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非常識高校生の非勇者生活  作者: kiara
第一章 始まりの物語
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おにいさんがたは山に行き木を・・・切れませんでした


 目の前で、根を鞭のようにビュンビュンうならせている元・幻想的な木、改めトレントは敵意を漏らしまくっていて、幻想的な景色だけを見て帰るのを許してくれる感じはしなかった。雅紀たちも即座に自分の武器を出して、魔法をバンバン打ち込みながら攻撃態勢に入っていく。特定の動作を必要としていない魔法は、体勢を立て直すのにもってこいのようだ。火やら氷やら電撃やらが木の幹にぶつかり、煙を上げるも、その煙が晴れた後には何も跡は残っていなかった。


「これまでで最大の強度だな。これは骨が折れそうだ」


「ほらほら、そんなこと言ってないで構えて」


 会話する余裕を与えるつもりはないようで、魔法を撃たれて怒ったのか、根を振り下ろしたり、横に払ったりしている。雅紀と康太は木剣と竹刀で逸らしているが、トレントとの距離が近過ぎず遠すぎずで、根が太くなり苦戦していた。根の先の方が速く振られているので、逸らすのが大変に思えるが、もっと近づかなければ有利になれそうにない。静は雅紀たち二人よりも後ろなので、根の太さは細いようで、薙刀で切り落としていく。朱莉は近接武器を持っていないので、広場の境界近くまで退避して、魔法で援護するのに専念している。


 雅紀と康太も、しばらくして体が温まったのか、雅紀と康太も、魔力を纏い始めることで、トレントの根を捌きつつ、少しずつだが着実に幹に近づいていく。トレントも近づくにつれ、襲い掛かってくる根の数も増えていく。薙ぎ払い、振り下ろし、突きが何本もの根によって繰り出される。


 雅紀は、太い部分が来たときは剣の腹で逸らしていき、細いのが来たときは切り落としていく。複数が同時に来る時には、後ろから静の援護が飛んでくる。康太の方も朱莉と協力して進んでいく。


 10分以上かけて、トレントとの距離を100メートル以上あったところをから20メートルまで詰める。そこまで詰めれば、根の速さはそこまで出せないようで脅威にならなくなる。さらに詰めようと左足を前に出そうとしたとき、強烈ないやな予感に襲われ、全力で後方に飛ぶ。雅紀が足を出そうとしたところには十センチ程度の突起ができていた。何が地表に出ているのか気を取られると、トレントの太い根に視界を遮られる。


「ファイア!」


 無詠唱で魔法をこの近接戦闘で使うには、集中する余裕がなく、即座の魔法発動にはイメージしやすい言葉を使わざるを得ないらしい。反応速度が桁違いの相手ならば、そのキーワードが出てきてからでも避けられてしまうかもしれない、と使わないようにしていたが、やはり強敵を相手にするにはまだ修行が足りないらしい。


 爆風で木の根を抑えつつ、自分はその風に乗って斜め後ろに飛ぶ。康太の方を見ると、打撃しか使っていないために対策を取られてしまい、太い木の根を数本寄せ合わせて壁にして、進むのを防いでいる。強い打撃を与えても壁の一部が後ろに押されるだけで、しばらくすれば元に戻ってしまう。埒が明かないようではあるが、康太に差し迫った危険があるわけでもないので、足元にも注意するように伝え、後ろに下がる。


 50メートル程まで下がり、トレント目掛けて全力で駆け抜ける。木の根が迫るも、木の根や空中を足場にして、邪魔になるものを越えて木の幹に接近する。森の風景になっていた時は、幹はせいぜい1メートルだったのだが、本性を現すと、数倍にも膨れ上がっていた。木の幹をすれ違いざまに切りつけ、全力で元居た場所まで戻る。木剣の延長上にも魔法で刃を作り出して、刃を倍くらいに伸ばしたうえで、根元までしっかり埋まるくらいに切りつけたのだが、それでも幹の半分までしか切れなかった。


 戻って手元を確認すると。木剣は今の一撃でがたが来てしまったようなので、トレントに投げつけて、爆発の燃料へと変える。爆発は切り口をある程度焦がすことに成功する。


 流石に幹の半分まで切りつけられては、反応するのか、一旦すべて根を引き上げ幹に巻き付け追撃が来ないように守りの態勢に入る。好機とばかりに溜めのいる魔法を浴びせていく。静は、地中の水分を無理やりに気化させ、疑似的な水蒸気爆発を起こし、朱莉はトレントの周りをできるだけ高温に持っていく。雅紀は真空を作り出して鎌鼬を起こすも、表面に巻き付けられている根がボロボロになって終わる。康太は、消耗した魔力を取り戻すのに忙しい。


 トレントは受けた傷を治すのに専念して、攻撃を仕掛けてこない。


「このまま続ける?今なら逃げられそうだけど」


「このまま放っておきますと、さらに成長して大変なことになると思います」


「そうだよ。危険物は見つけた人が責任もって処理するんだよ」


「ゴミじゃねえんだから専門呼べよ。危ねえよ」


 知識を持つが故に外れたことを言う静だが、他の三人もここで処理するのに賛成の模様。トレントが根をほどくのはその5分後で、受けた傷は新しい組織が埋めたようで、幹に傷は見られない。長期戦を見据えつつ、また剣を構える。



