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非常識高校生の非勇者生活  作者: kiara
第一章 始まりの物語
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乱入者


 早速取り掛かろうと、康太が司祭にどこら辺ならば潰しても大丈夫か尋ね、司祭からの答えに従って静が落ちていた木の枝で地面に線を引いていく。一方、雅紀は朱莉とあちこちに目を配っていた。朱莉の指さす方を向いて何やら手を動かし、しばらくすると別の方を向いて同じことを繰り返す。


 司祭も初めはその動きを不審そうに見ていたが、しばらくすると周りの空気が心地いいものに思えてくる。それは時間と共に強くなっていき、長いこと教会で魔法を使い続けてきてそこそこの魔法使いとしての技能を自負していたが、雅紀のしていることに理解が追いつかない。そして、教会で働き始めて一番日が浅いシスターまでもが感じられるほどの違いとなったのか、確認のために裏庭に顔を出す。


 不安そうな顔をしているシスターに問題ないと下がらせるが、その動きは内心の動揺が表に出ないようにするのに精いっぱいで何処かぎこちなかった。司祭は雅紀の方ばかりを見ていたが、シスターとしてはいつの間にか出来ていた畑について聞きたかったのだが、そんな状態ではなさそうだったので退散する。


 立て続けに教会の裏口が開いた音に気が付いたのか、孤児院と思われる建物から子供が顔を見せ、司祭に構って欲しそうにしている子供いるが司祭の視界には入っていない。


 雅紀や康太に突撃していく子供もいるが、康太の弟の玲仁と妹の玲央で培ってきたスキルを最大限生かして対応する。孤児院を尋ねて来る人は珍しいのか、多くの子供が二人の周りに集まっている。年齢は小学校中学年くらいで、男子は冒険譚を求めて群がり、女子は成長が速く性別の違いを意識したのか顔を赤くして二人を遠巻きに見つめている。


 司祭もそれが視界に入るが頭がうまく回らないのか、いつもなら叱るところなのだが言葉がでない。子供に囲まれている二人はその様子を見て少しの間だけ話し相手になってあげることにする。



 朱莉に冒険譚を語ってもらって康太が劇のように動く。静は作った畑に腰を下ろし、種を撒いて何やらぶつぶつと唱え、朱莉に交代してもらった雅紀は畑に必要そうな備品を作ったり、周りを囲ったりと動き続けている。


 朱莉が子供たちを夢中にさせていた話を語り終えたところで、司祭が声を掛けてくる。正確に言えば、司祭が話せるようになったところで幕引きに向かった。


「皆さん、楽しいお話をしてくれたお姉さんに言うことは?」


「「「ありがとうございました!」」」


「どういたしまして。楽しんでくれたようで何よりです。少し司祭様とお話しさせてもらいますね」


「私は話がありますので、皆さんは部屋に戻って待っていてください」


 今聞いた話を口にしたり康太の動きを真似したりと、キャッキャしながら子供たちが建物の中へと戻っていく。戻ったのを確認してから、突然子供たちが押し寄せたことへの謝罪を口にするが、康太と雅紀が気にしないで下さいと笑って流す。そして、静の手に握られているものに目が行く。


「その薬草は?」


「これからここで育ててもらうつもりの試作品です」


「そんな上質な薬草をいつの間に……。それは置いておきましても、私たちにそれを作れるとは思えないのですが」


「そこは気づいていると思いますが、雅紀がやってくれたので、後は普通に薬草を育てるだけです」


 その静の答えに、やはりこの庭の魔力が濃くなったのだと理解する。魔力の濃い場所で育った薬草で作ったポーションは高い効果を持つため、そういった薬草は高値で取引される。静が持っている株はここらへんで採取される薬草よりも明らかに高品質だとわかる。


 でもどうやってここの魔力を濃くしたのかがわからない。静は半永久的にこの状況が続くような口振りだったが、雅紀は手を動かしていただけで魔道具を使ったわけでもなさそうだった。魔力を外部から得るにしても、研究が難航していて実用化に至ったとは聞いたことも無い。


 不思議そうな顔をされるが、雅紀のしたことは至って単純で、この場所に龍脈ほど太くはないが魔力の流れが通るようにしただけである。お誂え向きに街の頭上に龍脈から分かれたと思われる流れがあり、この先の森で霧散するものでその森の特産もなかったようなので、その流れの一部がこの街にも流れるようにしただけである。一度手を加えて流れを変えてしまえばしばらくはその流れに変化はなく、いざというために流れを補助する棒をそれっぽくして畑の端に立てておいた。


 何をしたのかを聞きたいところであったが、聞いたところでわかるとも語るとも思えず、ただただ現状を打破するための手札を授けてくれたことに感謝する。康太も、ここまでしたんだからスラムで困っている獣人の子供を助けろ、とその目が強く語る。


