ピレンクの旅と影の人々 外伝2
今回はあらすじで全て書いているので特に言うことはありません。一応、後ろの影の人々の歴史も書いて彼らの謎も明らかにしています。
この物語はユナイトストーリーと言う物語の外伝であり、主人公の一人であるピレンクの2年間の旅の記録をした短編小説である。まず旅の始まりを解説しよう。今から5年前、ミガク王国によって結界で封印されたフーダス帝国の人々。食糧と水の問題上、影の人々の協力を得て影に籠らざるを得なくなった。影に籠っている間は肉体の時が止まるため、なんとか彼らは生き延びることができていた。今回の主人公、ピレンクはその国の第一王子だった。
そんな国に変化が起きたのは2年前。リンキという人物が結界を破り国に入ってきたのだ。人々は驚いた。どうして入ってこれたのかと。結界は外からも内からも基本的に壊すことができないほどの強度を持っていたからであり、籠る前に全員で壊そうとしても不可能だったからである。それをたった一人で突破してきたのだから驚くのも無理はない。そんな彼は王に城で謁見していたのだが、リンキに対して影の魔物が一気に襲いかかってきた。加勢に入ろうとした王達に巨大な魔物が城に出現したと報告があり、城ではシャドウスパイダーという巨大な魔物が城のメイド、執事、王妃と彼の妹を飲み込んでおり、王がピレンクにリンキに加勢するように命じた。加勢に入った彼はリンキにジョウドの道場を頼るように頼み、外に無理やり転移させた。ここからが彼の長い長い旅の始まりだった。
「どうするんだ、これから。セバスチャン。」「はい、リンキ様にああも頼まれてしまっては是非もないでしょう。ジョウドの道場に向かうしかありません。」東大陸のどこにあるかもわからない道場に向かうことにした。「坊っちゃん、三年間も影に入りっぱなしではお腹も空いているでしょう。少し歩いたらご飯にしましょう。それと影、私を人前でお見せになるのは印象も大変悪いでしょうからお止めになったほうがよろしいかと。」
セバスチャンとは彼の影の執事である。彼の影に取りついており、彼を全力で護っている。封印されたのはミガク王国のほぼ独断ではあるが表面上はマーリセ以外の全ての国の同意を得ての封印であり、大変印象が悪いと思うのは当然だった。だがしかし、ミガク王国によって忘却魔法が使われてそもそもほぼ全ての人々がフーダス帝国に関する情報の全てを忘れていた、ということを彼らは知らなかったのである。フーダス帝国は当事者であり封印をされていたため忘却魔法が効いていない。「ああ、そうだな。とりあえずどこに向かうんだ?」「ミガク王国は封印の当事者です。東大陸に行くためにはいずれ通る必要がありますが、印象は悪いので中心の街を通ることはできません。食糧を確保するためにもまずはラフス王国に行って食糧を確保することが先決かと。」「そうだな、その残りも少なさそうだしな。」そんなわけで彼らの徒歩での冒険が始まった。プアル山脈の横を通り抜け、10日後、ようやくたどり着いた。「はぁ、はぁ、水が欲しい、、」彼は飢餓に陥っていた。食事こそ取ってはいたものの、残りは少なく、険しい道を通ったことで体力が奪われていた。だが、街の中なのでセバスチャンは声をかけるわけにはいかなかった。彼はそのまま倒れてしまった。「おい、大丈夫か!」周りの人が声をかける。「こいつ、だいぶ衰弱してるぞ。病院に運ぼう。」気が付くとピレンクは病院にいた。前の外伝でも話した通り、この世界は大量の第一次世界大戦の軍人の魂が100年前転移してきた世界であり、病院は最優先で整備されたので当然のようにある。「お気づきになられたようですね。だいぶ衰弱なさっていたので、3日ほど点滴を受けて栄養を徐々に補給していたのですよ。」と看護婦さんが声をかける。「ありがとうございます、、」「礼は運んでくれた男性に言って欲しいですね、もっとももうどこかに行かれてしまいましたが。とりあえず病院食を置いておきますね。」と食事を置いて看護婦が去っていく。それを見計らいセバスチャンが出てくる。「坊っちゃん!心配してましたぞ!」「よく言うよ、あんな無茶な旅になるならどこかで魔物でも倒しておけば良かったよ。」「武器がないのによく言いましたね、、」「でも槍と弓矢は父様に仕込まれていたからいけるほうだぞ?」「確かにお父上とよく特訓してましたが、、でも収入はどうします?お金はある程度、いやかなりあるとは言えさすがに食糧を沢山買い込んだらなくなりますが、、」「冒険者になろう。身分、名前は偽って。そうだな、、槍と弓矢を買ってロース、とでも名乗ろう。」無事1日で退院したピレンクは冒険者ギルドにロース名義で登録した。もちろん影の能力がバレるといけないのでソロである。「本当に弓矢と槍だけで大丈夫なんですか?」と受付の女性にいぶかしまれるが、「接近させないように立ち回りますので。」と押し通した。人がいなくなったところで、「お前に近接はお願いするからな。」「坊っちゃんの自信の秘密はそれでしたか、まぁ予想はついてましたがね。優秀な影使いの坊っちゃんなら大丈夫でしょう。」冒険者ギルドの依頼をこなしていく。薬草採取や魔物退治など定番の物がほとんどだ。取った薬草は余った分はギルドに売るではなく自分用にした。ポーションを買うよりは安上がりで済むからだ。影に荷物を入れられるので腐ることもない。基本的に影はアイテムボックスのように物を入れることができる。前回も話した通り生物も入れられるのがアイテムボックスとは異なる部分だ。こうして数日間は魔物退治と薬草採取でランクを上げて、賞金を獲得していった。そんな中「ロースさんにお願いがあります。盗賊退治にご協力頂けないでしょうか?報酬は弾みます。」「わかりました。頑張ります。」彼らはラフス王国南部の半島、ダイア半島に来ていた。ここに盗賊のアジトがあるようだ。「あそこだな。」「ええ、雰囲気からして間違いありません。」そこは寂れていて人が寄り付かない場所であり、盗賊が隠れてアジトにするにはピッタリだった。「ここはお前の力をフル活用させてもらうぞ。」「おまかせください。」人数差をひっくり返すには影の能力を使うしかない。影に潜入して見張りを一人ずつ倒していった。「なんだ、何が起きて」「やられた!侵入者が来た。全員警戒しろ!」そう言うが影から現れて至近距離から弓矢で射ぬいたり、首を締めたり、槍で刺したりとめちゃくちゃだ。攻撃しようにも実体のない影に攻撃しても効果がなく、切り取られようがすぐに復活する。
