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非常識高校生の非勇者生活  作者: kiara
第一章 始まりの物語
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病んでる中の人


 可哀そうなものを見る目、責めるようなジト目、雅紀の言ったことを理解できずパチパチ瞬かせる目。

 真面目にした質問に返ってきた様々な目に、困惑を隠せない。

 召喚されたクラスメートたちは、神様経由でいろいろと補助を受けているのに、自分たちは言語の補助しか受けていない。故に、邪神討伐に協力できるとは露ほども思っていない。メルタに勝てたのも、魔法使いに近接戦闘を仕掛けたからと考えている。それに、あの調子に乗っている感があって、後ろから魔法を打つだけの固定砲台をしている女では、当然の結果のように思えたのである。


 そう考えていたところに返ってきたのが、この視線である。意見の相違がもろに出る結果となった。


「自己認識不足」


「言語の加護しか与えられていないのに、あそこまでとは思いもしませんでした」


「まあ、そこそこには腕が立つかな、とは思ってますけれど、もっと強い人はたくさんいるでしょう?」


 とても、Aランク冒険者を倒したものとは思えない発言である。この世界の上位1パーセントに勝った者がしていい質問ではない。Aランク冒険者に競り勝ったのではなく、相手の得意分野で手出しもさせずに圧倒したのである。このレベルの者が出来なければ、この世界では邪神に敵う者がいなくなる。


「確かに、あなた達に対抗できる人もいますけれど、誰も彼も何らかの形で上位の存在の恩恵を受けています。主に精霊ですね。上位の精霊になれば契約を結ぶことで、普通とは比べ物にならない魔法を使えるようになりますから」


「あと種族差はでかい」


「エルフは精霊との相性はいいですし、獣人、竜人(ドラゴニュート)は身体性能がいいですね」


「されど、お主らも魔術という武器を持っている。あれは過去の魔王討伐、邪神討伐で活躍しておる」


 ここで、まさかの魔王と邪神の大量発生の存在の公表。こちらに来てから、一度も魔王や邪神なんて言葉を街の中で耳にしたことがなかったため、滅多にあることではないと思っていただけに、頻発していたことを示唆されても、反応に困ってしまう。

 それに加えて、他の人が魔法だけを使う中、自分たちの使うのがお伽噺の産物で、便利道具扱いしていたのが、本当に伝説の技であることをほかでもない神様に突き付けられ、今までの扱いに冷や汗が出てきてしまう。


「魔術って、他に使う人がいなかったのですけれど、それほど珍しいものなのですか?頑張れば誰でもできるようになると思うのですが・・・」


「今の世界はね、スキル至上主義っぽいところがあってね。それに、魔法は師弟の繋がりが強くて代々同じことしか伝えないから。結果として、スキルにある魔法だけを練習することになっちゃうのよ」


 新しいことを始めようとする人が少なく、見守る立場としては何ともつまらない状況が続いて退屈しているようで、色っぽくため息を吐いているが、雅紀と康太は動じない。それでも、魔王や邪神といったイレギュラーは歓迎できないらしい。


「魔術の心得っていうスキルがあったのですが、それは?」


「あれは、この世界の法則をある程度理解した人に贈られるスキルだからね。前は、確か500年くらい前だったかしら?」


「前に魔王討伐ですから、もう少し前ですね」


「そういうことだから、誇っちゃってもいいのよ?あれを持って初めて一人前の魔術師だからね」


 思った以上に重たい事実を知らされることとなる。世界の法則など知ったこっちゃない。やりたいようにやっていたら何かできて、面白いからもっとやっていたら、もっとできるようになっただけである。

 それに、500年前なんて、昔も昔、伝説扱いされるのも当然の時代である。


「それで、その法則とか邪神について説明頂けるでしょうか」


「法則は、魔法の分類からわかるように、三態の操作、熱、運動エネルギー、力場、光、波についてですね。これは皆さんが辿り着いた結論でほぼ合っています。科学の進んだ世界はすごいですねぇ、学生でもこんなに知っているなんて」


「それなのに、この世界の人間は、火だの水だのと言っててねぇ。本質はそこじゃないのに」


「でも、スキル名はそうなっていましたが」


「あれは、どんなスキルを持っているかを判別しているだけで、スキルに割り当てられる名前は人が考えたものなのよ」


 あの道具を作ったのは昔の賢者で、もちろん魔術師だったらしい。魔法は、精霊を介して世界に干渉する方法で、魔術は、術者のイメージで干渉する方法。イメージだけで干渉するには、この世界に対して深い理解が必要とされる。この十分な理解を得た者が持つのが、魔術の心得というスキルである、とのこと。


「それに、技量をレベルで表すなんてね・・・。すっかりレベルに固執するようになっちゃって。そのレベルも、どれ位スキルを使ったかというもので、本当の技量に寄らないのよ」


 現在の人の行動の基準となっているスキルに苦言を呈す神様たち。「まあ、大抵は比例しているのだけれどね」と付け加えるが、どう思っているかが簡単に透かして見ることができた雅紀たち。グローテもイートンも相変わらず無表情であるが、エーステルは何かを憂いてるような顔をしている。そしてまだフィエロは寝ている。


「それで魔王と邪神ですが、あれはこの世界に存在してはいけないものです」


「なぜそんなものがこの世界に?」


「話すと長くなるのですが。この世界はもともと創造神様が主神でしたが、突然、「飽きた、帰る」と言って、どこかへ行ってしまわれました。それで、姉様が新しく主神となっていろいろと引継ぎをしている中、どうもさぼったらしく、他の世界から逃げてきた神様が居座ってしまいました。一段落着いたときでも、まだ弱っていたので全力でかかって何とか封印できたのですが、完全に、とはいかなかったのです」


