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蒼空の竜騎士  作者: 黒影たかし
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05話 はじめての友人

 メルと一緒に狩りに出たシンは、その後は毎日メルに乗って色々な場所を飛び回っていた。


 山の麓の森の中は危険が多いので、人里に近い場所で地上に降りて山菜を探すシン。毎日肉三昧の生活に、かなり嫌気がさしていた。


(うーん、山菜取りなんてやった事無いからなぁ~ どれが食べれるのか全くわからん)


 元々山菜の知識なんて無いシンは、どれが食べられるのか全く見当が付かなかった。


【シン? 食べられそうな草は見つかった?】

【いや・・・わかんないや、それに俺の居た世界とはまったく違うから、見ても無駄かな】


【そっかぁ~ 残念ね】

【いっその事、何処か農家の人族に分けてもらうかな・・・・肉と物々交換なら、なんとかなるかも】


【そうねぇ~ 人族って・・どんなお肉食べるのかしらね?】

【・・・まてメル! 俺が今まで食べていたのは?】


【あははは、だってシン、好き嫌い無くなんでも食べるから】

【・・・・お、おまえなぁ~】


 今迄、メルの狩ってきた肉を食べて、お腹を壊した事が数度・・・・その度にソフィーが癒しの力を使ってくれていたが・・・ひょっとしたら、人族には毒でしかないモンスターとかも食べさせられていた可能性がある。


【でも、シンが今まで食べて、一番美味しくてお腹を壊さなかったお肉なら良いんじゃないの?】

【まあ確かにね・・・ナントカ巨鳥の肉とか良いかも、鳥だから人族はなかなか狩れないだろうしね】


【うんうん、じゃあ決まりね、何羽狩る?】

【一羽でいいよ、今日の夕食分は既に確保してあるから、人族と交換するなら一羽で十分】


【はぁ~い じゃあ行くね】


 メルは翼を羽ばたかせると、ぐんぐん高度を上げていく。


 森の上で獲物を狙って旋回しているガガド巨鳥を、上空から一気に急降下して簡単に捕まえるメル。片足で体を捕まえ、もう片方の足で首をヘシ折る。


【一丁上がり!】

【流石メルだ】


 ガガド巨鳥をもって人里へ行こうとして、ふとシンはある問題に気が付いた。


【そういえば・・・こっちの人族と俺、言葉通じるのだろうか?】

【え? 母様から念話石貰ったから大丈夫だよ】


【そうなの? これってドラゴン種と話す為の石じゃないの?】

【あ~ それって元々は翻訳魔石なのよ、ドラゴン種は特殊で念話で会話するから、念話の機能を付け加えた物なの。私達古代竜は生まれた時から、その念話石と同じ機能を魔力で使えるから問題ないけど、他のドラゴンは人族の言葉を理解できないので、その石で翻訳して追加機能で念話出来る様にしたのよ。ドラゴン以外の種族なら、念話は必要ないけど、普通にその石が翻訳してくれるわよ】


【なるほど・・・・流石異世界、便利グッツに溢れているな】


 そんな会話をしているうちに、シンとメルは人族のエリアへと侵入する。


(これは麦かな?)


 広がる穀倉地帯の上空を駆ける二人。


【よし、あそこの家にしよう】

 シンは一軒の農家に目をつけた。その家の横には畑があって、野菜を沢山作っていそうだ。


 畑の規模からみて、自分達で食べる為の野菜畑だと思われた。


 家を中心に、ゆっくりと旋回しながら徐々に高度を落としていく。家の前には小さな子供が二人ほど遊んでいたが、こちらに気が付くと指をさしている。


「お~い!」

 シンは子供たちに手を振りながら安心させる様に声を出す。


 子供達もシンに手を振りかえしてきた。しかし、家の横の畑から物凄い勢いで大人が走ってくると、子供を抱きかかえて慌てて家に入る。


(まあ、いきなりドラゴンが現れたら、そういう反応するだろうな・・・)


 メルはホバリング体制に移行し、家の玄関から20メートル程度の場所に、ゆっくりと着地した。


【メル、一応警戒してくれ、いきなり攻撃されても人は殺さない様に、威嚇だけにしてくれ】

【はぁ~い わかったよ】


 メルと会話しながらメルの背から降りるシン。


「すみませ~ん! ちょっとお願いがあるのですがぁ~~!!」

 そう叫びながら、ゆっくりとシンは玄関に近づいていく。


 家の中は静まりかえっていた。


 シンはいつでも腰の剣を抜けるようにして近づいていく。


(剣なんか使った事ないから、ただの飾りだな・・・)


 玄関の前まで来ても、誰も出てくる気配は無い。


『コンコン』

「すみません! ちょっとお願いがあるのですがぁ!!」


 ドアをノックすると、扉の向こうから声がした。


「帝国の竜騎士が何の用だ! ここには金なんてないぞ!!」

「帝国? いや僕はただの通りすがりの人族です、怪しい者ではありません。野菜を分けて貰えないかと思って。もちろん無料とは言いません、お肉と交換しませんか?」


「・・・・・・・・」

 暫く沈黙が流れる。


(ふぅ・・・ダメかな・・・)


