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第一話「そんな下らない理由で、俺は追放された」

新連載です!

基本毎日更新ですが、第一八話までは頑張って一〇分おきに手動投稿いたします!


宜しくお願いいたします!

「なあ、お前ふざけてるのか? リュージ」


 今日は休暇(きゅうか)とすることに決めたと言うのに、いきなり宿(やど)まで()び出されて投げつけられた言葉がコレだ。まったく、毎度の事ながら主語(しゅご)も無ければ要領(ようりょう)()ない。この男は相手(あいて)意図(いと)()み取って(もら)おうとする努力(どりょく)とか考えないものだろうか?


 俺は溜息(ためいき)()きながら、目の前でふんぞり返って()る〈ベルセルク〉のリーダー、重戦士(じゅうせんし)のガイを高い位置から()め付けた。(えら)そうに自分を睥睨(へいげい)している(やから)遠慮(えんりょ)などする必要も無いからな。


「何のことか、と聞き返せばお前は怒り(くる)うだろうから、(やさ)しい俺は何のことか推測(すいそく)してやる。いつも通り、俺が魔石(ませき)の生産ばかりしていることについて文句(もんく)を言っているつもりなのか?」


 皮肉(ひにく)()めた俺の言葉にガイの(まゆ)がぴくりと動いたが、どうやら激高(げっこう)することは無く、ふぅ、と大きく息を吐いて落ち着いたようだ。(みょう)だな、いつもなら(なぐ)りかかってくるというのに。まあ(こぶし)が当たった(ため)しは無いが。


「ああ、そうだ。お(かげ)で俺たちは四人で依頼(いらい)をこなさなけりゃならねぇ。かと言ってお前を入れても、俺たちのように動ける(わけ)じゃないんだがよ」

「そりゃそうだ、俺は付与術師(ふよじゅつし)だからな。ミノリやスズみたいな動きを期待(きたい)されても困る。だからお前は俺に魔石の生産を優先(ゆうせん)させてるんだろうが」


 お優しいことに、ガイは野伏(のぶせ)のショーンや剣士のミノリ、魔術師のスズら天性(てんせい)才能(さいのう)を持つメンバーと同じような(はたら)きを俺に(もと)めていないようだ。だったら何故(なぜ)文句を()れているのか分からないが。


「なんだ? 俺に責任転嫁(せきにんてんか)か? デカい図体(ずうたい)している(くせ)にお前が役立(やくた)たずだから魔石の生産を優先させていたんだろうが。第一に――」


 ガイはそこまで言って言葉を切り、俺の右手首へ指を差す。そこには冒険者としての身分を(しめ)腕輪(うでわ)()められている。


「俺たちは第二等、お前は第三等。この意味が分かるか?」

「……俺が依頼へ参加出来(でき)貢献(こうけん)も出来ていないから、第三等のままなんだろ? 俺に魔石の生産を優先させたのはお前だろ? 頭は大丈夫(だいじょうぶ)か?」


 俺は支離滅裂(しりめつれつ)なガイの戯言(たわごと)(あき)れることしか出来ず、諸手(もろて)を広げて「意味分からん」と態度(たいど)で示した。


 冒険者等級(とうきゅう)。冒険者ギルドにどれだけ貢献したかでこの等級が決まる制度(せいど)だ。高いほど依頼遂行(すいこう)への信頼度(しんらいど)が高いという判断(はんだん)基準(きじゅん)になる、第九等から第一等、そして特等(とくとう)まで存在(そんざい)する。


 そして、俺よりも依頼を多く受けているガイ、ショーン、ミノリ、スズが上の等級に居ることは自明(じめい)()なのだ。


 俺の返した答えにいい加減(かげん)我慢(がまん)ならなかったらしく激高したガイは、目の前のテーブルを(てのひら)で思い切りバンと(たた)いた。大きな音は宿の迷惑(めいわく)になるから()めて()しいものだが。


「ごちゃごちゃ言ってんじゃねえよ! お前が何時(いつ)まで()っても第三等だから、第二等のパーティとして(みと)められずに俺たちも第一等へ上がれねぇんだろうが!」

「だから、さっきから言ってるだろう? お前が、魔石の、生産を、優先したんだよ。だから、依頼に、参加出来ず、等級も上がらないんだ、分かったか?」


 俺は子供にも分かるように理屈(りくつ)()(くだ)いてやったのだが、ガイの表情は怒りに(ふる)えたままだ。残念(ざんねん)だ、これ以上理解され(やす)い方法が思いつかない。


