表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

15/209

第一五話「ロマンティックなワンシーン(?)は無粋な輩にぶち壊される」

「なあ、この先って行き止まりじゃなかったか?」


 行き止まりだと思っていたら、何やら(おく)に通ずる……道、とも言えないような短い道がある。


「え? 道が続いてますか?」


 レーネが(あわ)てて取り出した地図と(にら)めっこしている。が、やはりそこには書かれていなかったらしく、かぶりを振った。


「地図に無いけど、空間があるな……もっとも、鉱坑(こうこう)の一部ではなさそうな気はするが……」


 通常、鉱坑の中は崩落(ほうらく)したりしないように(はしら)(はり)でしっかりと補強(ほきょう)されているものだ。


 だが、奥の道はそうではない。その痕跡(こんせき)すらも見当(みあ)たらないのだ。


「ゴブリンが()ったのか?」

「それは無いでしょう……」


 ジト目で(あき)れられてしまった。冗談(じょうだん)のつもりだったというのに。


「しかしそうなると、何故(なぜ)地図に無い空間が奥へと続いているんだ?」

「分かりません。……あ、いえ……もしかして……」


 何やら気付(きづ)いたらしいレーネが、広間と奥の空間との間を調べ、「やっぱりそうだ」と(ひと)()ちた。


「リュージさん、この空間は(おそ)らくですが、ここがまだ廃坑(はいこう)になる前には存在(そんざい)していなかったんじゃないかと思います」

「なんだって? なら、本当にゴブリンが?」


 知能の低いゴブリンに魔石(ませき)価値(かち)など分かるものでも無いと思うのだが。それとも、邪術師(じゃじゅつし)(あた)りがゴブリンを使って掘らせたのか?


「いえ、ゴブリンではなく……、話は少し変わりますが、ザルツシュタットの港が(こわ)れた原因を(おぼ)えていますか?」

「は? 何故その話? (たし)か港は、大地震(だいじしん)で――」


 そこまで言いかけた俺は一つの可能性(かのうせい)に気付いた。そういうことか。


「つまり、この空間はその地震で(つな)がったと?」

「恐らくは。この(あた)りの壁土(かべつち)(やわ)らかいのがその裏付(うらづ)けですね」


 なるほど、崩壊(ほうかい)して繋がったと言う(わけ)か。


 ……そうなると、(いや)(おう)でも奥の空間には期待(きたい)が持てる一方(いっぽう)崩落(ほうらく)するんじゃないかという恐怖(きょうふ)もある訳なのだが。


「……ま、虎穴(こけつ)に入らずんば何とやらと言うし、奥の空間を見てみるとするか」

「はい、そうしましょう」


 俺たちは(とら)の子供を見つけるべく、その空間へ足を()み入れた。




「うわ、マジかよ」


 思わずそんな言葉が()れてしまった。


 それも仕方(しかた)の無いことで、その広間(ひろま)より少し(せま)程度(ていど)の空間には目指(めざ)していた魔石の鉱脈(こうみゃく)がしっかりと存在していたのだ。虎の子供は本当にこの中に()たという訳か。


「あっ、リュージさん! まだ奥に道が続いてますよ!」

「うお、本当だ」


 魔術光で()らしてみると、興奮(こうふん)気味(ぎみ)のレーネの言う通りやや上り坂の道が続いており、その奥にも魔石の(あや)しい光を見つけることが出来(でき)た。いやこれ、予想以上の収穫(しゅうかく)じゃないか? 商工(しょうこう)ギルドに報告(ほうこく)したら金一封(きんいっぷう)を追加で(もら)えるかも知れない。


「これ以上奥へ進むのは、今の所は()めておこう。崩落の危険もあるしな」

「そうですね、広間に(もど)りましょうか」


 俺たちはそれ以上首を()()むことなく、広間へと戻った。これでザルツシュタットに魔石の供給(きょうきゅう)が再開される可能性も出てきたな。


「他にも地震で(つう)じた道があるかも知れないし、ゴブリンを掃除(そうじ)しつつ(くま)なく探してみるか」

「分かりま――」


 レーネが言い終えるよりも早く、俺は彼女を()()せていた。見ようによってはロマンティックなワンシーンだろう。


 それをぶち(こわ)すように直前までレーネが居た場所を大岩が通り()ぎて行き、壁にぶつかって大きな音を立てた。流石(さすが)にこんな威力(いりょく)のものが飛んでくれば、〈金剛(こんごう)〉も意味を()さない。何時(いつ)ものレーネだったら音で分かった(はず)なのだが、坑内(こうない)は音が反響(はんきょう)しているので遠くの音と聞き(ちが)えたか。


「え? え? え?」


 状況(じょうきょう)を全く理解(りかい)出来ていないレーネを岩陰(いわかげ)(かく)し、俺はその岩が飛んで来た場所を見る。


 そこにはゴブリンよりも体躯(たいく)の大きいホブゴブリン、だけではなく、その中でも一際(ひときわ)図体(ずうたい)のデカい、全身を鋼鉄(こうてつ)のような筋肉に守られた存在が血走(ちばし)った目で俺を(にら)んでいた。岩を投げたのはコイツだろう。


「……差詰(さしづ)めゴブリンヒーロー、ってとこか。コイツが集団のボスか?」


 俺は(つえ)をレーネに(たく)し、(こし)から取り出した二本の大ぶりな短剣を両手に持ち、仲間を殺され憤怒(ふんぬ)(あらわ)すゴブリンヒーローに向かって(かま)えた。


次回は一〇分後の23:07に投稿いたします!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