表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
非常識高校生の非勇者生活  作者: kiara
第一章 始まりの物語
21/100

武器製作


 誰か裏へと飛んで行ったのを全く気にせず、商談に入る。


「ああ、剣を打ってもらおうかと思ってな」


「あいよ。どんなのだ?」


「片手直剣で重心と刃は、あの剣と同じくらい。持ち手はこっちの剣で」


「私はこれに似た形状の槍でお願いします。穂先を少し長めに」


 店にあった武器で、自分に合った形のものを指していく。職人としても詳細に決めてもらった方がやり易いようで、ふむふむと頷いてメモを取っていく。


「材料はどうする?」


 そう、この武器の材料が問題だったのだ。雅紀も静も魔法を使うつもりであったが、店頭に並んでいた中には満足いくほどの魔力伝導率を持つのがなかったのである。

 そこで考えたのである。今自分が使っている鉄は伝導率がいいので、それを使ってもらえばいいのでは、と。ついでにワイバーンらしい素材もあるので、それも使ってもらうか、などとも考えている。

 康太と朱莉に聞いたところ、武器も防具もまだ買っていないとのことなので、今から店に来てもらうことにする。あちらも十分デートしただろうし、そろそろ康太に救いの手を、と考えてのことだった。


「金属はこれで打ってくれ」


「驚いた。こりゃあ、すげえ純度の魔鉄じゃねえか」


「魔鉄?」


「知らねえのか。魔鉄は鉄が魔力だまりで変質したもんだ。基本鉄と変わらねえが、魔力に関しては段違いだ。ダンジョンとか鉱山の深いところから取れんだよ」


 この魔鉄、地球の鉄と同じく原子から成っているものの、その原子の間に魔力が介在している。金属結合を成す自由電子の代わりを魔力が担っている形である。そのためこの魔鉄は、ただの鉄とは比べ物にならないほどの高度を誇り、また魔力伝導においてもロスがほぼ発生しない。

 見つけるにも加工するにも手間がかかるが、それに見合うだけのパフォーマンスを見せてくれる。

 今回雅紀が取り出したのは、トレント戦をした魔力だまりの地中の鉄を頑張って集めたものである。地中に含まれる数パーセントの鉄を、あの広場全体にわたってインゴットにしたのである。終わった後になってわざわざ作らなくても集めればいいじゃんと気づき、がっくりとしていた。

 ボレルが、滅多にお目にかかれない金属で仕事ができるとやる気を見せている横で、雅紀はまだカバンの中を漁っていた。すぐに取り出せるのに、芸が細かい。

 静は不思議に思いながらも、追加で二人が来ることを伝えておく。


「それじゃあ、撃たせてもらう。裏庭で好きにしててもいいし、一度帰ってもいいぞ」


「それじゃ、裏庭借りますね」


 ボレルが魔鉄と企画の書かれた紙を持って奥の工房へと入っていき、雅紀と静は庭でのんびりとすることにする。

 顔面殴られ悪趣味男バッテスが気づいた時には、誰も店の中にはおらず、ぽつんと一人だった。まるで、この男の将来を暗示しているようなしていないような・・・。


 裏庭に着いて、気になっていた雅紀の不審行為を尋ねる。


「不審者さん不審者さん、何してたの?」


「ん、この木を取り出してたって、不審者はひどいよ」


 そういう雅紀のカバンから取り出されたのは、あのトレントの幹であった。ただぶつ切りにしただけのただただ大きい木材である。

 不思議そうにする静を横目に、巨大丸太の中心から魔石を含む十五センチ四方の角材を切り出す。残りの部分はその四辺を延長するように切って、あたかも丸太を四等分したように見せる。

 さりげなく証拠隠滅を図る雅紀に、本当に不審者のレッテルを張るんじゃないかという目を向け、「詳細な説明頂戴♡」と凍えるような空気を纏う静。

 ジリジリと距離が詰まり始める。向かい合ってお互いに笑顔であるのだが、その裏にある感情は正反対である。

 不穏な空気になるところに、店の正面から、「これはちょっと・・・」という声が聞こえてくる。その声の主に気づき、呼びに行くことにしてとりあえずの衝突を避ける。

 店の正面までたどり着いた朱莉と康太を裏庭まで呼び寄せる。静と朱莉がお互いの服を褒めている横で、雅紀が死に体になっている康太の蘇生を試みる。朱莉は地球にいたときはあまり買い物に出かけなかったので、いつにもまして興奮していた。そして、康太は野次馬に精神を削り取られた。慣れている雅紀のようにはいかなかったみたいである。


 四人の意識が戻ってきたところで、雅紀と静が再び笑顔でにらみ合い始める。

 きょとんとしている康太と朱莉に事の顛末を話して自陣に引きずり込む静に対し、雅紀はまだ諦めず作業を続ける気でいる。

 危険生物の魔石を使った武器なんて危ないという静と、魔石持ちの剣とかロマンだろという雅紀。

 実のところ、静も雅紀の考えを面白いと考えているが、まだ何もわからないことを街中でやり出すのに懸念を抱いているだけである。危険でないとわかれば、一気に傾きが変わるだろう。