「薬草の売れ具合を確認したらすぐにでも」


「そりゃ、今すぐに、っつうのは厳しいか…。あ、これで行けるか?」


 今すぐにでも始めてほしいと思うも、畑の薬草の具合が分からなければ動けない。薬草も花が咲くまで育てる必要もなく、根を残しておけばまた生えてくるようなのですぐに収穫できるのだが、その時間さえも惜しいと康太は採取以来のときにとっておいた薬草をプレゼントする。


 雅紀たちは気が付いていないが、ここ最近出回っているポーションの原料は雅紀たちが魔の森に潜って採ってきたものなのだから、その価値はその期間を早めるのには十分すぎる。アイテムボックス内で眠っていた分新鮮であるともいえる。司祭もギルドに卸すよりも繋がりのある薬師を頼った方がいいと理解し、康太の要望に応えることにする。


「お任せください。この街の子供を助けて見せます」


 司祭の答えを聞き、安心したと康太は破顔し、建物の陰が畑を覆い隠すほどに太陽が傾いていたことに気が付き、少し寒そうに腕をこすりながらもう帰ることを伝える。司祭としてはもっとお礼をしたいところであったし、子供たちも悲しそうな顔を向けてくるので、いつでもいいのでまた顔を見せてくれと頼む。


 康太も一回こっきりで終わらせるつもりもないようで、子供たちに笑いかけ、また来るからよ、と諭している。朱莉はこれだけの広さがあるならば薬草以外にも手が出せるのではないかと考え、雅紀と静は自給自足のための作物はどうかと相談しながら手を振っている。


 教会内に戻ったところで、建物が石のためか日が入ってこないためか外よりも肌寒く感じ、薄着しか買っていなかったことを後悔する。無いものねだりをしてもしょうがないと、革製だが見た目は布っぽくも見えるのでワイバーンコートを羽織り、つけっぱなしだった魔道具を止める。


 見るからに高級そうな服を着ていたが、今取り出したコートはデザインはありふれたものだが素材が並大抵なものとは比べられない。魔道具を付けているのはわかっていたので、財力を見る限りでは貴族に肩を並べるようだが、魔法の腕や農作業に抵抗がないことを考えると冒険者のようにも思えるが、年齢にはそぐわない。


 司祭の頭の中でぐるぐると渦巻く疑問に気づくことも無く、司祭に頭を下げて雅紀たちは教会から帰ろうとしたので、自分も仕事に戻るかと治療用スペースへと歩いていく。雅紀たちについてはわからないことだらけではあるが、あれだけ協力してもらった以上は彼らの期待以上の成果を見せたいところ、と手の空いていそうなシスターに声を掛けようとする。


 その時、外から馬の掛ける音が響いてくる。普段は馬が馬車を引く音であって蹄と車輪の音なのだが、今聞こえる音は馬が全力で走っているときのものである。急な来客を知らせるその音に、一刻を争うほどの怪我人が出たのかと身構える。


 その音はやはり教会の近くで止まり、馬の嘶きと共に教会の扉が乱暴に開けられ、中に人が入ってくる。そのうちの一人だけが周りと服装が違って白を基調とした布製の服で、他の人は鎧を着込んでその一人を守ろう用に立っている。そのまま教会の中を進んで説法をするための台の上にずかずかと入り込む。


 司祭は、入ってきたのが怪我人かと思えば、鎧を着込んだ騎士であったことに気を取られてしまって突然のことに対応できず、台に上り始めたところで教会内での礼を失する行いを攻めようと近寄る。他の教会の人間は何が起こっているのか分からず立ちすくんでいる。


 友好的でない顔をして近づいてくる司祭を見た騎士は、顔を主と思われる白い服を着ている人に向ければ、いつものように何も言わないので、躊躇いなく剣を抜いて司祭の胸に突き付ける。


「我らの邪魔をする者は何人であっても許されない」


「神の御前で剣を抜くとはいかなることか。突然の来訪に加えてこの暴挙、いったい」


 剣を突き付けられて進めなくなりも、教会内でのタブーを破る行いに怒りを見せて食い掛ろうとする司祭の言葉を遮るようにして騎士の主が話し出す。


「神の御前?ハッ、笑わせるな。神は我らが神たるユーテリア様、ただ御一柱(おひとり)だけだ。たかが天使ごと気が神を僭称するとは、そちらの方が無礼ではないか」


 男が声高に何を語っているのか、教会内では乱入してきた本人たち以外で理解したものはいなかった。ただ、我らが神ユーテリア様、そう言ったことから、こいつらが誰であるかは容易にわかった。


 聖神教。主神ユーテリアを唯一神とする宗教で、人類至上主義を掲げて聖王国以外の国々では嫌悪されている宗教。


 聖神教の信者なのはわかったが、ここに来た理由については教会に居合わせた住人に心当たりがある人はいなかった。


「聞け、異教徒の者どもよ!!この度、我らが神たるユーテリア様がこの世に救いをもたらしてくれた!!」


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