「その逃げてきた神様っていうのが、堕ちるところまで堕ちた創造神で、存在するだけで悪影響を垂れ流しててね。この星の大陸半分ダメにするは、魔力集めて強い魔物産むはで、困っているのよ。魔王はその神様が生み出したものすごく強い魔物のこと」


 魔物の発生については、ある程度魔力が集まったところで発生するので、そこまで強い魔物は生まれないが、発生を抑制し、一体に費やす魔力を増やすことで強力な魔物を生み出せるらしい。邪神のいない大陸でもときどき起こるが、溜まっても数十年であり、範囲も狭いため、人の手に負える規模で収まるらしい。

 しかし、邪神はこの星の半分の大陸の広さで、数百年、最悪千年にも及び魔力を貯め、魔王だけに費やすらしい。ここまで来てしまうと、神様が介入しなければ、生命が全滅させられかねない。魔王の他にも、魔王軍として魔物を作るらしいが、誤差の範囲に収まるらしい。

 千年物の魔王は、神様たちも力を温存、実際に戦闘に参加し手を下すことで終わらせられた。邪神は封印を解くために魔力を使っていて、魔王を討伐した直後が邪神の持つ魔力が一番少ないらしく、攻め時らしい。魔王討伐と邪神の封印の強化は、セットで長い時間続けてきた。


「あなたたちの持つ力は、召喚された勇者に劣らない、いいえ、それどころか超えていると言ってもいいわ。地球で培ってきた武芸の才能はこの世界でも屈指のものだし、そこに魔術も加われば鬼に金棒よ」


「けれど、勇者たちも魔術を使えるようになるのではないですか?同じく地球の科学に触れていたのですから」


「クソガミサマのせいでスキル頼り」


「そうなの。この世界の人よりは柔軟に魔法を使えているけれど、召喚された国が国だから、スキルを重視しているでしょうね。あの国が信仰しているのって、スキル制を促進している主神だけだから」


 その後もしばらくの間、雅紀たちが質問しては、エースリルとアクルスが次々に答えていく。雅紀たちの実力は歴代の勇者を超えていて、思いもよらない方法で邪神討伐できるかもしれないと、説得を続ける。

 雅紀たちも、帰るにはそうするほかないとわかっているので、協力するのもやぶさかではない態度をとることに決める。それに、実行するにしてもすぐにではないため、観光しながら更なるパワーアップを目指すことになる。

 そして、最後に報酬の話に戻ってくる。この頃には、神様たちを相手にしても、口調が戻ってしまっていた。


「んー、帰るだけでも十分なんだけど、貰えるっていうなら貰いますね」


「成功報酬になってしまいますが、いろいろな世界に行ってみたくはないですか?」


「不肖、この雅紀、喜んで全力でお手伝いしましょう」


 周りの三人が何かを口に出す前に、自分は協力することを約束する雅紀。心底呆れたものを見るような目が、ありありと想像できるが耐える。新しい世界、新しい国、新しい食べ物。これだけで、雅紀が全力で動くには十分な理由である。そして、それは静が、康太が、朱莉が動く理由にもなる。


「雅紀だけ楽しもうなんてずるいよ」


「自分の家に帰るだけで報酬ゲットとは、お得だな」


「この世界を守る勇者ですか。なかなかに面白そうな役回りですね」


 いい返事が貰えたことに、ようやくホッと一息つけるようになる。

 ここで、ようやく気絶させられていたフィエロが動きを見せる。再度、初めの再現となっては困るので、話を切り上げることにする神様たち。話がしたいときは聖会教の教会に来るように伝える。手が空いていれば、応じるとのこと。加えて・・・


「教会に行けない場合は、私のあげた”異世界の説明書”の後ろにあるメモに書いていただければ、お答えします。ふふ、なんだか交換日記みたいですね。あれ、どうしました?そんな知りたくなかったことを知ってしまった、みたいな顔をして」


「じゃあ、あの本を書いたのは、エースリルで合ってるか?」


「ええ、正真正銘私が書いた本ですよ」


「さらばっ」


 一言残して、現実へと戻っていく雅紀たち。一様に顔を青ざめ、中でも康太の顔色が恐ろしいことになっていた。現実に戻りながら叫んだのか、「病んでる人は結構です!」と聞こえてくる。

 病んでる、という単語に思い当たる節がないの可愛らしく首を傾げている副神様。


「あの本」


「あれは確かに恐ろしい本じゃった」


 このように言われてようやく何を指しているのかが分かって、慌てふためきながら、ここにはいない人へ向かって言い訳を叫び続ける。その後ろでは、フィエロが朱莉を探すように叫び、背後からは怖い笑顔のアクルスが迫っている。最後に神域を混沌へと落としていく客人となる雅紀一同であった。

 再びフィエロはぼこぼこにされ、エースリルは慰められる中、一言。


「自力でこの空間から抜け出すなんて、流石ね。それに、あの子たち、生身で神域でしばらくいたけど、ここのもの食べたし、空気も吸ったわよね。この先どうなるのかしら」


「しばらくは退屈しなさそう」


 予想できないことが起こって楽しくなるだろうと思うと、これからの仕事にもやる気の出る神様一同であった。

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