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非常識高校生の非勇者生活  作者: kiara
第一章 始まりの物語
8/100

俺たちの戦いはry


「敵襲です!!」


 最後の夜だから、優雅に過ごそうとするも自然はそれを許してくれない。


 各々が獲物を片手に構える。雅紀は木剣、康太は竹刀、静は薙刀、朱莉は弓を構える。


「距離と時間、数、構成は?」


「先頭が四〇〇、あと四十秒、正面一〇〇、左右五〇ずつ、ほぼ狼型、速度毎秒一〇」


 朱莉が、聞かれたことに速やかに答えていく。敵の情報を仕入れ、手早く作戦を組んでいく。


「ここで魔法で迎撃しつつ、乱戦突入。朱莉、矢は?」


「魔法でやります」


「じゃあ防衛陣組むよ」


 各自が戦闘の補助に魔法を発動させていく。全員が身体強化はもちろんとして、雅紀は地面を蹴って盛り上がらせ、康太は照明として光の球を浮かべる。静はオオカミの来る方向の10メートル先に五〇〇度を超えるだろう熱の壁を幅10メートルで作る。丁寧に光の屈折や漏れだす熱も処理して、オオカミに突っ込ませる気満々である。朱莉は遠方からの光のみを収束、解析して拡大鏡代わりにしている。常に先頭の狼に目をつけているようで、皆の準備が終わると同時に大量の矢を打ち放つ。


 残り200メートルに迫っていた正面のオオカミたちは、突如隣の森から流れてきた膨大な魔力に惹かれて、移動を決めていて、目の前にその溢れんばかりの魔力を秘めている存在がいることを確認し、遠吠えを上げようとする。上げようとした瞬間、上空から数十の矢が降り注ぎ、四割近くがその場に繋ぎ止められた。帯電した氷の矢が降ってきたようで、十分な質量をもつ上、掠めれば電流によって動けなくするという、妨害に適したものだった。痺れているオオカミに衝突した別のオオカミもそばを通ったオオカミも、その影響を受けるようで、そんなオオカミを合わせると、逆に四割しか残っていなかった。空中放電を起こさせるほど矢に帯電させるとは、やりすぎである。それも百本弱である、張り切りすぎだ。


 残ったオオカミは、数が少なくなり前に詰め気味に、横に五、六匹に広がっているのである。いい実験の的である。先頭のオオカミが獲物を前に、雄たけびを上げながら四人に突っ込んでくる。つまり、静の罠の灼熱地獄に頭から入るのである。結果・・・


 おいしく焼けました。


 続けて後続のオオカミも突っ込んでくる。何も見えないところで敵を前に地面に横たわるオオカミを見て疑問を持つが、止まることはできずに見えない壁に突入し、


 いっぱいおいしく焼けました。


 流石に十数匹やられれば警戒するのか、スピードを落とすのに成功しただけなのか、三十メートル離れてうろうろしだす。改めて見たオオカミの姿は、動物園で見たことのあるオオカミから大きくはズレておらず、そのオオカミを黒くし、また汚くして、牙を少しばかり尖らせた感じである。


 うろうろしている敵を前にして待つようには鍛えられていない雅紀たち。地面に穴をあけて、足を掬い、止まったところに上空から氷弾やレーザーを打ち込む。オオカミは逃げられるわけもなく、あっけなく息絶える。土埃が晴れたときには、四本足で立っているオオカミは一匹も残っていなかった。


「あっけなく終わっちまったな。もうちっとやりたいところだぜ」


「じゃあ、あとは各自で戦闘ってことで。静、壁解除してくれ」


 担当する場所は早い者勝ちのようで、右を雅紀、左を康太、正面と抜けた奴を静と朱莉が担当するようで、獲物目掛けて走っていく。



 康太は、オオカミの先頭が見えると立ち止まって構える。オオカミはそのほとんどが康太を囲み、十匹程度が先へと進んでいった。康太は、考えることはあるものの、基本は相手の技に耐えてからの強い一撃で決まる戦闘方を好んでいた。今回もそれに合わせるようで、左に竹刀を寄せ、利き手側に自然に見えるような隙を作り、誘い出そうとする。オオカミも警戒して、初めは周回するに止めていたが、にらみ合うのにしびれを切らしたのか、数匹が隙をつくように飛び掛かってくる。一匹目を右ひじを入れて吹き飛ばし、二匹目を頭に向けて振り下ろす。次いで腹へ一撃、のどへ一撃を入れて、さらに二匹を落とす。


