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第五部

「管制塔! 管制塔! こちらF2! アンノウンの攻撃により機体に異常発生! 飛行を継続が難しいため、これより帰還する」

「機体に異常!? とりあえず了解した」

 機体が不調の為に、少しばかり固くなっていた操縦桿を坂本は両腕の負荷を強めにかけ、徐々に左へと倒した。

荒馬のように揺れるF2の機体であったが、徐々に坂本の指示に従い左に曲がりはじめた。

「はやくいけ。はやくいけ。はやいくいけ」

 長友はその間にも何度も何度も攻撃をくりかえすアンノウンが放った光輪を僅か数ミリの差で避けながら呟いていた。

家長もアンノウンの攻撃を避けながら、合間に遠くなるF2姿を視界に入れながらを状況を確認していた。

「家長!」

 長友の言葉に、再度アンノウンに目を向けるとアンノウンが、全身を発光し始めている。

「エネルギーをチャージしている」

「家長。どういうことだよ」

「簡単に言えば機関砲に弾をこめているんだ」

「えっ?」

 すると全身を光らせていたアンノウンは、体の一箇所に光を集中し始めた。どうやら特大の光輪を作り出そうとしていた。

「あいつのターゲットは……」

 でかい光の延長線上には上下に揺れなが飛び続けているF2がいた。

「長友! まずいぞ!」

「いくぞ家長!」

 二機の戦闘機は、アフターバーナーを全開にし、アンノウンを追い越し後方に回る。

そのまま右から家長、左から長友が下に向き旋回し、アンノウンの下方に潜り込む。その間も少しもスピードを落とすこともなく、逆に加速していく。

二機の上部から、太陽光が半透明のアンノウンをすり抜け光が差し込む。

オレンジ色の火が激しく火花を散らす。

「うぉぉぉぉ」

「間に合えぇぇぇぇ」

 二人の絶叫は、アフターバーナーの轟音と掻き混ざる。

九十度に近い角度で垂直に上がり、激しい圧力が二人の体を襲う。

アンノウンの光は大きくなっていく。非常に大きくなった光は、いつ坂本達の乗っているF2に放たれてもおかしくはなかった。

「間に合った!」

 家長が大きく叫ぶ。

二機の戦闘機は、アンノウンとF2の間に、ほぼ垂直で壁を作った状態で割り込むことに成功した。

 アンノウンは、完全に意識の外から割り込まれたために、構えていた射撃体勢を崩し、後ろにさがり、まるで二機を追うかのように光輪を放った。狙いが定まっていない光輪は、ふらふら飛ぶF2と並走し飛ぶ二機のF15と四十五度位置する角度に放たれ空に消えた。

