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非常識高校生の非勇者生活  作者: kiara
第一章 始まりの物語
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調査


 床に転がっていた魔法使いがようやく起きてきたと思ったら、部屋の隅へと転がり込み震えるなんてことがあるも、順調に依頼を細かく詰めていく。予想以上に時間のない状況のようで、ギルドの上役は疲れを滲ませながら説明している。


「それで、東と南に分かれてもらおうと思っているんだが、どうだ?」


「問題ないですね」


「大丈夫ですね」


 両方からいい返事がもらえたことに、とりあえず安心した様子を見せるギルドマスターのガスト。そこからの実務になるとスーシーにバトンタッチして、部屋で仮眠をとるために立とうとするも、その場のソファに崩れ落ちる。


 しかしスーシーはそんな人いないかのようにどんどん進めていく。現在エリンエルの街としてとっている対策を大まかに伝え、領軍も準備していることも教えておく。そして、魔物の大群を発見、現在の対策では足りないと思われた際は、すぐさま戻ってくるように念押しをする。


「最後に、どちらに行ってもらうかですが・・・、そういえば雅紀さんたちは南の森を抜けてきたんでしたよね?」


「いや、東のも・・・何のことかわからないな。森の浅いところで迷ってただけだぞ?」


「では、紅の獅子は南の森の調査、雅紀さんたちは東でお願いします。それとそろそろパーティー名決めてください」


 気が抜けてあっさりと誘導尋問に引っかかる雅紀。かましてくれたのを睨みつけるのが1人、それをやっちゃったと見るのが3人、睨まれているのに涼しい顔をしているのが1人、驚き疲れたのが4人、振動しているのが1人。うち1名、口角が上がっている者がいた。なかなかにカオスな状況でこの場は閉じられた。



 不貞腐れているリーダーを宥めながら、仕事の用意を始める静たち。ギルドで売られているパンと干し肉を少し買い、ギルド前でラルフたちと手を振って別れる。それでもまだ戻ってこない雅紀は、やられたことによほどショックを受けたらしい。見慣れているとはいえ、仕事をするのにこんな状態ではやっていけないので、静が頑張る。


「ほら、元気出して。今日は私が料理するから」


「仕事をさっさと終えて、今夜はパーティーといこうじゃないか」


「切り替え速くていいけど、今日は夜通しで仕事だよ?」


「知らん。森でパーティーだ」


 やる気を出しすぎて、またも扱いにくい状態になる雅紀に、頬を膨らませ、腰に手を当て怒る静はどう見ても雅紀の奥さんだった。




 ギルドを出て3時間ちょっと、雅紀たちは森に入り、ミステリーサークルを見つけたときの高い木の上にいた。


 モクモクと白い煙を上げて先が見通せない中、雅紀たちは集まって飯を食べていた。街についていろいろな食材を仕入れてから、初めて静の料理を食べることになる。静の料理は飛ばされた日の朝ごはんとお弁当が最後なので、早一週間が経っている。2日に1食は食べていた料理を、十日以上食べられなかったのである。


 今目の前に出ている料理は、イノシシ肉の塩焼きと野菜炒め、自作コンソメのスープである。醤油やみそが欲しかったのだが出回っていなかった。それでも十分な材料をもって、静がおかずを作っているのならば、それでもう満足できるのである。今までは焚火で丸焼きにするしかなかったイノシシ肉もフライパンで焼けるようになった。これだけでも涙ものなのである。


 表面はしっかりと焼かれいるも、中はレアに抑える。肉自体は高級肉に匹敵するのだから、焼き方を工夫できるようになれば、それはもうレストランのコース料理のメインを飾れる品が出てくる。ワインと肉汁で作られたソースが味を変え、飽きさせることがない。


 野菜炒めも野菜の持つ味を損なうことなく、ステーキソースと合わせられている。コンソメスープ(自作)も即席で作られたとは思えない。料理し始めるときに飛んでいて、邪魔だという理由で狩られた鳥から作られたとは思えない味である。


 久しぶりに食べられる静の本気料理に、目の輝きがとどまることなく上がっていく。いただきますの合図とともに、がっつかずにはいられない。



 満足するまで食べつくした一行は、食べ終わった後も特に動かずにその場でとどまっていた。


 東の森と一言で言っても、とても広い。現在の雅紀たちの居場所は、その東の森の中でも最も南に位置する。手当たり次第に探しても、時間が過ぎていくだけである。


 そこで、とりあえず人の目のないところまで移動してから、魔法で上空からの視点を用意して調査することにしたのである。ここまで3時間もかかったのは、森の中の異変を探すためにスピードを落としたのと、例のミステリーサークルがどうなったのか確認していたからである。流石は魔の森といわれるだけあって、もう樹木が腰くらいまで育っていた。トレントの影はなかった。


 今いるところを起点として、東から北にかけて四分割して、それぞれが担当。本命は北東から北北東にかけてであり、森の深さ50キロメートルの辺りを考えている。この東の森は北に行く程、難易度が下がる。それでもエリンエルの中堅冒険者が潜れる深さは、一日掛けても数十キロが限界である。そんな彼らからもたらされた情報なら、その対象もそこまでは深くない。


