第五章:海底1600メートル
近々今までの登場人物の紹介表みたいなの作ります!
では!どうぞ!
第五章:海底1600メートル
ニューホープ号
3月24日
ここはFNBの真下の海底。
1600メートルもの深さだ。
____ピコン__ピコン__ピコン______
「全装甲以上なし。メインシステム及び非常システム以上なし。」
「艦内酸素濃度は?」
「以上なし。臨時エンジン稼働可能。メインエンジン準備完了!」
「ダークマター補充度79%。100%まで残り30分。」
「了解した、30分後移動開始する。」
__________
「聞こえたか?総員持ち場につけ。死ぬも生きるも我々の連帯責任だ。」
レインは緊張した声で船員に指示を出し、彼女自身も持ち場にて待機する。
30分暇なので、数日前の出来事を回想する。
同月6日、目を疑うほどの悪魔の大群をセンサーが捉えた。
これほどの事が起こることなど誰も予想などできるはずもなく、FNBは一瞬のうちに混乱の渦に巻き込まれた。
普段命の危機に晒されながら最前線で活動している者達とは思えないほど混乱している。
人間、心では何でもできるものだが、いざ死を目の前にするとやはり生きたいと思うものだ。
悪魔軍はまるでそこに何かがあるのかという勢いで、一直線にFNBへと向かって来た。
これまでFNBにも悪魔は時折攻撃をしに来ていた。それでもSSS級のレインをはじめ、科学屈指の黒彩光線により悪魔を寄せ付けてこなかった。
何よりも、南極上陸のため秘密研究フロアでの新時代型万能戦艦(ニューホープ号)の製造が急ピッチで行われており、FNB周辺は厳重に警備されていた。
にも関わらず、悪魔の猛攻には苦戦を強いられた。悪魔側は、積層悪魔により天候を支配し、周りの戦艦は雷を何百発と食らい撃沈した。
極めつきは、レインも戦闘に加わり、さらにレインの能力「女神の加護」により兵士の戦力を向上させることで、何とか悪魔を撃退できそうになった時の突然の裏切りである。
裏切りというか、もともと潜入されていたのか要は言いようだが。
春斗が裏切った。
裏切ったのではなくそもそも敵だったのだ。
春斗ゆえに悪魔達はFNBへと直行していたのだ。
春斗はSSS級を軽く超える能力でレインへと襲いかかった。
______「破滅のトルネード」_______
春斗がそう言った瞬間、春斗の手から黒い煙の様なものが出てきて、トルネードとなりレインへと向かってくる。
トルネードの餌食となった戦艦がバラバラになりながら宙に浮く。
____「竜の咆哮」____
レインは竜種能力にて対抗し見事春斗の攻撃を無効化した。
「いやあ、レインさんお強いですね。僕のこの攻撃、無効化したのはあなたが初めてですよ!」
「それはどうも、まさかあなたが悪魔だったなんてね。誰も信用できないわね。」
「ええ、その通りです。信用できるものなんてこの世界には存在しませんよ。まったく…尻尾隠すのに苦労しましたよ。FNBに入るときの身体検査が信じれないほど緩かったおかげで難なく潜入できましたよ。でも、時間の無駄だった様です。先日配下の者から良い情報を手に入れたもので…。」
「何?情報?どういうこと?」
「今から死ぬあなたは知らなくて良い事ですよ!それではご覧あれ、我が究極の力を。」
そういうと春斗は全神経に集中する。
春斗を黒い光が覆う。
__________ピカッ__________!!!!_____
恐ろしいほどの衝撃波が発生する。
レインは始祖結界を張ることで己の身を守る。
揺れが治まった後、春斗の方を見たレインは目を見開いた。
_______ゴゴゴゴゴゴゴゴ________
目の前には巨大な黒き巨人がいた。
_____「フフフフフフ、これが力という者ですよ、レインさん?あなたは竜種能力を持っていながら竜形態になれない、弱者ですよ。今から放つ攻撃はあんたの結界では防ぎきれない。諦めて死になよ。」______
「誰が死ぬですって?笑すな!!!」
「せいぜい言ってると良いさ。」
____「滅びの鎮魂曲」____
流星群の様に闇がレインへと襲いかかる。
「クッ、まんざらでもないわね。」
いくらSSS級のレインであろうとこの範囲系破壊攻撃には太刀打ちできない。
「始祖結界も無理、他の能力も……竜種開放を試みるしか生きる手はないわね。」
レインは意識を心の奥深くへと向け、自身の全ての力を振り絞り自身の能力へと挑む。
「眠られし竜よ、目を覚ませ。今こそその力を開放するときだ。」
