民衆の声
「……皆さんが思うように、私は籠の姫なのでしょう。
今まで何もして来なかった私に対する評価なのですから仕方がないと思っています」
「……継承者様」
「だからこそ、これからの動きを皆さんに見ていて欲しいのです。
姉様にはなれないけれど、第二王位継承者を見て頂きたいのです」
思った以上に、思いは言葉として発する事ができた。
ずっと心の奥に引っかかっていた思いだった。
『姉様のようになりたい』と願っても、それは叶うと事は無くて。
周囲の人間に認められる事もなく、ただ自分の中で募っていたものだった。
『籠の姫』ではなく
『偽物の継承者』でもなく
ただ純粋に『第二継承者』として私を見て欲しかった。
「……怒り出すものばかりと思っていましたが、やはり私の見当違いだったようですね」
穏やかな、それでいてどこか違和感を覚える口調で紡がれた言葉が耳に入った。
それは民衆の奥から聞こえ、その方へ目をやると人々より頭2つ分程飛び抜けている男の姿が見えた。
「……ブレイク領主様」
その姿が見えた途端、民衆がざわつき始めた。
「……あなた達も、もう大丈夫ですよ。
迷惑な役を押し付けて申し訳なかった。」
先日私に向けた鋭い視線ではなく、穏やかな慈愛に満ちた顔。
「これで良かったのですか?」
民衆の中からそんな声が上がった。
「えぇ、私はこれからブレイク領主として第二王位継承者と話し合いの場を設けます。」
「こちらを……」
ブレイク領主が話し終えたと同時に、彼に付き従っていた執事が私に手紙を渡してきた。
それを受け取りブレイク領主を一瞥すると、口角を少しだけあげ彼は踵を返して行った。
執事もそれに付き従うように一礼し、主人の元へと足を進めた。
「……姫さん。酷いこと言ってごめんよ。」
「あんたを傷つけるとわかった上で言ってたんだ。謝って済む事とは思ってないけど……」
領主がこの場を後にしてすぐ、集まっていた民衆達が口々に謝罪を始めた。
中には
「……言ったのは悪い事だった。すまない。
でも、言葉の中身自体は正直なところ本心も含んでいたんだ……」
きっとここの領民は素直な、誠実な人が多いのだろう。
これが王宮内であれば
『言わされただけ』『本当は素晴らしい人だと思っているんです』と
口々に言い始める事だろう。
その心根が、正直なところ嬉しかった。
「いえ、言われても仕方の無い事だと私自身も思っています。
……なので、皆さんにこれからの私も見ていて欲しいんです。」
そう笑顔で紡ぐ事ができた。
「アモル……」
「姫様は、2人が思うより大人だね」
遠くでボノスの嗜めるような声色が聞こえていた。




