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非常識高校生の非勇者生活  作者: kiara
第一章 始まりの物語
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商業都市デュクス


 クロネに誘われてのデーニッツ領の領都デュクスまでの護衛依頼は雅紀たちにとって、非常にためになる依頼となった。


 一緒に護衛することになった冒険者たちは昇級試験の試験官としてギルドが雇う人物なのであるから、その人格と仕事ぶりは一流であるのは当然だった。ただ、本人たちは戦闘力と言う面で劣っていると考えているようで、他の面でカバーしようとしていたら今のパーティーになった居たらしい。


 戦闘力を求めている冒険者は雅紀たちの実力が羨ましいようで護衛の途中でいろいろとか繰りを入れてきたが、その姿が学校での部活で指導を請うてくる後輩に重なるものがあって、少し涙が目に浮かびそうになってしまったのは4人だけの秘密である。


 魔法を教えることは後々で問題を引き起こしそうな気がしたので、武術だけならばと休憩中に少し手合わせをし、火の番をしているときは今までどんな鍛錬をしてきたかを語った。魔法についてのことは、こちらの世界に来てすぐの森の中の生活しか思い当たる節がないので、気絶するまで魔力を枯渇させて魔量の濃いところで寝るのを繰り返したと正直に伝えれば、信じられないものを見るような目を向けられ、やはりこの方法は一般的でないと確信する。


 気になったのは雅紀たちの力だけではなく、雅紀たちの持っている装備についても同様であった。装備については、さすがに雅紀が魔術でいろいろと改造していることは機密事項であるので、せいぜい何で作ったのかを教えることくらいしかできない。


 防具については雅紀がぶん殴られた際にあちこちで擦りまくったせいで着るに耐えられるものではなくなり、武器の方も康太は刀だけで戦うのをあきらめた上、これまた雅紀がハイオークキングを斬ろうとしてただの棒状の塊にしてしまった。


 そこで暴走が終わったその日のうちに、鍛冶屋のボレルのところに襲撃をかけていろいろな素材を譲ってもらい、それをこねくり回してとんでもない武器に仕立て上げていた。


 防具の方は素体は元のワイバーンコートにハイオークキングの革を部分的に重ね、その間に薄い金属の布を縫い付けた。この世界ならば蜘蛛の糸のような強度を誇る繊維も見つかりそうだが、あいにくとエリンエルの街では紡績業も糸が採れる魔物も他の街に劣るようなので後回しになった。


 さらに、この上から雅紀が魔術で分子間の結合を強化して防刃性を高め、外からの変化を拒む性質を書き加えることで、武器の衝撃だろうと魔法だろうとその威力を減衰するように改造した。この改造をするにあたって雅紀が魔術をかけやすかった魔鉄の布を挟むことになった。ワイバーンもオークの革も魔力は通しやすかったのだが、魔物由来だったせいか性質を変化させようとすると抵抗が大きかったせいで断念し、もともとの丈夫な性質で満足することにした。


 武器は、魔鉄単体だったせいで硬さが出なかったのでは、ということで魔物の骨を混ぜての合金で置き換えることにした。この世界の魔物を考えると、地球の同サイズの生き物に比べて俊敏で怪力で、筋肉の量から体重も明らかに上回っているだろう。なればこそ、その身体を構成する骨も同じものだとは思えないので魔物の骨を弄っていると、ボレルからいい骨は添加剤にいいぞと言われたので、それを添加というレベルではなく混ぜ合わせた。


 静が分子レベルで混ぜたので結合も強く、硬さが増しただけでなくやや柔軟性も持ち合わせる期待通りの合金が仕上がった。素材を魔鉄以上の金属やさらに強い魔物、それこそ竜の骨を使えば、更なる金属を作り出せるのではないかとも期待できる。もちろん膨大な魔力で金属を強化するのも忘れていない。


 この金属を使って全員の装備を一新したうえで余った分で静の鎖を鍛えた。素材にワイバーンの骨を使っている以上、鎖が細いといえどもその強度は多くの冒険者がお手上げの品である。ちなみに名前だが考えるのが面倒なようで、改造するに考えるのもめんどくさいようでver2.1などと呼んでいる。こちらの世界に持ってきたのがver1.0、魔鉄で初めに作ったのがver2.0らしい。血を啜るトレント製の木剣は魔剣とそのまま。


 このような魔力と魔術にものを言わせて作った素人武器ではあるが雅紀たちの手にはぴったりであり、魔鉄というだけで憧れの品となる世の中からしてみれば、喉から手が出るほど欲しい品である。これは、冒険者だけでなく商人もであるが、材料がなくこれきりということで納得してもらう。



 試験のときとは違って商人の方からのアプローチが激しく、野営のときもお金を払うから料理を作ってくれと、試験のときから旅の間も温かいものが食べているのが目につけられていたらしい。醤油も味噌もないので大人数用のスープとなると品が限られてしまうが、やはり地球の科学の結晶、コンソメの素をレストランの片割れで再現しようとしていたようで、それっぽいスープはできる。


