表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
非常識高校生の非勇者生活  作者: kiara
第一章 始まりの物語
40/100

最終戦1


 炙ったオークの串焼きを齧りながら、見覚えのある顔を探して歩く雅紀。こう言えばそれなりに顔見知りがいるように聞こえるが、知っているのは紅の獅子か騎士団長のロジックだけという、とんでもない繋がりだけである。


 先ほどの転移でいたのは確認していたが、急いでいたのでどこに飛ばしたかまでは正確に把握はしていない。これだけの人数が一か所に移動させられれば、探すのにも時間がかかってしまう。かくれんぼ王者としては早急に見つけたいところだったが、見つけたのは人込みの真ん中まで進んでからだった。


 ようやく目的の人物を見つけて雅紀が声を掛けようとすると、ラルフも近づいてくる雅紀に気が付いたようで、何とも言えない顔をプレゼントしている。ありがたい様なありがたくない様な、といった顔に、雅紀は苦笑いを隠せない。


「うぃーす。ラルフさんも肉食います?」


「相変わらず軽いな。とんでもねえことやらかしたってのに」


「まあ助かったんだから、そんな硬いこと言わずに」


 飛ばしてくれなければ、戦線離脱しかねなかったということもあって、素直に礼を言う一方で串焼きを貰うのも忘れない。簡単な味付けされていないものの、焼き加減がうまくて驚くラルフだが、当の本人である雅紀はもう一人のお偉いさんを探して首を回している。


 ラルフも手を貸して探し始めようかというときに、金属鎧がぶつかる音が近づいてくる。足音からしてみれば小さな金属音に、誰が近づいているかを理解して待ち構え、予想通りの人が現れたことにホッとする。ロジックの後ろには、紋章入りのローブを着ている男、騎士団の魔法担当らしい、も連れている。



 すぐさま編成の確認、作戦の変更が行われていく。どうなるのかな、と突っ立ていた雅紀の目の前で、冒険者パーティーと騎士団のリーダー数人であれこれと急いで確認が行われていく。


「オークの進行は一旦止まって、魔法による怪我人はいないが、その前の怪我でだいぶ数が減ったな」


「見たところ最低ハイオークからだからな。Bランク以上じゃないと無理だな」


「それ以下は束になっても厳しいから、下げるか」


 魔法使いみんなが串焼きをもぐもぐしながら、最後と思える強敵の出現に対応する。見える限りでは、紅の獅子が届けてくれた情報との違いはなく、上位種がほとんどで数は倒される前で200強、ハイオークの王様が一番後ろで偉そうにしている。さきほどの咆哮の主はこの魔物であるようだ。


 その魔物たちは氷の手榴弾によって、柔かった魔法使い風のオークと背中から強襲された戦闘付近のオークの大半が物言わぬ骸になり、壁になっていた。その壁を超えるにはオークの足は短いようで、えっちらおっちら、とてつもない亀の歩みである。超えるというよりも、どかしているといった方が正しいかもしれない。


 相談事が新しく出てきては、即座に答えを出していく。巧遅は拙速に如かず。答えが正しいかどうかはこの場においては大した問題ではなく、何もできずに被害だけを増やすような真似だけは認められないのである。皆、リーダーとしてパーティーメンバーの命を預かっている立場として、全力を尽くしている。


 そんな状況の中、独り身で戦場に出てきている雅紀は浮いていた。他の冒険者と違い、エリンエルの街に来て短く、愛着が深いわけではない。人命を救えるのならば全力を尽くすし、街も壊されないで済むなら手を貸す。だから、防衛陣として4枚もの防壁を築きあげた。ただでとはいかないが、そこはみな同じだろう。


 使えそうな戦力は、壁の上からの攻撃であれば参加できる魔法使い全員、Bランク以上以上の冒険者50人弱。これが、ざっと数えなおした戦闘に参加できそうな人数。この数にリーダーたちは渋い顔を隠せない。一人頭数匹を抱えなければならないことは明らかだった。上位種の職持ちだと考えると、絶望的である。


「お前ら、腹くくれ。俺たちがここでやらなきゃ街は終わりだ。逃げて街とともに散るか、街を守って散るか、どっちがかっこいいかわかんねえ奴はいねえよなあ」


「ハッ、舐めんじゃねえ」「なに、一人たったの三か四だろ」

「勝ちゃ、うまい肴と酒があるんだろ」「ここで張らなければ騎士団の名が泣きますからね」


 日が完全に沈んで月と星が輝く空の下、覚悟を決めたような面をするが、先ほどの助っ人の申し出を完全に忘れている一同。


 魔力切れが近く、大技を撃てる魔法使いはいないだろうという下では絶望的だが、戦闘狂で神様にお墨付きをもらっている人間がここにはいる。


 そしてもちろん空気は読まない。


「で、手助けはいる?」


「あん?見たことねえ奴だな、Cランク以下だろ。下がってろ」


「あんたには聞いてない。で?」


 覚悟を笑うかのような雅紀の言動に突っかかるのもいるが、相手にされることはなく、その視線はラルフと騎士団長に向いている。その目は、遊び心から言っている感じがしなくもないが、できるという自信も内包している。こんな言い方をしたのは、申し出をすっかり忘れられたことへの意趣返しなのかもしれない。


