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蒼空の竜騎士  作者: 黒影たかし
13/46

13話 竜族の使者

新年あけましておめでとうございます^^

これからもよろしくお願い致します。


もしこの物語を気にって頂けたら、

是非ブックマークと評価をお願い致します。


「やっと来たわね」


 領主の館のバルコニーでは、シルフィードとエリスティーナ、ラルが待ちくたびれていた。


 街中から飛び立ったドラゴンは、真っすぐこちらへ向かって飛んできた。シンは上空から領主の館を見る、中庭には多くの騎士が待ち構えているのが見えた。


【メル、あそこの、あの丸い印の中に降りてくれ】

【わかったぁ~】


 中庭には、大きな丸印があり、騎士達がここへ降りろと手で合図していた。空中で静止して、ホバリングモードで垂直降下を始めるメル。


 降下しながら、館のバルコニーに3名の女性の姿が目についた。一人は先日会った領主の娘だと気が付いた。もう一人は茶髪で肩ぐらいの長さの髪。鎧を着て帯剣しているので、騎士だろうと想像がつく。


 そしてもう一人、綺麗なドレスを着て、金髪のロングヘアーが少しウェーブしている。丸印はバルコニーの目の前にある。丁度2階の高さになった時に、金髪の女性と目が合った。


(パツキン きたぁぁぁ!! すっごい可愛い! 誰だろう?)


【シン?!】

【うぅ・・・鼻の下は伸ばしてないぞ!】


 どうやらメルにシンの魔力の揺らぎを敏感に察知されたようだ・・・


 中庭に着地すると、一人の騎士が近づいてきた。


「ようこそ シン殿」

 先日の調査隊に居た騎士だとシンも気が付く。


「先日はどうも」

 シンもメルから降りて挨拶をした。


『本物のドラゴンだ・・・』

『すげぇ~ レッドドラゴンだよ・・・』


 そんな声が周りからチラチラ聞こえる。


 シンはメルに括り付けている荷物を下ろし始めた。


「シン殿? この荷物は?」

「これは僕とメルの荷物です」


「お部屋まで運んでも宜しいでしょうか?」

「ありがとうございます、お願いします」


「おい! お荷物をお運びしろ!」


 恐る恐る、数名の騎士が出て来ると荷物を持って屋敷へと運ぶ。


「その荷物は?」

 シンが一つだけ荷物を自分で持っているので、騎士が聞いてくる。


「これは、自分で持つから大丈夫です」

 

 シンの持っている荷物の中身はメルの服が入っていた。


 メルの荷物を下ろして鞍を外していると、バルコニーに居た3人娘がやって来た。その後ろには、数名の騎士を従えている。更に騎士服を着てロッドを持った魔術師達も居る。


「よく来てくださいました、シン殿、メル殿」

 シルフィードが前に出て挨拶をしてくる。


「今日はお招きありがとうございます」

 シンも丁寧に頭を下げた。


「シン殿、こちらは、エリスティーナ王女殿下です」

「初めまして、エリスティーナ シュバルツ フォン ジラールと申します」


 ニッコリと微笑み、スカートの端を摘んで綺麗なお辞儀をするエリス。


「王女殿下? え? それって・・・・この国のお姫様ですか?????」

「まあ、そういう事になるわね」とシルフィード。


 あまりに驚いているシン。


 しかし、エリスの後ろの騎士達から殺気が流れ出る。


「おい貴様! 王女殿下の前だぞ! 非礼ではないか?! 頭を下げろ!!」

 そう言ったのはエリスの女性近衛騎士の一人。


 後ろの騎士達のシンを見る視線が鋭い。当然と言えば当然の反応である。王女を前に、平民風情が間抜け面をしてボケっとしているのだ。通常なら這いつくばって頭を下げてもおかしくはない。従ってシンの態度はこれ以上無いほどに失礼な態度に騎士達には映った。


