変化を起こすには
「アモル!あんな奴の言うことなんて真に受けなくていいんだからね!」
元々感情表現の豊かなリューゲではあったが
それに輪をかけて今は感情が昂っている様子があった。
「リューゲ……?ハスグラッジと何かあったの?」
恐る恐る聞いてみると
「何もないけど、昔からあの人が苦手なのよ。
飄々としていて、本音を語っていないような態度で過ごしているのが
どうしても気に食わないの。
……でも、私がどんなに喰って掛かっても
あの人は顔色どころか眉ひとつ動かさないのよ」
少しだけ寂しそうにリューゲは話してくれた。
仲間と打ち解けて
一緒に過ごす楽しみを知っている彼女だからこそ
そんなハスグラッジの態度が気にかかるのだろうか。
「リューゲ。貴方が私を心配してくれるのは嬉しいけれど
きっとハスグラッジの言っている事は今後のためになる事だと思うの」
知識の宝物庫
秘書室の番人
類まれな才覚を持つ……変人。
それがハスグラッジへの周囲からの評価なのだ。
この国のことに関することは恐らく皇と同等、もしくは
それ以上に詳しいかも知れない。
「アモル……。そう、ね。あんな変なやつだけど四騎士には違いないものね」
ハスグラッジがなぜこの手紙の中身を知っているのか
なぜこの手紙がこの秘書室に隠されていたのか
気になる事はあるけれども今必要なのは
『呪い』と『それを解く鍵』なのだろう。
レ・ワイズ様の手紙とハスグラッジの言葉を信じるのであれば
私とカムラ姉様のいるこの代が『呪い』とやらを解くことが出来るのだとして
……そもそも呪いとは一体なんのことだろうか。
この国が抱え続けてきた秘密をそういう名称で呼んでいるのか
それとも、本当に人智の及ばない何かが起きているからなのか
「……。ねぇ、アモル。一旦休憩にしない?」
「そうだな。ここで考え込んでいても良い案は浮かびそうも無いしな」
リューゲとヴァールハイトが呼んでいる。
そこへ顔を向けようとした時
「アモル様。少々お時間よろしいですかな」
先程ハスグラッジが消えた暗闇から声が響いた。
ハスグラッジとは違い
落ち着いていて、重厚感を……いや威圧感を感じさせる声。
「誰です!」
リューゲが声を荒らげた。
「失礼した。我が名はマタル。十騎士並びに四騎士の長を務めさせている」
騎士長マタル
現在の十騎士の中で最年長であり
唯一、先の皇位継承を騎士として見届けた人物なのだ。
「マタルさん……」
声のした暗闇の方へ目を向けると次第にその姿が浮かび上がってきた。
ハスグラッジよりも背が高く、ヴァールハイトよりもガタイの良い体。
それでいて目元まで覆うように伸びた前髪が奥にある鋭い瞳を隠している。
鋭い眼光を隠し持った人、それがマタルだ。