「え~っと ガガド巨鳥って知ってます? 結構美味しいお肉なんですけど・・・野菜と交換しませんか?」

「・・・・・・本当に・・・帝国の竜騎士じゃないのか?」


「帝国ってここの国なんですか? すみません、田舎者なのでよくわからなくて」

「・・・・・乗って来たのはドラゴンだろ?」


「まあ、そうですけど。ドラゴンと一緒に住んでいるぐらいの田舎者でして、人族の社会に疎いんですよねぇ~」


 そこまで言うと、ゆっくりと扉が開いた。


 まだ20代と思われる男が一人立って居る。手には農作業で使うフォークの様な先の尖った器具をこちらに向けていた。


「それで 何の用だって?」

「野菜を分けて頂けないかと思いまして」


「野菜? 何が欲しいんだ?」

「逆に何があるのでしょうか? こちらは、アレなんですが」


 シンはそう言って後ろに居るメルの足元にあるガガド巨鳥を指さす。


「なんだあれは?」

「えっと、ガガド巨鳥? 知りませんか?」


「知らんな」

「肉は焼くと結構美味しいですよ。 お~いメル! そいつをこっちに持ってきてくれ」


 メルはカプッとガガド巨鳥を咥えると、ノシノシと歩いてシンの後ろに降ろすと、元の位置まで戻る。男はフォークをこちらに向けているが、よく見ると足がガクガク震えていた。


(まあ、こんなに間近でドラゴンを見た事なんて無いだろうからな)


「こ、こいつは・・・ガトービックバードか?・・・・おいおい、Bランクのモンスターじゃないか!」

「え? そうなの??」


【おいメル! 何がガガド巨鳥だよ!】

【あはは、違った? まあ名前なんてどうでも良いじゃん】


「あんた・・・これを売れば素材だけですごい金額になるぞ」

「そうなんだ・・・なら良かった、これで野菜と、出来れば調味料も分けて欲しいんだけど」


「・・・・あんた本気で言ってるのか?」

「うん」


 男は信じられないって目でシンを見ている。



「ほら、ドラゴンと一緒だと肉には事欠かないんだけど、野菜が食べれなくてさ」

「・・・・・」


「そういう訳で、野菜とコレを交換お願い」

「わかった、本当に野菜と調味料とコイツを交換してくれるんだな?」


「もちろん!」


 男は途中から実に機嫌が良くなり、沢山の野菜と調味料をもらう事が出来た。風呂敷の様な入れ物まで貰い、家の中に居た奥さんや子供達とも会話しながら、久しぶりに人とのふれあいを楽しんだ。


「それにしても、流石はワイバーンだな、あのモンスターも一撃か」

「へ? あの娘はワイバーンじゃないよ、古代竜」


 農家の男はメルの事をワイバーンと思い込んで居るらしい。


「おいおい、冗談だろ? 古代竜なんて、S級どこじゃない伝説のモンスターだぞ?」

「そうなの? でもあの娘の鱗赤いでしょ? ワイバーンは緑だって聞いてるけど」


「・・・・・・・」

「人族からはレッドドラゴンって言われてるって」


「レッド・・・ドラゴン・・・・あのアルバント山にいる、凶悪極悪の伝説の邪竜だと?」

「え? そうなの??」


【おーいっ! メル聞こえるか?】


 シンは念話でメルと会話する。


【聞こえてるよぉ~】

【随分とお前たち評判悪いぞ】


【えぇ~? 私しらなーい 母様が何かやったのでは?】

【そっか、まあ良いけど】


「あんた、大丈夫なのか? 昔レッドドラゴンの怒りに触れた村が丸ごと一つ、ブレスで焼かれて焼け跡も残らなかったって話だぞ」

「へぇ そうなんだ、まあ怒らせると怖いけど、それほど理不尽なドラゴン達じゃないよ」


「そ、そうか・・・」

「そんな事より、また来ても良いかな?」


「俺は構わないぞ、あんなモンスターを貰って、野菜だけなんて申し訳ないからな」

「良かった! 俺さ、人族の事あまり詳しくないから、色々と教えて欲しいんだ」


「そうなのか?」

「ずっとドラゴンと山で暮らしていたからね」


「なるほど・・・・それもそうか」


(やった! 人族の知り合いが出来た!!)


「ねえねえ、おじちゃん? 私もドラゴンさんに乗ってみたい!」


 突然農家の娘がそう言ってきた。歳は5歳ぐらいだろうか。


「えっと・・・それはちょっと難しいかな」

「何を言ってるのあなたは!」と母親にしかられている子供。


【私は別に構わないわよ】


 突然のメルからの念話。流石はドラゴンの聴力、家の中の会話も聞こえるらしい。


【そうなの?】

【大人は無理だけど、その子達はほとんど魔力が無いから、不快じゃないわ】


 しかし、流石に他人の子供を乗せて空を飛ぶことは、ちょっと考え物なので今回は止める事にした。


「そうそう、まだ自己紹介して無かったな、俺はテトだ」

「俺はシン、じゃあまた手土産持って寄らせてもらうよ」


「本当か? こっちは何時でも歓迎だ」


 その後テトの家を後にして、山の洞窟へと戻ったシン。初めての人族の知り合いが出来て、上機嫌だった。




――――夕食時


「し、しまったぁ~~~!!」

「どうしたのシン?」


「せっかく野菜を貰ったのに・・・・調理器具が無い・・・・」


 鍋も何も無いので、野菜を茹でるとか、炒めるとか出来ないのだ。生で食べるしかない。


「くっ・・・このキャベツもどき・・・これぐらいなら生で食べれるかな・・・」

 バリバリとキャベツの様な物を食べるシン。


「くっそぉ~  マヨネーズでもあれば、生でも色々食べれるんだけどなぁ~」


 現代社会の野菜と違って、品種改良されている訳では無いので野菜もかなり青臭い。


「なんか・・・シン牛みたい、草をムシャムシャ食べて喜んでいるなんて」

 

 メルにそう言われても、久しぶりの生野菜をそれでもなんとか楽しんだシン。今度テトの家に行ったら、モンスターの素材のお金で料理器具を買ってもらおうと心に誓ったのであった。

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