悪役令嬢(笑)小さな国のお姫様とおともだちになるの巻
ある小さな国のパーティ会場の中心で煌びやかに着飾った大きなお姫様がおりました。
王様はお姫様がとても大好きで大事で、苦労はさせたくないと大切に大切に育て上げました。
若い時に王妃を亡くし、妻が一番だった王様は妾は一切取らず周りの大臣立ちにはたくさんお小言を言われたようですが、最後には皆折れ、お姫様を大事にしてきました。
小さな国なので、周りの国の干渉は一切なく、旨味もない国だったので長年放置され、のんびりとした日々を送っていた国でしたが、帝国から今日はとても大事なお客様がやってきました
名はアゼル・ヴァーンシュタン。
帝国の公爵家のお嬢様なのです!美しい所作で現れた彼女は、美しくも派手な扇で口元を隠し
「あなたが、この国のお姫様?なあに、豚かしら?」
周りの者は皆あっけに取られました、言葉の意味を理解するまでに数分の時間を要し、理解した瞬間に国王は激高しました。
「この国の宝になんという口を利く!!!いくら帝国の要人であろうとも身を弁えたまえ!!!」
王様も、流石は王様といったところ、威厳のある姿でアゼルを厳しくしかります。
しかし、アゼルは悪びれた様子など一切なく、王様より数段低い位置にいるにもかかわらず、鋭い切れ目で王様を睨むと
「王様、お言葉ですが、あなたの宝ならばなぜ磨かないのですか。美しいパーツをしていらっしゃるのに、すべてをダメにしている肉肉肉肉...私、許せませんわ。女性とは、美しく咲く華であるべき、王様は美しい花の根に肥料を撒き散らして、花として咲くべきであった花を腐らせて喜んでいるのですわ、それは正しくありません。これは愛ではありません。帝国内にも、こんな逸材はおりません。」
褒めているのか貶しているのか、はたまたどちらかなのか、周りはあわあわと見つめるだけで誰も意見しない。
王様も、今まで忠実な家臣しかいなかったために、こんなまっすぐに否定されたことはなかった。
しかも、一応は帝国から来たお客様、下手に機嫌を損ねると、国が危うくなるかもしれない、だが、命より大事なあの子を豚と言われて許せるはずもない
暫く続く沈黙を止めたのは意外な人物でした
「アデル様、私、分かっておりましたの、醜い姿だということ。太った豚といわれるのも分かります、だって私は、美しいドレスもパンパン、侍女さえ私を見て笑うのです。でも、父の優しさを無下にするわけにもいきませんでした。だってこんなに私のために尽くしてくれているんですもの。でも、アデルさまのご意見を聞いて、私は決心しましたわ!!私、肥料を沢山今までいただいた分、綺麗に咲きますわ!!!」
王様はパーティ中だということも忘れ、姫を抱きしめました。
「愛するイージスよ、父は確かに間違っていたのかもしれない、お前の優しさに付け込んで自分に酔っていたのだ、愛する王妃の分までお前を愛そうと必死だったのだ。許してくれ、お前の望むものならなんだって与えよう、お前の敵は国の敵だ、だが、今までのように自分に酔った愛を与えることはもうやめよう、イージスよ、父のことは気にせず、要らない物は要らないと言って構わない。今まですまなかった」
パーティ中に抱擁しあう王様と姫様に感動して涙を流す貴族達
「あほらしーですわ、全く、なんでみんな至極当たり前のことを言うとこのようになるのでしょう、私はまた悪役ですわね。」
「アデル様は悪役なんかじゃありませんよ、口が悪いお嬢様なだけです。」
「うるさいわよ、ベア」
アデルは自分の後ろでせわしなく給仕をしながら微笑むベアと呼ばれる少年。
帝国からアデルとともに送られ、暇だからと、パーティの給仕の手伝いをしていた
「アデル様、嘘偽りない言葉で話してくれてありがとうございます。私、アデル様とお友達になりたいです!!」
ぷくぷくの手を差し出しながら笑うイージスは最初見た時は自信なさげにうつむいていたが、今はアデルをまっすぐ見つめて手を差し出していた。