「あ、あいや・・これは失礼しました」


 思わずそう口走ったシンではあるが、王族に対する礼儀作法など知る訳が無い。その態度に、イラっときて思わず腰にある剣に手をかける騎士。


 しかし次の瞬間、物凄い殺気がこの場を包み込んだ。当然殺気の主はメルである。


「・・・・??!!!! 王女殿下!!」

 

 近衛騎士が次々と剣を抜いてエリスの前に立ち、エリスを庇う。次の瞬間エリスの周りを障壁が包んだ。殺気に反応してとっさに魔術師が魔法で障壁を張ったのだ。メルの殺気を受けてこれだけ反応できるのは、流石近衛騎士と言うべきだろう。


 普通の騎士なら竦んで動けない所だ。


 剣を構えて騎士達がシンを睨みつけ、障壁を展開していない魔術師が攻撃魔法の準備に入る。緊張が全員を支配する。一触即発の状態となった。



『人族の王の娘よ、我は古代竜族が一翼、赤竜族長ソフィーリアの娘、メルフリードなり。貴様らが不遜を働く人族のオス、シンは我等古代竜族六翼の使者である。その者に危害を加える事はもちろん、侮辱する事は我ら古代六竜族を侮辱するも同義であると心得よ。我等古代竜族は何者にも膝を屈する事は無い。人族の娘よ、何故我等六竜に膝を屈せよと申すのか?』



