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あやかし心療室  作者: 唐澤和希/鳥好きのピスタチオ
サトリの少女と心の声Ⅱ
21/23

サトリの少女の決意

「あ、そうだ、リナさん。実は明日、龍神様が来てくれることになったんです」

 と粟根が何気ない調子で言った言葉に、いつも通り受付に座っていたリナは、目を瞬いた。

「龍神様って、えっと、私の力を効かないようにしてくれるっていう……!?」

「はい、そうです。リナさん、お気持ちの準備は大丈夫そうですか?」

 と、粟根がいつもの優しげな微笑みでリナを見る。

 粟根の心の声をリナが聞き取ることができないのは、龍神様の加護のおかげ。

 だから、リナが問題なく普段外で生活するために龍神の加護をリナが住むところ一帯にばらまいてはどうかと言う話を、この心理相談所に最初にきた時に言われたのだ。

 妖怪という存在すら信じ切れていないリナにとっては、神様の力なんて到底信じられるようなものではなかった。

 でも、このあやかし心理相談所に通うようになってから、三ヶ月経過している。

 その間に、様々なあやかしと触れ合う機会があった。

 そして、そう言う存在が確かに存在するのだと、もうリナは、なんの抵抗もなく当たり前に認めることができる。

 それはつまり、最初は不信感を抱いていた龍神様の加護とやらを受け入れる準備ができたということだった。

 龍神様のご加護なるものが街全体に降り注げば、確かにリナにとっては有難いことだ。

 人の心が読み取れなくなれば、以前と変わらない生活が送れるはず。

 混乱した時も、力が暴走することがない。

 そう思うだけで、どんなにか安心できる。

 だが、そうは分かっているのに、リナは複雑な気持ちだった。

 それでいいのだろうかと、縋るように目の前の粟根を見ようとして、どうにか思いとどめた。

 ここで、いつものように粟根に頼っていては、何も変わらないような気がした。

 リナは小さく息を吐き出すと、頷いて、「わかりました。来週ですね」と、どうにかそれだけを答えた。




 そして次の日。龍神様がやってくるという約束の時間まであと5分。

 最初こそ龍神様と言われても、正直よくわからない存在だったが、ここで働くうちに龍神様の偉大さというか、すごさが、他の妖怪やあやかしたちの話ぶりで、リナは嫌になるほど理解していた。

