吐露される思い
「領民を裏切った人間がいるなんて、誰が認めるの?
しかもそれが領主の娘だと言うのに」
無理にあげた口角が引き攣っているのがわかる。
顎を上げ、目を細めるそれは
普段のエドナの様子とは違っていた。
決してたおやかな女性では無かったが人を下に見るような仕草はしない
真っ向から相手と真剣に向き合うことを良しとする様な実直な人間だったはずだ。
――明らかに無理をしている――
そう感じれる程に様子が違っていた。
「エドナ……お前は」
「兄様は、私を追放すべきよ」
紡ごうとした言葉はエドナに冷たく遮られ
その小さな口から紡がれるのは考えたくもない未来の話。
「この首を刎ねて、民の前に晒す方がみんなの怒りを鎮めれるんじゃないかしら」
エドナの言う事は理解は出来る。
けれども、アインには理解出来ないことが残っていた。
「エドナは、どうしてこの計画を立てたんだ?」
こんなことをしなくてもエドナは騎士の称号を手に入れることが出来たはずだ。
領民からの信頼も厚く、頭の回転の速い彼女であれば問題なかったはずなのだ。
「……兄様には、わからないでしょうね」
そう呟いたエドナはポツリ、ポツリと言葉をこぼし始めた。
「母様は、第一王妃様と違って私が騎士になる事しか望んでいないの
あの人にとって、自分の子供が『騎士』になること、それでしか自分の存在意義を見出せないから」
「昔からそう。口をひらけば
『アインのように強くなりなさい』『女である事で騎士になれない理由はない』『騎士になる事こそが全てなの』と言われ続けてきたの」
「誰かと遊ぶ時間も、街を散策する時間もなかった」
「私だって、この家に生まれなければ……
兄様の妹でなければこんなに辛い思いをしなくてもよかったかも知れない」
吐露する言葉はアインの胸の内に静かに降り積もる。
深々と降る雪が重さを増していくかの様に。
その重みに耐えれず、アインはエドナから視線を逸らした。
逸らしたところで、言葉の槍が止む事はないと知っていても
妹の思いを真正面から受け止める準備はできていなかったから。
「……兄様は私の事を領民からの信頼が厚いと思っているようだけれど
本当に領民が慕っているのは私かしら?」
短いため息の後、単調な声でそう告げられた。
「本当に領民に慕われているのが私であれば、こんな事しなくて良かったのは事実ね。
……でも、実際の領民の反応を見た兄様なら私の言いたいことわかるのではなくて?」
そう告げられて、思い出したことがあった。




