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非常識高校生の非勇者生活  作者: kiara
第一章 始まりの物語
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第一章 エピローグ


 ハイオークキングの討伐が雅紀の手によって待機していた全冒険者に通達された後、ほぼ全員が野太い声を上げて、動ける冒険者が取りつかれたように再び外へと駆け出していき、その数時間後、日差しが見えるようになった頃、草原は森まで見通せる元の草原へと戻った。




 街の住民税を取る(本来の)門の外のこと。


 ワハハ、ガヤガヤ、ガーハッハッハ、飲め飲めー、ゲロゲロ……


 未曽有の危機を無事に乗り越えることができたエリンエルの街は、それはそれはもうこの上ないハイテンションで外も中も関係なく祭りで盛り上がっていた。冒険者たちは、大きな依頼の後は仲間内で騒ぐのが当たり前のようで不思議なことはないのだが、そこに混ざるように職人連中や騎士、果てには一般住民までが参加して盛り上がっていること違和感を拭いきれない。


 街を救う仕事だったため、街として祝勝会と称して酒を大盤振る舞いし、冒険者ギルドもつまみになるものを大量に提供している。もっともギルドのありふれた食い物よりも、群れで襲ってきて量的に食べきれないほど確保できたオーク肉に群がっている。貴族が金を出してまで取り寄せる肉は、ただ串焼きにしただけのものでも滅多に食せないほどの美食になり、誰もが虜になっている。


 このオークの肉は冒険者ギルドが一括して買い取り、参加した冒険者に均等に分けることになっている。もちろん、上位種を倒したりや活躍が目覚ましかったりしたパーティーは個別に報酬が上乗せされるが、どのパーティーも倒した魔物の肉はほとんどギルドに提出しているため、ギルドの倉庫は絶賛崩壊寸前である。そして冒険者はと言うと、金にするよりも滅多に手に入らない肉の方が報酬としていいようで、物凄い勢いで肉を平らげていく。


 残念ながら犠牲になった冒険者もいたようだが、パーティーも死んだ友の冥福を祈るように街の無事を喜んでいる。仲間に支えられながら盛り上がる怪我していた冒険者、全員無事に乗り切れたことに泣き崩れているパーティー。


 全員が今日この街に起こったことを、再び訪れる今日、明日という時間を過ごすための糧としていく。


 その中、日本人一行は祭りに中心から外れるようにしてギルドの受付嬢と話していた。というのも、他の冒険者の近くへといくと酒を無理やりに飲ませられそうになり、未成年であるためここにはない法律を破るつもりになれず、どうにかして酒が流れていない区画、仕事中のギルド出張所近くに流れ着いたのである。


 最大の功労者に立ち位置を騙すようにラルフに押し付けて、のんびりと冒険者のバカ騒ぎを眺めている雅紀たち。その手には串焼きが山盛りに積み上げられた皿と、恐らく空にされた皿が何枚も重なっている。康太はなるべく早く駆け付けるつもりであったが、予想以上に敵がのんびりと出てきたせいで動くに動けず、最後の少ししか合流できなかった無念を食い散らすことで発散しようとし、朱莉はそんな彼氏を宥めながらいろいろな料理を摘まんでいる。


 そして、もう一方のカップルの雅紀と静だが……


「な、なあ、静、少し放してくれないか?」


「ん~、や~~、まさきといっしょにいるの~~」


「いや、ちょっとどころでなく、とてつもなく周りの目が怖いんだが……」


 出来上がっていた。むろん酒は飲んでいないのだが、静の理性のタガが外れて人前で甘えに甘えまくっていた。手当てしてもらった時に静の姿にときめいてしまった若者たちは、酒に逃げて泣き崩れている。そんなカップルを、視線で殺せたら、と言わんばかりに男どもはお子様には見せられない顔になり、おばちゃんたちは、若いっていいわねー、的な感じであった。康太と朱莉は慣れているようで、とくに気にした様子もない。


 雅紀も口ではそうはいっているものの、死にかけたときに改めて自覚した心の影響もあって、静と触れ合える時間が愛おしいようでその手は抱き着いている頭を撫でている。静も顔見知りや頼れる先輩の医者がいない状況で命を預かる場面で非常に心が疲弊していたようで、無事に戻ってきた雅紀を見て泣き出してしまうほどであった。ちなみに、崩れそうになった静を受け止めてからずっと雅紀は抱き着かれている。


 しばらくして、冒険者が二つに割れて、そんな幸せ空間に目がくらんだような、疲労感が濃くにじみ出した表情をしながらラルフたちが現れて隣の席へと座り、後ろのパーティーメンバーはこの両極端な状況を見て苦笑いを浮かべる。