 そもそも魔石というのは〈無の魔石〉へ付与(ふよ)を行う付与術師専門(せんもん)奥義(おうぎ)(ほどこ)したものであり、依頼に貢献したと判断されていないのがおかしいのだ。コイツは当たり前に俺に魔石を作らせて利用しているが、効果(こうか)が高いものを作るには工房(こうぼう)が無ければ効率(こうりつ)が悪いし、第一に魔石のようなマジックアイテムは大量生産出来るものでも無い。


「文句があるなら、依頼達成(たっせい)時に付与術の効果もきっちり報告書(ほうこくしょ)に書け。それか俺も依頼に参加させろ、そしたら――」

「……もういい」


 いきなり静かになったガイに不気味(ぶきみ)なものを(おぼ)え、怪訝(けげん)に思いその表情を見ると、何やら下卑(げび)た笑みを()かべている。


「お前は今日(かぎ)りでパーティを()めろ。ちまちまと道具作りしか出来ないヤツは()らねぇ」

「はぁ?」


 何を言っているんだコイツは。第一、俺、ミノリ、スズの三人でパーティを組んでいた所を無理矢理(むりやり)取り()んだのはこの男なのだが。


 ……そうか。


「お前、元からこのつもりでショーンに指示(しじ)を出して、ミノリとスズを出張(しゅっちょう)依頼へと()れ出させたな? 道理(どうり)で、依頼の遂行に貪欲(どんよく)なリーダーのお前が付いていかなかった訳だ。二人の居ない時に俺を追放(ついほう)するつもりだったのか」


 ショーンはこの男に忠実(ちゅうじつ)(しもべ)みたいなものだ。今頃(いまごろ)ヤツが妹のミノリたちを足止(あしど)めしているんだろう。


「あぁ? 推測(すいそく)で人を非難(ひなん)するなってのはいつもお前が言ってることだろ、リュージ」


 クックック、と(ふく)み笑いをするガイに、俺は侮蔑(ぶべつ)視線(しせん)を投げつけた。……悪知恵(わるぢえ)を働かせる時だけは頭が回るようだ。


 だが、そっちがそのつもりなら、もう良いだろう。


「分かった。だったら遠慮(えんりょ)無く()けさせて貰う。……だが、お前に貸していた魔石はすべて返して貰うからな」

「あぁ? 何言ってんだ? 魔石はパーティの共有物(きょうゆうぶつ)じゃねぇか」


 ガイは本当に分かっていないのか、(まゆ)(ひそ)めている。どうも何かを勘違(かんちが)いしているようだな、この男は。俺が魔石を(ゆず)ってやったことなど一度たりともないのだが。


「毎回、魔石をお前に(わた)(さい)念書(ねんしょ)を書いて貰ってはいるが、まさか読み流していたのか? この通り、譲渡(じょうと)ではなく貸与(たいよ)すると書いてあるだろ。出るとこ出てもいいんだぞ?」


 マジックバッグから取り出した念書の(たば)を高い位置(いち)から見せてやると、初めて知ったらしいガイはそっぽを向いて舌打(したう)ちした。出るとこ、というのは商工(しょうこう)ギルドを通して裁判(さいばん)を行うという意味である。裁判に負ければ冒険者としての降格(こうかく)も有り()るのだ。


 流石(さすが)にそのリスクは負いたくないのか、ガイはマジックバッグに手を()()んで乱暴(らんぼう)に魔石を取り出し、テーブルの上にばら()いた。おいおい、借り物なんだから大事に(あつか)えよ。


「……〈昇華(しょうか)の魔石〉が足りないな。お前、付与術師を(かろ)んじている(くせ)に、魔石に(たよ)るつもりか?」

「うるっせぇ! これでいいんだろ!」


 ガイは追加で取り出した〈昇華の魔石〉を俺に向かって投げつけた。痛いな、何しやがる。


 しかしこれで貸し(あた)えた魔石はすべて返して貰った。後は妹たちが気掛(きが)かりだが、素直(すなお)()けさせては貰えないだろうし、上手(うま)くやるとするか。


「じゃあな、ガイ。ミノリとスズに(よろ)しくな」


 念書の束をテーブルに(ほう)ってからそう言い残し、俺はガイの部屋を出て行ったのだった。


次回は一〇分後の20:47に投稿いたします!

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[一言] 師匠、遊びに来ました~!!\( 'ω')/ 他の人も既に言ってることなのであれですが、とりあえずフリガナすごいっ!! これ全部入れるのは相当大変なのでは。。笑 主人公が最初からやられっぱ…
[良い点] 作者さんは人が良いのか、中高生以上なら読めるだろう漢字にまでルビ振ってるのに驚き(^^;) [気になる点] ストーリーよりルビ振ってる多さに目が行ってしまう... [一言] 漢字の微妙な意…
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