確かに数秒最大で復活にかかるとは言ったがそれが命取りになるのはユナイトした二人くらいのもので、盗賊程度ではその隙をつくなんてことができるはずがない。そもそも本体のピレンクが影から出ないので隙をつくのは無理だ。実体のある腕を狙っても引っ込められて拘束されたり、その腕を武器ごと掴んだら引きずりこまれて槍でブスリとやられるなど盗賊は次々と殺されていった。冒険者ギルドから「盗賊は基本的に捕まえても死罪にしかなりませんので容赦なく殺して構いません。」というお達しを受けたからだ。一度否定こそしたが「やるかやられるかの世界で甘いことを言ってはいけませんぞ。」とセバスチャンに言われてこの戦いにおいては容赦なく行くと奮い立たせたのだ。ピレンクだって人を容赦なく殺すのは反対だ。でも放っておけば金品を奪うだけではなく、命を奪い女を強姦するような連中だ。そんな連中に慈悲はないと今回だけは気合いを入れた。連中は逃げて再起を図ろうとしたがもう遅い。影魔法を全員につけておいてあらかじめ誰が逃走しようが仕留めるつもりだったからだ。「うわぁ、来るなぁ、来るなぁ!」「人をさんざん殺しておいてそれか。救いようのない連中だな。」弓矢で最後の一人も倒して盗賊退治は完了した。冒険者ギルドに報告すると、「確認しました。こちらが賞金になります。冒険者カードに入れておきましたので確認お願いします。」この世界では冒険者カードにお金が入ってきて、だいたいのお店でお買い物ができる。食糧は2ヶ月分は買い込んだので、これで出発できる。「すいません、お金も貯めましたし、食糧も準備したのでこの国を出ようと思います。」「そうですか、、ロースさんは有望だったですが、、ですがしょうがありませんね。どちらに向かわれるのですか?」「東大陸ですね。ジョウドの道場に向かうところなんです。」「ルブラ王国ですね。あそこはかなり遠いですが、それでも向かうのですか?」「ええ、ある人に頼まれましたからね。」「そうですか、行ってらっしゃい。」ということで二人はラフス王国を去った。「しかしこの道を戻るのか、、」「仕方ありませんね。何かテイムできるならともかく、、」「それだ。スチームボックスを買ってテイムすればいいんだ。」実は彼はこの経緯で一個持っていたのだが、この後の出来事で失うことになる。一旦戻ってスチームボックスを購入して山岳に住むシルバーウルフを捕まえて、乗って進む。「やっぱりこのほうが楽だな。」「ええ、間違いありませんね。」この方法でフーダス帝国の跡地まで3日で戻ってくることができた。
「前も思ったが本当に何もないように見えるんだな、、」「そうですね。」「進もう。この国を救うためにもあそこはヒントになるんだろうからな。」
少し脱線して、影の王について語ることにしよう。影の王キングはセバスチャンを組織の魔道具の強力な光魔法で失ったあとに父である王からシャドウスパイダー討伐後に受け取ったのだ。そのためこの旅のエピソードにはキングは登場しない。
影の王こそ、最初の影の人々である。そんな彼は人間の王だった。1000年前、彼と彼の国は繁栄をしていた。しかし、人間である以上逃れることができないものがあった。寿命である。繁栄もまた、いつかは終わってしまう。それを終わらせない、不老長寿になる方法はないだろうか、と考えた。ミガク王国の前身の国では肉体を保ったまま長寿になる方法は編み出されていた。ただ、その方法も数百年が限界値だった。老化物質を完全に止めることができない点と、経年劣化自体は止め続けることは不可能、という結論が出ていた。物質である以上、劣化は絶対に止めることはできない。たとえどんな魔法があっても、だ。竜族のような種族になったりすればまだ違うのだろうが、人間を保ったまま、知識を保ったままとなればだいぶ厳しいというのが常識だった。
知識を保った状態ではいたい。だが、死にたくない。彼らの繁栄は死んだら止まってしまう。少なくとも、死が苦痛ではなく安らぎに変わるまでは生きていたい、と王は考えた。そこで、肉体はもういい。知識さえ維持できるのであれば。霊体と似たような状態であろうとも、彼らの繁栄を止めたくない。別に今の世の中と比べたら言うほど大して繁栄しておらず、その知識を受け継ぐ必要なぞないと言うことは後の世で彼らは知ることになるのだが。
そして、王家とそれに同調した全ての人々が影になることを決断した。影になったあと、彼らは子供達に取りついて存在を保った。だからクイーンもいるがあまり登場しない。ピレンクについていないからだ。セバスチャンは複数体おりその内の2体が王子と王女であるピレンクとメリスについて他は城のメイドや執事についている。その子供達が死ぬ前にまたその子供達へ、と代々受け継ぎ、王族の一人が影の性質を生かして兵力を差し向けた結果、どの国も勝利できず一大帝国を築いたのだが、100年前の暴走で白い目で見られ、縮小が続き人々はラフスかミガクなどに逃げていった。その結果市街地しか人はいなくなり、そこに結界が貼られたことで完全に外界と遮断された。だからこそ国交が回復した後市国にパワーダウンしたのだ。ちなみに知識を受け継ぐ必要がないと知った後でも、子孫が絶滅でもしない限りは生き続けるようだ。いや、影だから生きているというのは微妙な表現ではあるのだが。理由は「もう影として子孫達を守ることが生き甲斐になっているから」だそうだ。ちなみに影の人々はそれ以後は一切現れていない。彼らが技術を持っているのだが、「化け物になるくらいなら寿命を全うしたい」という人がほとんどだからだ。
さて、フーダス帝国領地まで戻ってきた二人はミガク王国の中心地を避けて森の中を進んでいく。さすがに捕獲しているとは言え森の街道の中心でウルフは出せない。そんな時。「狙われてますね、坊っちゃん。」「ああ、そうだな。」気が付くと盗賊に囲まれていた。衣装は特段珍しいものではない。王族用の服ではバリバリ目立つため、旅に出る時にきちんと着替えている。「なんだこいつ!」「やってやれ!」弓矢で一人を倒して近距離に来たところを影で拘束し、それを仕留める。5人しかいなかったのであっさり退治は完了。「まだ声が聞こえるな。」「ええ、別の誰かを襲っているようですね。急ぎましょう。」駆けつけてみるとガッツリ馬車が襲われていてすでに数人と馬が殺されていた。何とか護衛が中の人を守ろうとしているが、多勢に無勢だ。放っておけば間違いなく全員殺される。「ここは見られようがあれで行くしかないな。」「人命第一です。仕方ありません。」影の力や弓矢を使って盗賊達を殺していく。数人も殺しておいて慈悲はあるはずがない。盗賊は不利と見るや一瞬で逃げていった。