 この前やってきた、雷を自在に操るなんてことができる雷様だって、龍神様には一目を置いている。

 リナはなんとも言えない気持ちで、今か今かと待っていて、約束の時間はあと数分だというのに、それが異様に長く感じた。

 けれども、そわそわしているリナとは違って、相変わらず粟根はいつも通りの落ち着いた様子。

 いつもの余裕の粟根をリナが羨ましく思っていると、


―――シャンシャン。


 僅かに、軽やかな鈴の音がリナの耳に響いた。

 その音はどんどん大きくなってきて、そのうちシャンシャラなる鈴の音に合わせて、歌まで聞こえてきた。

 どんな歌なのかはよくわからない。人の言葉ではないことは確かで、ただその独特のメロディーはどこか人を懐かしくさせる。

 続いて、ドンドゴドンと太鼓の音まで響き渡ってきて、それはまるで地響きでも起こったかのように、ズシンズシンと建物を揺らす。

 リナは、何が起きているのかわからないまま、盛大な音楽に揺れる心理相談所の受付室に座っていた。

どうにか平静で入られたのは、近くで粟根がいつも通りの様子で落ち着いていたからだ。

 これからなんだかすごい何かが来るのだという確かな予感。

 それに対する畏怖と、何とも言えない高揚感を抱えたまま、リナは動けない。

 そして、とうとう扉は開かれた。

 間違いなくこれからあの扉をくぐるのは、龍神様と呼ばれる存在なのだとリナは思った。

 そしてその扉から目が離せない。

 どんな存在なのだろうか。


 大きな空を飛ぶ蛇のような神様なのか。

 それとも、白いひげを生やした威厳に溢れたお爺さんの姿かもしれない。

 もしくは……といろいろ考えて、扉に注目していると、しかしそこに現れたのは、リナとそう変わらないような背丈の少年の姿だった。

 でも、その姿が見えた瞬間、一瞬にして透き通るような空気が待合室に広がって、目の前の彼が特別な存在だということはすぐにわかった。

 龍神様は、群青色に、白の独特な文様を縫い付けた着物を羽織っている。

 帯は金色。

 顔には『無』という文字が書かれた白い大きなお面を被っていて、どのような顔なのかは確認できない。

 髪は銀色。長く、川のせせらぎのように煌めいている。

 首のあたりは、宝石のように輝くエメラルドの鱗に覆われていた。

 顔はわからないが、美しいと感じた。

 人間の尺度では測れない圧倒的な美。

 まるで荘厳な大自然の中の中に放り込まれたような気持ちにさせられる。

 思わず吸い込まれるようにその少年の姿を見ていると、彼は小さく首を傾げた。

「誰だ」

 と一言。

 その線の薄い体から発せられたとは思えないほどの、圧を感じさせる声だった。

「最近雇った者です」

 と、粟根が応えて、慌ててリナは姿勢を正した。

「あ、えっと、ここでアルバイトをしている者です。佐藤リナと、も、申します」

「人の子を雇ったか。いや、あやかし混じりか。まあいい」

 少年は、『無』という仮面のままそれだけ言うと、後ろを振り返る。

 少年の姿に見入ってしまっていたリナは気づかなかったが、彼の後ろには、きらびやかな和装を身にまとった老若男女の群れが、膝を折って頭を下げていた。

 大太鼓や鈴に笛などを横に置いているのを見ると、先ほど聞こえてきた音楽を鳴らしていたのは、彼らのようだった。

「良い。下がれ」

 少年はそれだいうと、頭を下げていたものが、「は」と短く答えて、スーッと消えた。

 本当にスーッと姿を消した。

 この心理相談所の生活にも慣れて来たし、ちょっとやそっとの不思議には慣れたつもりのリナだが、思わず息を飲む。

「では、いつもの部屋に行きましょうか」

 粟根はそれだけいうと、スタスタと奥の扉へと向かって歩いていく。

 龍神は、その後ろをスーと、全く足を動かさずに進んでいって、リナも慌ててその後を追った。



「久しいな、粟根」

「はい、お久しぶりですね。龍神様もお元気そうでなによりです」

 リナなんかは、まだあの龍神様が放つ気に圧倒されているというのに、粟根はいたっていつも通りの振る舞いだった。

 震える手つきで、なんとかお茶をテーブルに用意したリナは、急いでこの場から退席しようとしたところで、「あ、リナさん、ここにいてください」と粟根に呼び止められる。

 正直泣きそうになったが、そういえば自分には、龍神様にお願い事があるのだったと思い出す。

 リナは、「はい」と小さく返事をすると、粟根の隣に座った。

「なぜ」

 抑揚のない声で、龍神が訪ねる。

「実は、今日、龍神様にお願い事があるのですが、それが彼女に関することなんですよ」

