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非常識高校生の非勇者生活  作者: kiara
第一章 始まりの物語
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情報


 ギルドに用意している最大の籠、300株は入りそうな籠を持ってくる。


「さあ、これでどうです。入れちゃってください」


 準備はできた、さあ来い、といい笑顔で宣言するケイティに対して、のんびりとした声で、行きますよー、といって、カバンを斜めにして籠に流し始める。


 籠が2割、半分、8割と埋まっていくにつれて、外野も盛り上がっていく。そんな中、静は、あ、これ籠からあふれる奴だ、と予想して、もう一籠持ってくるように頼む。


 ケイティは、やっぱりという顔をしているが、他の受付嬢は流し込まれる薬草に目が釘付けになっている。そして、新しい籠が付くころには初めの籠がいっぱいになる。


 二籠目に流しいれているそばから、一籠目の薬草の確認に入っていく。ギルド内の冒険者はみんなして、薬草の滝を見ているので、受付嬢のほとんどを動員して、数え上げていく。


 その確認で、弾かれるものがあまりにも少ない、というかないので、それを見て予想を吊り上げ、再び賭けが盛り上がりを見せる。


 結局三籠目の3割程度まで流し込んだところで、カバンの中身が尽き、三籠目も計量に回される。そして、ついでだからといって、フォレストウルフを出すためにケイティに倉庫へ連れて行ってもらう。その数は、昨日に比べて半分以下だったので、驚いてはいない模様。倉庫の一角がフォレストウルフで埋まるという、暴走でもない限り見られない光景になっていた。


 しかし、一日でフォレストウルフ200匹は、普通に異常な数である。昨日の半分だからと安心するとは、数に関しては、いい具合にマヒし始めてしまっている。


 フォレストウルフの数を確認してから、カウンターに戻っても、いまだに頑張って仕分けしている受付嬢の姿があった。それでも頑張った結果、残りは籠半分まで減っていた。


 すでに、予想を超えてしまっていたのか、何人もの冒険者が悔しそうな顔をしている。そして、スカウトしようとしている目もいっぱいだった。


 それから5分で片づけたようで、受付嬢が自分の職務に戻る。その顔は、金蔓を見つけたような狩人みたいな目をしている者もいた。目の前で、雅紀と静がイチャイチャし、康太と朱莉が明日のデートを話しているというのに、大した根性である。


 ケイティも依頼達成の手続きに戻り、薬草の総数を見て頬を引きつらせていた。目的の薬草732株、上位の薬草54株。異常な数値に表情の変化を止められない。


 森の中にはこんなにも残ってたんだなあ、と現実逃避しながら、処理を進め、昼前にもらったウィンドウルフの分も合わせて処理していく。


 薬草でEランク依頼73回、小オオカミと上位薬草でDランク依頼50回、大オオカミでCランク依頼1回。〆てEランク依頼277回分である。朝の残りと合わせて、ほぼランクアップの条件を満たしたといってもいいだろう。


 Dランクへのランクアップは、護衛や野営の能力も考慮する試験が用意されている。特にこの4人なら問題ないのだが、形としてはやらないと上がうるさいのである。階層組織はめんどくさい。


 お金としては今日も銀貨700枚弱をもらっていた。ウィンドウルフについては、領主に売り込んでいるらしく、もうしばらく待ってくれとのこと。


 また、雅紀たちの採ってきた薬草の数が公表され、賭けの分配をしているのか、酒場は先ほどよりも大盛り上がりしていて、遅れてギルドに来た冒険者は、首を傾げている。それでも周りが楽しそうなら、自分も楽しくなるものである。


 雅紀たちも宴会に参加し、いろんな食べ物を食べてあーだこーだ言っている。昨日は久しぶりのまともな食事で舞い上がって、味は二の次だったが、今日は味を確かめて好みの料理を真剣に探しているようだ。


 新しい土地に移動したときに、その土地の食事が自分に合っているかどうかは、この上なく重要である。特に日本食の繊細な味に慣れている日本人は、西洋の脂っこい料理に対しての評価が割れるところだ。飛行機で飲んだ、ただの味噌スープに感動するほどである。


 イノシシでおいしい肉の味を覚えてしまっている雅紀たちでも、調味料にもよるが、普通の材料で作った料理の方がおいしいと思うのか、各自がいくつかの料理を頼んでシェアするようだ。


 近くに海がないようで魚系は川魚がメインで高く、草原が広がっているからか牛やイノシシの肉は安価で手に入るらしく種類も豊富だった。


 食べている途中、静と朱莉に馴れ馴れしく触ろうとしてくる男もいたが、手を伸ばした次の瞬間に視界が天井に変わって背中に鈍痛が走るは、寝転んでいる顔のすぐ横の石畳に木のフォークやナイフが突き刺さるはで、酔いが醒め、そそくさと酒場をあとにすることになった。


 そんな騒動のあとは・・・。


「静、はい、あーん」


「あーん。ん~おいしいよ雅紀♡」


「ほれ、朱莉口開けな」


「もう、康太さんたらっ。あーん」


 注意を逸らすために、慣れた手つきでフォークを差し出す。


「じゃ、次は私の番だよね。雅紀♪はい、あーん♡」

「では、次は私の番ですね。はい、お口を開けてください、康太さん♡」


「あ、あーん」

「お。おうよ」


 こんなにも甘々な世界を作り出すのである。その度に、ブチ、ブチ、ブチッ!という血管が切れたんじゃないかという音が、春が来ない男どもから聞こえてくる。中には雅紀と康太に天誅を下そうという野郎もいたが、四人の完璧な防御(物理)の前に崩れ落ちるのだった。これのせいで被害者がどんどん増えていったといっても過言ではない。



