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非常識高校生の非勇者生活  作者: kiara
第一章 始まりの物語
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対面


 日が傾き始め、街の中の賑わいが昼のそれから夜のそれへと変わる始める頃合い。

 街の中央にある聖会教教会はにぎわっていた。いや、怪我人が多く運び込まれているのだから、にぎわっているとは言えないだろう。とにかく、いつにも増して、人が教会に駆け込んできていた。


 そんな教会を、入り口の外から眺めている雅紀たち。こうして見ているなか、見るからに痛々しい怪我をしている冒険者が、目の前を通って教会へと入っていく。こんなときに初めて来てしまったために、この世界の教会は人の出入りの激しい場所だとして記憶にとどめられてしまう。怪我の多い世界ではあるが、ここまで溢れかえることはない。普段の物静かな光景とは縁遠いものがデフォルトとして設定されてしまう。

 しばらく追加の怪我人が来なくなり、教会に人の入る余裕ができたところで中へと入る。

 そこは戦場だった。怪我人の周りにはパーティーメンバーと思しき人が付き添い、止血や呼びかけをとめどなく行っている。床の上には零れ落ちたと思われる血痕が残され、血液で足跡がくっきりと残っている。今もバタバタと教会のシスターたちが走り回っている。はっきり言って、何の説明もなく、この光景を暗がりの中で見たら、お化け屋敷になるだろう。

 血が流れる光景に耐性がある雅紀たちは、教会での礼拝を後回しにして、手伝いをしようと一歩を踏み出す。


 しかしその一歩は、かつて聞いたことのある音で無理やり止められことになる。その音に思い起こされる記憶から次に起こることを予想して、体を丸めながらも手は自由にできるようにして備える。

 ()()()()()()()()()()()が止み、しばらく経っても視界には白いものしか映らず、以前のように落とされることも無さそうと判断する。体を起こして、獲物を抜いて待ち構える。

 そのまま続けて次々と、体の調子を確かめていく。肉体の基礎スペックに魔法の使用。特に問題が無いことを確認終えたところで、背後から突然声を掛けられる。


「ええっと、そろそろいいですか?お話ししたいんですが・・・」


 聞いたことのない声の持ち主に、気づかぬ間に一足の距離に入られていることに驚愕し、即座に距離を取り直す。


「ぐすっ。やっぱりそういう反応するんですね。私、そんなに嫌われることしました?」


「あなたではなくて、あなたの姉のせいでしょうね」


「あれは厄介ごとしか起こさない」


 先ほどの声に加えて、新しく2人が加わる。これまた、接近を気付くことができなかった。服の上からでもわかる豊かな山を持ち、青をメインとしたお姉さん然した人と、ちんまりとしてぬいぐるみを抱えた、黄色をメインとした女の子が両隣から慰め(?)ている。

 とりあえず敵対するそぶりを見せていないが、警戒を続ける。どことなく日朝の戦隊ものを彷彿をさせる色彩が、目を引く。あと二人ほど来そうな気がして止まない。


 静と康太がすでに出てきた3人を睨みつける。すると、朱莉が肩を震わせたと思ったら、凄まじい速度で短剣を抜き様になぐ。突然のことながらも、朱莉が抜き終えた辺りで雅紀も動き始め、今までにはなかった存在感へと向かって、朱莉とぶつからないようにして剣を突き出す。

 おぼろげにしか感じられない存在は慌てたように下がるも、いつの間にかそこにいた緑の大男に殴られ、その姿が見えるようになる。純色ともいえる赤が輝いているも、首が変な方向に向いて白目を剥いていれば、忌避感しか与えない。



 赤男を殴り倒した緑男が、気さくに乙女三人衆に約1名を引きずったまま声を掛ける。何か話したと思ったら、机と椅子が現れる。雅紀たちが警戒を続ける中、席に着き始める4人。1人は座らされるだけでなく、縛り付けられることもプレゼントされている。目を覚ます気配はまだない。


「警戒させてごめんなさい。お話したいことがあったから呼んだのだけれど、いかが?」


「あなたたちは何者ですか?この感じは人ではなさそうでですね」


「ええ、私た」


「いや、神といったところか。あの音にこの白い空間は神の領域とかあったもんな」


「ええ、ご明察です。この世界で神として崇められている立場ですね。まあ、この国では、ですね」


 警戒を任せて思考にふけって導き出された雅紀の答えは、訪問者たちを満足させるものだったようだ。4柱とも、ウンウンと頷いている。


「それで、何の用ですか。この世界の調整に忙しいのではないですか」


「思考を加速させていますので世界の時間は進んでいませんから、大丈夫ですよ。それにしても・・・」


「なんですか?」


 青が興味深そうに、雅紀たちを見まわす。黄は机に顎をのせてボケーとし、緑は目を閉じ下を向いている。白は、何が何だかわかっていないようだが、ニコニコとしている。しばらく見つめた後、やっと口を開く。