 もう一度攻撃を再開するも、ほぼ一回目のリプレイとなってしまう。二回目の攻撃を切り抜け、四人は再び相談する時間を得る。


 二度にわたる攻撃で、多少の疲れが積もっていくが、テンションが上がっている間は気にしなくていいレベルである。魔法の影響できれいだった広場は、地面がほじくり返され、小川の水で泥になっている部分もある。そんな光景を見ていると、何かが頭に引っかかる。


「なんか始めと決定的に違うんだけどなんだ?」


「えっとね、なんか地面が全体的に乾いてるのとか?」


「それと下草が見えなくなってますね」


「なんか明るくなってるぞ」


「ああ!それか!」


「それがどうかしたか?」


「やっとトレントの回復の根源が分かったんだよ。あいつ、ここら一帯の栄養吸い尽くしてるんだよ。それとここって魔力だまりっぽいし、それも吸収されるとすると、倒し切るのは難しいわ」


 よく見ると、広場の端に干からびるも、辛うじて立っている木が3本あった。


「じゃあ、今更逃げる?」


「なんか癪に障んだよ」


「いっそのこと私たちの魔法の的になってもらえばいいのでは?試したいのもいっぱいありますし」


「今日の昼過ぎまではそうするか。なにか決定打ができるかもしれないし」


「根っこ広げられても困るし、広場の周囲に沿って展開しとくよ。深さは五十メートルくらいで十分かな」


 昼過ぎまでは、あと約3時間。それまでに雅紀たちが圧倒的火力を生み出せるようになるのか、という時間との戦いに変わるのだった。



「エクスプロージョン!!」


「力場生成、前方50メートルまで展開、加速度10メーター毎秒毎秒、ファイア!!」


「重力反転、上空方向に加速。撃ちます!三十秒後着弾予定」


「身体強化・局部!!オラオラオラァ、切り刻まれちまいな!!」


 各々が魔法を撃ちこみながら攻撃を続けること二時間。雅紀たちの魔法の能力は、指数関数的に成長していった。そして、トレントの傷は時間に比例して増えていった。魔力だまりから魔力を吸収して、それを回復に回しても、回復中に受けるダメージが増えてきたのだ。それでも、致命的な傷の再生を優先しなければならないので、仕方がないのである。


 雅紀たちの魔法の技能は、検証の時とは違い、基本原理だの規則など関係なしに、威力と速さと効率を追求すればいいので、成長の速いことといったらそれはもう、カップ麺ができる時間で10パーセントずつ力を上げていく感じである。つまり、1時間で3倍の技量になっていくのである。対峙している方には悪夢である。


 魔法を使い続けることによって、魔力量は増えて一撃に使える量も増えていく。その分だけ、大きな魔法が使えるように、威力が上がるのは当然である。消費量の増加に伴い、吸収量の方も効率化が図られて、魔力の流れがあれば、そこから直接引っ張て来て吸収する、という頭のおかしい方法を取り始めた。この世界の魔法使いならば、魔力の流れに身を置けば自然に回復する量も増え、それで満足するのである。魔力の流れを油田に例えると、一般の魔法使いは、油田国特有の安いガソリンで満足して車を走らせるのに対して、雅紀たちは、人様の油田に勝手にパイプを突っ込んで、そこから原油を引き出し続けたままで車を走らせている状態である。ほんとに暴発させかねない方法である。しか、本人たちは気にもせずに魔法が使い放題だ、くらいの感覚でいる。


 魔法発動のスピードは、キーワードによって、イメージを全く必要とせずに発動できるようになり、近接戦闘しながらでも、ほとんどの魔法を使用できるようになっていた。複雑な魔法でも工程ごとに言葉にすることで、発動を簡単にした。


 効率にしても、イメージを必要としなくなった今では、一番威力が出た時の魔法を発動させようとしているのだから、ほぼ最高の変換効率であるといえるだろう。物質を生成せずにエネルギーに変換させれば、効率は上がる。複数の魔法の同時発動で、さらなる威力が出るようにもなった。


 そんな、暴走しながらやばい方向に成長した四人の攻撃は、トレントだけでなく周りの森にまで被害を出し始めた。



 ここで使われた魔法の説明をしていく。


 雅紀のエクスプロージョンは空気中、地表、地中の水分を、熱エネルギーも利用して、クーロン力による結合を切り、水素分子と酸素分子に戻して、ふぁいあ、である。単純だが、魔力で燃料を生成するより比べ物にならない効率を誇る。しかし、威力を出すには目標物を気体の中心に置かなければならず、規模がとんでもないことになる。どこぞの”ジョン”には負けるが、一帯を吹き飛ばす。


 静と朱莉の魔法は、静が考え、弾になる物体を上空まで上昇させる。そして、重力に加えて下向きの力場を発生させて加速させてぶつける物理攻撃である。質量が小さくても、落下の初期高度を上げれば威力は補える一方で、方向の変更がしづらく、垂直に落とすのが望ましい。静の発動させた魔法では、上空100メートルまでもっていけば、地表では質量に関わらず毎秒200メートルである。マッハ0.5も出るのである。細ければ目標に突き刺さり、太ければ目標が飛ぶだろう。


 康太の身体強化は、魔力を流してただ活性化するだけでなく、骨も筋肉も強化することで、今まで以上に体を扱き使っても障害が出ないようにしたものだ。筋肉を90パーセントまでリミッターをはずして使える体にする。


 ほかにも使っていたが、どれもこれも被害を拡大するのにとても便利な魔法だった。


 そんな環境破壊の代名詞になりかねない魔法を楽しんでいたが、その時間を終わりを迎えようとしていた。


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