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非常識高校生の非勇者生活  作者: kiara
第一章 始まりの物語
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先輩とのOHANASHI


 店の裏庭で世にも不思議の儀式が行われていて、唖然とするしかないボレル。


 そしてそれを見て、三人を戻すために慣れた手つきで肩と頭を叩いていく康太。もちろん頭を叩かれたのは雅紀である。レディーに優しくするのは当然である。たとえ道場の男子(二名除く)を二桁まとめて叩きのめすことが可能だとしても、レディーなのである。


 ふえ?と抜けた声を出しながら顔を上げる三人。呆れ顔の康太と呆気にとられているボレルを見て、再び悪い癖が出てしまったことを自覚する。悪い悪い、と謝りながら立ち上がり、きれいに片付けてから剣を持っているボレルに体を向ける。



 雅紀と静が、最初に店に来た時と同じ理知的な雰囲気を感じさせるようになり、ボレルも通常運転を再開し武器の具合を確かめてもらう。


 本人的にはいい素材を使って会心の出来と思える作品を作り上げ、満足している。新しい武器を渡された二人は、距離を取って素振りをしたかと思ったら、お互いに向かって魔法を撃ち合い始め、仕舞いには模擬戦を始める。


 一振りすれば地面にも一筋の溝ができ、撃ち合えば建物の窓ガラスがガタガタと揺れる。


 康太と朱莉は、新しい竹刀を買うとこうして感覚を掴もうと打ち合うのも、その一撃の威力も知っている。一方でボレルにしてみれば、感覚の違う新しい武器で派手に打ち合うのは非常識で、その一撃もあんな軽い武器によるものとは思えなかった。



 そんな打ち合いが十合以上続き、三十秒もせずに打ち合いを終えて戻ってくる。


 静の槍には問題が無かったようだが、雅紀の剣は持ち手に違和感があったようだ。


 今の派手な打ち合いでそこまでの細かい部分を気づく感覚に驚くボレルは、雅紀の要望通りに、持ち手を太くしたうえで滑りにくい素材を巻き付けてもらう。


 今度は手に馴染んだようで次に進み、康太の刀が打てないか聞いてみる。しかしながら、ボレルは刀が打てないようで、なんとも形容しがたい渋い顔で首を振る。


 朱莉はトレント素材で地球産の弓よりも強力なのを作る目途が立っているが、康太だけしっかりした武器なしというわけにもいかず、刀と同じくらい得意な徒手空拳用に籠手を作ってもらう。


 籠手でも同じくらいの時間しかかからないようなので、また庭で固まることに。



 今度は暴走することがなく話し始め、防御面をどうするか決めていく。


「制服は動きづらいけど、運動着は逆に軽すぎる」


「服は魔物素材で毛とかあるからそれにしよう」


「あとは何か羽織るものが欲しいですね。冒険者でもローブを着ていた方が多かったですし」


 冒険者ギルドで見た魔法使いはなぜかみんなローブを着ていた。なのでそういうものを持っていた方がいいのではと思ってしまう。


「あ、それならワイバーンの皮使おうぜ。なんか固そうだったし」


「なら、私が縫っとくよ。あの大きさなら四人分は確保できるんじゃないかな」


 そういうや否や、ワイバーンを出して皮を切り出し、その場で鞣し始めていく。本来ならそこそこの時間がかかる工程も、魔法である程度短縮していく。化学薬品を使ってやる工程も、魔法で直接工程後の状態に持っていけ、数時間で終わりことが可能となる。


 静は鞣すのを三人に任せて、紙を取り出したかと思えば、さらさらと紙にデザインラフ画を描き、修正してはどんどんクオリティーを上げていく。四人それぞれに異なるデザインだが、それでいてどことなく似ているデザインを描き上げる。



