02話 転移の理由
誤字脱字が多いと思われますが、大目に見て頂けると助かります。
もし、この物語を気に入って頂けたなら、ブクマと評価して頂けると嬉しく思います。
リアン大陸中央部に位置するエスバンヌ連峰。
その中でも一番大きな山、アルバント山の頂上付近にある洞窟、そこで藤崎信二は四日目の朝を迎えていた。
「おはよぉ~ シン」
「おはよう、メル」
枯葉を山の様に積んだベッドを起き上がると、大きく伸びをするシン。横を見ると、そこには真っ赤な鱗の体長5メートル程度の大きさのドラゴンがニコニコこちらを見ている。
いつも彼女は俺と一緒に寝ている。最も、ドラゴン姿の彼女が俺の横で寝ているだけなので、一緒に寝ると言う表現が正しいかはわからない。
(随分と懐かれたな・・・)
洞窟の中を歩き、違う部屋へと移動する。そこには大きな泉があり、綺麗な水が湧いている。顔を洗いながら、信二はこれまでの事を考えていた。
会社の同僚と三人で、休日にドライブがてら観光スポットにある鍾乳洞へと遊びに来た。そして地震が起きて、天井が崩れ・・気が付くとここに居た。
(異世界転生・・・・いや、転生じゃないよな、俺は死んだ訳じゃ無い・・・異世界転移?? そう言うのか?)
目が覚めた俺は、ソフィーリアと名乗る女性に助けられたと知った。
しかし、彼女は言葉を喋らずに、俺の頭の中へと直接話しかけて来た。念話ってやつだ。そして次に現れた巨大トカゲ・・・もとい、ドラゴンに驚いてまた気絶してしまった。
(それにしてもドラゴンとは・・・・)
次に目覚めた時、巨大ドラゴンの姿は無く、15歳ぐらいの美少女が俺の横に居た。ソフィーリアと同じ様に真っ赤な髪をして、その少女も美しさは神秘的と言えた。
その少女はメルフリードと名乗り、驚かせた事を詫びて来た。
常況を把握出来ない俺に、ソフィーリアは俺を助けた時の経緯を説明してくれた。
最初はなんの冗談か、テレビの企画か何かで騙されているのかと思ったが、目の前でドラゴンの姿に変身したメルフリードを見て、今起きている事が現実だと思いしらされた。
俺はどうやら異世界へ迷い込んでしまったらしい。
ファンタジー小説は俺も嫌いでは無かったので、それなりの知識はあるつもりだ。最初はゲームの世界へ迷い込んだパターンかと思ったが、ステータスなる物は存在しない事がわかった。
レベルとかもある訳では無く、今現在わかっているのは「魔法」がある事。
「ドラゴン」の様なファンタジー定番の生物が居る事、それぐらいだ。
俺はこの四日間、この洞窟から出ていない。従ってこの世界の事をまだほとんど知らなかった。ここの主であるソフィーリアとメルフリードから、この世界の事を聞いただけの知識だ。彼女たちは驚くことに、人間の姿に変身する事が出来る。
ドラゴン種の中でも、最上位種の古代竜の血を引いているそうだ。厳密には古代竜では無く、古代人竜と呼ばれているそうだ。
古代竜の亜種だと言っていた。
「ねえねえシン? 今日は何が食べたい?」
顔を洗っている俺の所にメルフリードがやって来る。今の彼女は人間の姿になっている。
15歳ぐらいの美少女で、ソフィーリアと同じ様に白い薄い布を体に巻いているだけの恰好。ちなみに俺も、腰にバスタオルの様に布を巻いているだけ。
ここは活火山の洞窟なので、それでも熱い位だ。
メルフリードの顔はソフィーに良く似ていて、彼女の娘だと言われて納得した。
(あの若さで子持ち・・・・・いやいや、ドラゴンの年齢なんてわからないしな・・・・)
メルを見ながら自分の考えに更けていると、メルがじっとこちらを見ている事に気が付いた。