 すっかりと日が沈み、潰れる冒険者が出始め、宿に戻ろうとすると、ギルドに五人のパーティーが正面から現れた。


 五人の身に着けている装備と立ち振る舞いから、かなりの手練れだなと雅紀たちが予想している一方、冒険者たちは、駆け込んできた人物を見て大声で声をかけ始め、それは英雄の凱旋のようであった。


 しかし、雅紀たちはこの手の情報には弱く、まったく理解できていない。宿に戻るのはやめにして情報収集にし、飲み物の追加を頼むついでに、店員に彼ら誰?と聞いてみる。


 店員も興奮しているのか、「彼らはAランクパーティーの紅の獅子だよ。リーダーのラルフはエリンエルでも片手に入るくらい強いAランク冒険者なんだよ。ん~、憧れるねえ!」と簡単に教えてくれた。


 それを聞き終えるころには、ラルフたちも依頼の手続きを終えて酒場に座って祝勝会をやろうとしていた。その周りには熟練冒険者とおぼしき人が集まり、気安く話している。


 聴覚を強化すれば、離れた席の声を酒場の喧騒関係なしに聞くことができるので、聞き耳を立てることにした雅紀たち。


「で、今回は聖都の方まで行ったんだって?」

「聖都はどうだったよ。かなりどぎつい宗教国家っていうけど」

「そうだな、街に入るにもいろいろあったぜ。街の中も教会の力が強かったしな」

「片道どれくらいかかるんだ?」

「南の森を避けて馬車で行ったから、往復で一か月ちょいか」

「うへえ、なげえなそりゃ」

・・・


 その後も雑談が続き、情報を集めるなら直接聞いた方が早いかと思い、近くに行こうとした時だった。


「そういや、今南の森で暴走の予兆があるんだとよ」

「そりゃ大変だな。俺たちが参加できそうでよかったな」

「おうよ。Aランクパーティーの力は必要だぜ」

「暴走といえば、魔王でも出たのか?」

「ん?急にどうした?」

「いや、聖都でよ、()()()()()()()()っていううわさを聞いたんだよ。まあ、教会の反応からしてクロだろうな」

「へえ、勇者かあ。いい生活してんだろなあ」

「どうも至れり尽くせりらしい。大国の大使レベルじゃないか?」

・・・・・・


 ()()()()。この単語を聞いたとき、雅紀たちは一瞬自分の魔力の操作が外れてしまった。酔った冒険者が似たことをするのか、多くの人は反応しない。それに反応する冒険者もいたが、雅紀たちはそれに注意を向ける余裕はない。


 自分たちがこちらに来る前に見たのは、魔法陣ではなかったのか?ならば今回呼び出された勇者というのは、あの時教室の中にいたクラスメートのことなんじゃないか?


 そんな疑問が雅紀の頭によぎる。静も同じ考えに至ったようで、いったん自分の周りのことを考え直す必要が出てきた様だ。


 雅紀たちはやはり宿で話し合う必要があるとして、ギルドを立ち去って行った。


 そんな雅紀たちを見つめるラルフとその仲間には気づかないでいた。



 宿に戻ってすぐに、魔術による水のバスタブの風呂に入って(頑張って男女で別部屋)、雅紀と静の部屋に集まって、頭を寄せていた。


「クラスの人たちは勇者として召喚されたみたいね」


「無事だったんだな・・・でいいよな?」


「召喚されてすぐに殺されるなんてことはないと思うけど・・・」


「力が必要だから呼んだのでしたら、しばらくは大丈夫だと思いますよ」


「連絡できればいいんだけどなあ」


「スマホで何とかならないか試してみようよ」


「そうだな」


 クラスメートの安否にドギマギするのはすぐに終わってしまい、実験と称した魔法作りが始まった。わいわいがやがや、あーだこーだ。そんな小難しい話をしているが、要約すると・・・


Q相手のスマホはどう選択するか?

A電話番号でいいと思う

Qどうつなげるか?

A魔力を電波的な感じで


の、2つの問題に集約される。何か理論的にいけそうだから試して確かめるか、とそれぞれのスマホを取り出して男どもが別の部屋に移動し、女子と電話を掛け合う。


 何回か試して何の問題もなく電話で話せたので、「いざ実行!」と雅紀がっクラスメートに電話を掛けようとする。


 そこで、静のストップが入る。聖都の時間帯はどうなのか、電話に出られる状況なのか、電話が見つかったら問題ではないか、と考慮すべきことが山のように出てくる。


 そもそも、この世界は球なのかどうなのかも知らないことを思い出し、例の病んでる神様本に頼ることにする。


 康太の眼が泳いでいるが、時間が惜しいのでどんどん読み進め、森ではスルーしていた情報も仕入れる。


 今回重要そうなのは、ユーテリアも球であって、地球で言う東経部分に人間とその他の大陸、西経部分に邪神とやらの封印地と魔界と呼ばれる死の大陸が広がっている模様。そして、嬉しいことに人間の大国の経度はほぼ同じで時差はない。


 もう午後9時を過ぎているし、みんな自分の部屋にいるだろうと予想して電話を掛けることにする。この世界には念話という魔法もあるが、国を超えての会話となると国宝級の魔道具に頼らなくてはならない。


 この世界でスマホは、最上級の国宝に匹敵するものらしい、多くの人はゲームにしか使ってないのに。


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