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非常識高校生の非勇者生活  作者: kiara
第一章 始まりの物語
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護衛のお誘い


 受付でカードを更新してもらった後、時間的に宿を探して今日はもう休むことにする雅紀たち。おすすめの宿を受付嬢から教えてもらってそのまま直行することにし、道中にある出店をひやかしながら宿までのんびりと歩いていく。


 商業都市の1つとして名前を連ねるだけあって、午後だというのにエリンエルの午前の市場と同じくらいの品が並んでいる。むしろ、夕方だからこそお目にかかれる品が並んでいるといった方が正しいのかもしれない。午前中に狩ったばかりの新鮮な肉や昼過ぎに着いた商人から仕入れた乾物が目立っている。


 エリンエルでは見かけなかった香辛料に興奮しながら、臭いを頼りに地球の頃の料理を再現するための調味料をかき集める。時代的に中世ヨーロッパに近いため、肉の加工に必須な香辛料は高値ではあったが魔法という不思議技術のおかげで、同じ重さの金と等価というほど高価ではない。ただでさえ報酬で大量のお金をもらっているのだから、ここで渋る必要もない。


 香辛料を紙袋一杯に買い込み、すぐ近くではカオスな匂いが漂っているが、肉をただ焼くしかできなかったことに比べて非常に進化した料理ができるようになった、と買い込んだ本人は非常に満足げである。加えてエリンエルでは売られていなかった魚を適当に見繕って買い込む。


 直行するつもりでいたのだが、宿に着いた時のその荷物の量はとても個人が日常で使う量ではなかった。それでも宿の人間にとっては、この街に着て大量に買い込む人を見るのは日常茶飯事のようで対応に変わりはない。今までのように2人部屋を2部屋借り、荷物整理のために片方にとりあえず集まる。


 4人の腕を塞いでいた荷物をベッドの上に置き、今後の予定を決めることにする。


「納得いかないこともあったけど、Dランクになれたわけだし予定通り迷宮目指すんでいいか?」


「それでいいと思うよ。それでも迷宮都市までかなりの距離あるからしばらくは旅だね。ただ旅するのもいいと思うんだけど、依頼で護衛も兼ねる?そうすればランクも上がってお金も貰えるわけだし」


「護衛しながら迷宮に向かう、ですか。一期一会、いろいろな人ともに旅にするのもいいかもしれません」


「それも旅の醍醐味ってな。けど護衛依頼となるとだいぶ時間取られちまうんじゃねえか?」


 康太の指摘で新たな問題に気が付く。確かに護衛依頼で見知らぬ人と一緒に旅するのも乙なものだが、元の世界に戻るという究極の目的がある以上、何事においてもかけられる時間の上限というものが出てくる。護衛には楽しみという面の他にも情報収集の面もあると考えれば、それに時間をかけても問題はない。


「じゃあ、この先の商業都市までは護衛して、その先は駆け抜ける。これでどうだ?」


 やはり半々にするということで落ち着く。依頼の方は夕食後にギルドに行くことにし、とりあえず荷物の整理をすることにする。試験中はいつもの高機能アイテムボックスを使えなかったので、擬装用にすべて突っ込んだせいで中身が整理されておらず、取り出すのに一苦労しそうであった。困ったときはすべて取り出して一からやり直した方が早い。ギルドに出すもの、生活雑貨、旅に使うものに分けてしまっていく。



 詰めているうちにギルドに出すようの袋に入りきらなくなるというハプニングがあったものの整頓は終わり、その頃には夕飯にちょうどいい時間になっていた。聞いた話ではこの宿は出てくる料理も旨いようで、物流の良いこの街ならではの料理を楽しみに降りていく。


 1階の酒場は出来上がった商人で埋まっていた。どの商人も街から街への移動がうまくいったことに感謝し、自分の扱う品を話のネタに盛り上がっていた。持ってきた品が思ったより高く売れなかった、滅多に手に入らない香辛料を見つけた、などと商人お得意の話術で面白おかしく語っている。


 そんな酒場で空いている席を探していると名前を呼ばれ、その声の持ち主を探すと先ほどまで一緒だったクロネが手を挙げて手招きをしている。空いている席を探すのも大変そうなので、とりあえず呼ばれたところまで行くと試験で見かけた商人全員で飲んでおり、席を空けてくれたので感謝して座らせてもらう。


 酒場の女将に夕食を頼んで一息ついたところで、クロネがほろ酔い状態なのか緩んだ口調で話しかけてくる。


「3日間お疲れさまでしたぁ。おっと、その前に言うべきことがありましたねぇ。マサキさん、シズカさん、アカリさん、コウタさん、合格おめでとうございます」


「「「合格おめでとう」」」


 他の人も酒が入っているのか顔を赤くしながら、お祝いの言葉を送ってくる。雅紀たちとしては微妙だったが、護衛していた人が嫌な顔一つしないで合格を祝ってくれるということは、護衛として問題はなかったことの証であると信じて礼を返しておく。