「えっと、ご飯ね? ん~ そうだなぁ~ 何があるかよくわからないからなぁ~」
「今日は何のお肉が良い? 昨日と同じブラディーバッファローで良い? それとも他の肉にする?」
「う~ん、何でもいいよ・・・それより野菜は無いよね?」
「野菜?? 野菜って何?」
「えっと、食べられる草とか植物・・・かな」
「えぇぇぇぇ?? シン・・・草なんか食べるの?? ブブ・・・それって馬とか牛とかが食べるやつ? マズそう・・・」
「まあ、そうだけど・・・厳密には違うかな、人が食べる草」
「えぇ~? よくわかんない。 人族って草も食べるんだ」
「うん、木の実とかも食べるね」
「へぇ~ そうなんだぁ・・・でも、肉でいいよね? ちょっと狩ってくるね」
そう言って、元気よく駆け出していくメルフリード。
次の瞬間、大きな足音が響き、次に羽が羽ばたく音が聞こえ、彼女がドラゴンになって飛んで行った事がわかる。
「ふぅ・・毎日肉だけだと・・・流石に飽きて来たな」
人間の姿に変身出来ても、彼女たちは基本的にドラゴンだ。生肉を平気で食べる・・・・丸かじりで・・・
最初、牛の様な巨大動物の死体を目の前に置かれて「さあ召し上がれ」と言われた時には、どうしようかと思った。
「えぇ~? 食べないの? この頭が美味しいんじゃない!」
と言って、ドラゴンの姿のメルフリードは牛の様な動物の頭を丸かじりした・・・
目の前でつぶれる頭・・・・
あまりにもグロくて吐きそうになったのは記憶に新しい。
彼女達にお願いして、牙で裂いた肉をもらい、ドラゴンブレスで丸焼きにして食べる。それが日課になっている。
朝、昼、夜と三食肉三昧なので、流石に飽きて来た。
(それにしても、暇だな・・・・ソフィーは居ないのかな??)
俺はこの洞窟から出る事が出来ない。彼女達の話によると、ここは山の中。人間が居る場所までは、歩くと三日経っても辿り着きそうにない。しかも、人間では相手に出来ない様な、強力なモンスターがウヨウヨ居るそうだ。
絶対に洞窟から出てはダメだと言われた。
それに洞窟の外へは、20m以上高さのある縦穴を飛ばないといけない・・・・出たくても出れる訳が無かった。ここがどんな世界なのか興味はあるが、基本的にドラゴンである彼女達は人族の事に詳しくない。
一応国がいくつもあって、よく人間同士で戦争をしているそうだ。
俺がここに飛ばされた理由が何かあると思い、色々彼女達に聞いてみた。
魔王みたいな存在が居るのかと思えば、そんな存在は居ないと言われ、定番の魔王討伐の為の勇者説は消えた。俺は何故この世界に来たのか、まったく理由がわからなかった。
特にやる事も無くボーっとしていると、洞窟に羽音が響きソフィーが帰って来た事がわかった。ソフィーとメルでは羽音の大きさが違う。まだ幼竜のメルはソフィーに比べると体も小さい。
「おかえり ソフィー」
シンが広間に出迎えると、ソフィーの体が光り、みるみる小さくなって人間の姿になる。
「ただいま シン」
そう言いながら、全裸になったソフィーは白い布を体に巻く。
一応見ない様にしながら、しっかりとチラ見をして、シンはソフィーに話しかける。
「何処に行ってたんだい?」
「みつけたわ! あなたが転移してきた原因!」
「マジで? じゃあ俺は戻れるのか?」
思わぬソフィーの発言に、ガッツボーズを取ってしまう。
「・・・・ごめんなさい、ちょっと難しいかも・・・」
「・・・・そうなの?」
ソフィーは俺がこの世界に来た場所を詳しく調べてくれた様だ。この山脈にある山の中腹、そこで俺は倒れていたのだ。
「これを見て」
ソフィーが持ってきたのは、バスケットボールぐらいの大きさの結晶。