 粟根がそういうと、先ほどまで『無』とかかれていた仮面に、「不満」の文字が浮かんだ。

「まさか、嫁とりか。余の妹達を振るつもりか」

「いえいえ、まさか。彼女は、まだ高校生ですよ。それに、龍神様の妹様方との縁談は、何度もお断りしてる話ですし」

 とあっさりと答える粟根だが、まだ高校生、妹様方との縁談、という言葉に、リナは何故か少しばかりきゅっと胸が痛んだ。

 そうリナが、チクチクと痛みだす胸に戸惑っていると、周りの空気が変わった、ような気がした。

 緊張感のようなものが漂う。

「断ることを許した覚えはない」

 と怒気をはらんだ声色が仮面から聞こえて来て、リナは危うく失神しそうになった。

 周りの空気までピンと張り詰める。

「ハハ、相変わらずですね。龍神様は」

 とこの空気をまったく読んでいない勢いで粟根が、そう言って笑い声をあげた。

 リナは死んだと思った。きっとなんか神様に失礼をした罰で、この場にいる私達は死ぬに違いないと思った。

 それほどまでに龍神が放つ気のようなものは、おかしがたいものだった。

 だがしばらくして……


―――ハッハッッハッッハッハ。


 と建物ごと震わせるような大笑いが聞こえて来た。

 最初地震かと思ったリナだが、よく見れば声の出所は龍神様だ。

 体を震わせて、何がツボったのか膝を叩いて笑っている。

 いつのまにか龍神様がつけていた仮面が、「笑」になっていた。

「うむうむ、やはりそちは面白い」

 一通り笑い終わった龍神様は、そう言った。

 その声はどこから気が抜けて普通の少年らしい声にも感じる。

「よいよい、願いがあるのだったな。そんなことを言うのは、初めてではないか? お主には世話になっている。よい、言え」

「ありがとうございます。実は彼女は、妖怪サトリの血を引いておりまして……」

 と粟根はリナについてのこれまでの経緯などを説明ていく。

「……ですので、この街全体に、龍神様の加護をかけてもらいたいんですよ」

 と、粟根が現在のリナの事情を最後まで話し終わると、龍神は肘掛けに肘を置いてそこにもたれかかるようにして体重を傾けて粟根を見る。

「お前な、余の加護を何だと思っている。そんな便利道具みたいな扱いしよって」

 と呆れたような声が、「呆」と書かれた仮面から漏れてきた。

「いやいや、僕はいつもさすが龍神様だなぁと、とても敬ってますよ」

「言いよる」

「引き受けていただけますか?」

「ふむ。そうだな。たしかに余はそちに、借りがある。気に入ってもおる。だが……その娘には、なにもない。その娘のためには動けぬ」

「いいえ、龍神様は、彼女に借りがございますよ。彼女は、先日ご依頼された雷様のご夫婦の件を手伝ってくれました。それになにより、リナさんは龍神様の従兄妹殿の心を救われてます」

「よの従兄妹?はて、そのような話は、聞いておらんが……。いやまてよ、まさか。陸あがりの……」

「そうでございます。龍神様がかねてより心配しておりました陸あがりの人魚のことでございます。代償で声を失ったあのお方は、こちらにいるリナの心を読む力で心を救われたとおっしゃってました」

「なんと……そういうことか」

 そう言って龍神の仮面は驚の字に変わる。

 そして、その仮面の文字を「考」に変えると、リナを見つめた。

 ただじっとリナにその仮面の顔を向けるばかりの龍神様に、リナは唾をゴクリと飲み込んだ。

「そうか。余の筋の者の心を救ってくれたか。あれは、見目麗しい自慢の従兄妹殿であったよ。人間に騙されあのような愚行を犯しさえしなければ、大海で幸せに暮らせていたものを。全く愚かなことをしたものだ。きっと今頃後悔しておろう」

 その言葉に、リナは龍神様に対する恐怖を忘れて眉根を寄せた。

 リナはお梅の心に直接触れて知っている。

 彼女は、愛する人と一緒にいたことで幸せだったと心から言っていた。

 大好きな人との生活を宝物にして生きている。

 その道を選んだことを一度も後悔などしていない。

 彼女の行動、選択、想いを、愚かなどとは言わせない。言って欲しくない。

 そう思ったら、自然と口が開いていた

「お梅さんは、後悔なんてしてません! お梅さんは、愛する人と過ごす一日のためなら、千年地獄にいようと構わないと言ってました! 時が戻って、もう一度人生を選択できることになったとしても、お梅さんは安穏と生きる幸せより、辛い別れが待っていたとしても、愛する人と一緒に居られる幸せを選ぶと思います! 彼女の行いと愚かだと決めつけないでください!」

