第四章:ハルマゲドンの序章
こんにちは!だいぶ間が空いてしまいました!今回は新たな展開へと入るので、楽しんで頂けると思います!
第四章:ハルマゲドンの序章
少年と悪魔
2020年・2月19日・正午頃・南極点
「クランプスの旦那‼︎なんかやべえっす。仲間たちがどんどん死んでいくっす。」
悪魔の一人が声を上げる。
辺りは混乱を極めている。
それもそのはず、人間の南極大陸への上陸を完璧に阻止していた南極防衛軍の仲間が次々と、たった一騎で突っ込んできた少年になぎ倒されているのだ。
「オレたちの電撃は全く効き目ない模様。別にオレらの世界に入っても単騎じゃ死ぬわけだしほっとく?」
悪魔隊長サクは、友人であり自分と同じ悪魔隊長であるクランプスに喋りかける。
「ふっ。サク、よく見てみろ。アイツはオレたちに用があるんだぜ。嫌でも相手してやらないとな。」
クランプスは冷静に答える。
「ところでクランプス〜、アイツもう来ちゃったけどどうする〜?」
二人の悪魔隊長は周りを見渡す。3万以上もの同胞の骸が視界に入る。
少し首を上に傾けると白髪の少年がこちらを見ている。無表情。怖い。
「悪魔よ、別に余はそなたらの世界に入るつもりでここに来たのではない。そなたらの行動が不可解ゆえにその故を問いに来たのだ。」
………「仲間めっちゃ死んだんですけど〜?」
小さくサクが呟く。
「ふっ。ここまでこれた褒美だ。問を言え、答えてやろう。」
クランプスは面白そうに笑う。
少年は二人の悪魔を軽蔑するかのように数秒見つめた後口を開く。
「何故そなたらは人間界への進行を中断しているのだ。そなたらの力ならFNB防衛線などすぐ突破できるであろう。何を呑気にしておるのだ。」
クランプスは答える。
「我が主が命じたからさ。むやみやたらに侵略したらお前たちの巨人が目を覚ますかもしれないだろ。我が主の力ならお前たちの巨人にも勝てるだろうが、確実に勝利するためには巨人の器を見つけて殺した方がいいからな。オレたちは寿命も長いし、まあゆっくり探すことにするぜ。」
白髪の少年は一瞬困ったような顔をしたが、すぐに無表情になる。
「そうか、なら余がその者の場所を教えてやろう。信じるか信じないかはそなたら次第。」
「ふっ。聞くだけ聞こう。」
「その者はこの世界のヨーロッパという地域にいる。」
「ほう、そうか。なんで人間の貴様が我々にそのことを教えるのかな?」
少年は答える。
「今、その者の覚醒を促している最中でな。もうすぐで能力が開花する。そのことを伝えに来ただけだ。せいぜい束の間の優越にでも浸ってるが良い。」
笑いながら少年は飛び去っていく。
どんどんと少年を半透明な赤き炎が包んでいく。
しばらくするとそれは巨大な竜の形となり、衝撃波を放ちながら遠ざかっていく。
その場に残るは、2体の悪魔だけであった。
「竜種能力か…。なかなか厄介だな。」
サクは空を見上げる。嘘のように雲が一つもない。
「ヤツの言葉は参考としてサタン様に伝えておく。我々は一旦戻り態勢を整えるぞ。」
クランプスの声の後、二体の悪魔隊長はサウスホールへと飛び立っていった。
崩壊の音
2020年・3月27日・日本
_________ウーーーーー。ウーーーーー。ウーーーーー。____
____緊急警報発令。緊急警報発令。全国民、速やかに地下に避難せよ。もう一度言う、速やかに地下に避難せよ。__________
けたたましく警報が鳴り響く。
町は地下へ行く人で埋め尽くされており、怒鳴る声や泣き叫ぶ声がそこらじゅうから聞こえてくる。
同月6日、サウスホールより億を越える悪魔軍が人間界に降り立った。
FNBは壊滅し、人類の最前線であったFNB防衛線も突破された。
オーストラリア、パプアニューギニア、シンガポール、チリ、ブラジルと、南国から順に悪魔軍は侵略していった。
今までの電撃しか放たない悪魔とは違い、台風を呼び起こす悪魔、周辺に地震を発生させる悪魔等、SSS級以上の悪魔が多数現れ、人類の科学という武器はなすすべなく敗北していったのである。
戦地へ大量の能力者が送られたものの、見せ場なく散っていく。
LSレベルSS級でさえ自分を守るのに精一杯な状況である。
死傷者は5億人を上回る。
20日あまりで人類最前線は北緯30度まで押し上げられ、いつ日本が侵略されてもおかしくない状況となった。
そして27日、今日、悪魔が日本に上陸したのである。
「お母さん、絶対に手離さないでよ!」
愛美は母の手を引く。内気だった少女は父の死を越え、世界の状況を悟り、母の命は自分が守ると心に決めていた。彼女の母から見ると今は内気の少女ではなく、頼り甲斐のある愛しい娘だ。
「おい、早くいけ、俺たちが避難できないだろ‼︎」
後ろから複数の人々が無理やり列に入り込もうとしてくる。
「あ、お母さん!」
彼らに押された母は、人の流れから追い出されるように道脇へと追いやられた。
「そこにいてよ、母さん!今行くから!」