「助かりました。ありがとうございます。」馬車から出てきたのは自分よりは年上ではあるが若い女性だった。ちなみにこのときピレンクは10歳で勇者パーティーとして旅に出るのが12歳である。「冒険者のロースです。あなたは?」「私はタイナです。ありがとうございます。お若いのにそこまで強いのは素晴らしいのですが、そちらの影の方はどなたなんですか?」さすがにここまで大立ち回りしてバレないはずはない。「私めはセバスチャンと言います。このことは坊っちゃんの出自に関わることですので、秘密でお願いします。」「わかりましたわ。あまりこちらとしても秘密を探られたくはないですからね。でも困りましたね、、馬を殺されたので足がなくなってしまったのです。ミガク王国で補給するにしても馬を借りることができるかは怪しいので、、」確かに護衛もあと2人しかいないしこのまま見殺しにはできない。「どちらに向かわれるんですか?」「ラフス王国です。3日後に到着したいのです。商談をしにいく途中だったので」見ると確かに荷物が沢山ある。馬を殺したのは足を奪って仲間でさらに襲うためだ。不利を悟って逃げたのもどうせ後でもう一度襲撃するためだろうしな。護衛が強いとは言え7人ではさすがに荷物を奪っても運べるか怪しい。殺されて数がさらに減ることは奴らも想定済みだろうし。ちなみに倒したのは4人だ。「じゃあ、秘密ついでに、セバスチャン。」「ええ、おまかせを。」セバスチャンが次々と荷物を入れてしまう。「驚きました。影の人にそんな能力があるなんて。」「お褒めに預かり光栄です。」「馬はどうするんですか?」「ええと、、」「僕達は乗り物用の魔物を持っています。」護衛の二人が出したのはエレキホース。魔物だがテイムされており十分乗れそうだ。「しかしさすがにこれ一体ではきついような、、ロースさん達が乗れませんし」「いや、僕も持っているので」シルバーウルフを出す。「すごいですね。ロースさん捕獲もできるなんて。」「とりあえずタイナ様をこちらで護ります。ロースさんに護衛をつけます。荷物役ですからねぇ。」「わかりました。」こうして来た道を戻ることになる。途中盗賊は予定通りに襲ってきたが、回避してラフス王国に到着。「すごい早いですね。もう到着ですか。」3日間で逆戻りして商談に臨む。
「タイナ様ですか。コーストタウンからよくこの遠いところまでお越しくださいました。盗賊の襲撃に会われたそうですね。それはご苦労様でした。ところでお荷物はどこにあるのでしょうか?盗賊に全て取られた、、」「ここにありますよ。」別室で中身を解放しておいて運んできたのだ。「馬鹿な!あり得ん。なぜ盗賊に襲われて荷物が無傷なんだ!?」「その言い方、あなたがいかにも黒幕と言った感じですね。最初から料金なしで奪おうとしたってそうは行きませんよ。」というと護衛の二人がその男を拘束する。ぞろぞろ出てきたごろつきどもも拘束する。「その荷物って一体何なんですか?」「コーストタウン名産の海産物ですよ。魔法で冷凍保存して持ってきているんです。まさか取引先が今回の黒幕だったなんて、、」警察に連絡して盗賊一味含めて連行されていく。「ロースさん、本当にありがとうございました。助かりましたよ。ところで、あなたの正体って高貴な身分の方なんですか?」「なぜそれを?」「セバスチャンなんてつくのはかなりの貴族様、または王族でもないとあり得ないでしょうからね。」
「それでですか。タイナさんが話すのなら教えますよ。」「私はコーストタウンの領主の娘です。別に隠すほどのことでもありませんし。」「僕は、、」正体を教える。彼女の忘却魔法が解ける。フーダス帝国に関する出来事を忘却しているが、フーダス帝国と名前を出すことで思い出すことが出来るのだ。「あの国の王子様ですか。さすがに1領主の娘の私では釣り合いが取れそうにないですね。」「そんなことはありませんよ。ただ、国を救うために行動しているので、おそらく途中でお別れすることになるかと。」「ええ、わかっていますわ。私に力がなくてあの国を救う力はありませんが、もし地図魔法に乗るようになったら国交をきちんと回復させて、海産物の交易を再開したいと思っています。」この約束は2年後に果たされ、あの事件のあとにタイナは交易を復活させて飢餓になっていた住民を救った。さすがに肉体の時が止まっているとは言っても出たときには強烈な飢餓状態になるのはわかっていた。一気に時が進み脱水が起きるためである。ちなみにユナとの婚約が発表されて彼女は残念がっていたが、彼女自身はハーレムに入るつもりは毛頭なかったので諦めてすでに届いていた縁談にサインして結婚することになる。その相手はリファの兄の第一王子、後のラフス王国国王である。もっともピレンクはユナ一筋でハーレムをしたりはしないし、王族なのでハーレムをするにも血筋が大事になるため、コーストタウンの領主の娘では彼女の言う通り通らなかった可能性が高い。勇者の場合は王族と結婚することも功績次第では可能だ。今回の場合魔王の息子という脅威を退治したわけだから結婚には十分過ぎる功績になる。ラフス王国との縁を優先したからこの縁談になった、という話だ。それはこの襲撃事件も大きく関係していた。時を戻そう。ピレンクはタイナをコーストタウンに送り届けることになった。また盗賊が襲ってくるかもしれないからである。ちなみに荷物は別の業者がきっちりと買い取ってくれたので問題はない。また3日かけて山道を戻り、夜森でテントを張って見張りをしていると、、「いるな。」盗賊が囲んでいた。しかし狙いははなからスチームボックスだった。移動に魔物を使っていると知った盗賊は正確に腰のスチームボックスを狙い撃ちして使用できなくした。殺意のある攻撃だとセバスチャンに受け止められていた可能性が高いがはじめから破壊であれば殺意も少なく、受け止めるのが遅れるのだ。つまり、破壊がメインなので殺害を狙った矢を放ちつつそれに気をひかせてその間に壊されたのだ。