 そう噛み付くように言った後に、あ、やばいとリナは静かに思った。

 勢いに任せて浮かせていた腰を、ゆっくりと椅子に預け、握りしめていた拳を後ろに隠す。

 終わったと思った。そう思ったのは本日二度目。

 一度目は厳格そうな龍神様に、粟根が気楽な態度で接していた時。

 ただ、その時は許された。

 それは多分、粟根とは以前から付き合いがあるからこそ許されたのだ。

 でも、リナとは初対面だ。

 さあと青ざめた。

 リナが、顔を下に向けて、宣告を待っていると……。


―――ハッハッハッハッハ!


 と、また、龍神様の豪快な笑い声が響き渡った。

「え……」

 固まるリナの前で、龍神はひたすら笑い続け、そして頷いた。

「なかなか、面白い娘だ。良き良き」

「そうでしょう? いい子なんですよ」

 と粟根が付け足すと、龍神は、二度三度と頷いてリナを見た。

「わかった。ここら一帯に加護をかければ良いか」

「え……それって、その、力を貸してくださるってことですか?」

「そう言ったつもりだったが」

「あ、そうですよね」

 なぜ先ほどのやりとりで、そんな気になったのか、考えが追いつかない。

 ちらりと粟根の方を見れば、やりましたね、とでも言いたそうな顔で笑っている。

 前を見れば、「愉快」と書かれた仮面を身につけた龍神様がいる。

 どうしてそういう気になったのか、いまだにリナにはわからなかったが、このチャンスを不意にはできない。

 リナはゴクリと唾を飲みこんで口を開いた。

「あ、ありがとうございます。では、その……」

 と言って、何故か、よろしくお願いしますの言葉が続かなかった。

 それで本当に良いのかと。そう自分に問いかける声が聞こえる。


 本当にそれでいいのか。

 いいや、良いはずだ。

 みんなに加護がかかれば、心の声が無理やり自分の中に入ってくることもない。

 また学校で授業を受けられるようになる。

 一人で買い物にだって行けるようになる。

 たくさん人がいるところを避けてコソコソしなくたっていい。

 もう怖がらなくていい。

 人の気持ちなんて、知らずにいられるのならその方がいいし、それが普通なことで。

 龍神様の力を借りれば、私は普通に戻れる。自然に暮らせる。

 以前のような自分に、戻れる。

 ……でも本当に、そうだろうか。

 人の心を読めなくなればいつも通りに戻れるんだろうか。

 以前のような自分でいられるだろうか。

 だって、もうリナは知ってしまった。

 男の子たちの下心を、仲良くしてくれていると思っていた女の子達の嫉妬心を。

 例えどんな人であろうと、心の中には、人には言えない気持ちがある。

 みんなそれを表には出さずに生きている。

 中には、その気持ちを自分自身も認めたくなくて、自分すら欺むくこともある。

 寂しいと我儘を言うことも、恋しいと泣くことも、好ましい人に触れたいと思う気持ちも、怒りの感情だって、それは、とても自然な感情で、当たり前のことなんだ。

「すみません、やっぱり、その件は少し待ってもらえませんか!」

 リナの大きな声が、室内に響いた。

 思いの他に大きくなってしまった自分の声に驚きつつも、でも、リナは先ほど見付け出した自分の答えに間違いはないという気持ちで、再び口を開く。

「私、この件は、自分でどうにかしてみたいんです。ですから、龍神様の加護は、待っていてもらいたい、です」

 先ほどの声よりは静かに、でも淀みなくそうリナが述べると、龍神様の仮面に、また無の字が張り付いた。

「余を待たせる気か。今日はたまたま気が乗っただけかもしれぬ。次の時は力を貸してやるなどとは言わないかもしれぬ。それでもいいか」

 それはもしかしたら、もう二度と、龍神様の力を借りれないかもしれないということだった。

 でもリナは、迷うことなく頷いた。

