にできなくなった。


 ただ、一目ぼれしたからといって猛烈なアピールをしたわけではない。だって私たちは女の子同士で、同性なのだから。私のこの感情は、根本的なところで間違っているのだ。

 だから私は、この恋心に蓋をして、なるべく彼女に関わらず、時間が解決してくれるのを待つことにした。幸い、私と彼女は違うクラス、そうそう関わることはないだろうと思っていたし、実際中学二年まではそうだった。


 しかし、中学三年のクラス替えの時、最後の最後で彼女と同じクラスになってしまった。それでも最初の内は関わらないようにしていたし、意識しない様にもしていたのだが、何故か彼女の方から話しかけられることが多く、遊びに誘われることも何度かあった。

 頑張って感情に蓋をしようとしていたが、好きな人から話しかけられるのはやっぱり嬉しかったし、遊びに誘われた時は当日までまともに寝られないくらい舞い上がっていた。

 それに約二年間、彼女への気持ちを抑えていたせいか、私が彼女に抱いていた恋心はさらに大きくなっており、欲張りになってしまっていた。

 その結果、私は中学最後の卒業式の日、ダメもとで彼女に告白したのだ。振られて諦めようと思っていたし、無理だとも思っていた。


『ずっと前から好きでした。私と付き合ってください』


 ありきたりなセリフではあったが、それが私の精一杯だった。告白してからしばらく経ったが、彼女からの返事はない。振るなら早くしてくれと思いながら、私は恐る恐る朝比奈を見た。 

 すると、私が見た彼女は何故か泣いていた。


『あ。ごめんなさい。やっぱり同じ女から告白されるなんて気持ち悪いよね。忘れてくれていいから。…ほんとごめんね。今までありがとう、…楽しかった』


私は、泣きそうになるのを何んとか耐えながら微笑み、その場を後にしようとした。…しようとしたのだが、何故か朝比奈に手首を掴まれて、その場を離れられなかった。


『朝比奈?』


『……しい』


『え?なに?』


『…嬉しい。私もずっと好きだったの。私でよければ、彼女にしてください』


 一瞬、何を言われたのか理解できなかった。そのせいでしばらく黙ってしまったが、私が黙ったせいか、朝比奈が逆に不安に感じてしまったようで、今にも泣き出しそうな顔をしていた。

 なので、私は慌てて彼女に声を掛ける。


『ほ、本当にいいの? 私が言うのもあれだけど、私たち、女同士なんだよ?』


『私は雪喰さんが好きだよ。確かに私たちは女の子同士だけど、私たちが問題なければ、周りなんて気にならないよ』


 朝比奈のその一言が嬉しくて、私は思わず彼女を抱きしめた。

 彼女は最初驚いていたが、すぐに私を抱きしめ返してくれた。こうして私と朝比奈は、晴れて付き合うこととなった。


『そういえば朝比奈は、どうして私と付き合ってくれたの?』


『雪音。私たち、今日から付き合うんだから、名前で呼んで? 私も六華って呼ぶから。それと、付き合った理由はね。六華は覚えてないかもしれないけど、図書室で私が本を落とした時に、六華が拾ってくれて。その時、六華を見て一目ぼれしちゃったんだ』


『え、そうなの? 実は私もあの時、雪音に一目ぼれして。でも同性だからって諦めようと思ってたんだけど、三年で同じクラスになって話したり一緒に遊ぶようになってから、諦めきれなくなってさ。振られる覚悟で告白したんだよね』


『そうだったんだ。なら、両片思いってやつだったんだね。三年生になった頃、同じクラスに六華がいたから、最後の思い出にって思って声かけたんだよ? まさか、それがきっかけで告白してくれるとは思わなかったけど』


 雪音はそう言いながら、嬉しそうに微笑んでくれた。

 その後、私たちは地元の同じ高校に進学することが決まっていたため、高校に入学するまでの期間に何度かデートをして思い出を作っていった。


◇ ◇ ◇ ◇ ◇


 そして、高校に入学してから数カ月がたった現在、私は不満を感じていた。別に、雪音が私を蔑ろにしているとか、冷たくなったとか、そういうわけではない。

 雪音は私を大切にしてくれているし、私との時間も作ってくれている。分かっている。これは私の我が儘だ。私の心が醜いだけなのだ。

 でも、彼女にもっと愛されたいし、もっと私だけのことを考えてほしい。もっと私のことで心を乱してほしいと思うのは、きっと間違っているのだろう。


 ただ、それでも雪音には、もっと私に依存してほしいと思ってしまう。彼女は人付き合いがとてもうまく、友達も沢山いる。だから嫌でも考えてしまう。彼女が他の誰かに取られるのではないか、私以外の人を好きになってしまうのではないか、と。


(それならいっそ、私から離れたいとか思わない様に、依存させてしまえばいいのでは?)


 私はもはや、彼女無しでは生きて行くことはできない。付き合ってまだ半年だが、彼女との思い出や気持ちは私の中でかけがえのないものになっている。

 これはおそらく依存で、間違った愛なのだろう。だが、そもそも私たちは同性が好きで、お互い女の子と付き合っている。この時点で、世間一般の常識から考えたら間違っているのだ。なら、今更その愛の形が変わったところで、何になるというのだろうか。


 それに、私が告白したときに雪音は言っていた、『私たちが問題なければ、周りなんて気にならないよ』と。なら、私が雪音に、雪音が私に依存したとしても、私たちが問題ないと思えば、雪音も問題ないということではないだろうか。


(決めた。雪音を私に依存させよう)


 色々考えた結果、私は、雪音を私に依存させることに決めた。ぶっちゃけた話、単に依存させるだけなら、今の時代、そこまで難しくはないだろう。

 例えば、SNSを使って匿名で精神的に追い込む。

 例えば学校で、雪音に関する悪い噂を流して孤立させる。

 精神的に弱った彼女に私が寄り添えば、彼女は私に縋り、依存してくれるだろう。


 しかし、仮にそれらの行為がすべて私だとバレた場合、依存どころか、私は彼女を失うことになるだろう。それに、寄り添うタイミングを逃せば、雪音が他の奴に取られるかもしれない。


 何より、私は学校で楽しそうに笑う雪音の笑顔を曇らせたいわけではない。彼女の明るいあの笑顔が私だけに向けられないのは悲しいけれど、私はあの笑顔が好きなのだ。なら、私が目指すべきところは、他人と話しつつも私を気にしてしまう、私のことを考え、私と比較してしまう。そんな自然な形の依存だ。


 私が目指している理想は難しいかもしれない。それでも私は、彼女を失うくらいなら、この理想のために行動しようと思う。



 全ては私に雪音を依存させ、揺らぐことのない繋がりを作るために。







ここまで読んでいただきありがとうございます。


面白い、続きが気になる、作者頑張れと思った方は、☆や感想をお願いします。


本日の18時に2話目を投稿するので、良ければ読んでみてください。

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