 メルの心の底に響き渡る様な念話が、この場所に居る全員へ届いた。その声は威厳に満ちており、誰もが膝を屈してしまうほどの重圧だった。


 絶対的な王者の威厳、そう呼ぶに相応しい雰囲気をメルは出している。



「全員、武器を下ろしなさい」

 そう言うと、エリスは真っすぐとメルを見る。


「大変失礼いたしました、赤竜のメルフード殿。我らは古代竜族と敵対する意思はございません」


『ならば、我等古代六竜族の使者に対して、礼節を持って応えよ』


 エリスはシンを真っすぐと見ると、深々と頭を下げた。


「失礼があり、大変申し訳ありませんでした、シン殿」

「いえ、こちらも大変失礼がありましたので、頭を上げてください」


 後ろの近衛達は、メルの言葉に驚いて硬直したままだ。


「メルも、もう良いだろ?」

 シンがそう言うと、メルから発せられていた殺気がスッと消えた。


【ねえねえシン? どうどう? 恰好良かった?】

【ああ恰好良かったよ、お前いつの間にあんなセリフ言えるようになったんだ?】


【あはは、母様からね、シンが困った時のセリフ、何通りか教わったのよ、役に立って良かったね】


 なんとも間抜けな念話が繰り広げられている事を、この場に居る誰も知らない。



 その後は再度自己紹介をして、シンと三人娘だけは和やかムードになるが、他の騎士達はシンの事を畏怖の目で見ていた。


【シン? お腹すいちゃった!】

【そうだなぁ~ 何か食べ物あるのかなぁ?】


「シン殿、こちらへ」


 シルフィードがそう言って屋敷へ案内しようとするが・・・・


「あ、すみません、出来ればメルに何か食べ物を食べさせたいのですが・・・・」

「わかりました、準備は出来ています」


 シルフィードは騎士に指示を出すと、家畜の豚と牛を二頭ずつ連れて来た。


【メル? それで足りるか?】

【うん、そうだね、大丈夫だと思う】


 シンは中庭にある天幕を見ると、シルフィードに訊ねる。


「あの天幕ってメルの為ですか?」

「ええ、そうです、メル殿の寝床にと思いまして」


「じゃあ、あの中に家畜を繋いで、あとは全員天幕から出てもらえますかね? 出来れば出来るだけ離れた方が良いかも・・・」

「それは構いませんが・・・」


 シルフィードは不思議そうな顔をする。


「えっと、メルの食事姿は・・見ない方が、騎士さん達の精神衛生上宜しいかと・・・・」

「・・・・・なるほど」


 その後、天幕の中では動物の悲鳴と、バリボリと言う音が響き渡り、近くに居た騎士たちは音だけで食欲がなくなったそうだ・・・




 屋敷のシンの部屋に案内され、少しここで休憩して欲しいと頼まれたので、遠慮なく部屋を使わせてもらう。その頃、三人娘は別室で話し合いを行っていた。



「ちょっと! 話が違うじゃない!」とエリス。

「だって、この前はレッドドラゴンは喋らなかったのよ!」


「古代竜の使者って言ってましたね、使者って事は何かメッセージでもあるのでしょうか?」とラル。

「古代六竜っておとぎ話に出て来るドラゴン達でしょ? 実在するのかしら?」とエリス。


「レッドドラゴンが実在してますからね、居ても不思議では無いかと」とラル。

「とにかく、シンに聞いてみるしか無いわね」とシル。


「それにしても大失敗ね、あれじゃレッドドラゴンは言う事聞きそうに無いわね」とエリス。

「そうでしょうか? あのドラゴンはシン殿のボディーガードの様な物かと、先ほどもちゃんと言う事聞いてましたし」とラル。

「シンを取り込めば、まだチャンスはあるわね」とシル。


「取り込むって、どうやってよ?」とエリス。

「女よ、女! 既に我が家の誇る美人侍女が待機中よ」とシル。


「あ、あなたねぇ~ そんな事をして、またドラゴンの不興を買ったらおしまいよ?」とエリス。

「いえ、ドラゴンは礼節を持てと言いました、我々人間では、女を充てる事は礼にかなっていると思います」とラル。


「まあ良いわ、とにかくやれる事はやりましょう・・・それにしても、ドラゴンと人間の恋物語だけは、無いって事が分かったわね」とエリス。

「おっかしいなぁ~」とシル。


「まあその方が、女を充てる私達には都合が良いではないですか」とラル。


 あーでもない、こーでもないと、三人娘の会議は続いた・・・・




【メル? おーいメル? 食事は終わったかぁ?】

【うん、まあまあ美味しかったよ。食べたら眠くなっちゃった】


【じゃあこっちに来て、人族の姿で寝ないか?】

【ん~ ところがね。ここに藁のベッドがあるのよ、これ、意外に寝心地が良くてさぁ~】


【じゃあそこで寝るの?】

【うん、ちょっとだけお昼寝するぅ~ 何かあったら呼んでね、すぐに目覚めるから】


 まだ天幕の中に居るメルと念話で会話すると、自由人ならぬ自由ドラゴンのメルは、食べたら昼寝を始めた。


 暇なシン、特にやる事が無くなってしまった。しょうがないので、侍女を呼ぶベルを鳴らす。


「お呼びでしょうか? シン様」

「すみません、お茶か何かもらえますか? ちょっと喉が渇いちゃって」


「かしこまりました、直ぐに用意致します」


 そう言って踵を返した侍女の後ろ姿を見て、シンは固まった・・・・


(しっぽ? あれ・・・・しっぽだよな?)


 メイド服のスカートから、しっぽが伸びていた。



 お茶の準備をして部屋に入って来た侍女をマジマジと見る。


(猫耳だ・・・間違いない、猫耳がある・・・普通の耳が無いっ!!)


 可愛い顔をした侍女には猫耳が付いていて、当然ある場所にあるはずの人間の耳が無かった。


 茶髪でショートカット、目は・・・猫の目だ・・・猫耳としっぽ、それに特徴的な目、それ以外は普通の人間と変わらない様に見える。


 小さい背と、可愛らしい顔立ち、年齢は10代だろうか?


 お茶の準備をしている侍女の顔を、じぃぃぃぃぃっっと見るシン。


 猫耳侍女は注目されて実にやり難そうだ。ついに耐えきれなくなる侍女。


「あの・・・私の顔に何か?」

「えっと・・・変な事を聞くけど、その耳は本物?それとそのしっぽも・・・」


「え? はい・・・そうですけれど」

 何言ってるのこの人? そんな目でシンを見る侍女。


「初めて見た・・・」

「え?何がですか?」


「猫耳ついている人」

「獣人族は初めてですか?」


「うん、初めてです・・・ずっとドラゴンと一緒に暮らしてましたので」

「ああ、なるほど」


(ビバ異世界っ!! 猫耳娘発見っ!!)