「よっしゃぁぁぁ」

 長友の絶叫は、二人の目的としていたことが、成功したことを示していた。

この間にもF2は飛び続け、二人からはもう豆粒ほどの大きさにしか視認できない位置にいた。

「とりあえず、なんとかなったな」

「次はどうする?」


「……もっと遊ぼう」


「えっ? 長友こんな時になにを言っているんだ?」

「今の声お前じゃあないのか?」

「いいや。管制塔や坂本さんでもないし」

 家長は、ゆっくりと首を動かし、アンノウンへと視線を向ける。


「遊ぼうよ。遊ぼうよ」


「まさか」

 アンノウンに向けた目が皺ががより非常に険しいものへとなる。

その声は子どものような声で、アンノウンの光と連動するかのように脳内に直接言語が流れて込んできた。

「こいつ喋るのか」

「俺達の会話を聞いて学習でもしたのか」

 この状況に二人は驚くしかなかった。今、会話ができる高等生物と接触していたことに。


「こんどはこっちからいくよ」


「なっ!?」

 今まで微動することもなくただ浮遊していたアンノウンが突如動き出し、猛烈なスピードで二機に襲いかかってきた。

「く!」

 二機は並走を解いて左右に展開し、アンノウンはその間を突き抜けた。

なんとか寸分のところで回避に成功し、二機の戦闘機に損傷は無かったのだが、あの素早い動きに即座に対応せざるをおえなかった。

「なんて速さだ」

「あいつ戦闘機じゃないのにあのスピードだなんて」

 二人は自然とアンノウンを目線で追う。

アンノウンはそのまま突き抜けるとUターンし、二機の近くへとにじりよってきた。

「来るぞ!」

 二機のF15は、キシキシと機械音させるエンジンにさらに負荷を加える。

 迫り来るアンノウンに対し、上下に大きく展開し備えた。

アンノウンはまたもや二機の中央を通過した。しかし、ただ通過するだけでは終わらず、数センチメートル程の光の矢を無差別にそして無数と放った。

「今度はなんだ!?」

 二機は、機体をスクリュー回転をさせながら何とか回避しようとする。しかし、機体全体に針状の光線が幾つも直撃する。

「ぐわっ」

 二機に損傷はないものの激しく揺れ、機体の側面がバーナーで表面を炙ったかの如く、黒く焦げついている。


「おもしろい。おもしろい」


「あいつ! 楽しんでやがるぞ!」

「もし、人間だったら明らかにサイコパスだな」

 二機のF15は、長友機・家長機の順で編隊を組み、再度アンノウンに接近した。

アンノウンは、前方に向けてまたもや針のような光線を放出した。

「くっ! またか!」

 光線の中を突き進んでいたのだが、これ以上の機体損傷を避けるために左右に展開し光線から逃れる。

アンノウンは光線を放ち終えると動き始め、真っ直ぐに進んでいた方向を変える。

 左右に展開した長友と家長をまるで品定めをするかのように、遅い速度で光線を放った方角に動いていく。

「何をしているんだ? あいつ」

「さあな」

 ガラス越しに家長は睨む。


「どちらにしようかなぁ」


「あいつ、俺達を選んでいるのか?」

「選ぶ? 何を?」

「標的かも」

 するとアンノウンは徐々に角度を変え、スピードも僅かづつ増加し始めた。

「角度を変え始めてないか?」

「確かに。速度も増加しているな」

 アンノウンはほぼ九十度と言ってもよい角度で曲がり始めた。長友の方角に。

「俺かよ!」

 長友は操縦桿を大きく急に傾け、F15の方向を急なタイミングで角度を変えた。そして、長友はエンジンをフルスロットルにし、アフターバーナーの勢いを増した。

アンノウンが動き始めた当初と違い、現在のスピードは比べ物にはならない速度であった。その様子は、まるで鷹や鷲が獲物を狙って飛ぶ様子を想像させた。

「アンノウンの野郎!」

 家長も操縦桿を大きく傾け、長友・アンノウンを追随する。

これで、長友・アンノウン・家長の順に飛び続けた。

「どっかいけよ!」

 首を少し傾け、眉間 に皺を寄せながらも後方に少し傾けながら呟いた。


「さあゲームの開始だよ」


 アンノウンは嬉々と状況を楽しむかのように呟いた。

長友が操縦するF15は、何度も右に左に曲がりアンノウンを引き離そうとするが、アンノウンはピッタリと長友が辿ったコースをトレースするかの如く、後を追ってくる。

「なんてスピードなんだ。こんなスピード反則以外の何者でもないだろう!」

 大声で叫ぶ長友とアンノウンを追い、振り切られないよう追い続ける家長。

「アンノウンのあのスピード、F15スピードに近いだと。あの形をして色々な法則を無視してやがる。どこからあのスピードがでるんだ」

 家長はこの情景に呆気にとられるしかなかった。

 アンノウンは、先程二人に向け放った針状の光線を長友に目掛けて放った。

先程まで薄っすらと黒く焦げた表面が、より一層濃さを増した。それだけでは終わらず、機体に直撃することなく逸れた光線も、突如、機体のすぐ上の位置で次々と爆発を発生させた。

爆発は、例えるならばねずみ花火の最後のような小さな爆発ではあったが、そのサイズの爆発が無数に発生していた。しかし、この攻撃が長友が乗るF15が飛行を継続できないものへと至るレベルものではなかった。