 しばらくして康太の籠手が出来上がり、朱莉だけ金属武器を持っていないのは不用心に思えたのか、普通の鉄の短剣を買っておく。


 いざお金を払う段階になって、値段について何も聞いてなかったことと気づく。自分の武器にお金をけちるつもりは毛頭ないが、それでも現在の所持金には限界がある。


 やってしまった感を滲ませながら、ボレルに値段を尋ねる。店に並んでいる武器は量産品で銀貨50枚程度なので、そこまで高くないと考えられるが、材料が違うから実はものすごく高かったりするのではとびくびくしていた。



 この世界は多くのものに金属が利用されるため、金属の相場が総じて高い。日本なら精錬された純鉄1キロが100円を下回るが、こちらの世界では純度が普通の鉄鉱石10キロが銀貨1枚で取引される。そして精錬に必要な木炭の分、人件費、輸送料を考慮すると、鉄のインゴットは1キロで銀貨5枚以上で売買される。最終的に武器1本につき鉄が5キロ程度必要になるので、1本当たり材料で銀貨30枚程度かかる。



 そう考えると1本につき銀貨20枚なのだが・・・、


「そうだな、材料持ち込みで普通の剣と同じでいいからな。嬢ちゃんの短剣も含めて金貨1枚でいいぞ。魔鉄なんて久しぶりに打たせてもらったしな」


「それはご親切にありがとうございます」


 予想以上にまけてくれたボレルに素直に頭を下げる雅紀に静。しかし、敬意とか気にしないのか、それともあの奇妙な笑いを見たからか、その態度がボレルにとってはむず痒いらしい。


「やめやめ、さっきみたいに普通に話せ。なんか寒気がする」


「ひどい良いようだな、おい」


「いい関係作るんなら、素のままでいいんだよ」


 ボレルは手をひらひらと振りながら、ぶっきらぼうに答える。そうしつつも、顔にはニヤリと、いい客を捕まえたと浮かんでいる。雅紀たちはいい素材を手に入れるルートに内定されたようだ。そうと理解したうえで雅紀たちも、返事を返して宿へと戻る。



 その夜。


 雅紀が風呂から上がると部屋には静ではなく康太がいた。康太から静と朱莉が隣の部屋にいることを聞いて、なぜの部分を聞かずに、鞣し終えたワイバーン革を持って訪ねる。


 「静、いるかー?」と訊きながらスマホ画面を見て、扉を開けて部屋に入る雅紀。「え、ちょっと待って」と焦った調子の声が耳に入り、ここにきて顔をあげる。


 ベッドの上に広げられた絹のような布。床にはその切れ端。目の前に、上半身に何もつけておらず、シャツを胸に抱いている静。その奥には、苦笑いしている朱莉。


 一拍置いて自分が置かれている状況を理解しようとし、口から出た言葉はというと・・・


「ん。相変わらずいいスタイルだな」


「雅紀のバカーーー!エッチーーー!早く出てってーーー!」


 その言葉に物理的に背中を押されて、部屋から転がり出る羽目になる雅紀。いつもは自分から積極的に雅紀を襲おうとしている静だが、いざ自分が突然襲われるような状況になるとこうなるらしい。


 しばらくして今度こそはノックしてから入り、ニコニコしている朱莉の背中に、顔を真っ赤にして隠れている静と顔を合わせないようにしながら、ワイバーンの革を渡して加工を頼み、すぐさま部屋を離れる。「静の体はいかがでした?」と後ろから声がするが、聞こえないふりをして急ぐ。顔を真っ赤にしている静も可愛かったなんて、とても言えるわけがなかった。


 次の朝、昨晩にあんなことがあったのにまた同じベッドで寝ている静の髪を梳きながら、静の寝顔を堪能する雅紀だった。


 その後、宿の女将にいろいろと突っ込まれてひどく疲れる朝になった、とだけ付け加えておく。




 ギルドが最も込み合う中、一段と目立っている集団があった。なかなかお目にかかれない素材を使っていると思われる上着に、中堅でも見ているだけで気圧される武器。それらをしっかりと着こなす若手の集団。