 本命は朱莉に頼んで、各自が魔法を発動させていく。視点が高すぎると、森の中の詳細が分からない。ただでさえ枝で見えないので、得られる情報が無くなってしまう。逆に視点が低すぎると、見える範囲が狭く調査にかかる時間が長くなってしまう。


 時間との戦いをしている今回はなるべく早く調査したいが、何も見えないので本末転倒である。故に枝が広がっている高さより少し低いところから、森の中を見ていく。


 食事のときのまま、周りは結界が張られてその中は煙で充満している。周りへの警戒が疎かになるので、一応準備していたのである。



 調査している間は基本的に動かず暇なので、会話が盛り上がる。そろそろ甘いものが食べたいだの、新しい料理が食べたいだの、料理の話しか出てこない。年頃の男女が集まっているのに、色気も何もない。ただその中でも、年頃だなと感じさせられたのが、魔法使うとお腹減るからダイエットの代わりになるかもという言葉は、女の子には福音のようなものだったに違いない。


 くだらないことを話しながら1時間ちょっとの間、目を凝らしているとようやく魔物の集団がよく見かけられる領域を見つける。それも、群れがすれ違っても争いが起きないのだから、目を引く。


 とりあえず全員がその領域を確認し始める。それぞれが、その領域の奥へ奥へと入っていく。


 森の中にはオオカミ系や昆虫系の魔物がひしめいている。その密度は、雅紀たちが街へと行くために通った森の深いところよりも大きく、一度その中に入ってしまうと脱出するのが非常に困難になるレベルである。


 ようやく当たりを見つけることができ、その領域の縁を見極める。ここで、とりあえずの情報をまとめていく。街の東北東に距離60キロちょっとで、大体500メートル四方に集まっている。まだ動いてはいない。


 これに加えて、いつ頃動き出すかについても調べないといけないので、感知ができる距離まで詰めることにする。するすると木を降り、三次元に動いていく。どんな時でも感覚を慣らしておきたいらしい。



 ○人狩りのように木から木へと読めない軌道で移動していく一行。もちろん途中で見つけた獲物は例外なく仕留められていく。目的の領域にたどり着くころには、もう十分な量の魔物を狩り終えていた。新しく群れに合流するのを防いだといえば、狙ってやったように聞こえるが、単純に依頼が出ていてお金になるかもしれないと思ったからである。新しい服や材料を買うには多くのお金がかかるからである。


 領域に入り、少しずつ進もうとするも、飛び掛かってくるオオカミが多すぎて前に進めない。切ったそばからアイテムボックスに仕舞っていくも、なかなか後続が切れない。こうしている間も遠吠えをするオオカミと、それに答えるような遠吠えが聞こえる。


「ああ、もう、めんどくさい!とりあえず殲滅するから後ろ下がって」


「手伝う?」


「できれば俺の前に集めてくれ」


 はいなー、と気の抜けるような声とともに静の手が上げられる。その手には多くの魔力が集められており、さっと手が振り下ろされると目の前のオオカミが地面に叩きつけられる。魔法の発動領域に突撃してきた後続のオオカミも、すべて等しく地面に叩きつけられる。


「行っくぞー」


 こちらも同じく抜けた声とともに魔法が発動される。見た目に大きな変化はなかった。無理やり地面に押さえつけられているのだから、身動きは取れない。特に火や電気などのもので攻撃するわけでもなく、酸欠に追い込んだだけである。そこに防音結界も施せば、遠吠えも森に響かず、追加のオオカミを止められる。


 見た目には何の変化もなく終わらせる。それは暗殺者のようなやり方で、雅紀の好むところではなかったが、今回は面倒くささがそれを認めるほどだったようだ。1匹いたら30匹いると思えと言われているやつのごとく、止まることなくオオカミに我慢が持たなかったらしい。


 溢れるほどのオオカミを再び手にすることになり、またもやフォレストウルフの供給過多を引き起こせるようになってしまう。ケイティの呆れる顔が頭に浮かんでくる。もう服装はワイバーン革で揃ってる故に、ウルフ皮はもう必要としていない。


 ひとまず追加も止まり、こちらに向かってくる魔物が減ってきたところで、向かってくる分を無視して奥に向かう。ここに集まっている魔物のほとんどは四足歩行型なので、空中を飛んでいくようにすれば魔物にぶつかることなく奥へと進める。


 中央に向かえば向かうほど、見るからに強そうな魔物が増えてくる。そして、感じる魔力も強くなってくる。覚えのある感覚に、この先にあるのが、あのトレントを生み出したのと同じ魔力だまりだと判断する。


 あれと同じだけの魔物が発生しているのであれば、あの街にいる冒険者では対抗できるのがひどく限られてしまう。雅紀たちにしてみれば、あの戦いをもう一度できると歓喜している。やはり、この4人は感覚がひどくずれている。


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