愛美が大声で叫んだ、その瞬間。
_______ドオオオオオオオオオオオオオン!!!!!!!!!_____
前方より巨大な爆発音がした。
人々の悲鳴が聞こえる。
人々は各々逃げ出し、町は混乱を極める。
上を見ると数え切れないほどの悪魔が、電撃を放ちながら飛行している。
電撃を受けた者はすぐさま感電死し、地に横たわる。
中には電撃を用いず直接地面へと降り、尻尾を使い人を絞殺する悪魔、尻尾を凶器へと変形し胴体を切り裂く悪魔。
町は血だらけとなっていく。
「お母さん、こっち!早く!」
愛美は小さな小屋を見つけそこへ隠れようと、母を促す。
「待ちなさい愛美、あれ……。」
母は絶句した。愛美は嫌な予感を感じつつ母の視線を追う。
最悪だ、尻尾を斧に変形した悪魔が嬉しそうにこちらへと歩いてくる。
愛美とその母は微動だにできなかった。
「小さな小鹿が二匹い〜〜ハハ、怯えっちゃってる、フフ、いいよその顔、今から死ぬヤツの顔最高じゃないか!あああ、どう殺してあげようかな、、頭部切断とか?いやあ、それじゃすぐ終わっちゃうよね、、フフ、肢体切断にするか〜フフフフ。」
悪魔はそう言いながらどんどん近づいてくる。
「愛美‼︎逃げなさい!あなただけでも!」
そういうと母は悪魔の元へと走り出す。
「母さん!!!!!!!母さん!!!!!ダメ!!ダメ!!!やめて!!!」
愛美は必死に母に追いつこうとするも、遅い。
「悪魔!私は好きにしていい。でもね、この娘には触れることすら許さない!!」
「へえ〜、これが人間界の愛情ってヤツですか?ええ分かります。とても美しい!恐怖を押し込み大切な者のために自らを犠牲にする精神、素敵ですよ?いいでしょう、あなたが私を思う存分楽しませてくれた暁には、その子には危害を加えないと約束しましょう!!」
満面の笑みで悪魔は言い放った。
「母さん、逃げて〜!!!!!」
_______ザクッ__________ぎゃあああああああああアアアア!!!!!_____
目の前で母の左腕が切断される。
愛美は膝をつく。目の前の光景があまりにも残酷すぎる。
今あそこに行くと自分も同じようになると本能が告げていた。
母の絶叫が音の世界を支配する中、愛美は母が裂かれていくのを呆然と見ることしかできなかった。
「ええ、良かったですよ、あなたの悲鳴は。濃厚な時間でしたよ。さて、次は…」
母の肢体を全て切断し、母が死亡したことを確認すると、その悪魔は愛美へと歩き出す。
「フフフ、、次はあなたの番ですよ?そうです、その顔です。約束が破られた時のその顔がまた一段といいんですよねえ。悪く思わないで下さいよ?あなたの母のもとへ送ってあげるのですから、感謝してほしいです!、、、、、と、それでは右腕からいきましょうか!」
_____ザクッ__________
「………………。」
「あれ?なぜ叫ばない?もっと私をた、の、し、ま、せろ!!!!!!!」
______ザクッ__________左腕が飛ぶ____
「………フ、、ザ…ケル、、、ナ。」
「は?あなたは死ぬんです。さあ!その痛みのままに叫び狂いなさい!!!!!」
__________ガチンッ__________変な音がする____
悪魔が見ると目の前には白い光・砂?に包まれた少女がいる。切られたはずの両腕は再生されており、異様な圧を放っている。
「な!!!!?なぜこの能力者がここに!!?情報と違うではないか!!」
「……フザケルナ、悪魔。ナニガシタイ?コンナコトニ、イミハアルノ?」
愛美を眩しいほどの白き光が砂のように囲むその瞬間、無音の中で大爆発が起きる。
まるで小さな超新星爆発のようなその美しさに、生きている者がいるなら感嘆しただろう。
「あああああああああああああああああああああああ!!!!!」
悪魔は周囲の町と共に消し飛んでいく。その後轟音を残しつつ辺りは荒野と化した。
生存者などいない。
人間も、悪魔も、町も、全てが消え去った。
その荒野の中心には一人の少女が立たずみ、泣いているだけである。
綺麗な黒髪は純白へと変化している。
その美しさは荒野に咲く一本の薔薇のようである。
「こんな、、、こんな世界、、、。消えて無くなればいい!!!!!」
再度少女を白き光が包み込む。
先ほどよりも眩しく、そして濃縮した光は今この瞬間、日本列島を巻き込むかの勢いで爆発しようとしている。
_______多重始祖結界_______どこからか声がする。
次の瞬間、爆発が起きる。
……………………何も起こらない……
少女の周りには虹色の結界か何重にも貼られている。そのおかげで爆発の被害はどこにも出ていない。
全てが静まり返り、少女は空を見上げる。
そこには白髪の少年がいた。
「悪魔よ、余の計画はそなたらの浅はかな考えにより順調に進んでいる。感謝するぞ。」
少し怖い笑みを浮かべ、少年は愛美のもとへと降り立つ。
「少女よ、始めよう。最終戦争を。」
まだまだこれからです!
次回もお楽しみに!