エピローグ2
カナックが馬車から降りるのをエスコートしている人物の姿に視線が釘付けになる。特にその頭の上に見えているものを目を見開いて見ている。
「まあ……」
「ふさふさ……」
「綺麗な毛並み……、でいいのかな?」
「ケモミミ……、……幼女?」
騎士に手を引かれるお姫様という綺麗な絵だったのだが、雅紀の一言で台無しである。そして、馬車から姿を見せた人は決して幼女などではない。
「もう、失礼だよ雅紀。どう見たって大人の女性だよ」
「…ああ、ごめんって、静。……やばい、あいつの影響がデカすぎる。見たことのないもんだから、イメージが先行してやがる……」
「あの変態小説家ね。…今度会ったら、ただじゃ済まさないわ」
悲報、小滝尭フルボッコ決定。
謝るのは私にじゃないよ、とこそこそと話しているのをニコニコと見つめながら、カナックにエスコートされて雅紀たちの前までやってくる。仲良さげにこそこそと話しているのを見られていたようで、微笑ましそうな表情を向けられることになり、バツが悪そうに向き直り、いつぞや教えてもらった貴族に対する態勢に移る。
カナックは出会いからしてそういうことをしている余裕もなく、衛兵として街中に繰り出すことが多かった盛夏期にした様子もなかったが、今目の前にいる女性に対してはそうはいかない。見るからに御令嬢である彼女は、貴族として接すられることにしか慣れていないように思われた。
それは間違っていなかったようだが、大げさだったようで挨拶を終えればすぐに楽にするように言われる。貴族ではあれど、ここが商人の街であるが故に多くの商人と顔を合わせることがあるらしく、最低限の礼儀を守れていれば気にしないらしい。気にしていられないというのが正しいのかもしれないが、今回はそれに加えてカナックから詳しい話を聞いていたこともあるらしい。
貴族令状を立ちぱなっしにさせるわけにもいかないようで、司祭がすぐさま応接室へと場を移す。その対応は明らかに慣れていなければできないものであった。この教会にも商人が出入りすることがあったのか、と納得する雅紀。
通された応接室は教会の節制の精神が出ているのか豪華なものが飾られているわけではないが、中にいるものに気持ちよく過ごしてもらおうとしているのがよくわかる。カナックがエスコートしていた令嬢に席を勧められ、座って少しして司祭が茶を持ってくる。これまた慣れているようで香り豊かな茶を楽しみ、司祭も席につく。誕生日席だが調停役に見える。
「紹介しよう。私の妻のハンナだ」
「どうも初めまして、カナックの家内のハンナ=デーニッツです。出身は見ての通り隣の火の国です」
紹介された女性の立場がカナックの妻。つまりは次期領主の妻ということに驚きはしなかったと言えば嘘になるが、カナックの立ち振る舞いからの予想から大きく外れてはいなかった。あれだけ親しげにエスコートするのだから、家族のような関係だと思っており、その中でも最上級の妻という立場だったことには驚いた。
こちらに来て初めての同年代の上級階級の女性との会話。気負うところもあったのだろうが、それが見てとれたのかハンナの茶目っ気を出した挨拶で彼方へと置き去りにされる。挨拶された四人は挨拶を返しているものの、その視線が別の場所にくぎ付けになっている。
ぴこぴこ
頭の上でぴくぴくと動いている大きな耳。犬のような大きな耳。場を和ますためにやってくれているのだろうが、静あたりはどうやって動かしているのか、触って、撫でて、揉んで、確かめてみたいという欲求に駆られているに違いない。
そう、ハンナはオオカミの獣人であった。
あれだけ騒ぎになった理由がスラム街の獣人に手を出そうとしたということであったというのに、それとは正反対の立ち位置にいる獣人が目の前に現れたのである。これで戸惑わずにいるというのは、至難の業に違いない。