 野菜と肉を突っ込んでコンソメの素を入れれば、コンソメの素が不十分だろうと素材の味が出てくるので味はそれなりに仕上がる。静としては微妙なラインだが、商人としてはときたま護衛が倒した食える魔物の焼いた肉がいいところなので、スープで興奮している。商人はアイテムボックスのわずかな隙間にも商品を詰め込むが、高ランク冒険者は乾物以外にもしっかりとした材料を持ち歩くことが多く、そこまで食事に飢えることも無い。


 実際のところ、アイテムボックスの中には完成した品がいろいろ入っているが、それを出してしまえばスマホ利用のアイテムボックスの異常性がばれてしまうので避けている。それでもしっかりとした料理は食べたいので、フリーズドライに挑戦してみようかな、と秘かに考えている静である。



 そうして、試験のときとは違って和気藹々と進み続けた一行は森の間の道を抜けて草原に入る。


「いやー、アカリさんたちのおかげで早かったですね。あと丘をいくつか超えれば、もうデュクスです」


「お役に立てようで何よりです。あら、護衛日数が短いということは報酬も……」


「まさか、命の危険を減らすための護衛ですよ。旅の期間が減るなら危険も少ないですし、報酬は弾みますよ」


「まあ、それはよかったです」


 街まであと少しということで気持ちが楽になったのか、軽口をたたき合う。朱莉の索敵範囲には既に街が引っかかっており、そこまでの道にも脅威となる魔物がいないことも把握している。もう1組の護衛も森を抜けたということで、草原の監視を朱莉に任せて、魔物が最後に森から追いかけてこないことを確認している。


 初めの丘を登って街の外壁が見えたとき、朱莉が何かを見つけたようで静かに一声かけて目を閉じ、空からの視点に集中する。やや間が空いて、朱莉が捉えた魔物の姿を話し始める。大きさは傍の木の半分以上で恐らく3メートル以上、二足歩行で手には身の丈にも迫る棍棒。その顔は口元から牙が覗き、オークとは違った作り。


 距離は十分に空いていることから、商人は落ち着いているようだが、その容貌の魔物に思い当たる節があるのか嫌そうな顔をしている。商人たちが先輩冒険者に視線を投げれば、冒険者も頷いて「オーガだろう」と返し、「やはり鬼か」と顔を顰める。続いて肌の色を聞かれて朱莉が緑と答えれば、気持ちだがその顔が和らぐ。


 緑のオークは上位種ではなく通常の種でCランクの冒険者ならばパーティーでどうにかなるが、その怪力でけがをする人が後を絶たないらしい。距離が空いている以上はそこまで危険視しなくてもいいが、こちらに回ってくることを考えると、今のうちに倒しておきたいところだが、そこまでの遠距離攻撃がないようで首を振っている。


 雅紀たちに視線が向けられるので、朱莉が弓を構え始め、雅紀が「出てくる」と残して馬車から飛び降りる。「そこまで強いようでもありませんし、軽いお祓い程度で」と呟きながら、雅紀の改造のせいで和弓には見えないが構造は和弓そのものの弓を構え、その弓を神事で使うような装いで覆う。


 距離だけはあるので斜め前方へと向かって、魔力で作った矢を放つ。その矢は空気の抵抗を受けることなく初めの速さと同じくらいで飛んでいくが、どういうわけか重力の影響は受けるようでアーチを描きながら、先に走り出した雅紀を追い越してオーガの胸のど真ん中に突き刺さる。矢が刺さって苦しんでいるオーガに追いついた雅紀が誰も見ていないからと全力で首を一閃して吹き飛ばし、その巨体をしまおうとして一部はみ出したままで馬車まで戻る。


 静のようによくわからない実力を見て、ランクと実力差があるのは詐欺だな、と現実逃避しながら雅紀を迎える。その時には朱莉の和弓も元の姿に戻って傍らに置かれている。雅紀が行って帰ってくるまでの、距離を考えれば短いがそこそこの時間で馬車はさらに進み、最後の丘の上に登り切ったところのようで街の城壁が眼前に広がる。


 丘を越えたところからはずっと平地のようで、道も馬車が多く行き交うからか石畳が敷き詰められている。なお、斜めになっている丘部分には手を付けていない模様。城壁もエリンエルの門とは目的が違うようで、魔物の襲撃に備えるものというよりも商人の出入りの際の税の徴収を目的としているようで、道に続く門のところには複数の手続き用の門が空いている。


 それでも出入りする人は多いようで列ができているので、大人しく4台で同じ箇所に並ぶ。税はどうしているのか聞いてみれば、商人ギルドの方の処理してくれるとのことで、相変わらず謎のところで謎技術が使われているのだと思い知らされる。


 その並んでいる間に、それなりの格好をした人がやってきて、


「すいません、魔石売ってくれませんか?ギルドより色付けますので」


と尋ねてきたが、魔石はギルドが仕切っているのではとクロネを見ると首を振っている。ギルドに卸す分しかないといえば大人しく引き下がり、他の馬車にも同じように声をかけている。グレーな行為に大丈夫かなと思っているうちに街に入ることができる。


「デュクスにようこそ」


 そんな声を皮切りにして街に入った途端、、「いらっしゃい!!」と客引きの声が全方向から響いてくるのだった。


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