「あの・・・出来ればその耳を・・・ちょっとだけ触らせて頂けませんか?」

「えぇぇぇ? それは無理です・・・ごめんなさい」


 慌てて手で猫耳を隠しながらそう言う侍女。


「そうですか・・・」

 実に残念そうな顔をするシン。


「あの、嫌じゃないのですか?」

「へ? 何が?」


「人族って、獣人族を嫌いますので・・・・・」

「え? そうなの?? なんで? そんなに可愛いしっぽと猫耳があるのに? 嫌う訳無いじゃん!」


「えぇぇぇぇ? 可愛い? この耳がですか??」

「うん、めちゃくちゃ可愛いです!」


「そ、そうですか・・・ありがとうございます」

 ちょっと頬を赤く染めて、猫耳侍女は逃げる様に部屋を出て行った。


(ヤバイ! ヤバイヤバイ!! 猫耳娘まで居るのかよ! すげぇぇ異世界)


 妙にハイテンションになったシンの所へ、王女殿下が呼んでいると騎士の使いがやってきた。騎士と一緒に、王女様の待つ応接室へと移動した。


「お待たせして申し訳ありませんでした」

 シルフィードがそう言って、シンに席を進める。


 シンの向かい側には、エリス、シルフィードが座り、ラルは騎士らしく、二人の後ろに立つ。


「早速ですが、シン殿がレッドドラゴンと住む様になった経緯を、もう一度教えて頂けますか?」

 王女がそう切り出した。自分の耳でもう一度聞きたいとの事だ。


 シンは軽く今までの経緯を説明する。


「古代六竜とは何処で会われたのですか? 先ほどの話では、あなたは六竜の使者だと言ってましたが?」

 シンの話に他の竜族の話が出てこないので、早速質問が来た。


「あ~ それは・・・実は会ったことはありません・・・」

「はぁ? 会ったことが無い??」思わず声を上げたのはラルだ。


「古代竜族は定期的に連絡を取っていると言ってました、僕の存在が竜族でも話題になっているそうで、人族への使者に丁度良い、そう判断したみたいですね」

「どういう事でしょうか?」


「竜族の生活や考え方を知っている人間なんて居ませんよね? 逆に竜族も、人間の考え方を理解していない部分が大きいと思います。そこから生じる小さな誤解や、思い違いがやがて大きくなって、お互いを相容れない存在になっているのが、現状だと聞いています。遥か昔は、竜族と人族も普通に交流していたそうです」

「そうなのですか?」


「僕も聞いた話ですから・・・それで、竜族と一緒に暮らしている僕なら、人間と竜の間に立てるのでは? そう考えたみたいです」

「そうでしたか・・・で? 使者と言うからには、何か竜族が人間に伝えたいことがあるのでしょうか?」とエリス。


「帝国の竜騎士、竜族を家畜の様に扱っていると、かなりご立腹の様子で・・・・」

「え? そうなのですか?」


「過激なドラゴンは、人族そのものを全滅させようと言う意見もあります」

「人間を全滅だと?!!!」とラル。


「な、何故そこまでドラゴン達は怒っているのですか??」とシル。

「そりゃそうでしょ・・・」


「「「え?」」」


 三人共訳が分からないと言う顔をしている。


「ひょっとして、わからない?」

「ええ、何故そこまで怒るか・・・・」


(なるほど。俺が使者に選ばれる訳だ、根本的に、俺はこの世界の人間じゃないからな、考え方が違うのか)


「少し見方を変えましょうか、たとえばオークは人間の女性を攫いますよね?」

「・・・・・えぇ」


「何の為に?」

「そ、それは・・・・人の女性で・・・」


「まあそうですね、言い難いですよね。そのオークがもう少し知恵がついたとしましょうか、女性だけでは無く、男も攫って繁殖させようと考えたら?」

「そんなバカな・・・そんな事が許される訳無い」とシル。


「オークにしたら、わざわざ人間を襲わなくても家畜の様に育て、何時でも繁殖に使える訳ですよ、育てられたメスの人間は、教育も受けていないので言葉も喋れず、ただただオークに犯される為だけに生まれてくるのです」

