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糸の半分  作者: 幻月
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兄妹

――騎士候補が二人となり、騎士選抜が始まった頃――


 当時は遠征に立つことも少なくて、基本的にアインもエドナ同様領土内で過ごしていた。

それでも、その年齢故か漁港へ赴けば領民から

『今日の魚は……』『税金がなぁ……』など種々の話を持ちかけられる事も多かった。


その中でもよく話題になっていたのは

『エドナがあまり姿を見せないこと』だった。


当時齢14だったエドナは、第二王妃の熱心な教育の下

類い稀な知識を身に付け、アインよりも高い知力を有していた。


その高度な知識を用いて、漁獲量が落ち込んだ時には稚魚の育成に適した場所を探し当てて

不況を改善すべく一手を繰り出していた。


その一手で数多くの漁師の生活が守られたのは事実

けれどもエドナは領民の前に現れることは殆どなくて


お礼を言いに集まった領民たちに対しても第二王妃共々冷たくあしらったのだとか


そんな噂が聞こえて来ていた。


 それが事実だったのかどうかは正直な所アインにはどうでも良かった。

実際、民の為に知識を生み出したのはエドナであり

それを民自体も認めていることが『騎士』になるべきなのはエドナだと

そう思っていたのだから。


しかし


今思い出せば領民の中には不満の声を上げる者も多かったかもしれない。


「エドナ様は俺たちには興味がないのか全く姿を出さない」

「第二王妃様は俺たちをゴミを見るような目で見る時がある」


そんな声を聞いたのも事実だったのだ。


当時の俺はというと、領民が自身を気遣ってそう話してくれているのだと


出来の良い妹を持って大変な兄なのだと


そう思われているからだと思っていた。


「兄様は、本当は期待されていたにも関わらず

私の方が知力があるからとその期待から目を逸らしていた」


「……いえ、期待されていたと言うよりも

私はそもそも領民の中で『騎士』には値していない。


ただ知識のある騎士継承権を持つ少女という認識しかなかったのよ」


「この家で、騎士という称号を争う場でなければ

私に対する評価は違っていたのかも知れない。


けれども、ここに生まれて


あの人の娘として生を受けてしまった


貴方の妹として生まれてしまったのだから」


 確かに争い合う間柄だった。


王妃同士の仲が険悪なものでも、兄妹仲は良い方だと思っていた。


そう、思っていたのは自分だけだったようだ。


エドナはアインの妹である事を酷く嫌悪していたのだ。


培ったと思われていた兄妹の時間は

実のところ、その溝を深めていただけで


その偽りの時間はこうもあっさりと終わりを告げた。

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