「コウタさん、アカリさん、マサキさん、シズカさん。この度は、私たちの街を救っていただきありがとうございました。我が同胞が姿を消すという事件が起きてからというものの、心休まる時間がありませんでした。これで、この街で暮らす我が同胞も安心して暮らせるでしょう。本当に感謝のしようがありません」
獣人の仲間意識というものを目の前にする。
貴族に仲間入りし、街で暮らす平民を別の世界で暮らす人間のような扱いをするような人ではないことは対面してみてよくわかった。その裏にあるのは、獣人の仲間意識だけでなく、貴族として自領で暮らす人々を守るという義務でもあるようだった。目を見ればわかるというが、分かりやすすぎやしないだろうかというのが正直に言ったところではあるが。
はあ、と色っぽく溜息をつかれてしまうと、そちらに意識が向いてしまう。
「私たちの守るべきものに手を出された以上はどうしないわけにもいかないというのに、どうして自分で動いてはダメなんでしょうか?私が出て、こう、ブチッと捻りつぶしてあげればそれで終わりだったと思うのですが。私たちから逃げられる動物なんていませんのに」
直前の態度とはかけ離れた内容と呟かれ、ぎょっとする。何事!?、とカナックに視線を向ければ、そのカナックはハンナを諭すのに精一杯だった。
「今回の犯人は、なかなか死なない奴でな、時間がかかったようだ」
「そんなの関係ありませんわ。出てくるたびに叩いてあげればいいだけでは?」
「だから、何度も外に出るのが問題だと言っているんだ」
「私は気にしません」
「こっちが気にする。もう少しは自分の立場を考慮してくれ…」
確かに女性、さらに言えば次期領主の妻ともあろう者が戦いの場に出るものではない、と朱莉も静も自分のことを棚に上げて考える。次期領主の妻という立場では他にいろいろとやることもあるのだから、そうそうほいほいと外に出られても、ということなのだろう。そう考えていると、カナックが康太たちから向けられていた視線に気が付いたようで、手を振り出す。
「いや、ハンナの身の安全を気にしているわけではない」
「えっ?」
「ハンナの連れてきた使用人と我が騎士団がその熱気に当てられて、あれこれと暴走し始めるとその後始末に苦労する」
「騎士団??えっと、それはどういう…?」
「うちの嫁は、ふらっと姿を消したかと思えば、いつの間にか訓練場で騎士団をぼこぼこにしている」
自分は衛兵なのに、嫁は騎士団か…。何か黄昏た表情になり、ふっ、と自虐するように笑うその姿にどう声を掛けたものかとわたわたとし、ハンナの行動が理解できずにぐるぐると頭が回る。
「つまり、奥方はかなりの武闘派、と。いかほどで?」
「非公開のランキングで十本指に入る」
「広さは?」
「火の国の成人以下の部だ」
なぜにそんなものがあるのか疑問だが、それよりも目の前で、自分で動けず悲しいです、と表情を作っている女性がそれほどの腕前の持ち主だったことにびっくりである。獣人ということは体を動かすのが得意なのかと思っていれば、それをはるかに超える力を持っていた。見た目からではそれが分からないが、実力を隠すだけの力も持ち合わせていると考えるのが適当だろう。静と朱莉も似たような、外見詐欺だと叫ばれているのであるが。
共通している事項が多々あるせいか、この短い時間で意気投合したようでキャッキャッと盛り上がっている。そして、それを眺め、スッと視線をそらし、真面目な顔をして話し始める。全力で目の前で繰り広げ始められたコイバナが耳に入ってこないようにしている。
「それで、持ってきてもらったものは?」
「一緒に持ってきておいて良かったな。この本なのだがな、最後のページに封じられているのを使っていたらしい」
「その口ぶりはエミールから聞いただけではなさそうだな。もしかして、自分で使ったことがあったのか」
