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作者: スプレー缶

播磨の明石に成晃というものが居た。

彼は学力は英才だった。

6つの時に近辺の坊っちゃま学校を首席で合格、その後はその博学才穎の能力を生かし、花色の人生を送るかと思われた。

しかし、成晃は政治家や博士を目指すのではなく、下衆や姦譎、兇悪を許さない性格だった為、警官へとなった。

丁度よく、成晃は容姿は端麗、肉体は美を極めていた。

最初は順調だった。

町の平和を守り、市民を助けていたため、上の目に入り、出世も容易だった。

しかし、上に立てば立つほどに、周りの者が賄賂などの悪に手を染めている事が日に日に増えていた。

成晃の醜悪を潔しとしない性格ならそんな仲間と思われる事がどれほどの事と考えるのは容易だろう。

成晃は警官を辞めようと考え始めた。

しかし、成晃には2人の兄妹と妻がいた。

家族がいる者に職を辞めるのは簡単ではない。

悩みに悩んでいるその夜。成晃は眠った。すると、こんな夢を見た。


春の昼。陽気な日が辺りを包んでいた。自分はスズメになっていた。

自由に羽ばたき、自由に気に止まる。寝たい時に寝て、腹が空けば実を食べて膨らせる。

その動物的な自由を楽しんでいた。本当に楽しい夢であった。

悪という事もなく、周りを蔑む事もない。


そんな夢を楽しんでいると目が覚めた。成晃は「ふぅ。」とため息を吐いた。

今日が面倒くさいからではない。悪と対峙する事が嫌なわけではない。

楽の後は苦がある。昔から言われている事だが、今はそれがとてつもなく、迫ってくるような、自分の核を卑しく撫でられたような、感じがしていた。少し遅く成晃は職場へ向かった。

着くと、先程の撫では潰しに変わったようだ。

同輩が自分の悪事を成晃へ転嫁したのだった。成晃は自宅謹慎とさせられた。

ひとまず、妻や子は実家に帰らせた。

たった一人、狭い家の中央で、座っていた。落ち着いた様子で座っていた。様子なのだ。中は灼熱の溶岩が垂れていた。

醜悪に自分の正義に糞をつけられ、下衆の#仲間__・__#に蔑まれ、自分の自負心が傷つけられた。

それが崩れた後、成晃の記憶はない。発狂の中の譫妄があった事だけが残っていた。

暴れに暴れて疲れ果て死んだ様に眠っていた。


昨日見た夢と同じ夢を見た。スズメになったのだ。それが皮肉に感じられた。

この夢が無ければと考え始めた。

スズメは穢いキツネがいる地に向けて落下し始めた。この夢が悪夢になればと思い、落ち始めた。

しかし、突然こんな考えが頭をよぎった。

自分は本当はこのスズメではないのか。

現実だと思っていた人間社会は私の妄想。夢ではないのではないか。

幸せの果てに不幸を想像したのかもしれない。


そんな考えが立った瞬間、目が覚めた。

成晃は結局、スズメでも人間でもどちらでもいいと考えた。


その後成晃は職を辞めた。批難に逃げる為ではない。スズメが教えてくれたからである。

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