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非常識高校生の非勇者生活  作者: kiara
第一章 始まりの物語
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デュクスの騒動15


 振り下ろされた剣から飛び出した魔力の塊は容易く障壁を切り裂き、その奥にいた騎士を吹き飛ばす。斬撃ではあったがそれほど圧縮していたわけではないようで、吹き飛ばされるだけで済む。斬られた障壁は魔法として維持できなくなったのか崩壊し始め、慌ててギルドで見せたように「崩壊(ブレイク)射出(シュート)」の掛け声で攻撃に転じる。


 魔力がエネルギーであり物質性が薄いせいか、雅紀が張り巡らせた様々な状態の空間を通過して襲い掛かる。それを見て魔法が攻撃として通じるということが見て取れ、一筋の光が差し込む。残念ながら、今回は斬られた衝撃で障壁が弱くなっていたのか、その破片は雅紀の纏う魔力に止められてしまう。


 止められはしたが、光る欠片が視界を埋め尽くすというのは存外邪魔なもので、それを受け切った雅紀は自信を囲むように障壁が展開されているのに気が付く。障壁で相手を閉じ込め、内側に大量の破片を全方向から打ち込む。これを受け切るのは同じく魔法が使える人間か豊富な魔力持ちにしかできないだろう。


 しかし、雅紀はこの使節団との戦闘、というには一方的ではあったが、戦力を見ていると引っかかることがあった。それは、この戦力が対人間として出来上がっているということである。連れてきている騎士たちの練度は優れており、魔力もそれなりに持っているのはわかるが、使おうとしている技を見た限りではどれも威力が人並であり、大型の魔物の守りを抜けてダメージを与えるのが厳しいように思われる。


 そして、何よりもこの自称宣教師の魔法、明らかにこれは対人間として確立されたものである。攻撃を受けたそばからの反撃は優れているのだが、どうしても障壁の欠片で攻撃するとなるとその大きさは魔物には小さく、固さ、つまりは攻撃力は受けた攻撃の分だけ減少することになる。そして、なにより今雅紀がされているように人間サイズの相手を囲むのに手慣れているように感じられる。減っている魔力も考えると、これ以上に大きい魔法は連発するのは苦しいように思える。


 そうなると、疑問が出てくる。


 天辺から障壁が砕け始め、甲高い音を響かせてから欠片が高速で雅紀目掛けて動き出す。


「対人専門、か。なあ、ギルドで魔物討伐探してたけど、どうやって倒すつもりだった?」


 横薙ぎに剣を振るう。それだけであったが雅紀の魔剣でやればそれは変わる。


 雅紀を囲むように展開されていた障壁が虫食いにあったかのように穴が広がり、降り注いでいた欠片は飲み込まれるようにして剣へと流れていく。魔力でできた障壁は、大喰らいのマサキの魔剣の好物である。


 障壁が消えるという今までに見たことがない破られ方に固まっている中、自身は対象外がとでもいうように騎士たちが弾かれた領域を進み、近くにいた騎士の胸ぐらを掴む。


「何を企んでた。どうやってもお前らじゃ、あの鬼を倒せないだろうが。どうやって倒すつもりだった。それともこう聞いた方がいいのか、何をした」


「お、”おに”?何を言っている。て、手を放、せ」


 持ち上げられた岸は必死になって逃れようとしているが、その言葉に嘘があるとは思えなかった。鬼という言葉が馴染みがない故だろうか、とも思ったのだが、他に企んでいたことがあるわけでもなさそうだった。


 やはりここは下っ端の騎士ではなく、本来ならば高い身分であるはずの騎士たちを従えている黒幕に聞くべきか、と騎士を放り投げる。逃げられたことにホッとしたようだが、その着地点が雅紀の防衛陣地だったことに顔を真っ青にし、地面に跡が刻まれるほど強く叩きつけられてしばらくはうつ伏せで耐えるしかなかった。


 少し外に意識を向けてみれば、スラム街の方も静の手が回り切ったのか騒ぎは収まりつつあり、街中のどこかの地下に向かった康太と朱莉からは仕上げにかかっていると返事が来る。ならば、合流に遅れるわけにはいかないと、速攻で終わらせることにする。


 たらふく食わせた分の魔力を魔剣から引き出し、そのまま剣を振るって周りに撒き散らす。椅子を壊さないようにしたのか、人の顔を丁度狙うことになる。


 頭を庇おうとしている騎士たちを魔剣で魔力を抜き取って回る。一振りで数人巻き込む形にすれば、振るった回数は片手で足りる。数を優先したため、誰が残るかは考えておらず、結果として魔法使いと騎士が一人ずつだけが残る。


 魔法使いが使ってくる障壁を利用した魔法は魔剣があれば封殺できるからと、先に残った騎士を狙う。


 戦闘に掛ける時間もなさそうなので、魔力を奪ってさっくり終わらせてもらおうと、盾で受けられる直前で盾が光る。嫌な予感がした雅紀は大目に魔力を纏ったまま攻撃を続行するが、剣が盾に重なった瞬間にその光が強まったかと思えば弾かれる。わお、と思わず口にしてしまうが、そのようなことを許してはくれないようで、剣が振り下ろされる。