護衛のボックスも破壊されたのだが、護衛対象を守ろうとして亡くなったあとに破壊された。破壊されたボックスからエレキホースとシルバーウルフが出てきた。怒りに狂い逃げ惑う盗賊を殺していく。「ランダ、あなたのことは忘れません。他の4人同様。シーヤ、ちゃんと守ってくれますね?」「命に代えても。」ちなみにランダさん達の遺体もまたセバスチャンに入れて運び、家族のもとに返す予定だ。怒った魔物達は盗賊に退治された状態で発見された。さすがに数が多すぎたようだ。しかしこれで狙い通りの状況になってしまった。護衛対象のタイナを守りながら乗り物なしで守り切る必要が出てきた。「厳しいですね、これは、、」シーヤさんがそう言う。確かにこれはきつい。他の馬車とかを見つけようにも盗賊が出やすいここを通るのはリスクが高いから他の馬車がこちらを無視する可能性が高い。乗せたやつが盗賊でした、なんてオチは避けるだろうからな。「とりあえず食糧は沢山ありますので心配はないでしょう。問題は盗賊ですね。」そう、セバスチャンには戻ったときにさらに買い足してもらった。ギルドからの報酬も多かったし、これからの苦労を考えると必然だった。もちろん武器もメンテナンスしてるし矢も沢山買ってある。「夜は私の中に隠れましょう。それが一番の対策でしょう。夜は奴らのフィールドですから、この人数ではそれが一番です。」「確かにそうだな。」「えぇ?あの中って入れるんですか?」「僕は3年間入りっぱなしだったんだぞ?」「そうですか、、わかりました。あなた達にお任せします。」ということで夕方になるまで歩いて、夜になる前に影に隠れる作戦になった。「これが影の中、、真っ暗ですね。」「こんな世界に3年間も入っていたなんて、気がおかしくなりそうですね。」「実際セバスチャンとお話してなかったら間違いなく精神を病んでいたぞ。」「今影に入っている民達もお話をして膨大な時間を過ごされているのです。必ず助け出しましょう。」「そうだな。リンキさんが教えてくれた道場だから必ず強くなれるだろうな。」「リンキさんって大賢者様じゃないですか!そんな人がどうしてあなたと知り合いなんですか?」「それはだな、、」「リンキ様が託した希望なんですね、あなた様は。私には無理ですが、旅の無事を祈っていますよ。」「ありがとうございます。」そんなやり取りをして眠る。夜が襲えなくなると昼間に襲わざるを得ないのだが、こちらの実力を知っているからだろうか手は出してこない。時折魔物は襲うがシーヤさんとピレンクで退治できる。半月が経ったころ、ようやく包囲して対象の捕縛にかかろうとする盗賊達。しかし、影魔法でマーキング済みだったため簡単に拘束された。なんでもかんでも殺すつもりもないのでセバスチャンに頼んで奥に押し込んでもらう。そして1ヶ月でようやくコーストタウンにたどり着いたのだが、、「冒険者ロースだな。貴様に逮捕状が出ている。連行させてもらうぞ。」とピレンクは逮捕されてしまった。なんでも、タイナ嬢の誘拐容疑ということらしい。「あの方は私を助けてくれたんですよ!どうして誘拐容疑なんて出てるんですか!」「そ、それはだな、、ラフス王国から戻ってくるという連絡は受けていたのだが一向に帰ってこないから聞いてみたら冒険者ロースという男が連れ回している、と馬車に乗っていた人から聞いたものだからな。」「ちゃんと聞いてましたか?私たちは馬車も護衛も失っているんですよ?その状態からここまで無事で戻ってくることが出来るのはあの方なしでは不可能でした。」「タイナお嬢様の言う通りです。ピ、いやロース様がいなければお嬢様は今頃強姦されているか、お亡くなりになっていたでしょう。」「そんなことを言うか!あいつが誘拐していたのだから1ヶ月もここまで来るのにかかったのではないか?でなければ馬車を拾えば」「お父様は本当に状況をわかっているのですか?盗賊が頻繁に出るあの道で他の人を拾うリスクがどれだけ高いのか、盗賊が扮していたら夜襲されて金品と命を奪われる可能性だってあります。そんな道で馬車なんて無視もいいところでしたよ。」「うぐぅ、、」「今すぐあの方を解放してください。」「本当にやましいことがないかを確認して解放する。それでいいか?」「ええ、彼の身元は私が保証します。」こうして3日間拘束されたものの、そういうことをしていないと分かったため釈放され、お詫びの金とお礼の金が同時に支払われた。「とりあえず、こいつらは置いておこう。」
犯罪者どもは警察署の前で解放して彼らは逮捕された。もちろん、影の力であることはバレないようにして。そして、「遺体を運んで頂き、本当に感謝します。ランダを始めとする5人は遺族のもとに私が責任を持って返します。」シーヤさんに5人を預かってもらった。もちろん戦闘時の状態ではなく、きちんと綺麗にした状態にしてある。「お願いします。」「これからどうします?」「ああ、東大陸に渡るんだろ?」「そうは言ってもですね、まずは調べないと。」「そうだな。」翌日、調べてみると、
「ラカス領に行く必要があるのか。で、そこは極寒で防寒着が必須で交通網が整備されていない、と。で今は冬で行くのは不可能、春になるまでは足止めと言うわけだな。」ちなみにマーリセ国には行くルートもないわけではないがそちらはすごく遠回りしつつ海の魔物に警戒しながら行かなければならないため危険過ぎてチケットが販売できないようだ。だからこそ足止めになるのだし。「冒険者ギルドに行こう。」そうして再び依頼を着実にこなしていく。この1ヶ月で食糧はほぼ消費しきってしまったので、溜め直しして備える。しかし。「春には行けるには行けるが、氷で道が閉ざされている可能性もある。だから念のため夏まで待ったほうがいい」と言われた。春の間溶けるのを待つのか、夏まで稼ぐのかだが、全く稼げないと分かっている向こうで3ヶ月も待つ可能性を考えると実質1択だった。ただ、盗賊はだいたいいなくなったのでそこまでわりのいい依頼はなく、人助けや荷物運び、落とし物を探したりもこなしつつ雷の森の魔物の退治もする。馬車の通るルートに出てくる魔物を退治していく。とにかく金稼ぎを優先していたのには大きな理由がある。船の料金が渡るだけなのにすごく高いのだ。海の魔物が出てきたりする関係で冒険者を雇う必要があったりするためで保険料も込みの価格らしい。その冒険者になるためには年齢制限があるため現在11歳のピレンクでは無理だ。