 どうやら使っている魔法は身体強化だけで、雅紀の使っていたよく切れる魔法は使っていないようで、攻撃を入れられたオオカミの体から血は出ていない。それでも、体内への衝撃は十分であり、起き上がってくるのはいない。


「おら、かかって来いよ」


 飛び掛かったのがすべて落とされたのを見て、一拍ほどの間があった後、残りのオオカミが一斉に飛び掛かってくる。康太はそれを見て、にやりと笑い、近くのオオカミに向き合って一撃を入れる。四方八方から迫ってくるものの、体の大きさから竹刀の間合いに入っているのは三匹程度だけ。次々にその後ろから来るのがわかっているので、竹刀で傷を負わせつつ向かってくる方向を変え、一撃で仕留めずにダメージを蓄積させる持久戦に持ち込んだ。腹に顔、足にも当てていく。


 朱莉を見習い、気を読むことのできる康太には、戦況がはっきりと見えていた。余裕があれば一撃で仕留め、立て続けに来るならば軽い一撃に抑えるか体を反らす。普段の口調からは想像もできないような冷静さを持って戦場に身を置いていた。


 持久戦をすること15分、立っているのは康太と、一匹の大きめのオオカミだけだった。このオオカミ、指揮官だったようで、ほかのオオカミが全滅するまで後ろで動きもしなかった。周囲には飛ばされ気にぶつかってずり落ちたオオカミの死体しか残っていない。オオカミは今までのオオカミとは違い、飛ぶことなく地面の上を走ってくる。空中で迎撃しまくったので空中は避けたいのだろう、足元を走り抜けざまに噛みついてくる。オオカミの口元に集まる魔力を感じ半歩横に移動すると、元の場所に噛みつき、ガキンッ、と牙だけでは出せそうもない音を立てる。


「お、こいつ魔石持ちか」


 康太は原因を理解する。避けられたオオカミは足にも魔力を巡らせたのか、さらに速くなってかかってくる。一本一本を避けては横腹に竹刀を当てていく。五回ほど繰り返せば、内臓にダメージが蓄積したのか走りかかってくるのではなく、様子見に移った。それを見て潮時と思ったのか、康太は、オオカミに向かって、今度は自分から動く。オオカミは下がるか横にステップするしかないが、後ろが仲間の遺体が邪魔で行けず、横に行くと地面を這う一撃が迫る。足を上げたことで直撃を避けるが、足にダメージを負って飛ばされる。


 逃げることを考えるオオカミだが、目の前の笑みを浮かべている存在が許してくれるわけもなく、体も動かなくなりつつあり、一撃を入れるしかないと理解する。残りの魔力をすべて流し足と口に纏い、走って飛び跳ね、のどに噛みつこうとする。康太は竹刀にただただ魔力を込めただけの一撃を相手の牙を叩き折るように振るう。やはり康太の方が魔力量が多いようで、オオカミが押し負け、空気でできた牙は霧散、強い風に戻され、竹刀がそのまま頭を吹き飛ばす。オオカミの体がどさっと地面についてから康太は息を吐き出す。


「ふう、とりあえず終わりか。けど、このオオカミの死体どうすっかな。運びきれる気がしないぞ」


 康太は全部を持って帰ろうとするが、持ち切れず、比較的きれいなのと魔石持ちの計十匹を見繕って、魔法で持ち上げて帰って行った。



 静と朱莉は二人に先を越されて不貞腐れていた。


「もう、先に行くなんてずるいよ」


「まあまあ、正面にも遅れて数匹いますし、左右も多少は流してくれるでしょう」


 左目の前に魔法を発動させながら朱莉が宥める。朱莉は初撃として矢を放っているので、満足しているようだ。一方、レーザーを打つに終わってしまった静は体を動かし足りず、早くオオカミが来ないかと待っていた。見た目からはズレて、なかなかに戦闘狂の素質をお持ちのようだ。