その姿をアデルはこっちのほうがまだましだと思いながらイージスを見据える
「私、友人は選びますの、友人にするなら、聡明で美しく思慮深い方でないとお友達になれませんわ、だから今その手を握ることはできませんの、でも、貴女がそのお肉とお別れしたら、親しい友人になってもよろしくてよ?まあ、今は友人候補ということにしておきましょうか。」
イージスは伸ばした手を引っ込め、えへへと笑いました。
後ろから見つめる王は納得していない表情で、謝れと言わんばかりの圧をアデルにかけていたが、アデルは不敵に微笑む
「アデルさんは、私の尊敬の人になりました!私、絶対にアデルさんと仲良くなります!見ててくださいね!!」
王は結局は自分の怒りより、姫の喜ぶ顔が嬉しかったらしく、アデルは無罪放免とされた。
パーティは終わり、次の日からアデルの鬼のようなダイエット企画が始まった。
初めてのダイエットにイージスは何度もくじけそうになるが、アデルがその度に
「その程度の覚悟で私の友人になろうだなんて、貴女私を舐めてますの?」
叱咤され続けるも、何故かイージスは挫けずアデルとの関係を築いていく
そんな生活を何月も繰り返していた
帝国ではとあるお話が有名になる
とある小国には、とても美しいお姫様がいると。
その小国には、特別特産品などはなかったが、とても美しい姫を見ようと多くの人が訪れると
姫様は、見た目だけでなく心までも美しく、たくさんの人に愛されていると
そして、なんと姫様だけでなく王様もとてもハンサムで女性ファンも多いのだと
かっこいい王様と美しい姫様を見に行く人々、非常に親しみやすい王族に国民は喜んだという
とある小国の隠れた場所にある秘密の花畑で二人の美しい女性がお茶会をしていた
「アデル様、私、貴女のおかげでこんなに変わることが出来ました。今では、みんな私を見て笑わないんです。豚と言われたときは、実はすっごく傷ついたんですよ!!でも、アデル様のピンと伸びた背筋を見て、本当に美しいお花だなっておもったんです。私もこんな風になりたいって」
「貴女はとても美しいわよ、今では皆が貴女に目を奪われるわ。だって、実は出会った日に私はあなたにとても嫉妬したのよ?とても愛されていて、肥満体系なのに隠せない美しさが貴女にはあったわ、パーツの配置も黄金比、王様を見て思ったのよ、この血は化けるわってね」
「あはは!途中から物陰から眺める父にまでダイエットさせるなんて私、笑いが止まらなかったんですよ!!父も驚くほど変わりましたが、未だに母と私以外は目にも入れない父が、私はとてもうれしいんです。」
遠い場所からゴーンと鐘の音が鳴り響く
アデルは立ち上がりベアが一歩後ろに控える。
「本当に行ってしまうんですか、アデル様。私、勝手にアデル様のこと、お姉さまだと思っています。過ごした時間は短いけど、私はアデル様が大好きなんです。だから、離れてほしくない!!」
アデルが男であれば身も震えるような美しい涙を流すイージス。
ぎゅっと左手に抱き着き離そうとしない
「イージス私の前に来なさい?」
イージスは渋々腕を離し、アデルの前に立つ
「私達は親友よ、これから離れようと一生の別れではないわ。またいずれここでお茶をしましょう?」
アデルは手をイージスに差し出す
「アデル様あああああああ!!!愛しています!!!」
涙で顔をぐちゃぐちゃにしながら手をつかみアデルに抱き着くイージス。
そのイージスの頭を優しくなでると、一旦距離を置き
「貴女、私を舐めてますの?愛してるだなんて、そう簡単に言う言葉ではないわ!!ではまた会いましょう。失礼」
ピンと伸びた背筋はまるで美しい花の茎のようだとイージスは思う
まだ、アデルには届かないけど、いずれはアデルに近づきたいと、小さくなっていく背中が見えなくなるまで見続ける。
次はいつ会えるか、次はどこに行くのかも知らなけど、何故か絶対にまた会える気がする。
end
「お嬢様、顔真っ赤ですよ。あんな美少女に愛してるだなんて俺も言われてぇ」
「おだまり、ベア」