本編でも述べたが冒険者になるにしても基本的に年齢制限がある。そんな中でピレンクがなれたのはステータスの一部分が優れていたから。それが影魔法を操る魔力の数値。魔法の種類こそ隠していたものの、それだけ優れた数値を持っているならどんな魔法でも問題ないと判断してギルドが登録に応じたのである。基本的にこのあとも出てくるが子供がまともに働ける職業は地球の価値観があるためほぼ自己責任の冒険者位しかないのだ。ただ貴重な子供達を簡単に死なせるわけにはいかないので、基本的に年齢制限を設けつつ、それ以下の子供がなるためにはステータス面で特筆した能力を持っている必要がある、としたのである。これはマタカが子供達が冒険者になってダンジョンで死亡する状況を変えたいとしてこの制度に変更したのである。もちろん、自身の子供達が冒険者になるときに矛盾しないように作った制度だとも言われている。トーイが力、素早さ、ユナが魔力防御と素早さに優れていると認められている。ちなみに収入面で厳しく、冒険者にならないといけないと親から言われた子供でステータスが足りない子供達は普通にその家庭に対して生活保護なりのサポートをすることになる。ギルドはこの世界ではそういうセーフティネットも兼ねているのである。話は戻して、船に乗るのにはだいたい防具と同レベルのお金が必要なので、食糧を買い込みながら高い金を準備して夏まで待つことになった。タイナさんとは度々会ってはいたけれど、彼女との関係は進展しなかった。彼女自身が何かこちらと一線を引いているような気がしたからであり、あまりこちらも意識しないようにするしかなかった。彼女自身は確かにピレンクを好きな感情はあったのだが、重要な使命がある彼をこの地にとどめてしまいかねない、と気持ちにセーブをかけていたからである。6ヶ月の間にコーストタウンのだいたいの街並みは見て回っていた。ノレドの実家の防具屋も、マキがいた孤児院も見ていた。ただ、彼らに会うことはなかったのだが。ちなみに防具は着けているには着けているがモンスター素材の防具ではない普通の軽鎧で防御力は期待できない。影使いは防具をつけるよりも機動力を優先するほうが強いと教わっているからだ。そもそもほぼ物理無効にできる影使いに防御力はほとんど必要ない。本編でも影の衣こそもらっているがピレンクがまともに防具を整備しないのにはこういう事情もある。
そして時系列は進み、いよいよラカスに向けて出発する。タイナさんも見送りに来てくれた。「ロースさん、ちゃんと使命を果たしてくださいね、私との約束ですよ。」「ああ。ちゃんと果たして戻ってくるつもりだ。」そうして船は出発した。「本当に魔物が来るんだな、、」空は明るいのに船底にどんどん魔物が押し寄せるのだ。冒険者が魔法や武器を駆使して退治しながら進んでいる。「これ、どれぐらいかかるんですか?」「だいたい3日ですね。昼夜交代で常に魔物を倒しながら進みます。」これだけ冒険者を雇って退治していたらそりゃお金がかかるよな、と思ったそのとき。「ううっ、、」「大丈夫かい、君?」船酔いしたようだ。魔物との戦闘と波によってだいぶ船が揺れたせいだろうか。「僕達に任せて君は寝ているといい。まだまだ航海は続くからね。」部屋に連れて来られたが気持ち悪いのは変わらない。「坊っちゃん、大丈夫ですか?」人がいなくなったのでセバスチャンが出てくる。「気持ち悪いぞ、、影に入れといてくれたほうがまだいいから、誰か入って来るまでは頼む」「かしこまりました」
影に入ると振動が消える。外界の影響が影の中では消えるのだ。
「落ち着いたわ、これ3日間続くのかよ、、」「仕方ありません。我慢しましょう。」特にトラブルも大きな魔物も襲ってくることなくラカス領に到着した。夏と言うにも関わらず氷は普通に残っているし、氷点下ではないにしても寒い。耐寒用の服装はさすがに買って来たので、準備して歩いていく。冬に大雪が降り続け、春に分厚い氷が残り、夏にようやく溶けて、秋は冬に閉ざされる前の準備をするのに忙しいらしい。現地にも人が住んでいることを冒険者さん達から聞いて、そんな生活をしているという話になったのだ。雪が特に凄くて交通網をまともに引けないレベルらしいのでバスが来れないようだ。ただの豪雪地帯なら地球のように道路は作れるかもしれないが、ここは魔物が闊歩するフィールドなのでそう簡単にはいかない。数日かけて洞窟にたどり着いた。「ここダンジョンだよな?」「そうですね。別に攻略自体は初ですけど依頼とかで潜ってますよね?坊っちゃんは。」「まぁそうだが、はじめて自分のためにダンジョンを攻略するんだ。」
洞窟の奥を進んでいく。ここは階層とかはないダンジョンであり道をまっすぐ進んでいくものだった。もともと坑道があったところが人の出入りがなくなってダンジョン化したようだ。アイスウルフ、アイスシープなど本編のナダカ氷山に近いこともあり同じ敵魔物が出てくる。だがピレンクにとっては特に問題なく処理できる相手だ。もとが坑道で狭いダンジョンということもあり、大量に現れないのでセバスチャンとの連携攻撃で複数体を仕留めることができるのだ。ボスも特にいなかったので抜けていく。ちなみに数日かけて抜けておりその途中は食糧を食べつつ影の中で寝るということをしていた。抜けたあとはバス停までたどり着きバスに乗って首都のヨーヤークまでたどり着くことができた。バスや電車は揃っているからあとは簡単にルブラまで行けると思っていたのだが。「なんでここも料金が高いんだよ!」バスはそこそこだったが大陸を横断する列車が非常に料金が高い。船より高いのだ。「なぜこんなに電車の料金が高いんですか?」と聞いてみると、「交通の足として使うのは鈍足の列車のほうが一般的でして、トンネルを開通したり魔物を退けながら作業をしてさらに冒険者が周りの魔物が出ないように監視が必要なので電車は非常に高いのです。」とりあえず鈍足の列車、というより蒸気機関車の駅に行ってみたのだが。「うわぁ、、」人々がごった返していた。値段は確かに非常に庶民的な価格なのだが、通る部分が魔物が出ない部分を大回りして移動するらしいので往復に時間がかかる。電車なら数時間のところを蒸気機関車はルートのせいもあって横断に半月はかかるらしい。で、機関車もそこまで数があるわけではないのである時には凄まじい大混雑になる。ないときには閑散としているらしい。少し駅から外れて彼は悩んでいた。あまりにも高い電車、大混雑と本数の少ない機関車。機関車に乗ろうとしていた人から話を聞いたが車内は押しくらまんじゅう状態で是正勧告が出るほどらしく死者も出たほどだと言う。影の力を使えば防げるが、さすがに大勢の前で使うのはまずい。「せっかくこんな広い国に来たのですから歩いてみてはいかがですか?乗り物に悩む位なら。」一応隣街くらいならバスが出ているので問題はない。ただ、マーリセ国は非常に広い。ミガク領内を大回りして徒歩で1ヶ月かかったの同レベルの広さはあるのだ。あとバスと船でそれなりにお金がかかったので減った食糧も含めて考えなければいけない。ルブラ王国まではまだまだ距離があるらしいので、金策と食糧問題は解決しないと前に進むことはできない。