「これは?」
「それは天然の魔力結晶なの、つまり魔力が凝縮している石ね」
「魔力が凝縮??」
「この石は、自然界にある魔力を吸収して蓄える性質があるの、最もこれほど大きな魔力結晶を見たのは、私も初めて」
「で、これがどうしたの?」
「あなたが倒れていた場所に、古代文明の転移魔法陣があったの、そしてこの魔力を使い果たした魔力結晶」
「つまり?」
「えっと、順番に説明するわね・・・・・」
古代文明、今から数万年以上前に栄えたと思われる魔法文明。
高度な魔法文明社会が存在していたと思われ、その技術力は現在の比では無く、色々な遺跡が発掘されているそうだ。その古代文明の遺産である「転移魔法陣」が俺の倒れていた場所にあったらしい。
地震で崩れた岩の中に天然の魔力結晶があり、その魔力結晶が偶然魔法陣へ落下、魔力結晶の魔力を吸って魔法陣が起動。
そして、俺が転移してきたらしい。
「恐らく、あなたの居た場所にも、古代文明の魔法陣があったのかもしれないけど・・・今は失われた文明なので、詳しくはわからないわ」
「じゃあ、もう一度魔力を注げば、魔法陣が起動して転移できるのでは?」
「そうなんだけど・・・これほど大きな魔力は・・・私には無いの」
「え? そうなの??」
「この魔力結晶は千年どころか・・・それこそ一万年近く魔力を吸い続けて出来た結晶なのよ」
「一万年・・・・」
「こんなに大きな魔力を持っている生物は、この世界には居ないわ」
「じゃあ魔力結晶を探せば?」
「そうだけど・・・こんな大きい魔力結晶は私も初めて、そう簡単に見つかるとは思えないわ」
「つまり?」
「古代文明の魔法陣を起動させることは、私達は不可能って事・・・・それに何処に飛ぶかもわからないわ」
「じゃあ、俺は帰れない??」
「・・・・・・うん、少なくとも、魔法陣を起動させる大魔力が無い限りはね・・・」
「そっか・・・」
どうやら俺は、まったくの偶然で飛ばされてきたらしい・・・・
そして、帰る手段が無い事にひどく落ち込んだ。
メルが戻って来て、メルの狩ってきた肉を食べる。
「どうしたのシン? 美味しくない?」
「あ、いや・・・そうじゃ無いんだ」
俺が落ち込んでいる様子を見て、メルが心配してくれている。俺がここの世界に来た経緯をメルに説明し、戻れない事を言うと・・・
「えぇ~~~??? シン、帰りたいの? 別にずっとここに居たらいいのに、シンの餌ぐらい私が狩ってくるよ」
「いや、流石にここで一生過ごす訳には行かない・・・・」
そこまで言うと、物凄い怒気がメルから放たれ、俺は喋る事が出来なくなった。
全身から汗が出て呼吸すら出来なくなる。
「どうしてっ?! 私の事嫌い?? ここにずっと居るのがそんなにイヤなのっ?!!!」
「メルフリード、シンが怯えて気絶しそうですよ、威嚇するのは止めなさい」
ソフィーの一言で、メルは俺の状態に気が付いた様だ。
「あっ・・・ご、ごめんなさい・・・・」
すっと怒気が消えていくと、ようやく息が出来る様になる・・・・ドラゴンの殺気とでも言うのだろうか。絶対的強者の放つ圧力に、俺の様な小動物は睨まれるだけで動けなくなってしまう。
「ハァハァ・・・死ぬかと思った・・・いやね、メルが嫌いとかじゃなくてさ、ずっとここに居ても暇だしさ」
「そうなの?? じゃあ、私と一緒に狩に行かない?」
「え? いや・・・怖いモンスターがウヨウヨいるんでしょ?」
「大丈夫だよ、私がシンを守るから! ねっ?」
「狩も良いんだけどさ・・・・人族の居る場所にも行ってみたいかなって・・・・」
「・・・・・人族? やっっぱり、私達と居るのが嫌なんだ」
