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非常識高校生の非勇者生活  作者: kiara
第一章 始まりの物語
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エリンエルデート

暑くて筆が進まん。

お盆はやることが多いですね。そんな中アクセスありがとうございます。


 エリンエル辺境伯地の中心エリンエル。グリュール王国でも最南端の領地の一つであり、最東端の領地の一つでもある。その中心の街は、王国内の街の中で最も内陸に位置し、同時に魔の山脈地帯、魔の森、樹海等々と呼ばれる領域に最も近い街である。


 それゆえ、街は幾度もの魔物の被害に悩まされており、辺境伯が屋敷を構えて戦況を確認しつつ軍を動かすことが多々ある。魔物が多いことから冒険者も多く集まっている。魔物の森から流れてくるだけあって強いようだが、それに見合った報酬を得られると、夢見る冒険者が集まってくる。


 魔物が多いが故に、軍の兵士と冒険者は何度も肩を並べて戦ってきており、軍と冒険者の仲がいいのも有名である。エリンエルの軍も冒険者も、魔物の強さに比例して平均的な能力がほかの街よりも高い。


 エリンエルは、国内でも有数の戦力を持ち、街としても領地としても王国の対魔物の防壁なのである。



 そんなエリンエルの街は、魔物の襲来に備えて街の周囲を防壁で囲っており、街自体は直径10キロメートル程である。中央に領主邸、南東に冒険者ギルド、北西に商業ギルドがある。商業ギルドの位置については、エリンエルの北と西の街からの街道が北門と西門につながっていて、商人がそちらから入ってくることが多いからであり、冒険者ギルドについては、南と東に魔の森が広がっているからである。


 各門ごとに使う人の業種がだいたい分けられていて、中央と各門をつなぐ大通り沿いにはそれぞれの業種に関わる店が軒を連ねている。南と西ならば冒険者向けの食事処、宿屋、武器屋が並んでいて、北と東ならば商人と一般人向けの雑貨、魔物素材、きれいなレストランが並んでいる。



 五キロメートルの大通りの左右でかつ4本分の店を回る。この量の店を女子の買い物スピードで回り切ろうとしたら、とてもじゃないが時間が足りない。


 そこで冒険者ギルドでお勧めの店を聞くことを思いついたのが、朝食時。一度で全部見て回るのももったいないという理由でその提言は受け入れられ、一日で終わる見込みが立つ。単純に数日に分けて時間をおいているだけで、いつかは全部の店をめぐるという点では変わりない。


 ギルドでお勧めの服屋、武器屋、防具屋を聞き、二組の行き先が重ならないように時間を決めて解散する。


 雅紀と静は手をつなぎながら西門への大通りを目指して歩いていく。今日も人目があるので制服を着ている。早く新しい服を手に入れて、着たきり雀を卒業したいところである。


 まず二人が向かったのは服屋のようで、一般市民も利用するところのようだ。それでも新品の服なので、値段もそれ相応である。


 静は新しい服を買えることに喜び、雅紀は嬉しそうな静を見て満足していた。


 この世界の服は、もちろん化学繊維など存在しないので、すべて天然素材でできている。しかし、ここでいう天然繊維には、魔物や動物の毛や蜘蛛の糸も含まれる。この世界のシルクは蜘蛛の魔物の巣から作られるため貴族向けの高級品であり、庶民は麻か綿の服が一般的らしい。


 お手頃価格の服を見て回りながら、気になったいくつかの服を手に取り、試していく。


 一着目は白のワンピース。ースリーブの肩から見える白い手と裾から覗く白い足がまぶしい。これは、雅紀も気に入ったようでべた褒めしている。


 二着目は白のブラウスに紺系のロングスカート。清楚感が漂う装いで、静的には動きづらいことが気になるようだが、街中なら問題なしと雅紀に説得される。


 三着目は黒のカットソーに白のジーンズ的なズボン。できる大人感が溢れている。雅紀は体の線が出過ぎじゃないかと気にするが、静的には雅紀が女を意識してくれるいい服の認識だった。



 その後も何着か追加して、上下それぞれ5着ずつ購入し、今度は逆に雅紀を着せ替え人形にする。雅紀は静のコーデにはやる気を見せても自分の服には気を払わない。服としての機能だけを求めている。


 自分では気にしていないので、いつものように静に選んでもらう。イケメンと美人がお互いに服をあてて楽しそうに話すのは非常に人の目を引き、店中だけでなく道からも視線が向けられる。


 静は雅紀しか視界に入っていないので、雅紀だけが嬉し恥ずかしを味わい、現実逃避をしているうちに静の、静による、静のための雅紀プロデュースが終わりを迎える。


 現実に戻った二人を待っていたのは、自分たちを見ている他の客たち。


 着飾った雅紀と静が並ぶとファッションショーのようになってしまう。観客と化したやじ馬が騒ぐ横を通って会計を済ませる。二人合わせて上下合わせて20着を買い、そこに下着も合わせる。そして、そのうち一着を着ていく。大量購入までしてくれる上に、客引きをしてくれた上客に店側もほくほく顔である。


 幾ばくか値引いてもらって銀貨50枚ほど支払い、買った服を雅紀が袋に詰めていると、静が小声で女性店員に話しかけている。小声で話しているものの、雅紀の聴力は強化されていてばっちりと聞かれてしまう。