「冒険者で今まで通り稼ぐか。」と意気込んで冒険者ギルドに行ってみると「依頼がほとんどない!?」そう。首都のギルドでは魔物がほぼ退治されているため依頼がなく、あるのは便利屋くらいしかない。とりあえず隣町にもギルドがあるらしく、そちらはダンジョンも近いため依頼が沢山あるらしい。行ってみることにしたのだが、「なるほどな、、」ヨーヤークの隣町とは考えられないほどに町が発展していなかった。ギルドに行ってみると予想通り沢山の依頼があった。これらをこなしていくことになる。主な依頼は魔物退治でダンジョンから溢れる敵を倒したり、先ほどの電車の運行を邪魔する魔物の排除がメインだ。実際に電車の運行を邪魔する魔物退治の依頼を受けてみると、動く金属の塊である電車に対して容赦なく突っ込んでいく魔物がいたり、乗客狙いの魔物もいたりした。前者はサンドバッファロー、後者はサンドスコーピオンである。これは確かに危険だな、と実感しながら依頼をこなしていくピレンクであった。お金も貯めて、食糧も調達した頃にはすでに3ヶ月経過していた。なんとか機関車のチケットが取れたので、首都の隣町ドコラ町を去ることになった。道中の旅は魔物こそ出ないものの、「人にこんなもみくちゃにされるのははじめてだ、、」と語る通り足の踏み場もないほどの満員列車。席は埋まっており立つ必要があった。旅は続いたが周りの客のせいで景色はあまり見れる状態ではなかった。影に隠れれば楽だっただろうが前にも言った通り人前で堂々と能力を使うことはできなかった。影使いはフーダス帝国以外にもいたが彼が知らなかったのもある。停車駅に着いては人が降りたり乗ったりし、夜になると列車はメンテナンスのために止まり、人々は駅から降りる。朝になると再び大量に乗っていくのだ。そんな生活を半月ほどして機関車の最終目的地、リーカフォルに到着した。ここから国境を超えてルーペ山脈を越えればようやく目的地だ。あまりにも人々に揉まれて過ごしたため、一旦1日休息を取った彼は「ようやくこの国を抜けていけるんだな」「長かったですね。」上陸した場所から含めて約5ヶ月。やっと抜けるメドが立ったのだ。ただ聞く話によるとエグジム村には冒険者ギルドが置いてないらしく、ろくに稼げない以上最後になると言うらしいので魔物を倒して稼いでおり減った食糧も調達。それを半月ほどやってようやく彼らは国境を目指した。「冒険者のロースか。その年齢でよくここまでたどり着いたものだ。」と国境の兵士に誉められた。実際10歳から始めてここまで旅をする人間なんてほぼいないのだ。
兵士の発言は登録したのがラフス王国だったことと年月が経っていたことを表す台詞である。数日かけてエグジム村に到着して休憩を挟む。妖精の森があるというので寄り道してみた。妖精の話題を影にいる間に話したことがあるからだ。しかし、「見つけられませんね。今は仕方ないので先を急ぎましょう。」「そうだな。もしかしたら会えるかもしれないし。」ルーペ山脈にやってきた。「いよいよだな。」「あの方との約束を果たす時が来ましたね。」本編でも通った洞窟を進み、ルブラ王国に入った。魔物もこの大陸なら影の力と武器で十分対処可能だ。そして本編の道場に乗り込む場面に続くのだった。
おまけとしてネントとロキの冒険をあげよう。ピレンクが2年弱をかけて旅をした行程に比べると観光しながら2ヶ月というのはあまりにも短すぎる。ただ、これにはからくりがある。実はロキがマタカ達から去るときにワープストーンを勝手に持ち出していたのだ。当然そのストーンには地点が記録されているので、移動ができたのだが、問題は地点である。今は各地にあるが昔はミガク王国が渋ったので東大陸にはマーリセ国の首都ヨーヤークにしかなかったのだ。そしてネントが一文無しでお金を借りながら冒険、もといマタカのストーカーをしていた。彼女の家は商人の家であり、町に行けば借りる伝手があったのだ。後に夫婦で商人になるときに大いにお世話になった。もちろんではあるが現在はきちんと返済している。もちろん親に無断で借りていたので大問題になったのだが、後で語るとしよう。
マタカに擬人化してごまかすことで彼と引き離すことに成功したロキ。彼女の要望であるマーリセ国の観光に付き合うことに答えながら彼女の実家に戻るように説得する。「ダメだよ、帰ったらめちゃくちゃ怒られちゃう。」憧れのマタカが変身とはいえ付き合ってくれたおかげで冷静になったせいか、さすがにやったことの大きさを彼女は理解しているのだろう。正直借金の額がかなり膨らんでいたのだ。ちなみにマタカにはその日の夜に無断で持ち出したことがバレた。当然ではあるが。「なんで勝手に持ち出したんだ!?」「それがですね、、」連絡の魔道具を使って連絡する。従魔に対しても話ができる魔物には持たせていたことがマタカにとって功を奏す結果になった。彼女の借金の事情を話して実家に帰るように説得していると言うと、「なるほどな、ストーカーするにしてもどこからそんなお金が出ているのかと疑っていたが、そんな借金してまで追いかけて来ていたとは。で、旅の資金はあるのか?」聞いてはいるがあるはずがない。「ありません、、」「仕方ない。ワープストーンを返してもらうついでにギルドカードに入っているお金を渡す。それを軍資金に充ててくれ。返済はいらない。お前が俺にとって必要な時に働いてくれればな。だが、ワープストーンは大切な物だ。そう簡単に取るな。魔物相手だから窃盗罪を成立させるのは普通は難しいが、今は人間になっているんだから俺が訴えたらお前は牢屋行きだ。そうなったらお前だけでなく彼女が路頭に迷うことになるだろ?」「はい、ごめんなさい。」こうしてその日の深夜のうちにマタカはドラゴに乗ってマーリセ国に回収しにきて、その代わりの軍資金を渡した。「アイテムボックスもあって魔物の素材も山ほど入ってるから金には困ってないんだ。だから遠慮せず返済とか考えずに使え。」「ありがとうございます!」そんなやり取りを実は見ていたネントはマタカ本人が別にいることをここで知ることになる。ただの変装なら彼女は熱心なストーカーなのですぐに見破っただろうが、変身でありなおかつマタカの遺伝子を元にしているので声や匂いなども同じ物を再現できてしまうのだ。