彼女の内に眠る竜は彼女の気持ちに応えようとしない。
「…………………失敗か……いや、諦めたらそこで終わる……でも…あの竜種を開放するなんて……」
気が付くとレインの目の前に闇が迫っていた。
「竜よ‼︎ああ、竜!お願いだから目を覚まして‼︎」
______どおおおおおおおおおおおおおおおおオオオオオオオオンン_____
黒き流星群がレインを直撃する。
レインの肢体は吹き飛び、内臓はエグられ片目は飛び出し、そして彼女は海底へと沈んでいく。
____「………………ああ、私は死ぬのね……何もできないまま。…………もうちょっと、もうちょっと誰かのために行きたかったなぁ。」____
消えゆく意識の中でレインはそう思った。
不思議と痛みは感じられない。
ただただ虚無感に押しつぶされそうであった。
息もできない、暗い海の中。
_____「弱いな、お前は。」______
どこからか声がする。
レインは自分が死んだのかと思った。
_____「力が欲しいのか。お前がそう望むのならば私を殺すが良い。殺せるのならばな。」_____
やはり声がする。
レインが目を開くと、そこは眩い空間であった。
「…こ、ここは?…」
レインが呟くと何者かが答える。
「お前の心の中だ。」
声のする方向を見ると、そこには緑の竜が立っていた。
「あ、あなたは、、、」
「お前がよく知っているだろう。お前の能力の化身だよ。そして創世期よりこの世に存在する三種の始祖竜が一体である。お前の声はよく届いていた。しかし我がお前に力を貸すトリガーがなかったゆえにお前の気持ちに答えられなかった。しかしお前が一度死を味わうことによりトリガーは発動した。さあ、私を殺し全てを手に入れるのだ。」
「殺すって、そんなこと…」
「なあに、我が完全に消滅することはない。お前が寿命を全うした時私はまた私として蘇る。だから躊躇することはない。さあ、ドラゴンバーストで私を殺せ。」
そういうと緑竜は静かに目を閉じる。
「わ、分かりました。感謝します。そ、それでは…」
_____「ドラゴン・バースト!!!!」______
レインより紫色の光が溢れ出し、一直線に緑竜目掛けて飛んでいく。
______ドドドドドドドドドドドドドドドド______
その光と竜が反応し、竜は緑色の光へと変わり、レインへと降り注ぐ。
____「少女よ、我はこの時を待っていた。数万年にも及ぶ戦いはもうすぐ終わる。お前は私の代わりにその世界を見届けよ。」_____
レインの意識の中から竜の声がする。
目を開けるとそこは海底だった。
レインは緑の光で包み込まれている。
傷は全て回復している。
「ありがとう、緑竜さん。あなたの分も頑張るからね!」
そう呟くと、レインは地上へと上昇していった。
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「ダークマター補充度100%に達しました。これにより飛行が可能となります。」
船内報告により回想の世界から現実へと戻される。
「長官、楽しみだね。」
「そうだねレイン。人類の叡智は強力な武器だ、個体力が悪魔に劣っている分、我々は科学を突き詰め、集団力を養ってきた。この戦いはそれを試す戦いでもある。」
そういうと長官は司令室へと向かっていった。
「長官、戦艦ニューホープ、稼働可能です。」
船員が長官に報告する。
「総員持ち場につけ、30秒後に飛行を開始する‼︎固定具全部外せ!」
「固定具解除開始、、、、、、、、、、終了しました。」
「メインエンジン稼働開始‼︎」
「3・2・1、稼働しました。全準備完了、動かしますか?」
「さあ、出発だ‼︎」
長官の合図とともに巨大な戦艦が海底から浮上していく。
「海面まで15秒!、、、、、、、、、海面到達。」
久しぶりの世界だ、しばらくずっと海底にいた分、船員全員がその景色を懐かしく思った。
「このまま高度3万メートルへ上昇します。」
戦艦ニューホープは圧倒的な速さで上昇していく。FNBで関係者以外の立ち入りが禁止されていたフロアは、何を隠そうこの戦艦の製造フロアだったのだ。
最先端科学により、宇宙中に漂っている暗黒物質を戦艦の動力とするだけでなく、ダークマターを使用した攻撃、黒彩光線により悪魔もろとも消滅させる恐ろしい装備も搭載されている、人類科学の産物だ。
「高度3万メートル到達、南極点へ向かいます。」
今この瞬間、この戦艦は南極点を目指す。悪魔が蠢く大地の調査のために。
バトルシーンはやっぱり良いですよね( ¯﹀¯ )