「それでも、構いません。……これは、私の問題なんです。多分、龍神様のお力を借りれば、人がたくさんいるところにいっても力を暴走させなくて済むと思います。でもきっと、それは根本的な問題の解決にはならないんじゃないかと、思うんです。力が暴走しないとしても、私はきっと人がたくさんいるところにいけば、恐怖を感じてしまう。怖いと、感じてしまうんです。私は、それをどうにかしたい。そして、どうにかする方法が、今、なんとなく少しずつだけれど、わかってきているところなんです。それをこのまま大事にしたい。私、そう思っているんです」

 リナのその言葉には、強さがあった。

 粟根がそんなリナをみて、眩しそうに目を細める。

「そうですか。わかりました。私は、リナさんの気持ちを尊重します」

 そう粟根がリナに言ったあと、改めて龍神様へと顔を向けた。

「ということで、龍神様、せっかく時間を割いてもらったのですが、そういうことなので、この件は聞かなかったことにしてください」

「良き。余もなかなかに楽しめた」

「先生、それに龍神様も本当にすみません……私」

「いいですよ、リナさん。リナさんがたくましくなられていて、私は嬉しいぐらいです。でも、もし自分で頑張ってみても、やっぱり人がたくさんいるところだと力が暴走して辛い思いをするというのなら、龍神様の力を借りることも考えておいてください。力の暴走が起きないという安心感があるだけでも、違うと思いますから」

「はい、ありがとうございます。あ、でも、それは龍神様に悪いような」

 なんだかいつでも龍神様にお願いすればオッケーみたいなノリで粟根は話しているが、先ほど龍神本人は、気分が乗らなかったら断るとはっきり告げていた。

「龍神様は何だかんだお優しい方ですから、いつでも受け入れてくれますよ。大丈夫です」

 と粟根が笑顔で請け負うと、龍神が、愉快の仮面で「ぬかしよる」と呟く。

 そんな一人と一神のやりとりに、思わずリナは笑顔をこぼした

「先生、龍神様、ありがとうございます」

 そう心の底から、リナ思った。

「ではリナさん、私はこれから龍神様の相談を伺うので、受付室で待っていてください」

 粟根のその言葉に、リナは「はい」と頷き、相談室を後にした。


 そしていつもの受付室に戻る。

 その見慣れたテーブルに顔を突っ伏して、先ほど自分が下した決定のことを思い出していた。

 粟根は応援してくれたし、龍神様は思ったよりも優しそうな人だったけれど……。

「はぁ、なんか勢いでお断りしてしまったけど、もったいないこと、しちゃったかなぁ……」

 とはこぼしつつも、不思議とあんまり後悔をしていない。顔の表情もゆるゆるだ。

 この相談所に来た時は、確かにもう手っ取り早くこの力から解放されたくて、以前のように戻りたくてしょうがなかった。

 でも、今はちょっと違うのだ。

 この力さえも自分の個性だと認め始めている。

 お梅さんの心を聞けたのもこの力のおかげだ。

 それに、人の心の声の嫌悪感が薄れてきた。

 人は誰しもが、人には聞かれたくないものを抱えている。

 それに、リナが聞き取っている心の声すら、本当の心とは言えないんじゃないかという気がしているのだ。

 河童の親子の時も、榊君も、雷様の時も、そうだった。

 人は自分の心を守るために、自分すらも騙しながら、生きているんじゃないだろうか。

 大事な部分を、もろい部分を守るために……。

 そう思うと、なんだか、とっても、いじらしいような気がしてくる。

「そうだよ……これでよかったんだ。それに街全体に龍神様の加護って、なんか怖いっていうか……あれ、でも加護っていいことなんだよね? 町の人にとっては、むしろいいことだったのかな……?」

 と、なんだかんだとリナはこぼしながら、でも先ほどの自分が下した決断にやっぱり心は晴れ晴れとしていた。




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