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非常識高校生の非勇者生活  作者: kiara
第一章 始まりの物語
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撤退


 この先に待っているだろう強敵を心待ちにして、奥へと進んでいく。その顔には、待ちきれないという溢れんばかりの笑顔が張り付けられている。見惚れるような笑顔なのに、その対象が楽しい戦いだなんて、なんな残念な雅紀。


 中央に向かって進むも、その間には魔物がひっきりなしに見受けられる。間引きを優先するのならば狩っていかなければならないが、情報を集めるという名目の下、中央へと突っ走って行く。雑魚を相手にしている時間がもったいない、というようだ。



 小さな集団を統率しているなかなか強そうな魔物もいたが、この奥に更なる強敵が待っていると信じて進むこと30分。周りに気づかれない様にしたために、予想以上に時間がとられてしまうも、目的地に到着する。


 そこには、例のトレントのときよりは劣るも、大きな魔力だまりがあり、樹木系の魔物に加えて、見たことのあるのとは比べ物にならないほど大きいイノシシが鎮座していた。その上には、周りの魔物には似たのがいない豚顔の魔物がいた。


 雅紀たちは見たことのない魔物に加えて、その魔物から感じられる魔力に警戒を抱く。しかし、それと同時に嬉しそうな笑みを浮かべる。ギルドで聞いていた情報と照らし合わせて、豚顔の魔物はオークと呼ばれている魔物だと判断する。



 オーク。豚顔の魔物。むしろ豚が立ったと言っていい魔物である。大きさは、2メートル超。雑食性で、数が多くなるとその周辺の環境を壊滅させるほどである。繁殖は通常は同種族間で行われるが、群れの中のメスが少なくなると他種族にも手を出す。脅威度はそこそこ高く、Cランク冒険者が一対一で相手できるくらい。オークの性質から女性冒険者からは、ゴブリンと同レベルで忌み嫌われている。しかし、その肉は非常に美味で、高値で取引される。

 魔物一覧(冒険者ギルド出版)より。



 この説明を受けたとき、静と朱莉が示した反応がどんなものであったのか。


 繁殖方法に嫌悪を示したのか?


 いや、この2人にとっては、そんなことはどうでもいいのである。襲ってくるのならば、誰であろうと叩きのめすつもりであるし、加えて、大抵の場合は傍にそれぞれの専属のボディーガードがいるのだから。


 美味。とても美味しい。


 こんな説明を受けたら一度は食べてみたいと反応するのである。どんな時でも旨いもんには目がない。


 ちなみに、紅の獅子には、魔法使いのメルタと盗賊のサーシャの二人の女がいる。前者がAランク、後者がBランクの冒険者で、どちらもそれぞれの領分でエリンエルでトップの腕をしている。


 この2人がオークの存在を告げられた時の反応は、メルタは朱莉が怖いのか部屋の隅に丸まり聞いておらず、サーシャはものすごく嫌そうな顔をしていた。ほとんど話さず、表情も変わりにくいサーシャがここまで顔を変えるのは、パーティーメンバーにとっても珍しい。そしてこれが一般的な反応である。


 男だけのパーティーだけならともかく、女がいるパーティーは進んで受けたくない依頼の代表となっている。



 そんな歩く高級豚を見つけ、是非とも狩りたい雅紀。ほかの三人の顔を窺って、反対がないことを確認し、音を立てずに準備を整える。ギルドで聞いていたよりも大きく、量は十分、なんてことも考えている。


 前衛として雅紀と康太が飛び出そうと腰を下ろしたとき、突如、キィーーーーーーーーとオークが叫び出し、周りに溜まっていたオオカミとイノシシが走り出す。


 そこらにいたイノシシでも、以前に狩ったのよりは大きく、普通に走って木にぶつかっただけで叩き折られていく。次々と森の木が折られ、その隙間をオオカミが走り回る。


 これには雅紀たちも驚かされるも、目標を囲う邪魔者がいなくなったならこれ幸いと、攻撃を続行しようとして、オークの方を向くとオークの顔が見える。横顔ではなく、正面が雅紀たちの隠れている方向に向けられている。


 正面から挑むのは体格からして不利と判断して、すぐさま離脱しようと上空に飛び跳ねる。康太も同じことに気づいたのか間を置かずに同じ高さに至り、後ろに構えていた静と朱莉は少し遅れて2人についてくる。


「なんか気付かれてるけど、なんで?そんなに気配漏れてた?」


「イノシシとかオオカミを走らせて、やっと気づいたみたいだから、初めから気づいてた感じじゃないとおもうよ」


「何となく感づいて、手下で確かめたってとこか」


「でもどうしますか。気づかれた以上、すぐさま攻めてこないようにした方がいいのでは」


 突然上空に移動していた敵に、剣を振り回したり、乗っているイノシシを嗾けたりするも、攻撃を当てることができず苛立って、ウガウガと喚いているオークを見下ろす。


「なんかすぐにでも駆け出されたら、街まで一日かからないような気がする」


「一撃与えて動けなくしたら、即刻帰還ということで」


 そう言われて雅紀が上段に剣を構える。ほかの三人は構える様子もなく、雅紀の一撃だけで帰るつもりらしい。


 雅紀は宙を蹴り、オークを狙って落下していく。落ちてきた敵に気づいたのか、オークも先ほど以上に騒ぎ立て、こん棒のようなものを構える。


 雅紀は分子間力減少の魔法を使い、一刀両断するつもりで振り切る。魔法を使おうと魔力を活性化させたところで、今回のオークがほかの魔物とは桁違いの魔力を持っていることが目でわかるようになる。魔力だまりが小さいため、トレントほどではないが、周りに屯っている魔物の統率をしているのが当然に思える。