「良いのか?」


 塞ぎ込むかのように座り込んで腕を組み、目を閉じていた状態から、ラルフは立ち上がって目を合わせて問う。ロジックも目を逸らさない。


 3人はしばらく見つめ合う。その空気は重い。


 そして、ラルフとロジックはガバッと頭を下げる。


「了解。エリンエルを守るために全力を尽くさせてもらいます。っと、硬いか?」


 洒落っ気を出しながら、お願いを了承する雅紀。二人には早く頭を下げられるのはくすぐったいのか、茶化すようにして頑張るも、なかなか上げてもらえない。


 突然頭を下げることにも驚くが、それよりもAランク冒険者と大領地の騎士団長が頭を下げることに驚きを禁じ得ない。頭を下げられている成人したばかりに見える冒険者がそこまでの強者なのか、と周りの冒険者は思考を巡らせる。


「ん?ああ、言っとくと俺はEランクだが?」


 思考が視線から読めたのか、前もって潰しておく。もちろんその答えに反発するのもいるが、魔法から守ってくれた白い壁を展開していたのが誰かを見ていた冒険者や、魔力が見える魔法使いはその実力がランク相応のものではないとわかってはいる。しかし、どの程度なのかわからない。


 頭を上げた二人も、いろいろ騒いでる連中を無視してさっさと次に指示を出し始める。


「それでどれくらいまで削れる?」


「キングとその側近以外」


「本当か?」


「まあ他の冒険者のこと考えて、キングに攻撃集めるから十数匹抜けさせるかな。キングは肉弾戦といこうぜじゃない」


「そんなに削れるならいいんだが・・・。なんでそんなにウキウキなんだ?キングだぞ、しかもハイ」


「魔法が効きにくいらしいな。男は剣で語ってなんぼよ」


 魔法使いということで理性的かと思っていたところに、戦闘狂の一面を見てしまい戸惑ってしまう。今までのことからわかっているのは、魔術に長けているということで、剣がどれほどなのかは全く分からない。普通に考えれば、魔術がすごければ剣はそこそこで収まるものである。


 心配になりながらも、まだとやかく言い続ける冒険者に喝を入れて、さっさと動かし始める。騎士団もロジックが指揮を伝え終えたようで、準備ができたという合図が送られてくる。


「いいか、お前ら!マサキがデカいのぶち込んだら行くぞ!」


 そんな騒ぎを聞きながら、雅紀は静と連絡を取っていた。


「静、ダウンバーストいけるか?」


『重症患者いないし大丈夫だよ。どれくらい?』


「全力の3割といったところだな」


『了解。合図よろしく』


「いえーすまーむ。ラルフー、そろそろいいかー」


 いつでもいいぞー、という言葉がだいぶ間延びして聞こえる。視界を確保するために空中に立っていたので、壁から降りて草原にいる人間と話すのは大変そうである。何もないところに立っているだけでなにもしていないが、冒険者の中にはそれだけで実力を認め始めるのも出る。普通、滞空しようと思えば風魔法を極めるしかないからである。


「じゃあ、行くぞ。3、2、1、今」


 轟。そんな音とともに冷たい風が顔面を叩いて、目を開けていられなくなる。長く目を開けていられた者がいれば、急に空から白いものがオークに落ちてきた、と説明することだろう。しかし現実にそんな余裕はなく、飛ばされないように足を踏ん張り、風にさらされる顔を覆うのにいっぱいいっぱいだった。


 ようやく風が止んで開けた目に入るのは、草原に聳え立つ氷の塔。その氷の中にはオークが何匹も、最後に出てきた群れのほとんどを取り込んでいる。


 突然の出来事にぽかんとするも、あの偉そうな冒険者の放った魔法だと理解して、大声が上げられる。魔法使いたちは、自分との力量の違いを見せつけられる形となって、白くなっていく。


 予想以上にやってくれたことに満足するラルフだったが、雅紀はそれだけでは終わらない。


 音響破壊。大音量および疎密波ででもって氷を粉砕、凍り付いているオークまでも粉々にする。


 突然に氷が割れ、生き残ったキングとその側近、その他脂肪が分厚いのが出てくるが、攻撃は止めない。


 電磁波照射。生き物なら体内から爆発する。レンジでチン、と言えばわかりやすいだろうか。


 どちらも離れた場所で現象を起こし、距離を置いても敵に当てることで攻撃となる。相手に直接魔術を発動させるわけではないので、敵の持つ魔力に減衰はあれども、妨害されることなく魔術を利用できる。魔力には、存在するところの空間をそのままに保とうとする作用があるらしい。


 体内での血液、筋肉の異常は生命の危機となり、キングとも言えども無傷でとはいかない。残った魔物は、ハイオークキングとその側近ハイオークジェネラル4匹。他は全滅。


 決戦が始まる。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