 にらみを利かせ合ってる二人を眺め、そんなの知っている人に聞きゃ良いだろと思う康太。

 何やら言い合っているのを背中にして店内に入り、なぜかお腹をさすっているバッテスに聞いてみる。


「え、魔剣って知りません?魔物素材で作ったり、魔石を加えたりするとできるんですよー。あれはかなり強力な武器ですよー。まあ、なかなか作れないんですけどねー」


 そう言い残して再び奥に引っ込むバッテス。客残してそれでいいのかと思う康太だが、とりあえずにらみ合いからガンの飛ばし合いになっている二人を抑えるのを先にする。


 魔剣なるものの存在を知れば、さっきまでのいがみ合いはどこへか、実験に突入する三人。魔物の死体のうち、使えそうな部位だけを取り出していく。トレントの角材、ムカデの甲殻、ウィンドウルフの牙、ワイバーンの骨や牙、・・・。それぞれの出す量を一つにしているのに山ができていく。

 今までに倒してきた魔物の量を思い返し、それもそうかと納得する。一日で三桁は余裕で越え、四桁に届くときもあったから。

 多いなあという物思いから戻ってくると、すでに狂科学者たちは手当たり次第に素材を手にとっては魔力を流し、何か起こらないか確かめて、重くなっただの硬くなっただのと騒いでいる。

 そんな中、雅紀が静かだなとみると、気配を消してトレントの角材(魔石入り)をもってそろーりそろーりと、静と朱莉の視界から抜け出し、庭の木の裏に隠れていた。



「ふう、静たちもしばらく来ないだろうし、康太は見逃してくれるだろう、たぶん」


 右手で掻いてもいない汗をぬぐう仕草をし、左手の中にあるものを見てにやりと笑う。そうそう出会うことのない大きさのトレントの魔石は超貴重なのである。


「クックック、片手剣にしてしまえば俺の勝ちだ。まあ、ワイバーンとか譲って死ぬ気で謝れば許してくれたりすんじゃね」


 弱気の発言をしながら、十キロを超える木材に魔法を使っていく。

 魔石は指の爪サイズまで圧縮し、木材も握り手を二十センチちょっと、刃を八十センチちょっとで厚さが五ミリを下回るまで圧縮していく。どう頑張っても圧縮できない分は魔力に戻して魔石に溜めていく。

 剣の表面は木製のため木目が浮かんでいるが、圧縮された木材は単なる茶色ではなく、年季の入った家具のような重みを感じさせる色になっていた。鍔は刃と一体でシンプルだが、デザイン性を感じさせる。

 調整している本人にすれば長い時間だったかもしれないが、実際には数分で形成自体は終わっていた。あとは微調整するだけとなる。


「やってしまったぞ、俺。もう後戻りはできん。ならば最高の剣にしようではないか」


 何かに熱中すると口から出てくる言葉が気障ったくなる雅紀に、康太だけが気づいていた。


 試し切りするために同格のトレントの木材を取り出す。細切れにしては確実に怒られるが、こぶを切り落とす分には特に問題ないだろうと、的代わりに置いていく。

 数回素振りして、魔力の流れも確認して浮かべる表情からすると、納得のいくものができたらしい。

 最後に試し切りとして、トレントを切っていく。トレント自体に魔力が流れていないので以前より柔らかくなっているが、元の状態だとしても、剣自体の重量や厚みなどのもろもろの要因から、現在の鉄剣よりも容易に切り落とせると確信できる一撃を撃てた。

 楽しくなって、もう数回振っていく。すべて落として、ぼろぼろと落ちている大きなこぶを仕舞っていく。そのとき、こぶの中に新しい魔力源があることに気が付く。

 手刀で切り開いていくと、そこには魔石があった。ほかのこぶにもあるんじゃないかと調べると、追加で四個ほど見つけることができた。

 あとでギルドに聞いたことだが、魔石は動物型であれば通常一匹につき一つなのだが、植物系となると養分を貯めるとともに魔力をメインの魔石以外にも分割して溜めるらしい。

 そんな理由はともあれ、魔石を一つ使っても他にもあるから許してもらえるんじゃねと、さらに安心感を得る雅紀であったが、夜にきっちりと絞られる羽目になるのであった。


 しれっと素材漁りに戻ってきた雅紀を含めて、ボレルの武器屋の裏庭には奇妙な光景が広がっていた。

 容姿が整っている三人の男女が、真剣な顔で魔物の死骸をつかんだと思ったら、顔に中途半端な笑顔を浮かべ、次のに行ったと思ったら今度は真顔になる。

 この三人の性格を知らない者が見たら、すぐさまその場を離れたくなること間違いなしの光景が広がっていた。そしてこれは、この裏庭の主人のボレルにも当てはまることだった。



「おーい、できたぞーって・・・。お前ら、何してんだ?」


 頼まれていた剣と槍を二時間ちょっとで仕上げ終えたボレルは、目を覚まし再び工房にこもっているバッテスを再び殴りつけ、裏庭に出たところで、客が笑いながら魔物の素材をつかんでは投げるという奇妙な光景に出くわし、唖然とし、復活しても疑問を呈することしかできなかった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