 先ほどから魔力を流してアップを兼ねて、仕留め切れていなかったオオカミを仕留めていた静は、近づいてくる反応に顔を輝かせる。戦闘に遠距離からの魔法を使うのは面白みがなくなってしまうが、近接戦闘に魔法を組み込む分には大丈夫だと信じて、魔法をどんどん発動させていく。魔力を流して身体強化に武器にも強化、しまいには体に電流を流し超高速での反応を可能にする。薙刀には力場を発生させ触れることをできなくする。


「よし、康太の流してくれた分で試しちゃおうか」


 気取ることも緊張することもせずに自然体でオオカミに進んでいく。間合いに入った瞬間、薙刀が振られ、血を吹き出しながら明後日の方向に飛んでいく。薙刀を新体操のバトンのように回しながら進めば、進んだところだけが血で汚れず、周りは血の海に変わっていく。きっちり十匹狩ったところで追加は止まり、トボトボと静が歩いてくる。


「うう、ダメだった。もっと強い的じゃないと満足できない」


 何やら危険なことを言いながら、強化を魔法を解いていく。生身だけなら満足するかと、雅紀の方からのおこぼれを、朱莉とお喋りしながら待つも、一向に来る気配はなく、結局雅紀の方が先に戻ってくるのであった。



 光のない森の中、雅紀は超アクロバットな動きをしながら走っていた。走る方向のが変則すぎるのか、動物たちが気配のした方に目を向けてもすぐに視界の外へ出てしまう。地面を蹴って、枝に掴まったり、枝の上を走ったりとやりたい放題していた。


 雅紀は、この状況を楽しんでいた。今までは身体の条件からできなかったことが、できるようになったのである。雅紀は試してみたい技が溢れていた。母親のせいで静にはばれてしまっていたが、雅紀は突拍子もないことに憧れている節があった。雅紀は隠れオタクに分類されるタイプであった。本当の目的は、機械いじりのアイデアをもらうことであったが、いろいろと手を出し、それに付随してほかの情報も知ってしまったのである。流石に魔法に憧れるようなことは引きずらなかったが、単純な剣技くらいならいけるのでは、と思ってしまったのである。刀よりも剣の方が自分に合っていると以前から感じて、一慶から皆には内緒で習っていたことも相まったのである。


 持っているのは木剣なので、魔法で一般的な剣くらいまで切断力を上げる。視界にオオカミが入ったとき瞬間に、魔法を発動させて見えたオオカミの前に高速移動して首を落とす。そのまま地面を蹴って次々に首を落としていく。地面を蹴り、木の幹を蹴り、ときには空中を蹴って、どんどん加速していき、空気抵抗は魔法で消すことで、超高速戦闘をしていた。


「ははは、いいね、いいね!この速さは堪らないね!!」


 高速で動きながらも、魔法で感覚を強化していくしっかりと周囲を把握している(把握できていなければ地面やら木に激突してしまう)。そして剣を振るたびに、新しく首が一つ飛ぶ。オオカミにとっては、風が吹いたと思ったら前とか横にいたオオカミが首から血を吹き出し、耳横で音がしたなら自分の視界が真っ暗になるのである。突然の出来事に困惑しながらうなり声をあげていくも、雅紀を認識することはできず、次々に倒れていく。雅紀の三次元戦闘は、オオカミにとっては全身どこからでも切りつけてくるようなもので、恐怖で逃げるのもいたが、そういうオオカミから率先して倒されていくのである。


 次第にオオカミは雅紀に包囲されるように、一か所に固まるのであった。オオカミの中には魔法を使って対抗しようとするのもいたが、雅紀の速さにはついてこれず、ただただ切られる寸前に気づくことができるようになっただけであった。気づかないうちにやられるのと、直前で気づいてからやられるのでは、後者の方が悲しみに思える。


 手早くオオカミを殲滅した雅紀は、オオカミの首と体を集め始め、()()()()()()()に手を突っ込んだ。そして何かを確かめて、問題がなかったのか、大量の死体に向けて大量の魔力を流し始める。しばらくして、雅紀が手を離した途端、大量の死体が消えた。これも雅紀が何とかして使えるようにした魔法で、こればかりは誰かに教えてもらいたかった、と検証好きの三人が手を焼いた魔法である。


 すべてしまい終わった雅紀はのんびりと歩いて帰ると、まだ戦う気でいた静から、涙目でじっと見つめられるという怒られるよりもつらい状況に入るのであった。


魔法名は次回

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