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糸の半分  作者: 幻月
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インズ・アレティの悲劇

『インズ・アレティの悲劇』


 インズ・アレティは戦闘民族であった。

数こそ多くはないが、各個体が多種族よりも勝る身体能力を持ち合わせており

個人行動を主として、多種族はもちろんのこと

同じインズ・アレティ内であっても群れることは好まれなかった。


それでも、インズ・アレティは負ける事のない部族として名を馳せていた。


それで問題なかったのだが


いつの頃からか

『他の部族、種族と手を取り合って』というのが

世の常と成り代わっていた。


それはインズ・アレティにとって他者との馴れ合いに他ならず


群れることは弱者のすることだと

そう信じきっていたのだ。


そうして我らは足元を掬われ、衰退の一途を辿ったのだ。


同部族内でさえも他者を信用しない我らは

強者であるとはいえ

数十人の単位で囲まれてしまえば

完璧な弱者でない者たちの集まりには勝つことが難しいのだ。


そうして我らは数を減らしていった。


このままでは『インズ・アレティ』という部族は


自身の能力を過信し、傲慢にも失墜した部族だと言われかねない。


私はこの部族を残したい。


過去の遺物とならないように守りたい。


『守りたい』という思いに賛同出来なかった同胞たちは半数以上を占めていて

袂を別ったことで

さらにインズ・アレティは数を減らした。


そんな時、他の部族に襲撃されている部族を見つけたのだ。

これが未来に騎士と呼ばれる『マタル家』との出会いだった。


他者を助けない、他者に救いを求めないことで名を馳せていた

我らインズ・アレティは初めて、自身以外を守ったのだ。


そうして我らは仲間を得た。


鋭い刃だけでは何も守れないのだ。


我らは剣、鋭利なその先は傷を抉るのみで


癒す力などない。


我らだけでは、何かを成し得ることなどできないのだ。


それぞれの持つ秘宝を知り、理解することで

我らは叡智に近づき深淵に立ち向かうことが出来るのだろう。


けれども秘宝を理解できない者は深淵に飲まれるだろう。


_アルヒー・インズ・アレティ_


「アルヒー……」


本の1番最後に名前が記されていた。


これは……


「アルヒーって、この国の建国者じゃないの?」


いつの間にか隣で本を覗き込んでいたリューゲが呟いた。


「そうね、初代国皇が記したもののようね……」


でも、秘宝についての記載はあっても

その詳細は書かれていなかった。


きっと秘宝が私たちにとっても

大切なものであるとういことは理解できたけれど


それが一体なんなのか分からないままなのだ。


 手掛かりを見つけられなかった本を

棚へ戻そうとした時、1枚の封筒が床へ落ちた。


「あ!アモル、何か落ちたわよ」


そう言って、リューゲがこちらへ手渡してくれた水色の封筒は

お世辞にも綺麗とは言えず

所々が黒ずんでいて、皺も多かった。


「……開けてみましょうか」


なぜだか、無性に中身を見たい衝動に駆られた。

口に出したその言葉は否定される事もなく


「えぇ、私も中身が知りたいわ」


そこには穏やかな笑みを浮かべるリューゲの姿があった。

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