 礼を返したあたりで運ばれてきた料理に手を付ける。魚のスープにステーキ。物流がいいだけあって、ステーキのソースにもいいワインが使われて香りがフルーティー、また焼く時の香辛料でガツンとインパクトのある品に仕上がっている。肉もその日出回ったもののうちシェフ直々に目利きしたものらしい。スープも数種類の川魚を丸ごとと香辛料がふんだんに使われており、ウハーと呼ばれるスープに近いが、香辛料の違いで変わった風味に仕上がっている。そして、こちらの品もステーキに劣らないほどの強い味である。


 どちらも主張の強い料理だが、この街の宿に泊まる人間は旅の粗末な食事に堪えており、身体が味の強い料理を求めている。ただ、この街でもパンがハードタイプであることだけが残念であった。この宿の他の料理も食べてみたくなり、酒のつまみを頼んでいる商人に便乗して追加で摘まめる料理を頼む。食事が一段落したところでクロネが話を振ってくる。


「アカリさんたちはこの後の予定は決まってますか?」


「ええ、領都の方へ行くつもりです」


「それは、なんと!では、私たちの護衛をしていただけませんか?」


「領都までですか?ええ、構いませんが、何を売るおつもりですか?」


「あなた達に守ってもらえるのなら安心です。品物は今日運んで来たものですよ、オーク肉。高値で売れる最大の商業都市まで持って行くつもりだったんです。ここまでは試験でしたが、この先は試験官としていた冒険者にも護衛をお願いしています」


「あの方々ですか。ですが、私たちでいいのですか?」


「ぜひともお願いしたいですところです。試験中に他の受験者とぶつかったことを気に病んでいるのでしょうか、それともあなたたちの力を恐れていると思っているのでしょうか?護衛依頼者としてはあなたたちの判断を支持しますし、力を恐れていては護衛はお願いできませんよ。Eランクだろうと剣を振られれば私たちにそれを防ぐ力はありません。それに力を恐れた結果、高ランク冒険者を避けて危険な目に合うなんてことは避けたいところです。そして何より、短い期間でしたがあなたたちなら信用できると感じたからです」


 そこでクロネが他の商人に振ると、同じような言葉を返される。


「そこまで私たちのことを買っていただいているのでしたら、こちらからもお願いします」


「交渉成立と言うことで。明日の朝9時にここ集合で、そこからギルドへ行って手続をしましょう。」


 懸念していたことが無くなった、と追加で大量の酒を注文する商人たちに釣られて雅紀たちも大量の料理を頼んでしまう。わざわざ領都までの護衛依頼を探す必要が無くなってやることもなくなり、ちびちびと絞った果汁を飲みながら、のんびりと料理をつつく。


 そうやってつついていると、試験官として参加していたパーティーも宿に戻ってきたので飯に誘い、翌日からの護衛依頼で一緒することになったことを伝えて挨拶を済ます。それからは試験官としてどう見えていたのかを聞き出したり、試験官として気配を消していたはずなのに野営中にぼっちしてた人と名指しされて落ち込んだりと、試験のあれこれをネタにして盛り上がる。


 先輩冒険者だけでなく商人たちも静の力に興味があるようであれこれと聞いてくるが、水と風の複合技だとそれっぽく濁し、次いで雅紀たちの持つ剣に注目。実は魔剣であることをばらして羨ましがらせるも、血を吸う呪いの魔剣であることも付け加えて気分を上げ下げしまくる。


 そうしているうちに酔いつぶれる人も出始め、そこで解散して自分たちの部屋へと戻る。部屋に戻ってベッドに腰掛けるも、ぽよんぽよんしてみると実は寝袋の方がクッション性が優れているのではないのか、と疑惑にかられたり、しばらく手入れできていなかった武器の整備をしたりとしているうちに、連日半徹夜していた疲れが出てきたのか眠気に襲われる。


 1人がうつらうつらとし始めれば、それを見ている周りも欠伸が出始めるというもので、そこで作業を打ち切ってベッドに入ることにする。レディーが先に瞼を落としたので今日こそは女子部屋に押し込もうとベッドまで運ぶも、服の裾を掴むという可愛らしい仕草が、降ろそうとするたびに皮、肉、骨を握るとどんどんめり込んでいく。


 極限まで挑戦するも神経を潰したのかというほどの痛みに諦めざるを得ず、結局男女で1部屋となり、女子部屋を諦めてもなお腕を放してもらえず、手を使わず起こさずでベッドを繋げ、そこに自分もろとも横たえることになる。


 翌日の朝は腕の痺れに悩まされることになる2人は、本格的に身代わりの術を身に着けるべきではないのかと悩み始めるのだった。


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