 見事に後処理を擦り付けてくれなさった元凶に怒りをぶちまけたいところであったが、その元凶に抱き着いて幸せいっぱいの笑みを浮かべている少女を見ているうちに、その怒りも収まってくる。この少女が雅紀の守りたかった人であったことはもちろん、その間柄も簡単に理解できた。早く顔を見せてあげたかったのだなと、大人の自分が苦労を背負うのが責任なのではと思えた。


「マサキ、今日はご苦労だったな。聞けばその()もけがの手当てに回ってくれていたみたいだし、何から何まで世話になっちまった」


「気にすんなって、こっちだって自分の都合があってやったことなんだから。それに言ったろ?気にすんだったら、また情報くれたらそれでいいって」


「はっ、そうだったな。ここ二日三日はしばらく警戒に当たるから時間が取れないと思うから、その後でいいから時間をくれ。飛び切りの情報をプレゼントしてやるぜ」


「すごい自信だな、それで大したことなかったら笑いもんだぞ?」


 ラルフの自信あふれる顔に煽り返すも、「ここらへんじゃあ、俺らしか知らないから」と変わらず、そのまま寄るべきところを思い出したようで、ギルド職員と歓談していたメンバーに怒られながら慌ただしく去っていく。



 しばらく静かな時間が4人の間に流れる。


 今回の件で、自分が馴染んでいた日本ではなく新天地にいること、そしてそこでは今までのように甘いことを考えていたら命がいくつあっても足りないことが、明らかになった。


「なあ、これからどうする?向こうに帰るには邪魔者がいるみたいだけど、それには命がいくつあっても足りないみたいな感じだったし」


「それでも、やっぱり帰りたいよ?みんないるからそこまでさみしくはないけど、まだお父さんとお母さんに会いたいもん」


「ええ、それにただ待つだけなんて、とてもではないですが私たちらしくなさ過ぎて耐えられませんよ」


「別に、今すぐ、ってわけでもねえんだろ?なら、もう少し頑張ってみてから決めてもいいじゃねえか」


「やっぱり、そうなるな」


 湿っぽい空気はどこへやら、四人はいつもの温かい空気に包まれる。


「やっぱり、綺麗な風景見たい」


「いろんな料理食べて、作って、楽しみたい」


「ここでしかできないことをやってみたい」


 完全にこの世界に着いてすぐの頃の、夢と希望にあふれた異世界旅行ライフへと思いを馳せる。この世界でしか見ることのできない自然、食べることのできない食材、できない体験。どれもこれもが旅の醍醐味である。ただ、それにちょっと命の危険があるだけであり、それが訓練でどうにかなるのであれば躊躇うことはない、足を踏み出せば良い。


 そんな性格が色濃く出る四人の異世界生活がここから始まっていく。


「迷宮には一度でいいから行っておきたいよな。地下に広がる摩訶不思議の空間とか、観光目的じゃなくても興味を惹かれるんだが」


「後は、いろんな街を巡ってみるのもいいよね。その街その街の変わった料理があるんじゃないかな」


「そこの森なんて、奥へ行けば、いい景色も美味しい果物のどちらもありそうではありませんか?あ、でも海もいいですね、こちらの海はどんな色をしているのでしょう」


「伝説の魔物の肉なんてのも食べてみてえな。この世界には竜とかいるんじゃねえか、骨付き肉も夢じゃない、か」


 いともたやすく、この世界を離れる気がないのではと思わせる方向へと話が飛んでいく。どいつもこいつも己の欲望に忠実である。


「でも、とりあえず命大切だから、手軽なところから回ってこうよ。それに防具とかこの短い期間で相当くたびれちゃったみたいだし」


「それについては任せておけ。新しくできるようになった魔術で改造できそうだ」


「旅に出るのでしたら、いろいろと準備しなくてはなりませんし、もう少しはこの街ですか」


「この街はいいけどよ、ちょっと懐かしくなってきたな」


「うん、そうだね」


「「「「米とかコメとかライスとか」」」」


「醤油も味噌も欲しいところですね、料理の幅が広がりますし」


 その後も、旅に出る話からどうしてか今足りないもの、そして、今食べたいものへと話が変わっていき、旅の準備の話を思い出すのは、しばらくしてギルドの関係で外に出ることになってからという、自分で街から出る気はあるのかと思える時になってからであった。


 かくして、だいぶずれた四人の楽しい異世界旅行記の初めのお話が締まることなく締められるのであった。


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