 もちろん雅紀たちのことである。昨日のあれ以降、静は気を取り直して上着を仕上げてくれた。それぞれの服の色は、雅紀が黒、静がほんのりとした青、康太が黒みがかった緑、朱莉が薄紅を基調として、ほかにも派手で下品にならないように線が走っている。もっとも光学迷彩を使えるこの四人にとっては、地形とか考える必要もなく、服の色なんて好きな色を選べばいいのである。


 武器の方も、雅紀は昨日の鉄剣だけ、静は同じく槍一本、康太は籠手を着けたうえで刀を佩き、朱莉は新しい弓を背負っていた。雅紀が昨日、頭の中をきれいにしようとして作ったのである。特に必要に迫られていたわけではないので、朱莉も雅紀の心中を理解できたようだ。


 使っている素材からして高級品であり、そのうえ四人が醸している雰囲気が一流なので、ギルドはその空気に飲まれて静まり返った。当人の雅紀はというと、(え、なに。なんでこっち見てるの?なんかやらかした?)と非常に不安に襲われていた。心の中はEランク冒険者のものだった。


「あれ、誰だ」

「あの服、高そうだなあ」

「おい、あの剣、魔鉄じゃねえか」

「嘘だろ、金貨何枚かかんだよ」

「え、でも、あいつらDランクの依頼見てるぞ・・・」

「ということは、Dランクであの装備なのか?」


 そんな空気の中、さっきまでの内心での恐怖はどこへ行ったのか、堂々と依頼を眺め、初めて草原側に出てみることに決める。そんな感じで軽く決めて、ギルドから出ていこうとしたときケイティに声を掛けられる。


「えっと、雅紀さん。サブマスからのお願いでして、力を貸してほしいとのことなんでが、お願いできないでしょうか」


 走り寄ってきて、周りに声が漏れないように潜めて、ケイティは四人にお願いする。どうやら、Aランクパーティーが戻ってきたため、本格的に今回の魔物の暴走を解決しようとしているらしい。


 そのまま二階の空き部屋に案内された後、サブマスを呼んでくるので待つように言われる。部屋の中にはAランクパーティーの紅の獅子のメンバーが集まっていた。部屋に新たに連れてこられた人物に注目が集まる。


 何も知らされずに案内された雅紀たちからしてみれば、いきなりギルドの有名人から睨まれることになり驚きを隠せない。それでも、試合の経験からそれを表に出せば舐められることを知っているので、負けずに威圧を出す。


 立っているのも何なので部屋にあるソファーに座ることにする。座ってしばらくしてもまだ向けられている視線の主の魔法使い然とした女が、変わらず見下すような目を向け続けてくる。そこまで続けて見られると癇に障ったのか、静が反応する。


「で、なんですか。さっきからこっちをずっと見て」


「なに、文句あんの?雑魚が口出してんじゃないのよ」


「おい、メルタやめろ」


「なによ、Eランク如きに雑魚って言って何か悪いの。でも、その服かなり強い魔物の革から作ってるわね。その弓もエルダートレントかしら。デザインもなかなかだし、全部私が使ってあげるわ。」


 舐めまわすように見た後、とんでもないことを言い出すメンバーを窘めるリーダーを無視して、高圧的な態度を取り続ける女魔法使い。来ているローブは持ち主の性格を反映したかのように、下品なほど装飾が施されている。容姿にも自信があるのか、ローブの下は体のラインが見える恰好だった。この種の女は、静と朱莉とは真逆で、四人とも嫌いなタイプだった。


 そんな中、朱莉がふらりと立ちあがり、ふふふ、と滅多に聞くことの笑い声を漏らす。そして、その声を聴いて雅紀たち、特に康太がものすごく青い顔を見せる。蛇に睨まれた蛙どころではない顔になる。


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