「じゃああの人は一体誰なんだろう!?」ただ会話の内容は遠くから見ていたので聞いていなかった。「でも、本人からお金を借りれるってすごい人なのかな、、」とネントは思っていた。
とりあえずマタカからもらった資金を元手に旅をすることになる。ピレンクが持っていたお金の最大値の3倍くらいは渡されたので、電車に乗っても問題ないのだが、あまり借金は増やしたくない彼はさっさと満員の機関車に乗ってマーリセ国を脱出しようとしたのだが。「ここ景色凄いね」「氷で綺麗だね」とネントは各駅に止まってはご飯を食べて完全に旅を満喫していた。おそらく帰りたくなくて現実逃避をしているのだ。帰らなくてはまずいことは彼女も当然わかっている。借金をかなりしているのだから時間の問題、というか商人の情報力的にすでにバレている。このままとどまったらとどまるで両親が探しにくることもわかっていた。知り合いが一杯いると言うことは居場所が伝わるのも早い。
そんな旅の夜。2人は一緒に寝ていた。ネントは別人だと分かりながらもロキに尋ねる。「マタカさん、ちゃんとこれからも守ってくれますか?」「当たり前だろ。今のお前がパートナーなんだからさ。」「そうですか。では私を抱いてくれますか?」「!?」「憧れの方を目の前にして一緒にただ寝るだけ、と言うのもおかしいでしょ?」「まぁ、確かにな。」ネントはここで正体が別人であるなら、何がなんでも断ろうとするはずだと思っていた。今の彼女にとってマタカが別人であろうと、彼が一緒にいて一緒に謝りに来てくれるという存在感の大きさは心の支えになっていた。ただ、ロキ視点ではバレていないと思っていてバレないように応じるという考えまではなかった。「あなた本当に非力ですね、本当に本人ですか?」「本人だよ?」彼女もさすがに別人とは知っていたけどここまで力がないとは思ってもいなかった。人間に変身している間は魔力の大半を使うため元々魔物状態でも力のない彼が変身するとびっくりするくらい筋肉から力が出ない。あまりにも遅すぎて彼女自身が気持ちよくないのだ。当然行為は失敗に終わる。「さすがにダメですよ?これであなただけ気持ちよくなっても。次は努力してください?」「わかったよ、、」全く想定していないところで別人と思われてしまったロキはがんばることにした。要は力を出せるようにするのだ。各駅停車で止まりながらもゆっくり力を出す訓練をこっそり行っていた。そんな旅の中。「魔物が出たぞ!」との連絡が。「マタカさん、行くんですよね。」「ああ、勇者だからな。」さすがに夜にあんなダメなところを見せてしまったが、今回は彼女だけでなく全体のピンチだ。カッコつけるだとか言っていられない。「今のお前、それだけ俺を再現できるのなら俺の魔法も使えるだろ。だが杖がないと魔物状態であってもきついだろうからあいつの予備の杖も渡しておくぞ。」とマタカに会ったときに言われた。剣は見てくれを真似するためにすでに持っているが、非力なことを考えれば魔法がメインになるだろう。ちなみにリンキほどではないがマタカは攻撃魔法を使える。使えるのはサンダーアタックとファイアーボール、アイスショットのみだが。そう、本来はあるはずのエレメントのダンジョンは10年前にはなかった物なのだ。ラウスト山やプアル山は彼らの場合登らなかっただけだが、ほとんどその手のボスは存在すらしなかった。ではなぜ今はいるのかについては本編にて解説する。
そこにいたのは電車に突っ込んでいたサンドバッファロー。かなり狂暴な魔物だ。ロキはサンダーアタックで攻撃して痺れさせる。そこにファイアーボールを当てて、身体を熱くさせてからアイスショットで攻撃。温度差を作り出して疲労させてから首を切り落とそうとするが、こいつは固い。非力な彼では比較的柔らかい首部分でさえ切れない。そこで彼は奥の手に出る。人間の姿を保ってバレないように一部分を元に戻した。腕を毛むくじゃらにしたのである。遠目で見ているのと長袖を着ているので周辺にはバレていない。首を切り落としてようやく戦いは終わった。
「マタカ様、ありがとうございました!」「本当にカッコよかったですよ!」と周囲の人から声をかけられる。ネントが近づいてきて、「今のは本当にかっこよかったですよ。」と褒められた。
「ありがとうな。」本当の勇者ではないにしても、目の前の人達を助けることができたことは素直に喜ぶべきだ。その夜。「ちゃんとリベンジしてくださいね」ともう一度やり直すことに。そもそも別人だとわかっているのに寝るのはおかしいだろ、となるがもともと彼女はストーカーでまともな心の持ち主ではないわけで、当の本人は拒絶していて絶対に結ばれないということを知っていることを考慮すると、本人の遺伝子を持って変身したロキに対して歪んだ愛情を持っているのだ。彼との旅をする内に「本人ではないけど、限りなく近い拒否しない別人」という感覚になってきていた。本人への愛情を拗らせているネントにとってはとても都合の良い人になったのである。あわよくば別人であっても彼に似た遺伝子を取り込みたいという欲望があの発言に繋がったのである。そしてそれを断るのはバレてしまうとまずいと考えるロキにとっては弱みとなった。まぁ猫の魔物なので遺伝子を取り込んだところで猫に近い赤ちゃんになるのだが、そこまでは彼女は理解していない。魔物を単独で倒して魔力の力が上がったことと変身を一部解除したことで最後まで完遂してその夜は終わった。もちろん裸なのでバレないように脚の一部を変化させている。