 弾かれた勢いに乗って一回転して剣を弾き、そのまま足技を見舞うも分厚い鎧に阻まれてしまう。普通の鎧ならば今の衝撃が身体まで伝わっているはずなのだが、感覚からしてそうはいかなかったらしい。宙に上がり、靴裏に結界を張ることで停止し、ここで初めて今の攻防の相手を見る。なかなかに渋いおじさまが、他のものよりもきれいな鎧を着込んでいる。


 ギルドのときには見なかった顔だな、と思っていると、オジサマ騎士が剣を光らせている。先ほどの盾と言い、この騎士は特殊な装備を持っているらしい。嫌な予感がするが、ここで引けば後ろの子供が危ないかもしれないうえに時間に遅れるかもしれないと、正面から突っ込む。


 光る盾がどういうものかは、情報次元を見ることのできる雅紀は一回でも目にすればだいたいのことは理解できる。騎士が持っていたのは単純に魔力攻撃を反射するタイプの盾だったようで、魔力そのものと化した剣で斬りつければ弾かれるのは当然だった。ならば、その解決方法も単純である。通常状態の剣で戦い、盾が間に合わないタイミングで魔力に変化させればいいだけである。


 鎧にも同じような効果があるようだが、盾よりも弱く、衝撃を減らす方向の能力が付いているらしい。聖王国は魔道具生産の大国の風の国と隣り合っているだけあって、優れた能力が付加された武具が多いらしい。是非とも欲しいものだと思いながら、剣で斬りつける。


 魔改造した魔剣はそれだけでも恐ろしい能力であり、その切っ先が触れた場所には線が刻み込まれている。それはオジサマ騎士の装備に関しても例外ではなく、鎧にも盾にも細かい傷が何本も刻まれている。魔改造された剣を握った雅紀と何合も斬り合える人間がいるとは驚きだった。


「騎士さんよ、何を企んでたか教えてくれないか。あんたがこの騎士の中で一番なんだろう?知ってること話してくれよ」


「…”おに”とは何だ」


「…それは聞かないで欲しかったんだけどな…。大鬼(オーガ)のことだよ、大鬼(オーガ)。ギルドであの宣教師が言ってた困りごとって、大鬼(オーガ)のことだろ?町の近くの森にいる」


「…俺は知らん。…あの方は、街の人を助けてあげましょう、としか言っていなかった。…大鬼(オーガ)など知らない」


「そっか、それだけの力、人生かけて積み上げてきたんだろうけど。悪いな、技で競い合いたかったんだけどな。それと、お前は邪魔すんな、あとで相手してやるから」


 宮城一誠ほどは年食っていないのだろうが騎士としては老齢であるものの、身体にガタは来ていないようで積み上げてきた経験との戦いは面白かったのだが、時間には代えられない。剣で押し込む形で聞いている後ろで、騎士を巻き込む形で魔法を発動しようとしている宣教師に魔力をぶつけ、魔法発動を阻止する。


 押し込み方をずらして半身になりつつ相手を流す。オジサマ騎士は崩されかけた体勢を直そうとするとともに、雅紀が隠すように取り出したもう一本の剣に気が付く。剣で技を競えず残念と言っていたが、この少年、嘘だったのか、そう思わずにはいられない綺麗な流れであった。しかし、騎士はそれを受け止める自信があるようで、体勢をさらに修正して剣と盾が重なる。盾と剣がぶつかる音。それを聞くことはなく騎士の意識は消える。



 取り出した魔鉄製の剣をそのまま構え、その場に崩れ落ちた騎士を離れる。酸欠で気絶させる結末になってしまったことを残念に思わずにはいられない。この世界で今まで見てきた戦いは、どうにも技が大したことなかった。技はあるのだが、どうしても一撃の重さを追求したものであった。駆け引きといった技は少なく、相手になる人がいないのでは、と傲慢ではあるが思わずにいられなかった。


 身体強化にものを言わせた戦い、魔道具を使っての撹乱、魔法という攻撃手段。それを使っている人間が純粋に人の力だけで剣を振るってきたものに剣の戦いで勝てるとは思えない。そう思っていたのだが、やはり、この世界にも何度も戦いに身を置いている人間は経験によって剣が研ぎ澄まされている。時間でカバーしていた。


 そうなるとそれなりに年食った人間が雅紀たちが求める相手なのだが、そういう人間に限って表舞台から引退しているのである。冒険者は若さが必要となるうえに、魔獣相手が多いということで対人の技持ちは少ない。そして技はやはり必殺技となる。


 残念過ぎる相手しかいないかと思っていた中での、このオジサマ騎士の登場。雅紀を興奮させるだけの意味はあった。そして、お互いに装備が整っていたため装備にものを言わせ戦いではなく、師匠との打ち合いのような技を競い合えた。


 時間の都合上、酸欠で気絶させざるを得なかったことに心残りを感じながら、これほどの腕の持ち主との出会いをこの場面に持ってくることになった原因である宣教師を吊り上げることにする。雅紀の攻撃性が襲い掛かる。


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