異常おにごと
今日は僕の誕生日なんです!!!
お祝いに沢山読んで評価や感想をお願いします!()
「一人も見つからない!
今日はホントに不運だ!」
風里が、じゃんけんでの鬼決めを提案した約20分後。ラウワン○ワンを一人で徘徊する、少年の姿があった。
鬼が決まった直後、悲痛な叫びを上げる紫砂斗を置いて、男子たちはラウン○ワン内に散らばっていった。
そこから五分経ち、紫砂斗が目隠しを取り捜索を始めたのが、今から二十分前。
一度最上階に上ってから、隅々探していたはずの紫砂斗が、一階に降りてくるまでに見つけた人数は○人だった。
「隠れるの上手すぎだろ… なんで一人も見つからないんだ?」
紫砂斗は呟くがもちろん返答はない。
「今度は一階から隅々まで探してみるか。」
意を決したように紫砂斗は一人呟く。大げさにこぶしを握った紫砂斗を指差し、母親に何やら質問する子供とそれを制止する母親。その会話の内容を聞いて、紫砂斗の顔は耳まで赤くなったのだった。
☆★☆
「……。結局見つからなかった。」
一階から最上階まで、再度虱潰しに探した紫砂斗はそう呟いた。一度目よりも入念に時間をかけながら探したが、状況はゲーム開始直後から変わらない。
「もうギブだ!ギブアップ!」
嘆いた紫砂斗は乱暴にポケットからスマホを取り出し操作を始める。
『ギグアップ!見つからない!』
仲間内のメッセージグループにギブアップと宣告した。動くことが出来ないかくれんぼ中にやることなど限られている。すぐに返信が来るだろうと予想していた紫砂斗だったが、数分待てど既読すらつかない。
これ以上待っていられなくなった紫砂斗は、一人に電話することにした。しかしコールは延々と続き出る様子など無い。システムに切られた電話の直後、その友人から個人チャットでメッセージを受信した。
その内容は、自分の隠れ場所のヒントだった。
『ヒント! ボーリングのロビーがある階!』
大雑把で乱雑に打ったものだと予想できるものだったが、紫砂斗はヒントで提示された階に一箇所、まだ探せていない場所があることに気が付いた。それはプリント俱楽部。通称プリクラだ。
人が撮影中だったときに、カーテンを開けてしまったらいけないと、探すに探せなかったのだ。
紫砂斗はすぐに思い浮かんだ場所に移動した。プリント俱楽部は根強い人気を誇るため、いつも混んでいる。しかし今日は、複数台ある機械から人の気配を感じなかった。ここまでがら空きならば、隠れている可能性も捨てきれない。
「失礼します~?」
紫砂斗は申し訳なさげに、端のプリクラから順にカーテンをめくっていく。だが、予想に反し全ての機械に人っ子一人いなかった。軽い失望を味わう紫砂斗だったが、すぐにある考えに至った。
「撮影スペースじゃないということは……?」
そう呟くと、写真編集スペースに移動する紫砂斗。
プリント俱楽部には撮影スペースだけでなく、撮った写真をデコレーションする編集スペースにもカーテンがかかっている。そこに隠れていると踏んだのだ。
そして編集スペースのカーテンが明らかに膨れているプリクラ機を一台発見する。
「ここだな?佐藤!」
紫砂斗は唯一、ヒントをくれた友人の名を呼びつつ、勢いよくカーテンをめくった。
「ぎゃぁぁぁあああ!」
「ご、ごめんなさい!」
カーテンの中から悲鳴が聞こえた。やっちまったと紫砂斗は謝りカーテンを閉めるが、すぐに女性にしては野太くワザとらしい声であることに気が付いた。
「ほんとに寿命が縮まるからやめてくれ、佐藤」
「悪い悪い」
けらけら笑いながらカーテンから出てきた男子は、紫砂斗のクラスメイトで”佐藤 茂”と言った。彼の身体的特徴は少ないが、性格はかなり陽気で、紫砂斗含め多くのクラスメイトに好かれている面白い奴だ。
佐藤は笑みを絶やさないまま続けた。
「待ちくたびれたぜ。開始から何分経ったと思ってるんだ?俺で何人目だ?」
「……………」
佐藤の問いに紫砂斗は沈黙する。
「まさか…」
「佐藤で一人目だ…」
「まじか…」
佐藤は衝撃を受けた後、あからさまに項垂れた。
「…ってことは、次の鬼は俺じゃねぇかよ! しかもこれからあと六人ぐらいは探さないとだろ?
