ちゅうた
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ある朝、ももちゃんは、ママに聞きました。
「ねぇ、ママ、ちゅうたがいないの。どこにいるか知らない?」
「さぁ、そういえば最近見てないわね。どこにしまったか、覚えてないの?」
「分からないの。どこにもいないの。」
ちゅうたは、ママが、ももちゃんの為に作ったネズミの人形で、前足に洗濯バサミが入っています。
お腹を摘まむと、前足が開くので、どこにでもくっ付けることができて、ももちゃんのお気に入りだったのです。
「ちゃんと探したの?」
「うん、でも、いないの。」
うーん、とママは考えて、ハッとしました。
そういえば、少し前に、ももちゃんがお出かけの時に連れて行って、失くなっていたのでした。
その時にももちゃんが気付かなかったので、そのままだったのです。
今にも泣きそうなももちゃんを前に、ママは言い出せずにいました。
そうだ。もう一度作ろう。
「ママ、ちゅうたにお手紙書いてみるのはどうかな?見にきてくれるかな?」
ももちゃんは、真剣です。
「うーん、そうねぇ。試してみようか?」
ママは今日、材料を買いに行こうと思いました。
目玉と綿が必要です。
その日、ももちゃんは、ちゅうたにお手紙を書いてから幼稚園に行きました。
ママはお仕事が終わってから、ももちゃんをお迎えに行く前に急いで、目玉と綿を買いました。
「ねぇ、ママ。ちゅうた、お手紙見にきてくれたかな?」
「さぁ、どうだろうね。帰って見てみようね。」
帰って確認したけれど、ちゅうたはいません。
ももちゃんはがっかりしています。
「ねぇ、ママ。折り紙でチョコレートケーキ作ってくれない?」
「いいけど、どうするの?」
「ちゅうたはチョコレートケーキが好きだから、出てくると思うの。」
ママがチョコレートケーキを作っている間に、ももちゃんは箱を作って、紐をつけます。
「それ、なあに?」
ママが聞くと、ももちゃんは答えます。
「ここに、チョコレートケーキをのせるのよ。
食べにきたちゅうたが、ここに入るようにするの」
夜、チョコレートケーキの罠を仕掛けて眠りました。
ももちゃんが寝静まって、ママは大慌てでネズミのちゅうたを作ります。
朝、起きてきたももちゃんは大喜びです、
「見て!ママ!ちゅうたが出てきてくれたよ。
やっぱりチョコレートケーキが良かったんだ。」
「あら。よかったわね。」
「あ、でもママ。このちゅうた。前と少し違うよ。」
どきっとしてママは白状しました。
「ももちゃん、ごめんね。ちゅうたはいなくなっちゃったから、もう一度作ったのよ。
前にお出かけした時、ももちゃん落としちゃったのよ。」
ももちゃんはちょっと考えて、ママに言いました。
「そうなんだ。でもこのちゅうたも可愛いから好き。ありがとうママ。」
その日、幼稚園から帰ったももちゃんは、せっせとちゅうたのベットを作ってあげました。
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