教わる
その後運ばれてきた料理は王宮でも見た事のある煮物もあったが
生のまま一口サイズに小さく切り分けた料理『刺身』というものもあった。
「これは……?」
それは初めて見るもので、王宮では口にすることが叶わなかったものだった。
各地の食形態を図鑑化したものでは目にしたことはあったが、これは新鮮さが必要で、採れたてだからこその美味しさがあるのだと記されていたはずだ。
「そちらは今朝この街の漁港で上がったばかりの魚を刺身にしたものです」
そう運んできた給仕は説明した。
薄く切られた身の向こう側に皿の青を映しながら半身ずつ重ねられたもの。
とても美しく、目を捉えて離さない。
「アモル様、それはそのままでも良いそうですがこの地域では岩塩を砕いて細かくしたものをつけて食べる風習もあるそうですよ」
そうボノスが助言が聞こえた。
確かに、その食べ方は聞いたことがある。
土地ならではのものを食べるにあたって、その土地の風習を重んじるのは良いことだと思う。
知らないものが考案することも良いことだが、その土地で培われた受け継がれてきたそれが間違いであることは少ない。
「そうね、その食べ方で頂きたいです」
そう答え、岩から削り出されたままの岩塩に手を伸ばし、注意深く観察した。
正直、岩塩に触れるのはこれが初めてで
これをかけて刺身を食べる風習があるのは本で学んだが、これをどうすれば良いのかは学んでいなかった。
――姉様なら……握力で粉砕させそうだけど、私には無理よね――
そんなことを思っていると
「……おいおい、岩塩掛けの食べ方を知っているのか?お嬢ちゃん?」
ボノスのように穏やかさが全面に立つものではなく、野太さを感じる声が響いた。
「俺が教えてやろうか?」
「もう、カルゾスさん!そうやって他のお客さんに絡むのはよして下さい!」
年は40程の獣人の壮年が声をかけていた。
――お店に入った時に刺身を熱望していた人だ――
何度もここで食べたことのある人なのだろう。
後ろから追いかけてきた給仕とも仲が良さそうだ。
「……。いえ、私はここにきたばかりで『刺身』を食べたことがないんです。
もしよければ食べ方をご教授頂けないでしょうか?」
可能な限りの笑顔を向けて壮年カルゾスへと言葉を返した。
「おう、任せな嬢ちゃん」
白い歯を見せる。
屈託のない笑顔は王宮で数多見てきた人に媚びるものではないそれが酷く眩しかった。