「やってしまった、、」ロキは後悔していた。もし彼女との間に子供が産まれれば、すぐに正体がバレる。彼女の期待に沿おうとして最後までやってしまったことが大きなミスになった。実際の猫も避妊とかしなければほぼ必中なので、猫の魔物である彼も同じである。とりあえずさすがに今話しても仕方ないので、話すときを待つことにした。つまり彼女を実家に送ってからにする。おそらく妊娠が確定してないタイミングで言っても信じてもらえないだろうからである。やってしまった以上はもう彼女の恋人としてやっていくしか道はない。旅を続けることにしたのだ。
さて、大きな出来事があったものの、無事にリーカフォルまでたどり着いた二人。降りた駅で色々食べたり観光していた結果、1ヶ月半以上もかかってしまった。国境を超えるのはネントが手続きをやってくれた。フィールドに着くなり魔物に囲まれた。スパイダーである。しかし、魔法が三種類使えるので何事もなく倒していく。杖のおかげで変身を解除することなく使えるのだ。ロキは走れるのだが、ネントが遅いので歩くのに時間がかかる。1日野宿する羽目になった。「魔物襲ってくるかな、怖い。」フィールド内での野宿は非常に危険なのだ。ロキはさすがに寝ていたら二人共やられそうなので一晩中起きている。ある程度の食糧が入ったバッグがあるのでそっちは心配なかった。そもそも大量のお金を持ち運びするにもマジックバッグに入れていたほうが楽だから、マタカ達はバッグごと渡したのだ。スパイダーがやってきたが起きていたためすぐに倒すことができた。夜ということもあり襲ってきたのはこれだけで済んだ。なんとか翌日にエグジム村にたどり着いて一泊することに。翌日ルーペ山脈の洞窟を越えようとした時に事件は起きた。「きゃああ!」ネントが魔物に襲われた。暗闇からのイビルバットの襲撃。吸血されたらしく意識を失っているようだ。仕方なく完全に魔物に戻ったロキはネントを抱えて全速力で走った。一気にルブラ王国の前に着いたので人間に再び変身して門番の目をなんとかごまかす。非力な彼では変身した状態では運ぶのに精一杯ではあったが、恋人にするしかない以上彼女を失うわけにはいかない。病院までネントを連れていったが限界を超えて走ったので「すいません、変身の限界なので一旦そちらで召喚してくれますか?人前で変身が解けそうで、、」「わかった。少し休憩したら元の場所に送還魔法をかける。それでいいか?」「ありがとうございます。」なんとかギリギリで召喚が間に合った。正直少しでも遅れていたら変身する様子をバッチリ見られていただろう。召喚されたのはドラゴンの上だった。そう、ドラゴで移動中だった。図鑑を作るため次の魔物の棲息域に向かうところだった。「で、何があったんだ?」「実は、、」
「ちょっと休憩したらすぐ戻ったほうがいいぞ。さすがに両親の住むリチ町に近いから迎えに行くだろう。」戻って病院に駆けつけると、「心配したのよ!あなた!」との叫び声がネントの病室から聞こえる。まさか。「借金作りまくって勇者を追いかけるってなんということをしたんだお前は!」ネントの両親だった。
しかし、父親が罵声を浴びせているが彼女は気絶したまま。かなり血を吸われたようだ。すると両親がこちらに気付いた。「あなたがここまで送り届けてくれたんですってね。本当に感謝しているんですよ。ありがとうございます、勇者様。」今の彼は勇者マタカの姿のため、当然そう見える。「この度は娘が大変無礼なことを致しました。にも関わらずあなたはこうして娘を連れて無事戻ってきてくれた。本当に感謝しているのです。ありがとうございます。」ロキは彼らの両親を騙している。確かに連れてきたことは事実だ。でも、自分は勇者ではないし、恋人になるしかないとは言ったがお互いに好き同士とは言えない間柄だ。そもそも正体はもちろんだが勝手に手を出したことがバレたらどうなるか想像もできない。人に言えない罪悪感が徐々に彼を苦しめていく。
ネントはその日のうちに目を覚ました。両親が来ていたことに驚いたが、もう彼女も割りきったようだ。「心配かけてごめんなさい。借金もあとで働いて必ず返すから。」「信用できない!」犯罪していたのは事実なので信用ならない。「とりあえずすでに皆さんの分を肩代わりはしといてあげたから、私達に少しずつ働いて返すこと!いいね?」「わかりました、、」「私も彼女に少しずつ協力して返すのを手伝います。」「いいんですか?助かります、このお馬鹿な娘ですいませんね。」とりあえず彼女の手伝いをして少しでも借金を減らすことに。しかしお父さんがボソッと言う。「でも勇者さんって魔物図鑑集めの旅でこんな娘に付き合っている暇はないのでは?」そう、いくら化けても本人が有名人だから今何しているのか情報力を持っている商人には気付かれてしまう。軽い怪我だったので退院してとりあえず4人でリチ町まで帰還した。こうして2か月近くかかった旅は終わったのだが、、まだまだ波乱が。「大丈夫か?」「ええ、問題ないわ。」
二人は両親に習いながら商人を始めた。両親にはすでにマタカとは別人だと言うことは伝えた。それに関してはもう隠せないと判断したからだ。「さすがにわかりますよ、それくらい。今のあなたの位置と旅に出ている彼の位置が違いすぎますから。でも、あなたが助けてくれたのは事実ですから、問題はありませんよ。」
ここで例の問題が。彼女が妊娠したらしい。明らかに悪阻と思われる症状が出ている。商人で売り物を販売する間、気持ち悪そうにしている。彼女には数日休んでもらうことにしてロキ一人で頑張ることに。ただ両親も悪阻に気付いたらしく家族会議が開催された。「なぜこんなことになった、二人共。」「旅で憧れの人と結ばれたと思ってはしゃいでしまって、、」「はしゃいでどうこうなる問題じゃないぞ、子供は!おそらく娘がだいたい悪いことはこれまでの経緯から大体察するが、君もきちんと責任があるんだからしっかり責任を取ってくれないと困る。」「はい。」「だから結婚しなさい、いいですね?」「「はい。」」こうして理解ある両親のもとで結婚することになったのだ。で、彼女に別人だと告白し、猫の魔物であることも告白した場面まで行くのだ。これが一連の騒動の顛末である。外伝2終
今回も前回と同じく20000文字ぐらいになりました。次回は本編の続きから書いていく予定です。2章終了時に外伝3を投稿予定となっています。この内容は本編ともこれまでの外伝の物語とも大きく違う構成になっている作品になっています。2章の終わりの続きからなので主人公は違えど続編的な立ち位置に該当します。