「そんな悪魔の様な所業は絶対に許す訳には行かない」ラルが怒りながらそう言う。


「ですよね? ドラゴンの怒りも一緒ですよ。人間の戦争の道具にワイバーンを育てている、生まれたワイバーンは自分で狩りをする事も出来ずに、自由も無く戦争に投入され、殺されるか、繁殖に使われるだけです」

「それは・・・・」


「竜族は誇りが高い、傲慢だとも言えますが・・・まあ竜族から見たら、人間ごときが竜族を家畜の様に扱っていると言って怒るも当然かと」

「それは・・・ワイバーンにもっと知能があれば・・・」とラル。


「いやいや、オークに育てられた人間だって、そんな環境なら知能なんてほどんど無いでしょ?」

「・・・・・確かに・・・そうかもしれませんね」とエリス。


「しかし、人間を全滅させるなどとは・・・悪いのは帝国だ、帝国だけを竜族は攻撃したら良いでは無いか、我々は無関係だ」とラル。


「ではお聞きしますが、西の森に出るオークが人間を繁殖させたとして、東の森に出るオークを無関係だから生かしておきますか?オークはオークとして処分するのでは? 竜族から見たら、何処が帝国で何処がどの国かなんて知らないのですよ、人間を見たら殺す、そうなっても不思議じゃ無いと僕は考えます」


「うぅ・・確かに・・・」


「しかし、メル殿に乗っているシン殿は? 背に乗る事は問題無いのですか?」とシルフィード。

「僕はメルにお願いして乗せてもらっているだけですよ、問題なのは、繁殖させて家畜の様に扱っている所です、背中に乗る事を怒っている訳じゃないですよ」


「なるほど・・・・」


「極端な事を言うと、パートナーとして、野生のワイバーンを説得して背中に乗り戦争するのは問題無いと思います」

「説得?」


「そうです、お互いに対等の立場でワイバーンを乗り回すなら、それはそのワイバーンの意思ですから」

「そんな事が出来る訳無い」


「ええ、僕もそう思います、竜族が人間に従うとは思えませんから。でも聞いた話だと、帝国の最初のワイバーンは人間に懐いたと聞いています」

「そうですね、我々もそう聞いています」


「では、まったく不可能と言う訳じゃないでしょうね、確率は奇跡に近いでしょうが・・・」

「そうですね」


「いずれにしても竜騎士の件は、まだ時間はありますから、ゆっくりと帝国を説得してください」

「時間がある?」


「ええ、今すぐに竜族が攻めて来る訳じゃありません。人間と竜族の時間の流れは違いますから、恐らく、あと五年は大丈夫ではないかと」

「五年・・・」エリスが呟く。


「しかし、帝国の説得など無理だ、鼻で笑われて終わるだろう」とラル。

「え? エリスティーナ様は王族ですよね? 帝国に話を通せる立場では?」


「今の帝国の力は、ワイバーンのお陰だと言っても良いでしょう。帝国がワイバーンを手放すなんてありえないのです」

「え? 無理なの??」


「今の帝国に発言力を持つ国などこの大陸にはありません・・・・」

「そんなに帝国って強いのですか? って言うか・・一つお願いがあるのですが・・・・」


 シンはこの世界の事について、色々教えて欲しいとお願いした。世界情勢や、文明の発達度、魔法の知識、知りたい事は山ほどある。今の世界情勢、パワーバランスがわからないと、ドラゴン達へ報告のしようも無い。シルフィードは快く引き受けてくれると言って、シンが飽きるまで暫く屋敷に滞在して良いと言われる。


 シンもお言葉に甘える事にした。


 もちろん、シルフィードは今でもシンを逃がすつもりは無い。


 こうして、人間の都市での一日目は過ぎて行く・・・・

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