なんで俺を最初に見つけたんだぁぁぁ!」
紫砂斗に、人差し指ツンツン攻撃を仕掛けながら佐藤は叫ぶ。かくれんぼには、最初に見つかった人が次の鬼になる。というご当地ルールが存在する。紫砂斗たちはこのルールを採用していたのだった。
「痛い痛い。ごめんって。」
「まぁいいや。俺は何人かの隠れ場所知ってるから、早く終わらそうぜ?」
佐藤は、 思い当たる場所に移動する。 と、告げるとすぐにエスカレーターに飛び乗った。紫砂斗もその後を追う。
そのまま一階降りると、佐藤はまっすぐに一番手近な両替機へと進む。機械の陰にだれか隠れているのだろうか。
ここも探した気がするんだけど。 と、思う紫砂斗を置いて、先に目的の両替機にたどり着いた佐藤。自信満々な顔で機械の影を除いた。 ……が、
「いない……?」
大き目に疑問の声をあげた佐藤。
「あいつ……。 ここに隠れるって言ってたのに…!」
佐藤は口を尖らせ呟くが、すぐに切り替えたようだ。紫砂斗についてくるよう言うと別の場所を目指し、速足で進みだした。今度は同階のトイレが目的地のようだが……。
「ここもいない… だと?」
その後も佐藤に誘導され、何件かを回ったが、佐藤が紫砂斗を誘導した場所に人が隠れていることは無かった。
「おかしい…」
佐藤は首をひねる。実をいうと、佐藤はかくれんぼ中に何人かと個人チャットを介し、隠れた場所を聞き出していた。そのため先に訊き出していた場所に誰もいないかったのは、佐藤にとって想定外だったのだ。
しかしそんなことを疑問にもっても、誰も見つけていない事実は変わらない。
二人は作戦を変更し、個人行動をとることにした。当てがなくなった以上、二人で歩くよりも二手に分かれた方が、捜索範囲も広がり、時間も短縮できる。
ただ佐藤は鬼ではないので、見つけても捕まえることが出来ない。しかし、鬼に情報を渡してはいけないなどルールは定まっていないので、佐藤が見つけたらすぐに紫砂斗に電話するという作戦だった。
「じゃあ見つけたら、すぐに連絡するからな?」
「ああ。俺も誰か見つけたら報告するよ。」
そう言い合い、二人は別の方向へ歩き出す。
急ごうと足を速めた紫砂斗はなにかを蹴り飛ばしてしまった。そのなにかは蹴られた拍子に数メートルを滑り壁に当たると、カコン。と音を立てた後静止した。それは黒く薄い板のようなものだった。
音に反応して佐藤も駆け寄ってきた。
同時に二人の目に映ったそれは、二人にとって強く記憶にあるものだった。
「これって、風里のスマホか?」
変な方向に画面が沿っている特徴的なこのスマホは、風里の使っているものと同じで、極めて珍しいスマホの機種だ。二人は風里以外にこのスマホ機種の所有者を知らなかった。
「まっさかぁ?」
まだ分からないと、スマホを持ち上げる佐藤。背面を見ようとスマホをひっくり返す。すると背面にはご当地ユルキャラのシールが貼ってあった。あまり人気のないゆるキャラを、スマホに貼るシールとして採用するのは、やはり風里以外にあり得ない。
「なんで、風里のがここに?」
そう言いながら佐藤が電源ボタンを押すと、スマホの画面が明るくなる。そして開いたのは、カメラモードの画面だった。それも動画撮影が続けられた状態の。
「なんでカメラ、付いてんだ?」
頭の上に疑問符を浮かべつつ二人は、動画モードを止め、とりあえず止めた動画を再生してみた。
「はいどうも~~~!」
動画はYou○uberのように自身を写す風里の言動から始まっていた。二人は場所の手掛かりになるかも。という考えと、単なる好奇心から動画の再生をやめなかった。
こうして、後に二人を恐怖のどん底に叩き落とした動画が始まった……。
*作者の一言
この物語に出てくる「池袋のラウン○ワン」は現実世界の池袋に実在する、”ラウンドワン 池袋店"さんと内装から店員の数に至るまで酷似しているようですよ?