新しい出会い
震える手で扉を開ける。
扉を開けた向こうに待つ未来が不確定なのは今まで通りなのに、なぜかいつもより不安が強く感じてしまう。
それでも、信じてくれる人がいる。
過度な期待でなくて、ただ純粋に私の行く道を案じてくれる人が。
「リューゲ、ありがとう」
扉を開ける直前に私はそう振り返りながら呟いた。
視界に捉えたリューゲの瞳が滲んでいた様にも思えたけど
それを伝えると頬を膨らまして拗ねてしまってもいけないから
黙っておこう。
部屋を出るとザワザワとした喧騒が聞こえてきた。
「……結局の所、秘宝は分からずじまいか」
「ヴァールハイトの力になりたい所ですが……私の力不足で申し訳ない」
「……ペンドロスさんは……」
聞き覚えのない名前とそれを呼ぶボノスの穏やかな声が聞こえた。
快活な朝の雰囲気は無く、声には緊張感が感じられた。
「私はこの街でずっといますが……」
聞き馴染みのない声が言葉を紡いでいる所だった。
「あの……。おはようございます」
思っていた3割程の声しか出なかった。
ひっそりとした私の言霊は虚空で消えそうに漂った後、微かにその耳に届いたようで
「アモルッ!……おはよう」
言葉に詰まりながら、ヴァールハイトが答えてくれた。
申し訳無さと不安と、疑問とが混ざり合った感情が渦巻く中
「おはよう、ヴァールハイト。みんなも」
そう紡ぐことが出来た。
少しの沈黙の後
「お初にお目に掛かります、ご挨拶をさせて頂いても構いませんか?」
そう、知らない声が響いた。
先程ヴァールハイト達と話していた金髪の青年
その姿は昨日雪の降る暗闇に消えていった青年と同じ様にも思えた。
「あ、アモル。その人はこの街の騎士団総長 アーサー・ロード・ペンドロスさんなんだ」
ヴァールハイトが急いで間に入ってそう告げる。
恐らくは後ろに控えたリューゲが腰に携えている斧に手を掛けたからだろう。
「騎士団総長か知らないけど、姫様に近づき過ぎじゃ無いかしら」
棘のある口調でリューゲが私とヴァールハイトの間に入って来た。
誰とも知らない相手が取次も無しに国姫に話しかける。
それは礼儀作法として不躾であるが故にリューゲは怒っているのだろう。
こんな風習も、本当に必要なものなのか怪しいとも思うけれど。
「失礼を致しました。ヴァールハイトがよく話して下さるので見知った顔の様に……」
深々と頭を下げながら彼は紡ぐ。
「私はアーサー。アーサー・ロード・ペンドロスと申します。
もし良ければ、アーサーとお呼び下さい」
そう言いながらアーサーは笑みを浮かべた。
それは、これまでに感じた獲物を見定める様な蛇の視線では無く
新たな出会いを喜ぶ人の子、そのものだった。