「まあな。エミールに言われて思い出した。あのときは興奮して本のことなんか頭の中から吹き飛んでな、落ち着いてもう一度探しに行ってなくなってたからすっかり忘れていた。見当たらなかったのはエミールが持っていたからのようだな」
過去のちょっとしたことがここまでの大ごとになるとは、と物凄く申し訳なさそうな顔で自身の経験を口にしている。過ぎてしまったことはどうしようもないが、どうにか折り合いをつけたい気持ちはわからなくもないので康太は声を掛け、雅紀も口を出してはいるものの、その意識は渡された本の締めの部分に向いている。
本だというのに折りたたまれていたそのページには、でかでかと魔法陣が書き込まれている。これだけのサイズならば巻物した方がよかったのではないのかと思わずにはいられないが、どのような魔法陣か考えながら陣を指でなぞっているうちに、その理由に思い至る。なかなか凝った仕様に感嘆の声が漏れる。
「なるほど、一枚だけじゃなくて、何枚もの紙が重なっているということを利用しているわけか。一枚の巻物では書き込むの苦労するだろうが、何層にも重ねることで無駄が多くはなるが大きな魔法陣にするのか。この本の著者と是非とも話してみたかった」
頭を使っているとき口に出すことで考えがまとまるようで、無意識のうちに零れている言葉が康太とカナックにも届く。しかし、仮説や仮定はぼそぼそと話す一方で、結果だけを聞き取れる声で話すものだから、零れてくる音を拾っているだけの二人にはちんぷんかんぷんである。魔法陣のようなパズルの解析を好みそうなあとの二人はピンクの雰囲気をバラ撒きながら話しており、雅紀が一人占めにして楽しんでいる。
「コウタよ、何を言っているのかわかるか」
「いや、全く。いつものこととはいえ、少しは説明して欲しいもんですよ。そのうち満足したら戻って来る、はず。きっと、たぶん」
「存分に見てもらって構わないんだがな、今日は話をしに来たのでな」
「あー、悪いが、たぶん今日はなかなか帰れないと思った方がいいな。多分…」
康太が最後まで口にする前に、よっこらしょ、と掛け声と共に雅紀が手を本にべちんと叩きつけ、本をピカピカと輝かせる。浮かび上がった魔法陣から板状の何かが出てくるのを眺めるしかない。部屋の中だというのに魔法陣を起動させた雅紀には、没頭すると先走る癖を直させねえと、とため息を吐く。カナックは一度見たことのある光景に、昔を思い出す。
流石に部屋の中でピカピカと光れば嫌でも気が付くようで、現状に意識が戻ってきた静と朱莉が、雅紀が抱えている不思議なものを羨ましそうに眺め、雅紀は出てきたものをペタペタと触りまくって満足したようで、カナックの前に突き出す。突き出されたものに困惑しているカナックに雅紀が良い笑顔で言う。
「他の魔道具も見せてくれ」
この短い隙に、雅紀の意識が出てきた魔道具に移った隙に本を奪取したようで、静と朱莉が真剣な顔であーでもない、こーでもない、と頭を突き合わせながら話し合い始めている。
素晴らしいまでの行動の速さに、少し落ち着きたいと康太の方に顔を向ければ、言ったとおりになったろ、と諦めの境地に達したような表情を返されるカナックと、それをニコニコと貴族らしく頭の中を読ませない眺めるハンナであった。
この場の主である司祭が入れ直してくれた茶を片手に、貴族生活での苦労話のあれこれを共有し、同じ立ち位置を持つ者同士ということで手を取り合う。ごく身近に暴走して何処かへと駆け出していく者がいるという苦労人の立場。現在暴走中の三人が聞けば、お前がその位置なわけがないと口を揃えて主張した後、自分だと言い張って喧嘩し始めるのが目に見える。
茶を入れてもらったお礼とばかりに、昨日朱莉と静が隠れてこそこそと作っていたものをお茶請けとして提供しようとして、それが何かを知らなかったせいで、まさかのジャーキーを合わせることになる。出してからそれを知り、あ~、と叫びたい衝動に駆られながら、ノンアルコールワインを慌てて取り出して事なきを得る。