「いや、そうじゃ無いけどさ、この世界の事をもっとよく見てみたいって・・・・」
「シンのバカっ! 大っ嫌いっ!」
そう言ってメルは何処かへ行ってしまった。
「あれ?・・・なんで??」
思わずソフィーを見る。
「ごめんなさいね、メルフリードにとって、シンは初めてのお客さんなのよ。ここに私達二人以外が居る事なんて、今までに無かったから」
「そうなんだ・・・・」
「だからここ数日、あの子はとっても嬉しそうで・・・それでシンが出て行ってしまうと思ったのね」
「素朴な疑問なんだけど、何故人族の姿に変身できるのに、人族と関りが無いの?」
「私達は人族の姿には成れるけど、それだけよ。今はあなたが居るから人族の姿をしているけど、基本的にはドラゴンのままね」
「なるほど、普段は人族と交流なんて無い訳だ」
「ええ、その通り」
「じゃあ何故俺の事を助けたの? そして面倒まで見てくれるし」
「そうね、それはあなたの魔力資質が私達と波長が合うからよ」
「魔力資質?? 俺、魔力なんて無いけど?」
「・・・・・何を言ってるの?」
「いや、俺は魔力なんて無いし、魔法も使えないけど?」
「・・・・あなたには、立派な魔力があるわよ? それも人族にしては、かなりの魔力量だと思うけど」
「へ? マジで??」
そもそも魔法なんて無い世界から来たので、自分に魔力なんて無いと思っていた俺。
ソフィー達は、俺が異世界人だと言っても、「異世界」この意味を理解していなかった。「異世界」と言う遠くの大陸から転移して来たと思っていたみたいだ。
ソフィーによると俺にも魔力があり、その魔力量は人族としては珍しいほど大きいらしい。
(これってやっぱ! 異世界での勇者様! ってやつか?)
俺にも魔力があって、魔法を使えると知って俺の心は踊った。しかし残念な事に、人族の使う魔法はソフィー達には教えられないと言われた。少し残念ではあるが、魔法が使えるかもと言うことで、俺の心はワクワクしている。
拗ねているメルを呼んで、俺の境遇をもう一度正確に使える事にした。
「魔法の無い科学の世界」それを聞いた二人は驚き、俺の境遇を少しは理解してくれたみたいだ。そして俺がこの世界の事を全く知らないので、人族や色々な事を知りたいと言うと、メルも納得してくれた。
その後メルと仲直りをして、夕食を食べて寝る時間になった。
俺は枯葉のベッドに寝て、ドラゴン形態のメルが隣で丸くなる。
「なあメル?」
「なに?」
「メルってさ、人族と触れ合うのは俺が初めてだろ?」
「うん、そうだよ」
「その割には、こう・・・・嫌じゃないの? 人族と触れ合うのってさ?」
「シンの魔力の波動がね、とっても心地良いの。側に居ると安心するの」
「そ、そうなの?」
「うん、だから一緒に居ても不快じゃないし、本当は人の姿で一緒に寝たいぐらい」
(おっと! マジで? いやいや、嬉しいけどそれはマズイよな?・・・俺の理性的に・・・でも・・・ごくっ)
人間形態のメルは超絶美少女だ、しかも着ている服は布一枚・・・・メルの体は立派に大人・・出るところはしっかり出ている。
俺の理性が持ちそうに無い。
「ちなみに・・・人の姿で寝る事は出来ないの?」
「出来るよ!」
「マジで?!! じゃあ一緒に寝てみる??」
「・・・・・・」
「あれ? どうしたの?」
「シン・・・・今発情したでしょ? やっぱやめとく・・・母様の言う通りね、人族の男は万年発情期だって・・・」
「ぐっ・・・・」
「変な事考えたら、踏みつぶすよ?」
「げっ・・・お、おやすみ」
「おやすみなさい」
そして何事も無く夜は更けて行った・・・・