「やはり、強靭な肉体と精神ですね。神の領域に来ても異常を示さないなんて。まあ、逆に異常とも言えますね」


「教会に入ってきたところで、魂だけ呼び出すつもりでしたのですが・・・」


「肉体と魂の繋がりがよほど強いのでしょうね。肉体の強度の方は、すでに一回神域を通って無事でしたから明らかですね」


 今回もまた神による召喚によって訪れることとなった領域。前回とは違って気絶しておらず、訪れる機会はまたとないと思える場所。なれば、この空間もまた、雅紀にとっては観光対象となる。

 そんな機会を逃さないように、今の会話で警戒を収めたのか、椅子に着く。

 円形の机の席が、ようやく埋まった。

 白の副神たるエースリル、青の水の四大神たるアクルス、黄の地の四大神たるグローテ、赤の火の四大神たるフィエロ、緑の風の四大神たるイートン。この世界に神として君臨する存在である。



「それでは始めましょう。主に、今回の召喚についての話です」


「今回の召喚は、私の姉で、この世界の主神のユーテリア姉様が、邪神を排除したいがために行ったことです。封印されていた邪神が活性化し始めたことに危機感を持ったようです」


「この世界の人間でやればいいじゃないですか?」


「そうなのよねぇ、本当に、ええ、本当に。ふふふ」


「あのクソガミサマは面食い」


「すいません、よくわからないんですが・・・」


 こんなに真面目な話をしていても、短文でしか会話しないグローテ。イートンは目を閉じ、腕を組んだまま気配が険しくなる。アクルスは変わらない様に笑っているように見えて、目の奥に見てはいけないものが浮かんでいる。

 エースリルは、四大神の態度にびくびくしながら説明を続ける。


「えっと、この世界に邪神に対抗できるほどの力を持っている人間がいなかったのです。いえ、いなかったわけじゃないんですが、なんかダメだったようで。それで、外から強い人を引っ張て来よう!、ということにしたらしく。召喚者には介入でき、より強くできるというもっともらしい理由もあったもんですから・・・」


「ダメだったってどういうことですか」


「面食い」


「もしかして、邪神退治の候補の人が気に入らなかったとかですか?なんて、まさかそん、ってどうしたんすか」


「「「「・・・」」」」


「あれ、ちょっとこっち向いてくださいよ」


 康太の、こうだったら面白いな、みたいな感じで口にした言葉に、神様全員の顔が回転する。円形のテーブルで、向かい合っていたはずなのに横顔しか見えない。隣にいた神様なんか後頭部が見える。

 図らずも、予想以上に下らない原因だったことが判明する。明かされた側としては、ドン引きするレベルである。世界の上に立つものが私情をこれでもかと挟み込むのである。社長が、副社長候補が気に入らないからといって、ほかの会社から人材を引っ張てくるのと同じである。


「弱かったとかじゃなくて、候補が嫌なだけ?」


「そうです。それで、他の世界で自分の気に入った子を拉、いえ、連れてきていろいろと加護を与えて、お願いしようということになりました」


「それが伊崎だったと。ああ、それで面食いですか。それにしても思った以上に下らない理由ですね・・・」


「そういうわけで皆さんを召喚することとなったのです。聖王国に召喚を仄めかす神託を与え、あの国の者が召喚するというところで、()()()この世界に呼ばれてしまった方々に、生き残る力を与えたのです。地球側の神様も不憫に思ったのか、協力的でしたし」


 召喚の術によっても力を与えられ、地球とユーテリアの神々から加護として力を与えられたのである。その力は、呼び出した聖王国の人間の予想をはるかに超えていた。中でも勇者として召喚された伊崎晃平には、面食いの神様が奮発したらしい。


「うわあ、やらせ感がすごいですね。で、その召喚に巻き込まれたわけですが、帰れるんですか?」


「残念ですが、すぐに、とは言えません。しばらくは召喚の後始末しなければなりませんし、向こうの神様がこちらからの移動を認めてくれるかわかりませんし」


「出ていくのはよくて、帰るのはダメなのか」


思わず巣が出てしまう雅紀だが、神様たちは気にした様子を示さない。


「なにか、「地球はもう駄目だ、溢れるううぅぅ」、って叫んでましたね。それが訳かもしれませんね」


「地球はいろいろ限界を迎えていたからなあ。それでも何かしら説得材料はあるでしょう。それで、他に問題とかは?」


「えっと、邪神が邪魔で地球の神様と交渉する余裕がありません。てへっ」


「ということで、是非とも邪神討伐に協力していただきたいのです。もちろん報酬はお払いします」


「私たちは、どちらの神様にもそういった力をもらっていないのですけれども、協力できるんですか?」


 真面目な顔をしながらの質問であるにも関わらず、返って来たのは、神様たちの見惚れるような、呆れるような、そんな視線が向けられる。返ってきた反応に、同じ疑問を抱いていたらしい雅紀たちは、首を傾げることになる。

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