市場で調理用のワインを頼んだのだが、見た目のせいか、「嬢ちゃんにはまだ早え、こっちで我慢しな!」と代わりに売りつけられた飲み物であり、自尊心と引き換えに手に入れたものだったが味の方は当たりだったようで、もう一回買いに行くか悩んでいたりする。
その一連の動きが、何事も根回しで済んでしまう世界で生きていると見られないようで、ツボにはまってくれたのが幸いだった。
ついこないだの地竜騒ぎで戦闘の片手間に齧った乾燥肉が、騎士学校以来のものだったことに今更ながら気が付いて懐かしい思いをしながらカナックは齧り、ハンナは種族のせいだろうか、実家にいた頃はよく食べていたようで慣れた手つきで口に運ぶ。
ジャンクフードを上品に口に入れた二人だが、その反応は劇的だった。司祭はあごの力を気にしてか、手を伸ばしていない。口中に広がる味わいに驚きを見せるも、感情の変化を見せない癖か口元を隠す。それを見た康太が、何か変なものを出してしまったのかと慌てて一つ口に運び、食べたことのある味に安心する。
しかし、カナックとハンナは食べたことがないのか、興味深そうにしている。
「これは……。何の肉なんだ?触感はともかく、この味は初めて口にする。ハンナの表情からして、ハンナも食べたことがないのだろう。商業都市を治める一族として幅広くのものを口にしてきたと思っていたんだが」
貴族らしさを失ってはいないが、これまで以上に進みが早い。ハンナが物凄い笑顔で手を動かしている。獣人が元になった動物の性質を受け継いでいるのがはっきりと見て取れる。そして、カナックはカナックで食べたことがないものに出会っただけで自分の小ささを実感しており、傍から見ていると非常にデコボコした組み合わせである。
「こっちの白いのが飛竜で、赤いのが地竜、だと思う」
あっさりとした答えに、「へ~、飛竜と地竜ね。え?飛竜?地竜?」とすんなりと頭の中に入ってくるも、すぐさま拒絶される。康太も懐かしそうに口にしているが、これはジャーキーというものではなく飛竜の肉に対してである。
そんな締まらない一幕で出てきたジャーキーとその他つまみに代表される品々だったが、最上級の腕前を持つ静と朱莉が持ちうる知識と手段をもって、高ランクの魔物、亜竜の肉で作った料理である。誰も味わったことのないような品が出来上がって当然である。そもそも高ランクの魔物の肉などで回らないのが当たり前なのだから。
言葉がへ~、と、え?、の間、視線が机の上の皿と目の前の少年の間を行ったり来たりしていると、机の上に新しく手が伸びてくる。摘まんだものを口にくわえたままで、グラスに液体を注いで咥えていたものと交代で飲み込み、炭酸のはじける感覚を楽しんでいるのだろうが、そのときの声がビールを流し込んでいるおやじにしか見えない。
康太が呆れたように指させば、すんなりと席につく。行儀が悪かった自覚はあるようだが、謝っている姿は軽い。戻ってきた雅紀に続くように、静と朱莉ものどを潤している。三人ともそれぞれの中で完結したようで、先ほどまでの興奮は欠片も残っておらず、会った時の状態に戻っている。
さっらと出されたものを受け入れるのにそれほどの時間はかからず、全員が再び席に着いたところで報告が再開される。
「今確かめてもらった通りなのだが、この本の最後に書かれていた魔法陣は発動させると一つだけ魔道具が出現する。出てくるのは発動させた人間の能力、性格に合った魔道具で、一人一つまで。それと、一族の人間しか反応しない、はずだったのだが…」
「そういや、それらしい陣があったな。そこを満たすと流れる魔力を真似てみたら、発動したぞ」
一族秘蔵の品だと盛り上がっていたというのに、と恨めしが魔そうな視線を向けられ、他の人には真似できないことを保証しておく。別に魔道具が欲しかったわけでもないので、出てきた魔道具もそのままカナックに押し付ける。