 剣を振り下ろし始めると、オークもこん棒に膨大な魔力を込め始める。簡単には破壊できないと予想したのか、二撃目三撃目も考慮に入れる。



 振り下ろされる剣とこん棒が接触する。


 周囲に暴風が吹き荒れ、木がバッサバッサと揺れ、まだ残っていた小柄な魔物は吹き飛ばされる。


 そして、雅紀の心中も同じくらいに荒れていた。全力とまではいかなくても真剣に繰り出した一撃が、こん棒ごとオークを真っ二つにすることができなかったのである。


 接触時、振り下ろした剣から感じたことにない反発を感じ、今までのように抵抗なく切るができなかった。こん棒の魔力が雅紀の魔法に抵抗したらしい。それでもやはり、雅紀の魔法の方が優勢のようで、徐々にこん棒に剣が食い込んでいき、仕舞いにはこん棒を真っ二つにする。


 そのこん棒を切っている刹那に、体を動かされ、雅紀の剣はこん棒を握っていた右手の肩から下を切り落とすに止まる。雅紀は予想以上に得られた成果が小さいことに顔を顰めながら、次の行動に移る。一方で切られたオークは、今までに感じたことのない痛みのはずなのに、何事もないように左手をハエを振り払うように振り回し出す。その拳から衝撃波のようなものが飛び出す。


 その振り回しを掻い潜り、動きを妨害するなら乗っているイノシシもやっておくか、とイノシシの後ろ脚を切りつけていく。このイノシシはオークほど熟練ではないようで、抵抗なく足から血がまき散らされる。ぐらりと巨体が傾き、上に乗っているオークも体勢が崩れたはずだが、何事もないかのように相変わらず手を振り回している。


 十分傷を負わせたから戻るかと思っているも、いまだに飛んでくる衝撃波にイラついたのか、最後に一撃を入れていくことにする。腕が振り切られたタイミングで、オークの横まで飛び跳ね、身体強化で力の乗った回し蹴りをお見舞いする。きれいに森の中へと飛んでいくオークを満足そうに見て、今度こそ待っている3人のところまで戻る。もちろん高級肉、切り落としたオークの腕を回収するのも忘れない。



 一撃で決まるものだと思っていた観客も、オークのこん棒を見て、意識が切り替わっていたらしい。戻ってきた雅紀は、獲物に手を掛けている3人に声を掛ける。


「いやあ、魔法が効かなくて驚いたわ」


「膨大な魔力を纏っていれば、魔法が効きにくいのかな」


「私もそう思いますよ」


「けどよ、朱莉は確証もなしに魔法の中に突っ込んで行ったよな」


 ギルドでの魔法の雨を思い出しながら、朱莉の返す言葉に対して、康太が危険に身を晒したことに対してお叱りの言葉をプレゼントする。自覚はあったようだが、そこはにっこりと無言の笑顔を向けることで切り抜ける。女の無言の顔は怖い。笑顔ともなればなおさらである。


 そのまま立ち去ろうと思っていたが、これだけ派手にやらかせば、すぐにでも先ほど走り回っていたイノシシとオオカミが街へと突撃するかもしれないと考え、この場だけはいろいろと仕掛けていくことにする。とりあえず上空からレーザーやらなにやらを打ち込み、ついでに地面を陥没させておけば、しばらくは出てこれないだろうと予想する。


 普通ならばそれで終わるが、魔力だまりであるために、魔力を回復させたオークが何をやらかすのかわからない。監視として、遠隔視覚の魔法を放ったまま立ち去って行く。最後の最後で今回も環境破壊をやらかして、森を去っていく。




 街に戻り、日が沈むまでにまだ時間が残っている。特にすることも無く、ぼんやりと街の散策をし始める。


 今までに行ったことのない施設の中で、今後利用しそうなところに顔を出しておくことにする。聞いたところでは、ある程度の大きさ以上の街には、必ず存在する施設がいくつかあるらしい。その代表が冒険者ギルドである。同じく商業ギルドも存在している。


 それに加えて、この世界では宗教色が強く、どの宗教かは違うものの教会がどの街にも立っている。これは小さな町にも存在している。勇者の召喚されたメルネシア聖王国は聖神教、グリュール王国は聖会教を国教として信仰している。


 聖神教は、主神をただ1柱のみの神として信仰し、他は主神の下につく天使としている。


 聖会教は、主神を始めとして、聖神教で天使とされているのも、各種の領域を司る神としてともに信仰している。


 教会には、回復魔法を使える人が常駐しており、病院のような役割を果たしている。回復魔法は、聖魔法といわれる魔法を使える魔法使いが使える。また、他の属性と合わせて使うことで、それぞれ違った効果を持つ。火なら活性化をもたらす。


 雅紀たちは魔術を使え、静が医療に興味を持っていたため、大抵のケガ、病気は問題が無くなっている。しかし、この世界の一般の回復がどのようなものなのか興味がある。いや、知っていないとまた何かやらかす自信がある。


 そんな達観したような諦めと共に四人は肩を落としながら、この街の教会へと歩き出す。


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