長友の内心は、致命的な攻撃ではなかった為に瞬間的な安堵が生まれた。


「耐えた。耐えた」


 長友がアンノウン自身の攻撃に耐え、飛び続けていることに喜びの声を上げる。しかし、脳内に届く二人にとってその言葉は、気持ちが悪いはこの一点しか感じえなかった。

 ただでさえこの緊張した中を飛び続けている二人は、緊張のストレスに加え、この不快さから感じるストレスとも戦わなくてはならなかった。

 その言葉を送り続ける間もアンノウンは高速で飛びながら、不気味な光を発し続けていた。


「じゃあ、次に行くよ」


 まるでいたずらを楽しむ糞餓鬼のような声で言葉を送った。

「次、長友来るぞ!」

「ああ、わかっているわい!」

 家長は叫び、長友は呼応する。

アンノウンは、最初に遭遇した時に放った光輪をまたも長友に向けて放つ。

「くっ!」

 長友は、奥歯を目一杯の力で噛み締めた。そして、長友の腕は操縦桿を大きく光輪が直進する方向とは逆の方向へと動かした。

 長友が操縦するF15は両翼から飛行機雲を湾曲に描き、アンノウンが放った光輪を数秒差で避けた。


「まだ。まだ」


 アンノウンは一発では手を休めなかった。

次の一発。次の一発。次の一発。

幾つもの光輪が空を突き進む。

長友は、アンノウンの攻撃をどの方向から飛んできているのかを予想し、上下左右に機体を動かして光輪の回避した。長友に回避された光輪は、そのまま機体表面の数センチ上の位置を飛び過ぎて行く。中にはアンノウンが飛び放った光輪が、機体をかすめた為に火花を放つものまであった。

「長友! 無事か!」

 アンノウンの激しい攻撃に家長は叫んだ。

「大丈夫じゃあねぇよ! こいつどうにかできないのか!?」

 長友は、あまりの激しさにひょっとこのような表情をしていた。


「アハハハハっ!」


 アンノウンの笑いがこの青空に響き渡る

「どうにかしないと」

 目前の光景に対抗策を探し出さねばと焦る家長。ふと視線の先に家長の目がとまる。

 家長視線の先に存在に注目した。

「長友! 長友!」

「なんだ家長!」

「よく聞け長友! 今お前が飛んでいる先に大きな雷雲がある。そこに突っ込め!」

「雷雲!?」

 家長の言葉に促され前方を確認する。

そこには黒色・灰色の巨大な積乱雲がじわじわと蠢いていた。

時には稲光が微かに外に漏れているのが家長と長友に見えた。

「まさに危険地帯って感じだな」

「長友! そんなことを言っている場合か!? 今は一刻も早くアンノウンを引き離すのが先決だろ! 早く突っ込め!」

「ああ。わかってらい!」

 家長の言葉勢いにそのまま積乱雲に飛び込んだ。


「おにごっこの次はかくれんぼ? いいよ。付き合ってあげる」


 アンノウンはどこで日本の遊びを知ったかしないが、その例えに二人は不快感を感じる。

 長友が乗ったF15の後を追い、アンノウン、そして家長のF15が追った。

積乱雲の内部は、外部から見る印象以上に激しい状態であった。

激しく豪雨が機体の表面を打ちつけ、強い風が逆巻き機体に吹きつけ、厳しい稲光が周囲に線を描いた。

 二人は、脳裏にこれで去ってくれればという思いがあった。しかし、アンノウンは見事にその機体を裏切り、長友の後をぴったりと辿ってきた。


「これで僕を巻くつもりかい? 甘いよ。僕には君達の居場所を熱で追うこともできるんだよ。だから、こんなの無駄だよ」


 二人は、驚くしかなかった。

「なんだよこいつ。どんな能力を持っているんだよ」

「熱探知といったところか」

 暴れる積乱雲の中を綺麗に並ぶ三つの飛行物体は、真っ直ぐ突き進み積乱雲を突き抜け、青空に飛び出した。

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