「お前らの能力については聞かん。冒険者とはそういうものだからな。だがな、お前らが地竜を容易く屠れるだけの能力を持っているということは知っておきたかった。討伐がもっと楽に済んだろうだからな。しかしそうか、そうしたとすると街で起きた事件を対処できる人間がいなくなったのか、いや、もしかすれば討伐隊全員が戻るのが間に合ったのかもしれないな」
「もしも、の話は後にしましょう。これからの話をする方が先ですよ」
「おっと、そうだな」
考えることが常であるカナックがこの状態に陥ることはよくあるようで、諫めるその姿は板についている。これほどぴったり息が合うほど夫婦になってから長いことは聞いたばっかりであり、貴族の常識では雅紀たちの年では婚約は当然、結婚までしている人もいるのだとか。それを知った二人のスイッチが入りかけていたのだが、全力で話を聞かないようにしていたパートナーたちは何も気が付いていない。
「それでエミールが持っていた複数の魔道具なのだが、な」
「その表情でだいたい分かったから、言わなくてもいいぞ。雅紀がやったのと同じなんだろ?」
「そうもいかない、後処理の話をしに来たのだからな。まあ、分かっているようだがな。その通りなんだが、この本を知っていた一族の人間はいなかった、ここ数年で亡くなった一族もいない。となると、俺の知らない一族、つまりエミールの子供になるんだが、これがまた探せない」
「あいつなら、片っ端から目についた人に手出してそうだからな。まあ、お家騒動にならないように頑張れ?…まあ、この魔法陣を使うためにそうしたんだとは思わないがな」
どこの世界でも隠し子は問題となるが、貴族ともなれば血筋についてくるものがものだけに大問題になる。領主の子供の隠し子はそれなりの価値があるのだろうが、長男の名で抑えられるように、頑張って周りの人間の指示を集めて欲しいものだ、と他人事のように憐みの籠った視線が向けられている。
「商会をやるようになってから資産は増えていたようだからな。これからの生活を考えれば、それを頼るしかないのだろうが、その条件でいろいろさせてもらうことにする。あいつのやったことは、表沙汰になれば一族打ち首になりかねん。なるべく裏で処理するしかない」
「商会ね……。何売ってたんだろうな」
「それなら、私いろいろと聞いたよ?食料に魔物素材、魔石に魔道具。高いけど大抵のものはあるって。まあ、その後に、専門の店の方がいい、ってのも続いてたんだけどね」
ずいぶんと立派な建物だったが、そんなありふれたものだけで辿り着くようには思えない。裏でやっていたことも、隠れ蓑に商会を使ってはいたが出た利益を回している様子はなかった。魔石の扱いで騒いでいたことも思い出すが、その程度でどうにかなるとも思えない。
「だいたいその通りだ。だが、一番は貴族向けのあれこれ、特に化粧品だ。確か、買った鉛をめぐって騒いでいた時に言っていたが、有毒だということを発表してそれに変わるものを売り出して大儲けしたらしい。それ以来、多くの貴族を顧客として抱えることに成功したらしい」
完全に頭の中から切り捨てたようで女性陣は首を傾げているが、一番被害を受けた男性陣は思い出したように唸る。そういやそんなことも言ってたな、あの変態。そんな顔をしている。
化粧品が手軽に手に入る生活でも、高級品はとんでもないお値段だった。化粧品がない状態ならば、言わずもがなである。
そんな商売上手だったのか、と首を傾げずにはいられないが、同時にある疑問に至る。
「何処で鉛が毒だってことを知った?」
「どうやって化粧品の作り方を覚えた?」
「それもこの本だ。やはり、最後のページしか見てないのか」
自分で試したわけでもなく、男ならば興味が薄い品。顔いっぱいに”?”を浮かべ、もしや生まれ変わりか何か、と雅紀が警戒するが、カナックが肩をすくめながら机の上に置かれた本を指し、興味持ったところに全力疾走か、と呆れた顔をされてしまう。