「静、そのシルクみたいな布どうするんだ?」


「もう、女の子にはいろいろあるの。雅紀のエッチ」


 後半のボソッと言われた言葉に、思い当たることがあるのか気まずげに顔をそらす。静も俯いているが、耳が少し赤くなっている。みんなの微笑ましいものを見る笑みからニヤニヤに変わっていく。


 その場に居づらくなったのか、雅紀が静の荷物をひったくるように奪い、静の手を引いてその場を離脱する。その背中に向けられているのは、周りにふりまかれる幸せオーラにあてられて、微笑ましいものを見る目だけだった。



 その後もいくつかの小物雑貨を探して巡り歩き、昼食を大通り沿いの露店で目新しい料理を集めてくる。料理の上達に関しては手を抜く気のない静は、新しい料理にはとりあえず挑戦するのである。それに付き合う雅紀も、今までにいろいろな料理を食べてきた。静の新作料理にはいつもビビらされてきた雅紀である。


 新しい刺激を求めて料理を楽しみにしている静と隣り合わせで、大通りの中ほどにある広場のベンチに座って食事を取る雅紀。アイテムボックスから取り出して、熱々の料理を一口食べては吟味し、次に雅紀に食べさせてあげる。これを数回繰り返して一つの料理を食べていく。


 数種類の料理を食べて、料理に使われていた材料をどの調理法を用いるべきかを考えだしていく。静が考えるのに忙しくなると、今度は雅紀が料理を取り出して静に食べさせてあげる。目の前まで出された料理には気付くのか、反応を示す。


 そうやって時間をかけて一通り食べ終えて、食休みをしているうちに静の考えもまとまって戻ってくる。


「「ごちそうさまでした」」


「それでいい料理思いついた?」


「うーん、日本の食材とあんまり変わらないかな。でも調味料が面白いかも」


 そう言って、手元の変わった辛みのあった串を指す。そして今さっき食べた料理を思い出し、ぽつりとこぼす。


「ここの料理は、焼く、茹でるしかないみたいだから試す価値はあるかもな」


「まあ、自分の台所を手に入れないと何とも言えないね。それと小麦メインの食生活だったかあ」


「水も街の向こうの川か井戸しかないみたいだから、コメは難しいよなあ。ああ、さらば日本食、ガクッ」


「商業都市なんかに行けばあるんじゃないかな」


「そいだな。日本食までの道は遠いよ」


 食事の今後の展望を話しつつ、必要な小物や服の類は買い揃えたので、これからお世話になるだろう相棒を探し始めようと、ギルドで教えてもらったように南の大通りへ足を運ぶ。



 この街には、各門への大通りの中ほどの広場を四つ結ぶように円形の大通りもある。この街は、中心から防壁に向かっての道と、同心円状の道で結ばれている。


 西の大通りから南の大通りへと三十分かけて移動し、少し通りを外れた雅紀と静は、お勧めされた武器と防具を共に扱っている店の前に到着し、店の景観にドン引きしていた。


 オオカミの頭、ウシの頭、イノシシの頭等々と、魔物の頭部の剥製、いや、ただの頭が飾られていた。置物の下が赤いのは絵の具だと信じたい。その置物からぴちゃぴちゃ垂れていても絵の具なのである。


 店の扉を開けるとコツンコツンと、軽いものがぶつかる音がする。何の音か推測できてしまうが、見なければそれ以外の可能性も残る。シュレディンガーの猫と同じである。


 「いらっしゃいませー」と、店の裏から若い男が出てくる。ひょろっとしていて、お世辞にも鍛冶をやっている人間には見えない。


「何をお探しですかー」


「剣と槍はどの辺にありますかね?」


「剣は入り口横で、槍はそっちですねー。ごゆっくりー」


 そう言い残して再び裏へと戻って行く若者。なんだか店員にしてはえらくマイペースだなあと思いながら、各自の獲物を探し始める。


 この手の店は、商品を手に取れるのが基本なので次々に試していく。武器の重心、持ち手の触感や太さ、刃の厚さ、長さ、魔力の通り具合などを確かめて、自分に合ったものを探していく。



 店にあった大半の剣を振って確かめたあたりで、店の奥から怒鳴り声が聞こえてきて、徐々に大きくなる。そして、店の裏から出てきたのはずんぐりむっくりとした人と先ほどの若者だった。


 怒られていたのは若者の方で、客がいながら自分の趣味を優先していたことを怒られている。ただでさえ客が少ないのにどうすんだ、と怒っているのを聞き、雅紀と静はもしやと思う。


「なあ、親方さん。この店の外知らないのですか?」


「あん、外だと?そりゃいつも通りって、なんじゃこりゃあああああ!」


「あ、やっぱり知らなかったんだ」


「そうみたいだね」


「こんっの馬鹿野郎があああああ!」


 ゴキュという良い音と「ブベラッ」という音を残して、弟子であるらしい若者が店裏へと消えていく。


 客がいることを思い出したのか、咳払いで誤魔化して話を続ける親方。


「俺はここの店主をやってるドワーフのボレルってもんだ。それで坊ちゃん嬢ちゃんは何をお探しで?」



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